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演習・訓練

2014年5月18日 (日)

ゾンビ対処計画とヤマサクラ

CNNが面白いニュースを流しています。
米国防総省、「ゾンビ」襲来の対応策を策定していた」(CNN14年5月17日)

この文書は、米戦略軍が作成した「CONOP8888」という極秘文書で、現実の大規模な軍事作戦、緊急事態、大災害に対する作戦の立て方の訓練用テンプレートとして、地球全体がゾンビに襲われるという恐怖のシナリオが採用されている。


ネタではなく、真面目なニュースです。
さすがに、自衛隊ではゾンビを想定することはしませんが、発想としては理解できます。

米戦略軍の報道官、クンツェ海軍大佐は「この文書は、軍内部の演習で使用される訓練用ツールと認定されている。この演習では訓練生が架空シナリオを通じて、軍事計画や治安・秩序の発展に関する基本概念を学ぶ」と述べ、「この文書は米戦略軍の(正式な)計画ではない」と付け加えた。


日本流に言うところの”頭の体操”用のシナリオという訳です。
その”頭の体操”を行うため、ゾンビにリアリティを与えられるだけの想定を作ることが大変なので、自衛隊ではもっと簡単なものを使ってしまうのですが、米軍がわざわざゾンビを使う事にも一理あります。

同文書によると、人々が訓練用の架空のシナリオを実際の計画と勘違いしないよう、あえて全くありえないシナリオを採用したのだという。


”ゾンビ”を使わないとどうなるかという良い事例があります。
日米合同図上演習「ヤマサクラ37」から見る中国地方

ヤマサクラは、陸自の方面隊と米陸軍が共同で行う指揮所演習(CPX)です。
私もお客さんとしてお邪魔した事がありますが、お互いの意思疎通に慣れることを主目的にして、図上演習だけでなく、各種レセプションで交流を図る、なかなか豪勢な演習です。

で、このヤマサクラの想定が、何度か公表されたことがあります。
2010年のヤマサクラ37もそうでした。
馬鹿げたウォーゲーム

赤旗の記者は、実は結構軍事に明るいので、このヤマサクラがどんな演習で、なぜこんな想定なのかも理解した上で、読者を意図的にミスリードする目的で記事を書いていると思われます。

赤旗の意図とは別の方向で、これを誤解してしまうのは、ミリタリーマニアです。
ゾンビにリアリティを持たせるだけの想定を作る作業が大変なので、ヤマサクラでは「C国」といった仮想の地理環境・軍事力の国を作り、装備はロシア・中国あたりの装備品を準拠した兵器を持っているという想定で訓練します。

ところが、ここでロシア製や中国製兵器が日本に上陸(陸自と米陸軍の訓練なので、上陸されないと訓練が始まりません)していることを見ると、前掲リンクのように、ロシアや中国が日本に着上陸することを自衛隊が予期していると誤解してしまう人がいるのです。

自衛隊単独や日米共同の訓練・演習では、様々な想定の下で訓練・演習が行われます。
訓練と演習の差異については、過去の記事「訓練と演習の違い」で書いていますが、ヤマサクラに関しては、名前は演習でありながら、実態は仮想の国を対象としている通り、訓練です。

戦場となるのも、当然に、その演習に参加する方面隊の担任区域です。
これは、訓練を行うために、そう想定しているだけで、その場所が危険だと自衛隊・米軍が予測している訳ではありません。
また、敵戦力の規模は、陸自だけでは手に余り、米軍の来援があれば反攻が可能なレベルのものを、想定します。
これは、リアリティではなく、相互の意思疎通を図るという目的を達成するため、訓練効果を最大化できる敵の規模を想定したと言うことです。

この手の事は、訓練を計画する際に常にあることで、リアリティの高い訓練を目指す場合は少なくなるものの、「これじゃ○○部隊の訓練にならないじゃないか。計画を作り直せ!」なんて事は、私も何度言われたか数知れません。

しかし、それを見て、それを自衛隊・米軍(という権威)が、大規模な機甲戦力が上陸してくる事を予期していると見てしまう人がいます。
アメリカが”ゾンビ”を使うのも、同じような事が過去にあったのではないかと思われます。

さて、視点を転じて、このネタ(ニュース)のもう一つ面白い(と言ったら怒られてしまうかも知れませんが)点について、触れておきたいと思います。

このゾンビ想定、なんだかゲームや映画になっているバイオハザードを想起させますが、作っているのがアメリカの戦略軍だという点が注目です。
戦略軍とは、大陸間弾道ミサイル、戦略爆撃機や弾道ミサイル搭載潜水艦を統合指揮する統合部隊です。

ということは、このゾンビ想定での訓練での最大の決心事項は、パンデミック的に広がるゾンビ感染を、核で焼き尽くす点にあるのでしょう。
映画では、封鎖地域に核を使用するシーンが良く出てきますが、アメリカはいざという時には、本気で核で焼き尽くす事を考えていると思われます。

日本でも、生物兵器が使用された場合には、最悪のケースとして、想定する必要があるのではないでしょうか。

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2011年5月13日 (金)

B型枯渇で、総隊の訓練は大丈夫?

F-2の戦闘機操縦課程が再開されましたが、やはり予想したとおり三沢で、総隊のF-2Bを使用して訓練をしているようです。

F2の冠水で操縦課程を三沢で再開」(朝雲新聞11年4月14日)
三沢基地における移動訓練の実施について(防衛省発表11年4月11日)

朝雲の記事では、3SQ及び8SQのF-2Bを使用してとなっていますが、今まで18機のF-2Bを使用して行っていた課程を、両飛行隊のF-2Bだけでできるはずはありません。おそらく順次築城6SQのB型も集めて訓練するものと思われます。
それでも、残りのB型は14機しかありませんから、恐らく総隊でB型を使用した訓練はほとんどできなくなるでしょう。

それほど大きな影響とは思わない方も多いと思いますが、15も含めて、複座機は引っ張りだこで、一部訓練科目の訓練量は、複座機の機数の限界で決まっているようなものです。

影響は、今年の戦競なんかにも出てくるかも知れません。



2010年12月16日 (木)

ロシア軍機が日米共同統合演習を偵察 「客が来た!」

産経新聞がロシア軍機による日米共同統合演習の妨害を報じています。

ロシア軍機が日米演習妨害、2機が空域を横切る 外相の北方領土視察に対抗か?」(産経新聞10年12月8日)
仙谷氏、ロシア軍機の日米演習妨害に「能登半島に戦闘機を緊急発進させた」と認める」(産経新聞10年12月8日)

けしからん!
と言う訳ですが、相手側の大規模演習を偵察することは、軍隊とすれば当たり前な行動で、ことさら新聞が報じるべきニュースじゃありません。

報道はありませんし、私もそこまで追いかけていませんが、ロシアが北方領土で大規模演習をした時にはYS-11が千歳に、EP-3が八戸に展開して収集活動を行っていたでしょう。
もしやってなければ、機体トラブルなど、実施が不可能な理由があったと思われます。
(YSの場合、機数が少ないので、動けなかった可能性も低くない。もし理由無くやって無かったとすれば怠慢です!)

ロシア機の行動は防衛省が詳細を発表しています。
ロシア機の日本海における飛行について

スクランブルを受けたIL-38(防衛省発表資料より)
Ws000011
飛行経路と訓練空域(産経新聞より)
Plc1012080131003p1

IL-38は哨戒機ですが、ある程度の電子戦情報の収集能力があります。
今回の飛行も、1機目の飛行経路を見ると,訓練空域侵入前に蛇行しており、この間に電子戦情報を収集していたと思われます。
2機目は、経路を把握される前の時点で、1機目と同様の蛇行での収集をしていたのではないかと思われます。

その後、訓練空域にまで進出していますが、可能性としては2つ考えられます。
一つは、イージス艦等がレーダーを止めて演習を中止にしたため、することがなくなって嫌がらをして帰ったという可能性
もう一つは、電子戦情報が収集されることを避けるため、イージス艦がレーダーの方位限定運用をしたことで、空域に侵入しなければ収集ができなくなったため、収集のために進入した可能性です。

嫌がらせなどしたところで得るものはありませんし、偵察する側とすれば、演習状況を再開してもらって収集を継続する方が得策な訳ですから、実際は後者であったのではないかと思います。

何にせよ、演習時に偵察機が来て状況を中止するなんて、当たり前の話です。
「状況中止だってよ」
「何で?」
「客が来たからだってさ」
などと言うダレた会話は、演習時の定番なんですから。

北朝鮮による弾道ミサイル実験の後、対艦ミサイルの発射訓練にまで、「北朝鮮が短距離ミサイル発射」と報じるような話と同列で、単なる騒ぎすぎです。

なお、この二日後の8日、今度は歴としたELINT機であるIL-20が偵察に来ています。

ロシア機の日本海における飛行について

この時は、演習状況の進行に影響はなかったようです。

2010年12月 6日 (月)

演習項目から読む日米共同統合実動演習

日米共同統合実動演習が実施中です。

定義は忘れてしまいましたが、訓練は部隊や個人の能力の向上を意図して行うものであるのに対して、演習は能力向上の側面もあるものの、通常は計画の妥当性を検証するという側面が強いモノです。(日本は基本的に行いませんが、政治軍事上のアピールのために行われる場合もあります。)

そのため、日米共同統合実動演習の演習項目を見れば、自衛隊と米軍が何を警戒し、どのような対処をしようとしているのか見て取ることができます。

そこで、現在実施中の日米共同統合実動演習の演習項目から、自衛隊と米軍が何を考えているのか読み取ってみます。

主要な演習項目は「弾道ミサイル対処を含む航空諸作戦」となっており、細部は次の5項目です。
①弾道ミサイル対処
②島嶼防衛を含む海上・航空作戦
③統合輸送
④基地警備等
⑤捜索救助活動
ソース「島嶼防衛など実動演習 来月3日~10日 日米4万4千人」(朝雲新聞10年11月18日)

今回の演習は、以前の記事「対中国防警計画は間違っている」でも取り上げましたが、離島、それも明言はされていないものの尖閣の奪還を想定したものであると早い時期から報じられています。

離島奪還訓練となると、注目は陸自の活動となります。
(戦車や揚陸艦を使った着上陸などと言い出す的外れな方もいらっしゃるので困ります……)

ですが、演習項目を見る限り、自衛隊と米軍が主要な活動として捉えている部分は、「航空諸作戦」です。

もちろん演習のハイライト(普通、最後は敵陣に突撃して終り、というような、まるで小説にクライマックスがあるようなラストの盛り上がりが、演習にも設定されます。)は陸自による空挺降下と敵陣制圧でしょうが、それは「航空諸作戦」の結果による当然の帰結であると自衛隊・米軍は考えているということです。
尖閣問題が注目されると、すわ在沖陸自戦力の増強が言われますが、離島奪還には「航空諸作戦」が重要ということです。
(在沖陸自戦力の増強は、中国への国家意志の明示のために有効なので、当然反対ではありません。)

以下では、現時点では情報が少ないですが、細部項目を、それぞれに見てみます。

①弾道ミサイル対処
設想どこどこというような、演習場を離島に見立てた想定がなされる事が多いので、演習活動から読み取ることが難しい部分もあるのですが、現在ある報道を見ると、米軍は嘉手納と普天間、それにキャンプコートニーに対する弾道弾攻撃を警戒しているようです。
嘉手納PAC3移動 共同演習に備え普天間に」(琉球新報10年12月3日)
パトリオット移動訓練、C.コートニーとホワイトビーチ」(リムピース10年12月5日)
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コートニー展開のPAC-3(リムピース記事より)

また、米韓演習に参加していたミサイル監視艦オブザベーション・アイランドやコブラボールも、そのままこの演習に参加している可能性が高いと思われます。
黄海で演習、同時にMDシフトか」(リムピース10年11月30日)
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佐世保に居たオブザベーション・アイランド(リムピース記事より)
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嘉手納のコブラボール(リムピース記事より)

自衛隊も、先日の記事「H23概算要求-その3_SAM関連」でも書いた通り、那覇あるいは下地島への弾道ミサイル攻撃を想定しているようです。

②島嶼防衛を含む海上・航空作戦
今までのところ、リムピースくらいしか情報がないので、非常に不透明ですが、制空戦闘機による航空優勢の確保、水上艦艇・潜水艦による制海権の確保(機雷掃海、対潜戦、対水上戦)、揚陸艦を使った島嶼の奪還が演練されていると思われます。(揚陸艦へのヘリ搭載が少ないのが疑問ですが)
日米共同統合演習さなかのホワイトビーチ」(リムピース10年12月4日)
米揚陸艦隊、海自護衛艦、ホワイトビーチ出港」(リムピース10年12月5日)

③統合輸送
派手な部分ではなく、関連する情報も前述のリムピースくらいしかありませんが、非常に重要な部分で、ここがしっかり出来ていれば、中国は冒険はしない可能性が高いのではないかと思います。

④基地警備等
私が再三指摘しているとおり、以前は軽視されていましたが、ここも非常に重要な部分です。
しっかりと細部項目に入れられたので一安心。
ただ、実働訓練がやりにくい部分でしょうね。
演練場所は、海自佐世保、空自三沢、春日両基地、福江島分屯基地です。

⑤捜索救助活動
中国相手では、被撃墜の発生は必至ということでしょう。

追加情報があれば、また記事にします。

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