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MD

2008年6月25日 (水)

SM-3とPAC-3の迎撃確率

SM-3とPAC-3の迎撃確率について、どの程度なのかという質問が出てました。


それに対して、SM-3の実射試験の結果が9割程度との回答がされていました。

それ自体は事実ですが、話はもう少し複雑なので、追加回答しています。


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目標となる弾道ミサイルのスペック(主に射程)で全く違ってきます。
また、弾道の種類、最小エネルギー弾道、ロフト、ディプレストでも異なってきます。

さらに、迎撃を行うSM-3やPAC-3の側としても、複数回の迎撃試行ができれば、
迎撃確率は、その分だけ高くなります。
 
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詳しくは、「日本海クライシス2012」 第3章をご覧下さい。

2008年7月14日 (月)

パトリオットPAC-3の弾道ミサイル迎撃実験

先週の金曜日、時事通信にパトリオットPAC-3が弾道ミサイル迎撃実験を行うというニュースが流れた。
まずは、その引用から
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 防衛省は11日、弾道ミサイルを地上で迎撃する地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の発射実験を9月に米国で行うと発表した。PAC3は、日本の弾道ミサイル防衛(BMD)の要で、既に首都圏などの航空自衛隊基地に配備されている。空自トップの田母神俊雄航空幕僚長は同日、「発射実験により、日本のBMD対処能力を内外に示すことができる」と話した。
 同省によると、発射実験は9月15日の週に米ニューメキシコ州の米軍ホワイトサンズ射場で行われ、空自高射教導隊(浜松市)の機材が持ち込まれる。米軍が撃つ模擬弾を標的にPAC3を2発発射するという。
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昨年、入間基地にある第1高射群の指揮所運用隊、第4高射隊に配備されて以降、順次配備の進むPAC-3ミサイルですが、やっと実弾射撃の運びになったようです。
高教隊が実施するとのことなので、実験というか、運用研究の一環という位置付けですね。
最初の射撃なので、失敗する可能性のある射撃はしないと思いますが、どんな模擬弾をどんなプロファイルで飛行(落下?)させて実験するかが興味の沸くところです。
パトリオットの初期型(スタンダード)でも実験していたくらいなので、ランスミサイルを標的にすればよもや失敗しないと思いますが、米軍もいままでランスは保管していないと思うので、何を標的にするのか?
手軽に使えるとしたらAQM-37Cになりますが、う~ん。
今後のニュースを待ちたいと思います。


AQM-37Cについては、こちらをご覧下さい。

http://www.designation-systems.net/dusrm/m-37.html

2008年7月16日 (水)

アメリカが北朝鮮のICBM開発に備えてMD強化

今日もニュースねたです。(読売新聞配信)
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米国防総省ミサイル防衛局のオベリング局長は15日の記者会見で、北朝鮮やイランが米本土に到達可能な大陸間弾道弾(ICBM)を保有した場合に備え、ミサイル防衛網を強化する考えを表明した。 イランについては、情報機関の分析として、早ければ2015年にも米本土を射程に収める大陸間弾道弾を開発するとの見通しを示した。

 具体的なミサイル防衛網強化策として、アラスカ、カリフォルニア両州に配備済みの計24発の地上配備型迎撃ミサイルを、年末までに30発に増強。また、海上配備型迎撃ミサイルSM3を搭載できるイージス艦も、年末までに15隻から18隻に増やすという。
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アラスカ、カリフォルニアのGBIと言ったら、どちらかというと位置的に北朝鮮に対する警戒です。
イランと海の位置関係を考慮すると、イージス艦にしても、対北朝鮮を意図している可能性が高いと思えます。
普段のアメリカの行動は、比較的イランに目が行っているように見えるのですが、今回のニュースは北朝鮮警戒のようです。
こんなニュースが流れるところを見ると、北朝鮮のICBM開発について、アメリカは何か情報を掴んだのかもしれません。

いよいよ、「日本海クライシス2012」で描いたことが、現実化してきているのかもしれません。

2008年9月22日 (月)

PAC-3の実射試験はどんな試験?

さる9月17日、空自は初となるパトリオットPAC-3ミサイルの実射試験を行い、弾道ミサイルに見立てた模擬ミサイルの迎撃に成功したそうです。
この関連ニュースがさまざまに報じられましたが、今回はこの試験内容について書いてみたいと思います。


試験場所は、アメリカ、ニューメキシコ州のホワイトサンズ射場です。
「ミサイル射場なんて知らないよ!」という方がほとんどでしょうが、実はこの場所、日本人にも結構良く見られている場所でもあります。
サンズとは砂の複数形で、要は砂漠のこと。つまりホワイトサンズとは白い砂漠という意味です。
最近はあまり見られなくなった気がしますが、真っ白な砂が広がる砂漠は、CMの撮影場所などとしてよく使われました。私が覚えているシーンとしては、何のCMだったか忘れましたが、白い砂の上でスティービー・ワンダーが歌っていたCMを覚えています。
(最近は、気候の変動で雨が増え、以前ほど美しくないようです)


CMとして使われているくらいなので、一応観光地となっています。ところがこの観光地、ミサイル射場があるため、機械部品を見つけても手を触れないようにと書かれた注意書きが立っています。
なにせミサイル射場ですから、破片であっても爆発性のものが無いとは限りません。それに宇宙開発関連の試射が行われることもあり、毒性のある燃料などが付着している可能性もあります。


ちなみに、このホワイトサンズ射場の直ぐ近くに、F-117が配備されていたホロマンAFBがあるので、上空にあの特徴的な黒いシルエットを見ることができたこともあります。


今回の試験を行った部隊の編成ですが、ニュースを見ておや?と思った点が2点ほどあります。
本来、この種の試験を行うべき部隊は、パトリオットを保有する高射部隊に技術的な指導をしたり、運用法の研究を行う高射教導隊(静岡県浜松)なのですが、ニュースでは第1高射群(埼玉県・入間基地)と高射教導隊(浜松基地)の隊員約80人が試験を行ったと報じられています。
PAC-3は、2007年の3月に入間基地に所在する第1高射群第4高射隊配備されたのを皮切りに、その後第1高射群の第1、第2、第3高射隊にも配備されました。高射教導隊には今年度中の配備予定となっています。以前のニュース記事で、使用される機材は高射教導隊のものとなっているため、配備されたばかりの機材をアメリカに持ち込んだのかもしれません。
今回は、本来試験を行うべき高射教導隊の隊員が機材に不慣れなため、第1高射群との混成部隊で発射試験が行われたものと思われます。
もう一つ?だった点は、メンバーのトップが飛行開発実験団司令だと報じられている点です。高射教導隊にせよ第1高射群にせよ、空自のパトリオット部隊は全て航空総隊隷下であるため、飛行開発実験団司令が試験部隊の指揮官とは考え難いのです。もっとも、日本のメディアはその辺に無頓着なため、指揮官ではなく単に視察に行っていただけの可能性もあります。


試験の内容については、以前のブログ記事でターゲットとなる模擬弾道ミサイルが何であるのかが問題になると書きました。
弾道ミサイルに近いプロファイルで飛行させることが可能なターゲットドローン、AQM-37Cかもしれないと書いていたのですが、なんと今回使用されたターゲットはパトリオットPAC-2ミサイルだったそうです。
各紙が報道している中、模擬弾がPAC-2だと書いていたのは中日新聞だけなので、誤報の可能性もありますが、一応信用しましょう。
模擬弾のプロファイルは、試験の実効性を図る重要な点です。
次回の記事では、模擬弾がPAC-2であることを前提に、試験の実効性について分析してみたいと思います。

2008年9月24日 (水)

PAC-3実射試験 その実効性は?

前回の予告通り、今回は先日行われたPAC-3ミサイルによる弾道ミサイル迎撃試験の実効性について考えてみます。

まず報道されている実射試験の内容をまとめると、次のとおりです。
・模擬ミサイルは、南側、距離120kmの地点から発射された。
・模擬ミサイルの発射2分後に、迎撃ミサイル2発が発射され、その約30秒後、迎撃に成功した。
・模擬ミサイルは、PAC-2ミサイルである。
・PAC-3ミサイルを発射した機材は、発射機2基のほか、レーダーと管制装置などである。
・PAC-3ミサイルによる目標の迎撃高度は10数キロだった。

これに加えて、空自が公開した写真から読み取れる情報を列挙してみます。なお、以下の写真は全て航空自衛隊提供です。
・模擬ミサイルとなったPAC-2は、試験用に改造されている。
(迎撃した瞬間の写真が公開されているが、航跡が写っており、試験の評価用にスモークを引くように改造してある。PAC-2にせよPAC-3にせよ、ロケットモーターの作動時間は10数秒と言われており、インパクト時には、両ミサイルともロケットモーターは燃え尽きているため。なお、スモークを焚くという方法は、ミサイル試験を可視画像で評価する際、よく行われる方法です)
10095508437

・同一発射機から2発のミサイルが発射された。
(1発目の噴煙とおもわれる煙の中で、ミサイルが発射される写真がある)
(もう1機の発射機は、おそらく予備)
10095508441

・模擬ミサイルは、急角度で接近(落下)している可能性が高い。
(PAC-3ミサイルの発射直後の写真に、姿勢制御用サイド・スラスターが下方に2度噴射されていることが写っており、発射直後のプリプログラム誘導で、飛翔方向を上に(急角度に)変更していることが分かります。なお、パトリオットミサイル発射機の発射時の角度は、60度程度の固定式です。(基地祭などで確認できる)試験の安全確保上、展開している試験部隊を飛び越える模擬ミサイルの飛翔は行わないはずなので、部隊直前に急角度で落下している可能性が高い)
10095508450
10095508456
10095508459

以上を踏まえるとともに、必然と思われる要素を加味して推論すると、今回の試験で使用された模擬弾道ミサイルのプロファイルなどは次のとおりです。
・標的の模擬弾道ミサイルとなったPAC-2ミサイルは、通常の目標を迎撃する際と異なり、高い弾道軌道を飛翔した。
(PAC-2ミサイルは機動を操舵翼で行っており、宇宙環境に近い高高度では旋回できないため、通常目標の迎撃ではそれほど高い弾道軌道は採らない(エネルギーロスを防ぐため、弾道に近い軌道ではある))
・模擬ミサイルの速度は、マック3を超えていた。
(模擬ミサイルは、試験部隊に向けて発射されたはずであり、インパクト時、両ミサイル(PAC-3と模擬ミサイル)はほぼ正対(ヘッドオン)状態だったと思われる。両ミサイルは、水平距離120kmを約150秒で飛翔しており、平均水平速度は800m/秒程度となる。模擬ミサイルは高い弾道を飛翔しており、インパクト時の垂直速度は水平速度と同等以上と推測でき、水平垂直成分を合成した実際の速度は、1140m/秒以上=約マック3強となる。この数値は最低限のもの。おそらく模擬ミサイルは150秒で100km程度しか飛行していないと思われるため、実際の速度はもっと遅い)
・模擬目標は、ミサイル本体と中間の指令誘導を行うプログラムの変更により、飛翔プロファイルを弾道に近いものに変更した。
(PAC-2自体は、プログラム中に模擬目標を作成し、これに向けて飛翔させたと思われる)

一言で言えば、マック3以上の弾道軌道だったということです。
模擬弾道ミサイルなので、弾道軌道なのは当たり前ですが、速度はマック3以上という程度です。
空自が迎撃しなければならないノドンは、IRBMに区分されるミサイルで、速度はマック9を超えると言われています。
模擬ミサイルの速度がマック3強程度だったとすると、スペックとしてはSRBMでしかなく、ノドンの原型となったスカッドの中でも最も古いスカッドA程度だったとことが分かります。

一部新聞紙上でも、今回の試験では、模擬ミサイルの速度がノドンの半分以下でしかなく、実効性には疑問があるような記事がありました。
しかし、公表されているデータを元に分析すると、半分以下どころか1/3程度だったことが分かります。
防衛省は、「数値を入れ替えれば対応できる」と意味不明なコメントをしているようですが、迎撃目標の速度に関する限り、率直に言ってノドンに対する実効性は疑問と言わざるを得ないでしょう。

ですが、今回の試験は第1歩です。
最初からノドン並を狙って外れた場合、失敗の原因分析が難しくなります。第1ステップとしては、弾道軌道を飛翔するミサイルの迎撃が可能だということを確認した、という所でしょう。おそらく来年予定されている試験ではもっと高速の目標を迎撃するはずです。

また、レーダーの小型目標探知能力については、今回の試験で確認できたかどうかは分かりません。目標が1/3程度の速度だったこともあり、リアクションタイムの余力は、相当にあったと思います。
ですが、目標が今回の3倍の速度だったときにも十分だったか否かについての判断材料は、残念ながら公開されていません。試験を実施した部隊では、データが取れた筈ですので、今後は製造元の三菱電機とともに解析し、検討するでしょう。

今回の試験については、個人的にも非常に興味があった事項です。
これからも関連の情報をウォッチするつもりです。

2008年10月 4日 (土)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事

ミリタリー系ブログの筆頭とも言える「週間オブイエクト」に「PAC-3はノドンを撃墜できるか?」と言う記事が出ていました。
http://obiekt.seesaa.net/article/107398010.html


JSF氏の記事では、「ミサイル入門教室」
の記事を引きながら、「PAC-3はノドンに対し「交戦可能」である」としています。
「ミサイル入門教室」
http://homepage3.nifty.com/kubota01/
http://homepage3.nifty.com/kubota01/BallisticMissile03.htm


今回は、先日の実射実験にも触れながら、ノドンの撃墜可能性について書きます。
ただし、書いてみた結果、めちゃくちゃ長くなってしまったため、4回に分けてUPします。
なお、このブログでは、数式などは使用せず、なるべく多くの方に理解してもらえるように書いておりますが、今回は内容上、かなり専門的にならざるを得ないことをご承知下さい。


まず最初に、一つ重要なことがあります。それは、PAC-3の飛翔プロファイル(飛翔経路)については、公表されているデータがないと言うことです。
ですが、理論上ありうるプロファイルは2種類です。


一つは、「ミサイル入門教室」でも迎撃性能を上げる上で最良のプロファイルとされ、「日本海クライシス2012」の中でも言及したヘッドオン迎撃です。
ヘッドオン迎撃とは、弾道ミサイルの正面から迎撃ミサイルを当てる方法で、単純なモデルとしては、迎撃ミサイルの発射地点に直線的に落下する弾道ミサイルを、ランチャーから直線的に飛翔する際に生起するパターンになります。「ミサイル入門教室」第3章「ターミナル・フェーズにおける迎撃」の図3-12-1がこれに当たります。
ターミナル・フェイズでの弾道ミサイルのプロファイルが、「ミサイル入門教室」で言う「著しい直線性」を持つ(上記サイトの図3-5-2参照)ため、原理的には、迎撃ミサイルを中間誘導段階でヘッドオン迎撃コースに乗せてしまえば、迎撃ミサイルの終末誘導段階で全く機動させなくとも命中させられることになります。
この場合、弾道ミサイルの速度が速ければ速いほど直線性が保たれるため、長射程のミサイルほど命中させやすいという、一般に考えられていることと逆の現象が発生します。
ただし、迎撃ミサイル側も直線的に飛翔している必要があるため、迎撃ミサイルに十分な存速があることが重要です。
つまり、ヘッドオン迎撃は、比較的近距離でしか実現できないということです。
また、上記の理想的な場合と異なり、普通は弾道ミサイルの落下地点が迎撃ミサイル発射位置とはずれています。その場合、迎撃ミサイルをヘッドオン迎撃コースに乗せるためには、落下地点の下方に迎撃ミサイルを潜り込ませる必要が生じ、ミサイルの飛翔としては余分なエネルギーを使用しなければならないことから、なおのこと近距離でしか実現できないということになります。
なお、探しきれませんでしたが、湾岸戦争時にPAC-2がアル・フセインなどを迎撃した動画の中には、ヘッドオン迎撃コースで飛翔するPAC-2の映像があったと思います。


次回に続く

2008年10月 6日 (月)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その2

前回の続きです。


もう一つのプロファイルは、弾道軌道に近いものです。もちろん、弾道ミサイルのように下方に向かっているという意味ではありません。迎撃ミサイルのロケットモーターの燃焼終了後、既に空気密度の薄い高空に到達していれば、この後は、慣性に従って上昇を続けながら、もしくは水平に近い状態で、自由落下状態となる弾道飛翔が最もエネルギーを喪失しないプロファイルとなります。
「ミサイル入門教室」でも書かれている通り、速度エネルギーは、目標の動きに合わせて迎撃ミサイルを機動させ、誘導を行う上での重要な要素です。この点から、ヘッドオン迎撃ではない場合のプロファイルは、弾道軌道に近いものになる訳です。
この時、濃密な大気のある低空では、空気抵抗によるエネルギー損失を防ぐため、より鉛直に近い方位にミサイルを飛翔させていると思われます。重力ターンを行う弾道ミサイルや宇宙ロケットと同じ理屈です。
また、弾道プロファイルによる迎撃の場合、目標の追尾方式は、「ミサイル入門教室」で長い記述がなされている増強比例航法になります。(増強比例航法については、「ミサイル入門教室」を見てください。)
なお、先日のブログ記事で簡単に書きましたが、先日行われたPAC-3による弾道ミサイル迎撃訓練では、迎撃ミサイルの飛翔時間の長さ及び発射直後のプリプログラム誘導時の上方へのミサイル機動から、この弾道プロファイルにより、比較的遠距離での迎撃が行われたものと思われます。
(今回記事を書きながら計算しなおしてみると、先日の記事に誤りがあったということです。細部は後で書きます。)


まとめると、PAC-3は、近距離ではヘッドオン迎撃を行い、遠距離では増強比例航法による弾道プロファイルを採っていると思われるということです。


プロファイルが一つでないことに違和感を覚える方もいるかと思いますが、このことはパトリオットの開発経緯をみても不自然はことではありません。
パトリオットは、長射程のナイキミサイルと中射程のホークミサイル双方の後継として、開発されました。ナイキ、ホークとも航空機への誘導方式は比例航法ですが、短距離でも動作するホークは、目標に対して直進するプロファイルであることに対して、長射程のナイキはブースターがあることもあり、ほぼ垂直に上昇した後、切り離された先端部のみが目標に降下しながら飛翔します。
ナイキ、ホーク双方の能力を代替するため、パトリオットは近距離でも遠距離でも効率的な飛翔をすることを求められました。そのため、柔軟にプロファイルを変えられる必要性があった訳です。また、それを実現するために、中間誘導が指令誘導となっています。このあたりの技術的な傾向は、AAMでも同様です。


話が脇に逸れました。
パトリオットには2種類のプロファイルがあり、近距離ではヘッドオン迎撃するということから、誘導精度に関して言えば、PAC-3が迎撃可能な弾道ミサイルの種別は、一般に言われている以上に長射程である可能性があると言えます。先に書いたとおり、中間誘導の段階で高精度な誘導が出来、ヘッドオンコースに乗せられれば、終末段階のアクティブ・ホーミング時に、全く機動する必要がない可能性もあるからです。
極論すれば、中間段階の誘導精度さえ高ければ、誘導精度に関しては、ICBMにさえ対応できる可能性があるということです。(別のボトルネックがあるため、当然不可ですが、これについては後で書きます。)
誘導精度については、レーダーの分解能やコンピュータの処理速度によって決まってきますが、これについてはデータがないので何とも言えません。
ですが、ノドンの迎撃に関しては、少なくともこの点は十分な性能があるはずです。全く別の方向からの話になってしまいますが、ヘッドオンによるノドンの迎撃が不可能ならば、財務省が3個高射群分以上のPAC-3の予算化を許すはずがないからです。
米軍も実験は行っていないため、シミュレーション上のことになりますが、レーダーの分解能などから可能性のあるミスディスタンス(誘導誤差)は、「ミサイル入門教室」での計算と同様のシミュレーション結果から、終末段階のミサイルシーカーでの目標捕捉距離、搭載誘導部のリアクションタイム、姿勢制御用のサイドスラスターによる機動能力を考慮して、PAC-3ミサイルが反応可能な範囲にあると結論されているでしょう。
この辺の理論限界は興味のあるところですが、当然秘密になっています。(財務省の役人が羨ましい)


次回に続く

2008年10月 8日 (水)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その3

前回の続きです


次に、弾道ミサイルをヘッドオンで迎撃できる範囲はどの程度でしょうか。
SAMに限らず、一般にミサイルのロケットモーター燃焼時間は十数秒です。パトリオットPAC-2(GEMなどを含む)の燃焼時間も12秒程度だと言われていました。PAC-2とPAC-3のミサイルサイズを比較すると、径は異なるものの、全長はほぼ同じ、ロケットモーター部の長さは、PAC-3が若干長くなっています。
ミサイルのロケットモーター断面は、初期加速を高く(特にSAM)するため、後端部のみ円あるいは星型などでくりぬいてありありますが、それより前は推進剤が目いっぱい詰まっている状態です。早い話、後ろから徐々に燃えて行くと言う事です。


そこで、PAC-3のロケットモーター燃焼時間を15秒と仮定します。そして、PAC-3の飛翔速度がマック5超と言われているため、平均速度をマック5と仮定すると、ロケットモーターの燃焼中に、PAC-3ミサイルは25.5kmを飛翔することになります。
計算を単純化するため、PAC-3の飛翔経路を直線とし、上昇角度を45°とすると、飛翔距離の水平成分(射程)、垂直成分(射高)とも18kmとなります。
これは、よく言われるPAC-3の射程15~20km、射高15~20kmと合致します。


ということは、通常射程、射高と言われているものは、ロケットモーターが作動中、または燃焼終了直後で、ヘッドオン迎撃ができる範囲ということです。
なお、計算上では、近距離での射高を更に高くできそうですが、空気密度の減少から、20km以上では操舵が困難になるのでしょう。
逆に、低高度では射程を延ばせそうですが、濃密な大気での空気抵抗でエネルギーロスが大きいものと思われます。


この範囲(射程20km、射高20km)ではヘッドオン迎撃が可能ということですから、この範囲内でのPAC-3での迎撃確率は、パトリオットシステムというよりシーカーの捕捉範囲など、PAC-3ミサイルの性能だけで決まって来るものと思われます。(連続発射による迎撃試行回数による差は当然に生じる)
ということは、この範囲では他のボトルネックが無い限り、特定の目標に対する迎撃確率は、大きく異なることはないということになります。よって、ノドンに対処可能な範囲がこれより小さいと言うことはないと思われます。
分かり難い表現になってしまいましたが、PAC-3によるノドンの迎撃確率をグラフにした場合に、20kmまではほぼ一定の数値を示すだろうということです。


よって、JSF氏が言及していたwikiの記事、ノドンに対する射程が20kmという点については正しいだろうと思われます。(PAC-3は、多少なりともノドンを迎撃できるという前提の元)


そして、これよりも遠方、つまりヘッドオンではなく弾道軌道でPAC-3が誘導される範囲では、ミサイルが持つ速度エネルギーが急速に減少するため、対処可能な弾道ミサイルの速度も急速に減少してくることになります。
先日のPAC-3実射試験における、PAC-3の飛翔時間として防衛省が発表している約30秒という時間について、JSF氏は間違いだろうと述べています。しかし迎撃時には、目標となったPAC-2ミサイルは約2分30秒も飛翔しているわけですから、その時点の目標速度はマック5を相当に下回っていたと思われます。
であれば、迎撃するPAC-3の速度もそれなりに低下していても迎撃は可能だったと思われます。
別の言い方をすれば、先日の実射試験では、PAC-3は模擬ミサイルとなったPAC-2を20kmをかなり上回る射程で迎撃していた可能性があるということです。


また論点がちょっとずれてしまいましたが、迎撃対象がSRBMなら、PAC-3はより広範囲の射程を持ち、wikiの記述も誤りではない可能性もあるということです。
(ただし目標がたとえSRBMであっても、ヘッドオンで迎撃できる範囲は、やはり20km程度しかありませんので、それ以上での迎撃確率は?)


次回に続く

2008年10月11日 (土)

PAC-3はノドンを撃墜できるか? オブイェクト記事 その4

前回の続きです


さて、ここまではPAC-3の飛翔速度と誘導精度についてだけ言及して来ましたが、ここからは別の観点からノドン迎撃の可能性について検討してみます。


パトリオットシステムが、ミサイルを目標に誘導するためには、RSと呼ばれるレーダーが目標を捕捉し、正確な目標位置情報を得ている必要があります。(理論上、不正確な位置情報でも指令誘導までは可能ですが、終末期のアクティブレーダーホーミング時の軌道修正が大きくなり命中率は極端に落ちる。最悪シーカーが目標捕捉できない。)


RSの捜索範囲は、距離180kmと言われていますが、この距離は水平距離ではなく、レーダーからの直線距離です。(どんなレーダーでも同じです)パトリオットのレーダーは方位を固定した運用なので、レーダーの捜索範囲は、半径180kmの球体を、中心から四角錘型に切り出したような形ということです。(上方の角度限界はシステムによって異なる。弾道ミサイルを迎撃するパトリオットは当然に高い角度まで捜索しているはず)


問題は、目標がこのレーダー捜索範囲に突入し、レーダーが目標を捕捉するまでの時間と、地表に着弾するまでの時間です。


レーダーについて詳しくない方は、目標が捜索範囲に入れば直ぐに捕捉できると思っている方が多いですが、たとえRCSが十分に大きくとも、直ぐに目標を捕捉できるとは限りません。
従来の機械的に回転するレーダーは、RCSが十分にあり、シグナルがノイズから区分できれば、ファンビームをゆっくりと横に駆動していたので、目標を1回のスイープで捕捉できました。(ただし、次のスイープまで目標のシグナルを捕らえられないので、高速目標を単一の目標として確立するには時間を要した)
フェイズドアレイレーダーは、目標捕捉後に直ぐに次のビームが打てるため、一度捕捉してしまえば、直ぐに安定追随できますが、最初の捕捉までは、広い範囲に細いビームを何本も打たなければならないため、捕捉までにはある程度の時間を要します。(当然ながら、総合的にはフェイズドアレイレーダーの方が能力が高い。以前はオペレーターの能力にも影響を受けた)
航空機ならば、水平線上から立ち上がってくるため、水平線上を集中的に監視(ビームを集中させて捜索するということ)すれば比較的早く目標を捕捉できますが、弾道ミサイルの場合は、捜索範囲内のどこに飛び込んでくるか分からないため、捕捉までに時間を要する場合がありえます。(運にもよる)

この事が、弾道ミサイル防衛ではキューイングが重要となってくる理由です。

どの程度の時間を要するかはもちろん秘密なので知る事はできませんが、ある程度必要なことは間違いありません。ただし、ターミナルフェイズでの迎撃であるパトリオットの場合、JADGEやイージスからキューイングデータを受領できる可能性が高く、それを前提とすれば、弾道ミサイルが捜索範囲内に入った直後に捕捉できると仮定しても問題ないでしょう。


たとえRSが目標を直ぐに捕捉したと仮定しても、弾道ミサイルが着弾するまでに、システムのリアクションタイムを消化し、PAC-3を発射し、目標と会合させなければなりません。
リアクションタイムもゼロと仮定したとしても、ICBMでは再突入速度がマック20にも達するため、180kmを26秒で落下してしまいます。つまりは、PAC-3ミサイルの命中精度がたとえICBMにも対応していたとしても、目標との会合はほとんど望めないということです。


では、どの程度の弾道ミサイルにまで対応しているかとなると、上記のリアクションタイムなど情報のない部分からの制限になるため、公開情報を信じるしかないということになります。


しかし、ICBMとノドンでは、速度は極端に異なります。日本に向けて飛翔させた場合、ノドンは最大でもマック10強と予想されます。(極端なロフトで飛翔させれば突入速度は更に速くなるが、日本に届かなくなる)パトリオットの捜索範囲に突入してから、パトリオットの前方20kmに着弾するまででも50秒程度かかる計算です。
前述のとおり、PAC-3ミサイルが20kmを飛翔する時間は15秒程度程度であるため、35秒も余裕がある計算となります。これだけあればおそらく対応は可能でしょう。


少々乱暴ですが、目標の補足とリアクションタイムについての結論としては、パトリオットのレーダー捜索範囲は、ノドンにPAC-3を会合させるために、十分な能力があると推定されるということです。
なお、この検討ではRCSに触れませんでしたが、パトリオットが自らの捜索範囲にミサイルを飛翔させる時、ノドンよりはるかに小さいパトリオット弾を自身で捕捉追随している訳ですので、S/N比の問題に関する限り、パトリオットのレーダーは、十分な能力を持っていると思われます。(弾道ミサイル相手では、クラッターもウェザークラッターぐらいしかないため、目標捕捉はそれほど難しくない)


最後にまとめです。

ずいぶんと長い記事になってしまいましたが、結論としては、PAC-3はノドンを目標とした場合、少なくとも20km程度の射程がある(迎撃し、命中させられる)と思われるということです。


意図したのか否かは分かりませんが、JSF氏は、交戦可能という微妙な表現を用いています。


ここでは、20km程度までは撃墜可能と言っておきましょう。
ただし、実証されてはいません。やはり同程度のスペックを持つ目標を使って実験されるべきだと思います。


注:記事中に書いたパトリオットや弾道ミサイルのスペックなどについては、主に「Weapons School」を参考にしています。
http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/

2008年11月12日 (水)

日本独自の早期警戒衛星は不要だ!

2ちゃんの軍事板「ミサイル防衛」スレで気になる話題がありました。また、ちょうど先日関連のニュースがあったので、開示請求についての最終回を急遽変更し、早期警戒衛星について書きます。


政府の宇宙開発戦略本部(本部長・麻生首相)がとりまとめる衛星とロケットに関する事務局原案が明らかになりました。
内容として、弾道ミサイル発射を検知する早期警戒衛星や、通信手段を強化する衛星の導入の検討など、防衛利用の促進が掲げられています。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081104-OYT1T00414.htm


このブログでは、MDについてもたびたび取り上げており、普通に考えれば歓迎のコメントを書くところです。
ですが、早期警戒衛星については反対です。


現時点で、早期警戒衛星と言えば、アメリカのDSP衛星のことになります。
事務局原案でも、DSP衛星と同様の物を自前で整備することを盛り込んでいると思われます。(原文が見つかりませんが、大石英司氏のブログでも、DSP衛星と読みかえられていますし、おそらく間違いないでしょう)
http://eiji.txt-nifty.com/diary/2008/11/post-e52b.html


DSP衛星は、赤道上空3万6千kmに位置する静止衛星で、数基をもって地球全体を監視していると言われています。
もともとは、冷戦期においてソ連が発射する弾道ミサイルを検知し、警報を発するために作られた物で、性能向上が図られつつ、順次新型に置き換わってきました。


これと同等のモノを装備することは、日本にとっても、一見、悪い話には思えません。
しかし、それに敢えて反対意見を述べるのは、DSP衛星と同様なものでは、日本への脅威には不十分だからです。
また、十分なモノはコストが見合わないからです(後述)


DSP衛星は、もともとICBMなど射程の長いミサイルを監視することが目的とされており、順次改良されているとは言え、ノドンなどMRBMに対して十分な監視能力を持っていません。
DSP衛星のセンサー感度や処理アルゴリズムを高性能化すれば、問題が片付くと言うものでもありません。感度が高ければ、誤警報の可能性も高まるからです。

実際、2001年11月22日に、韓国が済州島の西にミサイルの発射実験をした際、警報を受けた防衛省・自衛隊が一時騒然となるという事態も発生しています。
(古いニュースのため、日本の新聞社のサイトからは既に消えています。ですが、当時のニュースがコピペされた2ちゃんのログ、及び朝鮮日報のニュースは残ってました。)
http://news.2ch.net/newsplus/kako/1006/10064/1006437050.html
http://www.chosunonline.com/article/20011123000008

この時、警報によって問題が発生したと言うことは、発射地点が北朝鮮なのか韓国なのか、着弾地点が東シナ海なのか日本まで届くのかが不明確だったということです。
そして、こういう事態が実際に生じているということは、ハインリッヒの法則によれば、問題として顕在化していない誤警報が多数存在すると言うことです。そして通常は、一定時間経過するまで待ってから再確認するなどのフィルタリングが行われている可能性が高いということになります。


湾岸戦争、イラク戦争でのスカッド迎撃にDSPが機能したことをもって、DSPでも一定の効果を期待できると言う論もあります。
しかし、湾岸やイラク戦争では、たとえ誤警報確率が90%だったとしても、パトリオットの態勢移行回数が増え、故障発生率が増える以外、大した問題はありませんでした。
しかし、ここで詳細を書くことはできませんが、日本の弾道ミサイル防衛では、誤警報によって重篤な問題が発生します。


また、誤警報確率が高いシステムは、「狼が来たぞ」と同じで、直ぐに信頼されなくなります。各自治体を通じて警報が流されても、誤警報が続けば、誰も反応しなくなるでしょう。


この問題は、衛星が静止軌道に在るという基本条件が変わらない限り、十分な能力を持たせることが出来るとも考えられてはいません。
そのため、アメリカはMRBMなどにも十分な監視能力を持たせるため、DSP衛星の後継として、宇宙空間赤外線システム(SBIRS)衛星に置き換えることとしています。


SBIRSには2種類(正確には3種)あり、静止軌道GEO(2基)と長楕円軌道HEO(2基)に投入されるSIBRS-HIGH、そしてLEOに投入されるSIBRS-LOW(24基)という構成になっています。なおSIBRS-LOWは、現在ではSTSS(宇宙配備追尾監視システム)と名称変更されています。
詳しくは、軍事研究07年10月号の多田智彦氏の記事をご覧下さい。
また、ウィキ(英語)にも記事があります。
http://en.wikipedia.org/wiki/Space-Based_Infrared_System
http://en.wikipedia.org/wiki/Space_Tracking_and_Surveillance_System


アメリカがやっている事が常に正解という訳ではありませんが、確度の高い早期警戒情報を得るためには、STSS衛星と同様のものが必要ということです。
日本周辺の監視能力に限定すれば、STSSと同様の衛星は、24基も必要ないかもしれません。ですが、低軌道ゆえ、いくつもの衛星を代わる代わる使用する形を取らざるを得ず、多数の衛星が必要なことに変わりはありません。
となると、前述のとおり、早期警戒衛星の独自保有は、コストがかかり過ぎることになります。


現在、アメリカのSIBRSとSTSSの開発は遅延しています。それは、アメリカの関心が、同盟国の防護ではなく、自国を守るNMDに集中しているからだと思われます。(ICBM級の弾道ミサイルを警戒するNMDでは、早期警戒衛星はDSPで事足りる。)


日本政府は、早期警戒衛星の独自配備を考えるほどならば、開発費用を一部負担するなどしてSTSS衛星の開発配備を進展させ、出来れば協同運用する(集団的自衛権の問題もありますが)などした方が現実的です。


以前は、DSPからの早期警戒情報が、日本国外の経由地を経ることから、警報の伝達遅延を問題視する声も聞かれました。
しかし現在では、JTAGSが三沢にも配備されているので、至短時間で日本の領域にも伝達されますし、横田のBJOCCが既に稼動中ということなので、COC/AOCCの横田移転を待つことなく、自衛隊にも伝達される態勢が整っていると思われます。

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