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国際情勢

2012年1月27日 (金)

ホルムズ海峡危機_米軍の軍事目標は革命防衛隊

経済制裁に端を発したホルムズ海峡危機ですが、制裁に対するイランの反発は、当然予想された結果です。
イランがホルムズ海峡封鎖に言及することも、アメリカは当然織り込み済みです。
イランもアメリカも、実際にドンパチやることは望んでいないでしょうが、アメリカは経済制裁を実施することを決めた段階で、もしアフマディネジャドが暴走した際の対応策は検討しているはずです。

と言う訳で、イランが海峡封鎖に打って出た場合、アメリカ(軍)が「何を目的」として、「何を目標」にするかを考えてみました。
以下、面倒なので確定的に表現しますが、基本的に推論です。

結論から書きますと、アメリカ軍の目標は、イスラム革命防衛隊です。

イランの軍隊は、正規軍たるイラン・イスラム共和国軍(以下正規軍)とイスラム革命防衛隊(以下革命防衛隊)の二つです。
共に、陸海空の3軍をかかえる、少々へんちくりんな編制です。
詳細は、wikiでも見て下さい。

革命防衛隊は、治安維持も実施しており、ロシアの内務省軍的な性格もありますが、治安維持だけが任務ではなく、イラン・イラク戦争でも、正規軍と肩を並べて戦っています。

以下、彼等がアメリカ軍の目標となる理由を書いてみます。
・中国製地対艦ミサイルを保有する沿岸ミサイル部隊など、実際に海峡封鎖を行う能力は、正規軍の海軍よりも革命防衛隊海軍の方が高い。
・海峡封鎖の他に、アメリカが警戒するイランのオプションは、弾道ミサイル攻撃ですが、シャハブシリーズを運用する弾道ミサイル部隊は、革命防衛隊の所属。
・民兵部隊バスィージを統括しており、アフマディネジャド大統領の支持基盤。

軍事的な要素としては、前の2つの影響が強いと思いますが、もっとも重要なのは、最後に上げた大統領の支持基盤となっているという点です。

イランの大統領は、国家元首ではなく、法的には決して強い権限を持っていません。
アフマディネジャドは、強行的な対米批判を行う大衆主義で人気を集め、その支持基盤としてきました。
その集票装置が革命防衛隊です。
ですが、近年の孤立化により、国民の人気は下がっています。

一方、この経済制裁で、イランの経済と国民生活は、窮乏しています。
欧米が原油の禁輸を課したことは、代りに中国が購入するでしょうから、それほど強い影響を与えるとは、私は思いません。
ですが、既にイラン通貨リヤルは20%以上の下落が起きています。
イラン市民、外貨に殺到 制裁への不安反映、自国通貨売り加速」(産経新聞12年1月21日)

これにより、深刻な影響を受けるのは、おそらくガソリンでしょう。
意外かもしれませんが、イランは世界有数の産油国でありながら、ガソリンなど石油製品は、かなりの量(30~40%)を輸入に頼っています。
ブラック・ユーモア?産油国イランのガソリン不足
しかも、国内ガソリン価格を安価に維持するため、多額の補助金がかけられています。
リヤルが下落したこと、及び銀行決済を凍結させるなどの制裁により、このガソリン輸入が困難になります。

これにより、ただでさえ低下気味のアフマディネジャド人気は、さらに下がります。

この状態でホルムズ海峡危機が顕在化し、米軍がアフマディネジャドの支持基盤である革命防衛隊を叩けば、イラン国民が離反する可能性は高いと思われます。
そして、それ以上に、最高指導者であるハメネイが、アフマディネジャドを切り捨てる可能性もあるでしょう。

米軍の、「目標は革命防衛隊」、「目的はアフマディネジャドの追い落とし」ではないでしょうか。

2012年2月 6日 (月)

愚かなパネッタ国防長官_イラン攻撃を予見は真珠湾を予告するようなもの

アメリカのパネッタ国防長官が、イスラエルによるイラン攻撃を予見しているとの報道が流れています。
「イスラエル、春にイラン攻撃」 米長官が想定との報道」(朝日新聞12年2月3日)
米国防長官、イスラエルがイラン攻撃する可能性高まる=報道」(ロイター12年2月3日)

恐らく、オフレコ懇談か何かで口を滑らせたのか記事ソースなのでしょう。(完全なデマの可能性もありますが)

だとしたら、愚かな話です。

イスラエルがイラン攻撃に踏み切れば、イスラエルが意図するイランによる核兵器保有の阻止に成功するか否かを問わず、中東情勢は極めて混乱した状況になることは間違いありません。

イランは、間違いなく弾道ミサイルによる報復に出るでしょうし、対するイスラエルによる再反撃は、イスラエルが極秘に保有すると噂される核を用いない限り、決定的な打撃力を持ち得ません。

イスラエル得意の空軍力による攻撃は、イスラエルの攻撃を容認できない国々(トルコ、イラン、サウジ等)の領域を経路にしなければならず、1回切りの奇襲ならばともかく、その後の大規模な航空活動は大幅に制限を受けます。
当然陸軍力で攻める訳にはいきません。
イスラエルの海軍力は、質はともかく、量では貧弱です。

アメリカがイスラエルに肩入れしない限り、イスラエルが直接たたけるのは、イランの傀儡軍事勢力と言えるレバノンのヒズボラくらいで、独力でイランの意志を完全に挫くことは困難です。
しかし、イスラエルが先に手を出したとなれば、周辺アラブ諸国の反応も考慮して、アメリカがイスラエルに関与することは困難です。

アメリカもイスラエルも、その事は理解しているからこそ、今イランに経済制裁を主力とした圧力をかけ、核開発を諦めさせるか、イランが暴発することを待っている状態でしょう。(イランが暴発してホルムズ海峡の封鎖に出れば、アメリカは大手を振ってイランを叩けます)
まさに、太平洋戦争の勃発前夜、日本を追い詰めた時のように。

しかし、これを口にしてしまってはいけません。パネッタ長官は、当該報道に関してはノーコメントを貫いているようですが、そもそも報道機関に書かれる事自体が、下手を打ったというものです。

オバマ大統領は、慌ててイスラエルによる攻撃が決まったとは思わない、などと前記報道を否定する発言を行っています
今頃、田中防衛相が野田首相に失言を怒られているように、パネッタ長官は、オバマ大統領に怒られているのではないでしょうか。

2012年2月12日 (日)

シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃

シリア情勢が、いよいよ首都にも及ぶ気配が出てきました。
ダマスカスで軍将官殺害、騒乱が首都にも飛び火か シリア」(CNN12年2月12日)

これにより、イスラエルによるイラン攻撃の可能性が高まってきます。

近隣諸国の情勢とは言え、一見余り関係のないシリア情勢とイスラエルによるイラン攻撃ですが、軍事的には、両者には深い関係があります。

先日の記事「愚かなパネッタ国防長官_イラン攻撃を予見は真珠湾を予告するようなもの」で指摘したとおり、イスラエル空軍機によるイラン攻撃は、イスラエル機の領空通過を許可しない周辺諸国によって阻害されます。
一回だけの奇襲なら可能かもしれませんが、イランが行おうとするシャハブ等の弾道ミサイルによる反撃を、イスラエルがシャハブハントを行う事で防ぐことは出来ません。

アラブやイスラム諸国など、イスラエルの領空通過を、当然に許可しないだろう国を、表示してみます。
(イスラエルを青、領空通過を許可しないだろう国を赤、目標であるイランを緑で表示)
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一見して分かるとおり、イスラエルには攻撃経路がないのです。

ですが、ここには一つの盲点と、シリア情勢という不確定要素があります。

シリア情勢が混沌化し、軍の統制が取れないような事態に陥ると、シリア軍がイスラエル空軍機による領空侵犯を阻止できなくなる可能性があります。

そして、もう一カ国、阻止しようにも、する能力がない国として、イラクがあります。
イラクの対航空戦力は、イラク戦争によって徹底的に破壊され、未だ再建できていません。
空軍は戦闘機を保有していませんし、陸軍は高高度の航空機を攻撃できる高性能SAMを保有していません。イスラエルが領空侵犯しようにも、指を咥えて見ているしかできないのです。

前掲の地図から、両国を除くとこうなります。
Ws000011

イスラエル北部からゴラン高原を経由して、見事に、イラン全域への攻撃経路が確保されたことになります。

イスラエル国防省にとって、このシリア情勢が、またとないチャンスに見えていることは間違いありません。
シリアが混乱したとしても、それが永続することはないでしょうし、イラク空軍もF-16を導入する見込みです。F-16の引き渡し時期について、最近の情報がないのですが、今年中に引き渡されるとの情報もあります。
米軍も、撤退してしまっている以上、手出しはできません。(それ以前に、国内政治的に手出しできないでしょうけど)

先日のパネッタ長官発言は、これらの要素を踏まえて、春には攻撃があると分析しているものと推察されます。
シリアが混乱し次第、イラクにF-16が引き渡される前、ということです。

イランによる核開発の進展や、IAEA等を通じた政治的圧力による時期予測もありますが、軍が動く事態である以上、軍事的な要素は最重要です。

2012年2月25日 (土)

ニューヨークタイムズは、シリアを迂回と予測

先日の記事「シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃」で、イスラエルはイランへの攻撃ルートとして、シリア、イラク経由ルートを狙っているのでは、と書きましたが、ニューヨークタイムズは、シリア迂回ルートを予測しているようです。

Iran Raid Seen as a Huge Task for Israeli Jets」(ニューヨークタイムズ12年2月19日)
ニューヨークタイムズが予想する飛行経路(前掲記事より)
20strikemappopup
注釈として「Any Israeli attack on Iran would involve crossing another country's airspace.」と書かれており、イスラエル機による攻撃が、第3国の領空を通過する必要があることを指摘しています。

記事でも、最初の問題が、ルートであると書かれています。

military analysts say the first problem is how to get there. There are three potential routes: to the north over Turkey, to the south over Saudi Arabia or taking a central route across Jordan and Iraq.


ルートの分析の中で、ニューヨークタイムズも、私が前掲記事で指摘したように、イラクを経由するルートが有望であると指摘しています。
イラクは、イスラエル機を阻害する能力を持っていませんし、撤退を完了した米軍も、もはやイラクの領空を守る義務もないからです。

The route over Iraq would be the most direct and likely, defense analysts say, because Iraq effectively has no air defenses and the United States, after its December withdrawal, no longer has the obligation to defend Iraqi skies. “That was a concern of the Israelis a year ago, that we would come up and intercept their aircraft if the Israelis chose to take a path across Iraq,” said a former defense official who asked for anonymity to discuss secret intelligence.


しかし、ニューヨークタイムズは、イラクに至る有効なルートとして、シリアを通過するルートが選択される可能性については言及していません。
シリアは、イスラエルの周辺諸国の中でも、仇敵と言える間柄ですし、装備が旧式のモノが多いとは言え、相当の防空能力を持っているからでしょう。
シリアの防空能力については、アシナガバチ様が、次のブログ記事で紹介しているので、そちらをご覧下さい。
シリア動乱とイラン攻撃の可能性に思うこと」(アシナガバチの巣作り日記12年2月12日)

ニューヨークタイムズは、ヨルダン、トルコ、あるいはサウジが、イスラエル機の領空通過を許可する可能性があると見ているようです。
しかし、イスラエルの周辺国家の中では、比較的温和な国とは言え、これらの国がイスラエル機の通過を許容するとは、到底思えません。
トルコは、ガザへの支援船の問題以降、イスラエルとはかなり険悪ですし、ヨルダンやサウジは、イスラエル機の通過を許したりしたら、共に王制が吹っ飛びかねません。

イスラエルが、これらの国の中で特に防空能力の低いヨルダン領空の強行突破を企図したとしても、如何に能力の高いイスラエル空軍とは言っても、無理があるように思います。
イスラエル-イラン間の距離が遠いため、空中給油機までも、イラク領内まで突破させないと、イラン攻撃は成功したものの、燃料切れで墜落、という結果になりかねないからです。

ここでは触れませんが、ニューヨークタイムズの記事は、この他地中に防護された核施設をイスラエルが保有する武器で破壊できるのか、と言った問題も取り上げています。
興味のある方は、元記事を見て下さい。

実際にイラン攻撃が実施されたとしたら、世界の一大事ですから、滅多な事は不謹慎で言えないのですが、私か、ニューヨークタイムズか、どちらが当たるか、純粋に知的ゲームとして、興味は尽きません。

2012年6月22日 (金)

イスラエルによるイラン空爆が秒読みに

野口雅昭氏が書いているブログ「中東の窓」の最近の記事を見ていると、いよいよイスラエルによるイラン空爆が秒読みに入ったか?
と思われる記事が続いています。

ヨルダンに亡命するシリア軍機が出たようです。
シリア航空機のヨルダン亡命?
朝日も報じました。
シリア兵、ミグ戦闘機でヨルダンへ逃亡 通信社報道」(朝日新聞12年6月21日)
続報「シリア情勢(21日)

政府軍はアラウィ派多数地域を固め、戦線を縮小しようとしているようです。
シリア情勢(イスラエル紙の分析)

反政府軍は、周辺諸国からの支援を受けているようですし、CIAとアメリカ特殊部隊がバックアップをしているとも伝えられています。(ただし、対空ミサイルや重火器は供与されていないもよう)
シリア反政府に対する武器供与とCIAの関与

シリア政府軍の統制が崩壊すれば、このチャンスをイスラエルが逃すとは思えません。

以前の記事「シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃」で書いた通り、イスラエルから、シリア、イラクを経由したイランへの防空能力空白地帯が発生するからです。

中東情勢に目が離せなくなってきました。

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2012年7月 2日 (月)

イランによる原潜建艦の可能性と真意

イランが原潜の建造着手を表明しました。
原潜設計に着手か イラン海軍が表明」(産経新聞12年6月13日)

これについては、論点が二つ存在します。
①本当に作れるのか?
 (兵器として実用レベルのものが作れるのか?)
②本当に作るつもりなのか?
 (狙いは別にあり、偽装なのではないか?)

まず、原潜が作れるのかという点ですが、世界最初の原子力潜水艦「ノーチラス」が、1954年の竣工だったこと、世界最初の原発の運転開始が同年だったこと、及び既にイランのブシェール原発が商用運転していることを考えれば、原発と原潜用の炉がかなり異なることを考慮に入れても、技術的な下地はあるものと思われます。
(潜水艦の建艦技術についても、既に小型のものは実績あり)

ただし、単純に建造年で考えれば、イランの原潜建造技術は、「ノーチラス」レベルとも考えられる訳です。
しかも、ブシェールは、ロシアによるバックアップがあってこそな事を考えれば、「ノーチラス」以下かもしれません。

となると、これが実用に耐えるかと言われれば、答えはNOでしょう。
例え、航行できたとしても、恐らく静粛性に問題がありすぎ、姿を隠してこその潜水艦でありながら、当面は”どこにいても存在が分かる”というレベルのものにしかならないと思われます。

イランが、原潜を持ちたがる軍事的な意義としては、MDによって無力化されかねない地上発射式の弾道ミサイルに代り、戦略ミサイル原潜を持つことで、MDを回避できる核戦力を持ちたいのでしょう。

ですが、「ノーチラス」レベルあるいは、それ以下であれば、出航時から米攻撃原潜に貼り付かれ(しかもそれに気が付かないまま)、
弾道ミサイルを発射するそぶりを見せた時点で沈められてお終いでしょう。

ですから、「本当に作れるのか?」という疑問に対しては、少なくとも実用レベルのものは無理という結論になるでしょう。
中国が、練習用空母を持つことと同様に、練習用原潜のつもりかもしれませんが……

で、作れるのかという論点に対して、答えが”無理”であるのならば、なおのこと第2の論点「本当に作るつもりなのか?」のかが問題になってきます。

これに関しては、同記事を報じたロイターの記事が、良い記事を書いてます。
イラン海軍が原潜建造計画を表明、核協議に影響も」(ロイター12年6月13日)

外交問題のシンクタンク、カーネギー国際平和財団の核専門家マーク・ヒッブス氏は、多くの原子力潜水艦が燃料として、核爆弾を製造できるレベルの濃縮ウランを使用していると指摘。より濃縮度の高いウラン製造を正当化するために、イランが原子力潜水艦の建造計画を利用する可能性があると語った。


原潜建艦は偽装であり、本意は原爆の製造にあるのではないか、と言うのです。

原発に使用される核燃料のウランは、濃縮度わずか数%です。
対して、原爆を製造するためには90%以上の濃縮度が必要とされます。

このため、ナタンツの核施設が、高濃度のウラン濃縮を行なおうとしているなら、目的は原爆製造にあるとされる訳です。

ところが、同じ原子炉とは言え、一部の潜水艦や原子力空母に使用されるウラン燃料は、原爆と変らないレベルの90%以上の濃縮度であると言われています。
これは、原発と異なり、潜水艦等では、核燃料の交換が非常に困難だからであり、当初から高濃縮の燃料を搭載しておけば、船の寿命が来るまで、核燃料の交換を必要とならないからです。

イランとすれば、「原潜を造るために高濃縮ウランが必要なのであって、原爆を作るつもりじゃないよ」、という訳です。
ですから、「核技術を平和的に利用する権利がある
」などと言うのです。(原潜が平和的なものなのかは、大いに疑問ですが……)

イランの真意を証明する証拠はありません。
ですが、イランの技術力を鑑みて、遠い将来を見越した訓練用原潜を気長に作るのでなければ、原爆製造のための偽装として、原潜を造ると宣言した可能性が高そうです。

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2012年8月28日 (火)

空中回廊形成でイラン空爆ルート

シリア情勢の進展で、シリア正規軍が崩壊しなくても、イスラエルによるイラン空爆ルートができる可能性が出てきました。

以前の記事「シリア情勢混沌化で高まるイスラエルによるイラン攻撃」でイスラエルによるイラン空爆が行われるとしたら、ルートは、ゴラン高原を越えて、シリア-イラク経由になると書きました。
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その際の条件としては、シリア正規軍の防空指揮系統が崩壊する必要があったのですが、全域の指揮系統が崩壊する程の事態にならなくても、シリア北部にルートができる可能性が出てきました。
Ws000012

その理由は、自由シリア軍が対空戦力を向上させ、シリア正規軍空軍機が自由に行動できないエリアが形成されそうになっていることです。
自由シリア軍の戦闘力が向上。対空兵器を手に入れた場合、「安全地帯」が生まれる可能性も」(アル・ハヤト12年8月13日)

自由シリア軍は、依然として政府軍による上空の支配に影響を及ぼす有力な対空兵器を必要としている。革命勢力が、特に米国製のスティンガーミサイルのような肩から発射する携行式の対空ミサイルを手に入れれば、戦闘力のバランスを一気に覆して有利な戦闘を行うようになるだろう。

観測筋によれば、欧米諸国は、テロ組織に手に渡ることを恐れ、最新兵器のスティンガー・ミサイルを自由シリア軍に提供することにかなり躊躇しているという。このことから、SAM7やSAM14といったロシア製のミサイルを革命勢力に横流しされる可能性もある。なお革命勢力は、そもそもシリア政府軍の兵器庫に保管されていたこうしたミサイルを保有し、使用してきた。


実際に、MiG-21やヘリが撃墜されたとの報道もあります。
シリア:反体制派が戦闘機を撃墜したと主張」(アル・ハヤト12年8月14日)
「軍ヘリを撃墜」=シリア首都で空爆中-反体制派」(時事通信12年8月27日)

前掲アル・ハヤト紙にあるとおり、自由シリア軍は、北部と東部で支配地域を広げています。

アサド政権は、特に東部と北部において広範囲に亘る地域や国境管理所の支配権を失うこととなった。


先日、ジャーナリストの山本美香氏が亡くなったのも、北部の要衝アレッポです。
シリア北部は、隣接するトルコが自由シリア軍を支援していると伝えられ、自由シリア軍が活発に活動しています。
もし、アレッポを自由シリア軍が完全に支配し、何らかの防空火器も装備するようになれば、シリア北部でのシリア空軍の活動は、制限されたものになる可能性があります。

また、イスラエルがシリア北部を通り易い理由が、もう一つあります。
本年6月22日に、トルコのRF-4がシリアによって撃墜されるという事案が発生しています。(シリアは領空侵犯を主張、トルコは公海上を主張)
これがトルコをして自由シリア軍を援助させる理由の一つともなっているため、シリア(特に防空軍)とすれば、トルコ軍機の可能性のある航跡に対して、攻撃行動を行う事を躊躇せざるを得ない状況になっているのです。

こうなると、イスラエルは、シリア北部を奇襲的に空中回廊として使える可能性が出てきます。
そして、冒頭に上げた過去記事に書いたとおり、イラクは防空戦力が皆無ですから、イスラエルから、地中海を通り、シリア北部-イラクと、イランに至るルートが出来上がることになります。
Ws000012_2

自由シリア軍が、SA-7等のMANPADSを入手したとしても、SAM圏が形成されるのは低空域だけですから、シリア空軍の活動が完全に阻害される訳ではありませんが、活動が制限されることは間違いありません。
イスラエルも、相当に痺れが来ていますから、これに付け込む可能性は否定できないでしょう。

イスラエルも、相当にやばいことをやる国ですから、もしかすると、トルコの国籍標章を付けて飛ぶ、なんて言う小説顔負けのことをやるかもしれません。

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2012年12月20日 (木)

アサド政権崩壊とスカッドミサイル

いよいよシリアのアサド政権崩壊が間近になってきました。
先週、この予兆が政治・軍事両面で観測されています。

政治的には、長くシリア政権の後ろ盾だったロシアの政府高官が、「反体制派の勝利も排除できない。残念ながら、事実を直視せねばならない」と述べたことが伝えられています。
露外務次官「シリア反体制派勝利も」 政策の変更は否定」(産経新聞12年12月14日)

情勢がこのまま進展すれば、シリアの新政府が反ロシアとなることが確実でしょうから、ロシアとすれば、反体制派への接近を始めたいという意志表示なのでしょう。

また、ロシアは自国民の避難も開始したようです。
長らくアサド政権の後ろ盾だったロシア人は、政権が崩壊すれば、危険な立場に立たされることは間違いありませんから、当然の措置でしょうね。

一方で、軍事的には、もはや最後の悪あがきとでも言うべき行動に出ています。
シリア軍、スカッドミサイル攻撃開始か 投入兵器拡大の兆候」(CNN12年12月13日)

スカッドミサイルには、クラスターや燃料気化弾頭もあるとされていますが、それでも弾頭重量は爆弾1個程度であり、核や化学を使用しない限り、ミサイル1発の威力は、純粋に軍事的には微々たるものです。
それさえも投入しなければならない、あるいは各地の空港が反体制派によって攻撃され、空爆さえも困難になって来ているという証左でしょう。

また、これによってシリア政府は悪循環も引き起こしています。
NATOが、スカッドの流れ弾を警戒して、パトリオットのトルコ配備を始めたからです。
(前掲CNNのリンク参照)

トルコが、国境付近にパトリオットを配備すれば、シリアの北部地域はパトリオットの射程にカバーされます。
NATOがシリア上空の航空機を攻撃する可能性は低いですが、シリア空軍のパイロットは、撃たれないとは思いつつも、常に銃口を向けられたような気持ちで北部地域の空爆を行なわなければならないからです。

シリア政府軍が、北部地域の空爆ができなくなれば、反体制派は更に地盤を確かなモノにして行きます。

いよいよアサド政権崩壊の日も近づいて来ました。

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2013年4月 6日 (土)

クルドに関する2つのトピック

いささか深読みのしすぎだとは思いますが、動きの激しい中東情勢で、注目の動きがありました。

一つは、クルディスタン労働者等(PKK)のオジャラン元党首が、武装闘争の放棄を宣言したこと。
クルド指導者が武装闘争放棄宣言 トルコ政府との30年ぶりの抗争終結に期待」(産経新聞13年3月21日)

もう一つは、トルコからガザに向かっていた支援船をイスラエルが襲撃したことに対して、イスラエルのネタニヤフ首相がトルコに謝罪し、事件以後冷え切っていた両国関係に関係改善の動きがあることです。
史上初!イスラエル、トルコに謝罪―マーヴィーマルマラ号事件」(Hurriyet 13年3月22日)

この2つの事件は、必ずしも関連していないのでしょうが、関連性を考えるとしたら、2つの可能性が考えられます。

一つは、シリア情勢に関連してトルコ・イスラエルが連携して関与しようとする動きがある可能性です。
これに関しては、上記二つの事件に例え関連が無かったとしても、今後のシリア情勢に関しては、両者の連携が強まるであろう事は間違いないと思います。

そして、もう一つは、イラン情勢に関して、両者で連携した動きがある可能性です。
ほとんど陰謀論の世界になりますが、イスラエルによるイラン空爆にトルコが領空を開放し、イラン北部にクルドの独立国樹立をさせる。
トルコは、それによって領内のクルド人がイラン側に移住することを期待する、なんていう可能性です。
トルコは、獄中のオジャランに対して、イラン北部を独立国として認め、そのその支援を行なうかわりに、トルコとの武装闘争を止めさせた、なんて言う可能性が、考えられなくもありません。
(その上で、領内のクルド人の新独立国への流出を促す)

本当にそんな裏がある可能性は、万に一つくらいでしょうが、小説のネタとしては面白そうです。

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2014年12月20日 (土)

ルーブル危機に対処するプーチンの軍事的オプション

ルーブル危機が、プーチン政権にとって致命的なものになりかねない状況のようです。
焦点:ルーブル危機、「プーチン帝国」崩壊への序曲か」(ロイター20141217)

同じような記事は、あちこちに山程あります。
なので、全部をチェックした訳ではありませんが、私が見た限りでは、全て経済記事です。

が、ウクライナ危機に端を発したとも言われる今回のルーブル危機に、KGB出身のプーチン大統領が、経済的なオプションしか考慮していないということはないでしょう。

ルーブル危機は、経済的にはいろいろな要素が絡んでいますが、最も大きな要素は原油価格の下落です。
逆に考えれば、原油価格の上昇は、ルーブル危機を改善する効果があります。

では、どうすれば原油価格が上昇するのか?

需要を増やすか、供給を絞るかになる訳ですが、一般的に軍事的オプションで需給に影響を与えやすいのは、供給を絞る方です。

具体的には、紛争を起こして原油の供給不安を起こさせれば良いということです。

しかし、実際問題として考えると、事はそう簡単ではありません。

10年前なら、もう既に行動を起こしているかもしれませんが、ウクライナ危機でもそうであったとおり、世界中にモバイル機器とインターネットが広がった結果、世界中に監視カメラが、それも動き回る監視カメラが設置されたようなものです。

このような環境で、間接にせよ、秘密工作を行って紛争を発生させ、原油の供給不安を起こさせれば、ウクライナ危機に対する以上の制裁が行われることは間違いなく、ルーブル危機は、かえって悪化しかねません。
そして、それ以上に、ロシア軍による直接の軍事行動などは愚の骨頂です。

つまり、プーチン大統領が、軍事的オプションをもってルーブル危機を脱しようとするなら、絶対にバレない方法をとるしかないということになります。

また、需要を増やす方法も、ないこともありません。
他の石油・ガス以外のエネルギーを絞れば、自ずと石油・ガスの需要は高まります。

と言う訳で、この手の話を描く作家の一人として、実行可能性の大小はおいておくとして、ルーブル危機を脱するために、効果的なシナリオを考えてみました。

ネタ(プラン)としては、いくつも考えられますが、一つだけ例示してみます。

イランにあるブシェーフル原発で暴走事故を発生させることは、なかなか面白いシナリオです。

当然、事故は福島第1のような重篤な事故が望ましいです。
ブシェーフル原発で重篤な事故が発生したとすると、ホルムズ海峡を含む中東域の広範囲で経済活動が停滞し、原油の採掘、(精製)、輸送が滞ります。
Iran_nuclear_power_plants_map
ブシェーフル原発の位置(wikipediaより)

距離が近いクウェートやサウジの積み出し港は、もろに影響を受けますし、風向の影響で、東側の方が影響が出やすいため、UAEなども大きな影響を受けます。
福島の事故があって以降、日本から外国人が逃げ出したように、ホルムズ海峡にゆくこと自体を嫌がる船員も多くなるでしょう。
つまり、ペルシャ湾を経由する原油供給が、かなり細る結果になります。

また、福島の事故以降に起きた原発削減の動きが、日本だけに留まらなかったように、ブシェーブルでも事故が起きれば、この動きは尚更強まります。
結果、発電を火力に頼る比率が高まり、石油の需要が伸びます。

と、言う訳で、ブシェーフル原発の暴走事故は、原油価格を押し上げる効果はあるはずです。

問題は、可能なのか、それもロシアの仕業だとバレずに行う事が可能なのかです。

ブシェーフル原発の原子炉は、ロシアの国営原子力企業ロスアトムの協力により作られています。基幹システムは、事実上ロシア製でしょう。
となれば、ロシアはセキュリティホールの存在を知っているかもしれません。
もっと穿った見方をすれば、意図的にセキュリティホールを見逃している、あるいは残している可能性があります。
このセキュリティホールを使ってハッキングを行えば、システムを意図的に暴走させることもできるかもしれません。

また、システムがスタンドアローンだったとしても、弱点は承知しているはずで、アメリカとイスラエルが、同じイランのナタンズにあったウラン精製設備を、スタンドアローン用のサイバー攻撃によって、ダメージを与えたような方法を取りやすいはずです。

その上、イランの核施設は、ロシア以上にアメリカとイスラエルが厄介視していますから、ハッキングなどを西側国に送り込んだ工作員に行わせることで、犯人をアメリカやイスラエルだと、イメージ操作することができます。

と言う訳で、簡単な思考実験をしてみました。
他にもネタ(プラン)は、いくつも考えられます。

恐らく長期化するであろうルーブル危機は、プーチンの政権基盤を破壊する可能性が高い以上、プーチン大統領が、何らかの軍事的オプションを採る可能性は、少なくありません。

原油価格を上昇させるような焦臭い事件が起こったら、その背後にロシアの影が見えないか注視すべきです。
DIAやCIAは、もう動いているかもしれません。

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