野田内閣の改造人事で、防衛相は森本敏氏となりました。
全くの素人を2人続けた(一川、田中)民主党政権なので、期待はしてませんでしたが、今回は専門家と言える人選で、ちょっと驚きでした。
消費税増税のために、自民の支持を取付けことが目的だなどと言われていますが、防衛の観点からすれば、良い事には違いありません。
この人事について、何点か懸念が伝えられていますので、今回はこの事について書いてみます。
懸念①:文民統制の点で問題
元自衛官なので問題視されているのかと思いきや、「民間人」だからという報道が多いです。
……理解不能です。
元自衛官だから、というのなら、問題だとは思いませんが、問題視する理屈としては理解できなくもないのですが……
懸念②:議員でない(選挙で選ばれていない)
この点については、民主党内からも自民からも批判が出ています。
まず鳩山氏
「鳩山氏、森本防衛相人事に疑問 「選挙の洗礼なくていいのか」」(産経新聞12年6月5日)
続いて石破氏
「野田、やっぱり人事オンチ!防衛相本命は五百旗頭氏だった」(zakzak12年6月5日)
石破茂元防衛相も「どんなに優秀であろうと、軍事的な出来事に責任を負えるのは選挙の洗礼を受けた政治家だけ。禁じ手だ」と批判している。
最高司令官たる内閣総理大臣だって、大抵は、どっかの田舎(地方の方失礼! 言葉のアヤです)の一部の支持があるだけです。
こんな論が通るなら、首相は直接選挙じゃなければダメです。
懸念③:森本氏の持論
森本氏の持論については、今後問題になりそうな点が2点あります。
・集団的自衛権の行使と改憲の必要性
森本大臣は、集団的自衛権の行使を認めるべきとの主張をしてきました。また改憲論者でもあります。
この点については、閣内不一致だとの批判を受けることを認識してか、早くも手を付けないことを宣言してしまいました。
「集団的自衛権 従来からの政府方針に変更ない」(サーチナ12年6月5日)
森本敏防衛大臣は集団的自衛権についての考えについて、学者としてでなく、閣僚の立場から「我が国政府が従来から集団的自衛権を有権解釈として認めていないことは十二分に理解している。私の任期中、大臣として、この問題について(政府の集団的自衛権の考え方を)変更する考えは毛頭ない」と、これまでの政府解釈を維持する考えを明言した。
拓殖大学大学院教授としては、これまで集団的自衛権について、その行使を容認する側の学者としても知られてきた。そのことについて、森本防衛大臣は「学者とか、研究者というのは自由な発想で、自由に物を考えている。集団的自衛権についても一研究者、一学者として個人の考え方があったことは確かで、それは認める」と語ったうえで「(閣僚としての視点では)野田政権の方針の下で大臣としての職務をまっとうする」と述べた。
こう言った問題に手を付けないのであれば、大臣になった意味がないでしょうに……
・海兵隊の沖縄駐留の必要性を否定
「森本防衛相の横顔:海兵隊抑止力に異論も」(沖縄タイムス12年6月5日)
在沖米海兵隊について沖縄に駐留する必然性を否定。10年に沖縄タイムス社が主催した日米同盟を考えるシンポジウムでは、「(海兵隊が)沖縄にいなければ抑止力を発揮しないという論理は破綻している」と述べた。
これに関しては、早速釈明しています。
「森本防衛相、辺野古移設を推進」(沖縄タイムス12年6月5日)
当時の発言と現在の認識の整合性を問われ「司令部、飛行部隊、戦闘部隊、後方部隊のすべてがそろっていれば、例えば鹿児島では抑止力にならないという軍事的合理性は持たない。だが(シンポジウムでは)仮定として(海兵隊すべてを)地元が受け入れ、訓練、戦略的要地として十分な場所があれば、沖縄でなくてもいいと言った」と釈明。「現実の政治環境で(辺野古が)日米両政府が到達した結論だ」と強調した。
最後に、報道ではあまり問題視されてはいないながら、私が懸念する点を上げておきます。
私的懸念①:玄人であること
確かな知識に裏打ちされた持論を持っている方なので、部下である内局や制服自衛官の意見に耳を傾けることができるのか?
部下を論破してしまわないか、ちょっと心配です。
私的懸念②:耐えられるか
これも持論を持っていることと関連してきますが、大臣となると、前掲の集団的自衛権や海兵隊の必要性等、自分の考えと違うことを、さもそのように考えているかのように言わなければならなくなります。
どんな中間管理職でも同じですが、大臣ともなれば、そのプレッシャーは相当なものでしょう。
航空自衛隊での指揮官職や外務省での宮仕えで、そのつらさは分かってらっしゃるとは思いますが、評論家・研究者として長い間”自由”にモノを言ってきたことを思うと、果たして耐えられるのかな、という疑問は持ってしまいます。
さて、いろいろと懸念ばかり書きましたが、基本的には応援すればこその懸念です。
日本の防衛のために、ぜひ尽力して欲しいと思います。
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