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書評・DVD評

2010年2月 3日 (水)

書評「萌えよ!空戦学校」

今までにも軍事研究誌などの雑誌記事に関係した記事は書いてましたが、ミリタリー関係の書評・DVD評なんかも書いてゆきたいと思ってます。

という訳で、第1回は萌え系ミリタリー本として有名になった「萌えよ!戦車学校」の航空版「萌えよ!空戦学校」を取り上げてみます。


初版発行が2008年の3月なので、もう2年近く前の本ということになりますが、内容としては航空機が初めて戦争に使われた頃から現代まで網羅した内容ですので、内容的には古いということはありません。

ただし、空戦学校というタイトルなので、空戦技術の本かと思っていると拍子抜けという印象になります。というのも、空戦技術については第5講において、その歴史的変遷とともにチョビッと言及されているのみだからです。
特にBVR戦闘など、現在空戦が行われたとすれば生起すると思われる戦闘様相についてはほとんど言及さえないので、この点は非常に残念です。まあ、マニアを含めて「空戦=ドッグファイト」という認識が強いでしょうから、無理なからぬことかも知れません。

本書の内容は、タイトルよりその副題が正確です。副題は「空の王者・戦闘機のすべて!」となっており、戦闘機の解説本だということが分かります。
第1講が「戦闘機の種類と分類」、第2講が「戦闘機の構造と機能」となっていて、この前半2講で、戦闘機の基本的な理解ができるようになってます。

第3講と第4講は、過去の主要な戦闘機の紹介で、本書の中核となっている部分です。
内容も平易に書かれていましたし、正直なところを白状すると、私の知識はベトナムより前がほとんど真っ白でしたので、そう言う意味では良い本でした。

ただ「萌え」の部分は、本文とは別にコラム的なイラスト付き解説があるだけで、あまりうまく本文と連動していないことが残念なところです。(それをやろうとすると編集が大変なのでしょう)
それに「萌え」の度合いなどはNCって事で。

総じて、これからミリタリー系航空を勉強しようという人には良い本でしょう。既にマニアな方にはオススメしません。

2010年4月13日 (火)

DVD評「東京マグニチュード8.0」

深夜枠で放送された災害シミュレーションアニメのDVD(ブルーレイもあり)です。
全11話が5巻のDVDに収録されています。



東京消防庁、海保、陸上自衛隊第1師団、東京DMATや実際の病院に取材し、シミュレーションアニメであることを意識して製作されています。
災害救援ロボットの多用など一部演出上の意図的な改変がある以外は突飛なところがなく好感が持てます。

ストーリーは被災して帰宅困難者となった中1の女の子と小3の弟、そしてその二人を助けるバイク便ライダーの女性を中心に、彼らが家に帰り着くまでを描いたものです。

残念ながら、自衛隊は背景の一部として出てくるだけで活躍と言えるような活躍はしていません。
まあ、消防や海保も似たようなもの(消防なんてロボットが中心なってしまっている)なので文句は言えません。

個人的には、アニメとしてはかなり描き込まれている感のある建物等の倒壊シーンがリアルでいい感じです。
ただ、小さな子供も見ることを想定しての事だと理解していますが、「死」、特に死体の描き方はちょっと残念です。
遺体は、実際には正視に堪えない状態になっている場合が多いと思いますが、出血もない状態で顔に白い布をかけてあるだけだったり、並んでいるボディバックだったりしているので災害の悲惨さはいまいち表現されていません。

全体として災害派遣などに興味のある方にはオススメです。

レンタル店でも置いてあるところがあるようです。

以下、ネタバレ注意






********************
シミュレーションとして描いており、防災に関する啓蒙も意図にあると思われますが、一つ気になったシーンがあります。
それは、瓦礫に挟まれて動けなくなったロボットを危険を冒して助ける?シーンがあり、これを好意的に描いている所です。
作品中でも2次災害防止のためにロボットを使っているとして消防の方に怒られるシーンも出てくるくらいなので、それが如何に愚かな行為かはスタッフも分かっているはずなのですが、なんであんな描写をしたのか疑問です。

それと、中盤までは結構淡々とした話なので大丈夫なのですが、終盤はちょっと勘弁して欲しい展開で、見ているのが辛くなるところがあります。悲惨なシーンは耐えられますが、ああ言った悲しいシーンは見ていて凹みます。災害シミュレーションなので完全なハッピーエンドは難しいかもしれませんが、主人公の一人だった小3の弟が死んでしまう展開はちょっと……です。
死体の描き方で悲惨さを出せないからかもしれませんが、もうちょっとなんとかならなかったかなと思ってしまいました。

2010年5月29日 (土)

書評「レディイーグル」

「レディイーグル」は、コミックチャージ誌に2007年の第2号から2009年の3号まで掲載され、同誌廃刊のため書き下ろしを加えた全5巻が発売されている漫画です。


原作は、航空アクション物の著作がある鳴海章氏。作画は、ミリタリー物を書いた事もある千葉きよかず氏です。

内容としては、304飛行隊長になった女性イーグルドライバーを主軸に展開する航空アクション物です。

空幕広報室を始め、各地の自衛隊基地が協力しており、おそらく相当の写真提供を受けて作画されていると思われます。
そのため、基地内や官舎、隊内生活の描写は非常にリアルです。

フランカー的改造を施されたF-15改など秘密兵器も登場しますが、突拍子もないものは少なく、リアルなものを描こうという意志を感じます。

突っ込みどころは山ほどあるのですが、リアルに描こうという姿勢が見えるからこそ、気になってしまうのかもしれません。

空戦については、少しでも中距離戦を描こうとしている(逆に言えば格闘戦メインだということ)だけでも評価して良いように思います。
特に漫画では近距離戦になってしまうのは仕方ないでしょう。

と、ここまで褒めてきましたが、ストーリー全体として見るとあまり評価できません。
私自身人様の著作を評価できるような立場ではないのですが、そこを敢えて語らせてもらうと、いわゆる中だるみになっている作品で、序盤から中盤までがそれ以降の展開を期待させない作品と言えます。
ですので、面白いかと言われると……と言うところです。

しかし、後半については、兵器オタクを脱皮して防衛問題に興味を持っていると言える方には興味深い展開になっています。
昨今の中国軍の活動と領土的野心について、漫画という人の目に触れやすいメディアで描いている事は評価できます。

ネットで評価を探しても見つからないくらいですので、おそらく中古を探すことは困難だと思います。新刊でも軍事関係の書籍を積極的に置いている店でないと見つからないでしょう。(私も書泉で買いました)

以下、詳細を書きますのでネタバレあり、注意です。









クライマックスになっている尖閣を巡る軍事的衝突では空海戦力、特に時間的占有効果の得られる海の重要性が高いと思われますが、この作品でも同様に描かれてます。
主人公は制空戦闘機であるF-15のパイロットという設定ですが、クライマックスの作戦目的は日中双方とも対艦攻撃であり、主人公はそのミニストライクパッケージのエスコートファイターという脇役的役回りに徹している点は好感が持てます。
どうせ空対空しか描かないんだろうな、と思っていたのですが、良い意味で裏切られました。
(しかし、こう言う描き方をするならば、主役は艦艇乗りの方が良かったような気もします)

空幕の協力を得たことが弊害になったと思われる部分もありました。
作品中、どこに航空基地を置くかということが重要だということが描かれているのですが、下地という単語は一語も出てきません。
その代わり、宮古島と多良間島の間に、架空の島が存在し、そこに飛行場もあるという設定になっています。
この飛行場は民間航空の訓練飛行場として使われており、モデルはどう見ても下地島です。
下地島空港の軍事利用などについて発言した那覇基地司令を口頭とは言え空幕長が注意までした空自としては、協力している作品が下地島の軍事的利用を描くのはマズイと言うことで口を出したに違いありません。
参考:「航空幕僚長、司令呼び厳重注意 下地島空港発言

掲載誌が廃刊となり、事実上の途中打ち切りとなったため、最後が非常に慌ただしくなったのは残念でした。
中盤で描かれた訓練での米空母攻撃なんかは、本来のクライマックスが中国の空母攻撃だったと思わせられる布石の打ち方でしたが、話がそこまで行かず、クライマックスでの標的が駆逐艦になってました。

こう言う作品がもっと増えて欲しいと思うのですが、商業的に成功するためにはリアルさを犠牲にして、もっと突飛なものを描かないと難しいんでしょうね。
沈黙の艦隊とか

2010年6月12日 (土)

書評「Twelve Y.O.」

多分、このブログを読んで下さっている方ならば映画化作品を含めて、まず間違いなく見知っているだろう福井晴敏氏のデビュー作です。


「亡国のイージス」や「終戦のローレライ」といった福井氏の作品が面白いと思ったからこそ読んだのですが、本作は最後まで読むことがつらかった、というのが正直な感想です。

だったら、いちいち書評なんて書くなよ、と思われるかもしれませんが、今回取り上げたのは、沖縄からの海兵隊撤退という、今であればタイムリー?な内容が含まれているからです。

(以下、多少のネタバレあり。)

ただし、作中では海兵隊の撤退は米軍も海兵隊の撤退を望んでいる事になっていますが、普天間問題のおかげでアメリカはそれを望まないことがハッキリしてしまいました。
その意味で、ちょっと古い作品になってしまったと言えるかもしれません。

本作に限らず、福井氏の作品は、ものすご~く乱暴な言い方をすると、反米右翼的なテイストがありますので、同じような考えの方はシンパシーを感じられるかもしれません。

私の場合は、心情的には似たようなモノを感じないではないですが、この作品ほど明確だとちょっと受け付けません。
アメリカはそんなに悪意の塊だと思っていないので……独善ではありますが、必ずしも偽善ではないでしょうから。

ミリタリー的な描写という点では、日本人作家の中ではリアルに描こうとしている部類に入るでしょう。
ご本人はそれに拘っているわけではないようですが、何せ他の方の作品にトンデモなモノが多いので。

ただし、ネットワーク中心の戦いが盛んに言われている現在でも、コンピュータウイルスは描かれているほど万能ではありません。
「ナイナイ」と言う描写が結構多かったです。

この作品を読んで、改めて思ったことは、アメリカ海兵隊に対する日本人の認識が、この作品に描かれているようなモノ(海兵隊を無用とする考え方)だろうからこそ、今回の普天間問題迷走が生じたんだろうな、という点です。

その点で、この作品はもしかすると現在の政治情勢に悪い影響を与えた作品だったのかもしれません。

2010年7月 5日 (月)

映画評「ハーツ・アンド・マインズ」「ウィンター・ソルジャー」

「ハーツ・アンド・マインズ」と「ウィンター・ソルジャー」は、現在、東京都写真美術館で公開中の映画です。(7月16日(金)まで)
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Youtubeの予告編


共にベトナム戦争にまつわるドキュメンタリー映画で、一言で言えば、反戦映画です。
マイケル・ムーア監督が「ハーツ・アンド・マインズ」を評して、「これまで制作された最高の映画だ」と言っていることからも、方向性は覗えるでしょう。

「ハーツ・アンド・マインズ」については、テレビで放映されたこともあるようなので、見たことがある方もいるかもしれません。
劇場公開は初のようです。
DVDも出ていますが、新品は手に入らなそうです。アマゾンでは信じられないような価格で中古商品が出てます。


第47回アカデミー賞の最優秀長編ドキュメンタリー賞を受賞してます。
政策決定者側にいた人間にもインタビューを行っており、一見すると中立性を保っているようにも見えます。

しかし、米軍による残虐行為は描いても、北ベトナムによる残虐行為については一言も触れておらず、米軍が撤退することで結果としてベトナムの人々が共産主義によって苦しめられた事にも言及していません。
そう言う意味で、やはりいわゆる反戦映画です。

方向性がハッキリしているので、ベトナム戦争について、ある程度知っている方にはいいですが、ベトナム戦争についてこれを機会に勉強しようと思っている方にはオススメしません。偏向します。

それから、予告編で見られるようなロケット弾や機関砲による攻撃シーンは、実際には作品中の極めて一部でしかなく、私を含めてそう言った観点で見に行った人には拍子抜けする作品だと思います。(観客には、航空祭に来るようなマニアらしき人もいました)

こう言ったムーブメントもあって、アメリカはベトナムから撤退することになった、という事を知る意味では見る価値があると思います。

「ウィンター・ソルジャー」は、ほぼ全編が帰還兵による証言シーンであり、作品としての方向性は「ハーツ・アンド・マインズ」以上に明確です。

米軍による残虐行為を正当化するつもりはありませんが、彼らの証言を聞いていると、証言している彼ら自身に嫌悪感を抱きました。
何せ、残虐行為を現場で見て戦闘を拒否するなどした人は一人もおらず、現場ではそれらを行っていながら、帰還してからそれを非難しているのです。
彼らの内の幾人かは、軍によって洗脳されたと言ってますが、オウムの信者がテロを行いながら、あれは教団のせいだった、自分には罪は無いと言っているようなもので、罪を軍に擦り付けようとしているように見えて不快でした。
現場で拒否して軍法会議にかけられでもしたのなら立派だと思います。

「ウィンター・ソルジャー」の方は、ほぼ見る価値はないと思います。

なお、余談ながら「ウィンター・ソルジャー」の冒頭あたりに、白リン弾を毒ガスとしている部分がありました。(字幕で確認し、慌てて英語音声を聞き取りましたが、聞き取れず)
白リン弾の毒ガス扱いはファルージャからかと思っていたのですが、ベトナム当時にも似たような話があったようです。

東京でのロードショーは7月16日(金)までですが、その後各地で公開されるようです。各地でのスケジュールはそれぞれの映画館にお問い合わせ下さい。
札幌:蠍座
苫小牧:シネマトーラス
仙台:せんだいメディアテーク
松本:松本CINEMAセレクト
名古屋:名古屋シネマテーク
大阪:梅田ガーデンシネマ
京都:京都シネマ
神戸:神戸アートビレッジセンター
広島:サロンシネマ
福岡:西南学院大学内、西南コミュニティセンター・ホール
沖縄:桜坂劇場
それにしても、両作品見ると2800円は高いです!(2本立て扱いではないため)

2010年7月22日 (木)

書評「出撃!魔女飛行隊」

「出撃!魔女飛行隊」は、1982年に刊行されたブルース・マイルズの著作です。
「WWⅡソ連軍女性パイロットたちの群像」という副題のとおり、2次大戦時に実在したソ連軍の女性パイロットについて、インタビュー等を踏まえて書かれたものとなっています。


日本では、朝日ソノラマ社から刊行されていましたが、現在は昨年再刊された学研M文庫版が入手可能です。

興味深い内容が非常に読み易く書かれているため、一気に読めます。
女性パイロットに焦点を当てていますが、東部戦線での航空作戦の全般についても概要を理解するには悪くない本だと思います。
ただし、各章の内容が時間的に前後しているので、独ソ戦について、ある程度は知っている方が楽しめるでしょう。

梗概としては、有名な女性飛行家だったマリナ・ラスコヴァを中心とし、ほぼ女性だけによる航空部隊の訓練と編成に始まって、3つの飛行連隊(戦闘機連隊、爆撃機連隊、夜間爆撃機連隊)と通常の飛行連隊に配属されたリディア・リトヴァク他の独ソ戦終結までの活躍を描いたものとなります。

12機ものスコアを記録し、男性顔負けの活躍をした活躍をしたリディア・リトヴァクに目が行きがちですが、個人的な感想としては、原題でもある「Night Witches」と呼ばれたPo-2で戦った夜間爆撃機連隊が印象的です。

夜間爆撃機連隊が使用していたPo-2は、独ソ戦開始当時でも完全な旧式機でした。
木製布張りの複葉機という超低速機で弾幕の中に飛び込んで行くんですから、それはもう敵の機関銃座に銃剣突撃するようなもんです。
そのハンデを乗り越えるため、エンジンを切って滑空状態で降下爆撃を行うなんて、発想はできても、なまじな根性でできるとは思えません。
それを女性ばかりの部隊が実行していたなんて、にわかには信じがたいくらいです。

ですが、その戦術は、その後の朝鮮戦争でもベッドチェック・チャーリーとして米軍を苦しめたのですから、十分有効だったのでしょう。

その他にも一つ印象的だったのは、政治将校の役割についてです。
この本自体がソ連当局の協力の下に書かれているため、ソ連を悪く書くことはできなかったという点は考慮する必要がありますが、政治将校が今で言うカウンセラーのような役割を負い、メンタルヘルスにも配慮していたらしいというのはちょっと目からウロコでした。
何せ、政治将校と言えば、ほとんどキチガイのようなイメージしかありませんでしたから。

一方、女性の活用は、共産主義のイデオロギーとその宣伝に密接な関係があったと思われるのですが、この点について全く言及されていないのはちょっと残念でした。

内容には細部の間違いも結構多いようですが、私は気にするレベルではないと思います。
軍事については、航空雑誌は言うに及ばず、軍事研究誌だって誤情報が書いてあることは珍しくないくらいですから。

文庫ですし、買って損はないと思います。

2010年8月 7日 (土)

DVD評「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」

タイトルでお分かりになるとおり、前回書評で取り上げたソ連の女性飛行連隊に関するDVDです。


1981年制作のソ連製映画です。
制作経緯は分かりませんが、「出撃!魔女飛行隊」が1982年の刊行で、相当な以前から準備されていたようなので、ブルース・マイルズ氏の準備に協力したソ連政府が自らも映画制作を思い立ったというところではないでしょうか。

内容を一言で言えば、夜間爆撃機連隊の活躍を描いた作品ということになりますが、何とも形容しがたい作品です。
というのも、記録映画かと言えば、そこまで正確に描かれたモノではないので違うと言えますし、かといってストーリーのある作品でもありません。
しかし、敢えて断言しろと言われれば、夜間爆撃機連隊を叙情的に描いた記録映画としか言えないような気がします。
「叙情的な記録映画ってなんだ?」と言われそうですが、他にうまい形容の仕方が思いつきません。

Po-2の飛行シーンは何度も出てくるので、この機体について見たいという方には良いかもしれません。
ですが、1981年の作品であることを考えても、撮影技術はお世辞にも良いとは言い難く、もっと何とかならなかったのか?、と言いたくなります。
特に、特撮シーンは正直幻滅です。

記録映画風なので、女性兵士の生態?が見られるという点が、数少ない褒めるべき点かと思われます。

現在アマゾンにおいて、500円で購入可能です。
売れ残った結果でしょうが、これ位が適正価格でしょう。

2010年9月 9日 (木)

書評「天空のリリー」

書評・DVD評では類似ネタ3連発!
と言うことで、今回もソ連の女性飛行連隊がらみです。
ただし、何と所謂ラノベ、ライトノベルです。


本書は、「スターリングラードの白いバラ」と呼ばれ、恐らく最も有名な女性パイロットであるリディア(愛称リリー)・リトヴァクをモデルにしたフィクションです。
時間的には、実戦に出る前の訓練段階のお話なので、血なま臭いシーンはなく、全体としては訓練に明け暮れる少女たちの日常を描いた作品、というところでしょう。

ライトノベルなので、赤面するような萌え(燃えではない)シーンが随所に出てきますが、史実でも10代20代の人間が多かったようなので、案外ホントにこんなだったかもな、とも思わせられます。

深夜に厨房に忍び込んでお菓子を作るシーンなんかは、実際にあってもおかしくなかったようにも思えまました。
何せ、ソ連が制作した映画「対独爆撃部隊ナイトウィッチ」でも、信じられないほど大らかなシーンが随所にありましたから。

著者の千田誠行氏のブログにも書かれていますが、「出撃!魔女飛行隊」がネタ本の一つになっているようです。
和訳された資料は少ないでしょうから、まあ当然でしょうね。

類似ネタということで読んでみましたが、あまりミリタリー色は強くないので、萌え趣味がないと楽しめないでしょう。

そう言う点では、ライトノベルにはありがちの続編に期待と言うところでしょうか。
ただし、戦場に出た後のリディア・リトヴァクは、鬼気迫るところがありますし、戦友が多数死亡する上、最終的には彼女も戦死しているので、ライトなノベルにはならないような気が……

2011年5月30日 (月)

書評「迎撃せよ」

大規模停電を描いたクライシスノベルなど、スケールの大きなミステリーを多数書かれている福田和代氏による、ミリタリーサスペンスです。



書店で拍子につられて買ったのですが、スケールの大きな小説を書いているとは言え、特に軍事関係に詳しい訳ではない方が、自衛隊を正面から書くのはちょっと荷が重すぎたか……

私としては、こう言った小説が増えてくれることは喜ばしい事だと思っているのですが、如何せん、軍事は非常に深く広い知識がないと小説としてストーリーが破綻してしまいます。
それ故、書き手も少ない。

福田氏は、それに挑んでくれたのですが、やはりちょっと残念な結果になってしまったか、と言うのが正直な感想です。

と言うのも、ミステリー全般に言えることですが、読者は小説の先を予測しながら読みます。当然、その推理は論理的でなければならず、軍事物を描くのであれば、軍事的に正しく推論できるように書いてなければなりません。
ですが、パトリオット部隊や警戒管制部隊を直接取材をされたものの、簡単な誤謬が前半から散見され、「果たしてこの先、まともな展開をするのか?」という疑念が湧いてしまって楽しく読めませんでした。
そしてラストは案の定、テロリストの動機が「そんなのありえん!」という著者の勘違いをベースに書かれています。

と、先にマイナス点ばかり書きましたが、軍事物というと、前線の一兵卒がスーパーマン的な活躍をするアクション小説か、主人公が誰だか良く分からないような群像劇が多い中、多くの情報が集まる指揮統制機能の中の人間を、その人間に焦点を当てて描いており、リアリティあるミリタリー物の「小説」を書こうとしているところは評価したいと思います。

返す返す残念なのは、軍事面の知識の不足からくる勘違いをベースに書かれていることで、取材の際に、ある程度プロットを話して確認を取れば良かったのに……と思えます。
もっとも、小説としてまとめる前にプロットを人に話すというのは、新作マジックのネタを公開前に明かすようなものなので、作家として難しいのは良く分かりますが……

アマゾンのレビューも、あまり芳しくありませんが、著者がこれに懲りず、また軍事物を書いてくれることを期待してます。

2011年6月 2日 (木)

書評「悪魔が舞い降りる夜」

時事ネタが少ないので、今回も書評です。

私からは先輩と言うべき、元自衛官、福原廉太郎氏の手によるミリタリーサスペンス。



副題が「北朝鮮特殊部隊 日本潜入」と題されており、帯には「原発に襲いかかる潜入特殊部隊。停止する通信機能。寸断される交通網。ライフライン壊滅に瀕し、炎上する東京-。警察力では対処不能の危機に、遂に自衛隊に出動命令が発せられた!!衝撃の同時多発シミュレーション!」とあります。

コレは、精緻なシミュレーションかもしれない、と思って読んだのですが、実際のところは……

ジャンルで言えばミリタリーサスペンスなんですが、テイストはハードボイルドです。
ハードボイルドを悪く言うつもりはありませんが、敵がヤクザならリアリティがあるものの、本書のように北朝鮮の工作員や特殊部隊相手にハードボイルドしてしまうのは、どう見ても現実離れしています。

主人公については、イージス艦の艦長もやった1等海佐(当然それなりに年です)なのですが、SEALSで実戦も経験した(研修や訓練を行う事はあっても、実戦はあり得ない)という、ちょっと無理な設定です。

著者は、防大卒業で護衛艦での海上勤務や海幕での幕僚経験もある方です。
ハードボイルドにせずとも海洋冒険小説の方が書きやすいと思うのですが、なぜか公安のような捜査と特殊部隊との銃撃戦を描いたようです。

折角読んだので書評として書きましたが、正直オススメできる本ではありませんでした。(人の事なんて書ける立場じゃありませんが……)

アマゾン

  • 北方領土秘録 外交という名の戦場
  • 深淵の覇者 新鋭潜水艦こくりゅう「尖閣」出撃 (文庫)
  • 半島へ 陸自山岳連隊
  • 黎明の笛 陸自特殊部隊「竹島」奪還 (文庫)
  • 深淵の覇者
  • 黎明の笛
  • 空飛ぶ広報室 DVD-BOX

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