北方領土問題の解決のためには、国後・択捉を売却すべき
森元首相が安倍総理の特使としてロシアを訪問し、北方領土問題の解決に向けて具体的な動きが出そうな雰囲気になっています。
「北方領土「面積等分」の解決策 プーチン氏の“伝家の宝刀”」(zakzak13年3月3日)
森元首相とプーチン大統領の会談内容は不明ですが、首相経験者を送り込むという行為は、安倍首相の領土問題解決に向けた政治意志の最大限の表現です。
会談は、成功裏に終わったようなので、現在は、水面下で交渉が行なわれ、いずれかの時点で、小泉元首相の北朝鮮訪問のようなサプライズ発表があるのではないかと思っています。
この動きに対して、冒頭リンク記事の大前研一氏は、面積等分で決着するのではないかと見ています。
ロシア、というよりプーチン大統領が、他の領土問題も面積等分により解決を図っているからです。
ロシアは中国ともめていた大ウスリー島も、ノルウェーともめていた北極海も、面積等分で決着している。面積等分はプーチン大統領の領土紛争に関する「伝家の宝刀」といってもいい解決策なのだ。
しかし、この面積等分案は、ロシアが十分に受け入れるであろう2島返還と比べ、軍事的には、ロシアが受け入れる可能性が極めて乏しいプランです。
大前氏は、基本的に経済人であり、防衛問題には疎くても仕方ないと言えるかもしれませんが、選挙に出馬したこともあるくらいなのですから、安全保障面の視点を欠いていることは残念です。
ロシアが面積等分案を受け入れる可能性が乏しいのは、ロシアが軍事面で北方領土に拘る理由が国後水道にあるからです。
国後水道は、国後島と択捉島の間にある水道で、水深が最大で484mと深く、冬でも凍結しないため、ウラジオストクを使用するロシア太平洋艦隊、特に戦略原潜の通り道として重要です。
北方領土を面積で等分すると、国境は、択捉の南側1/4程度と他の3島が日本側領土となり、国後水道は日本側が押えることになるのです。
しかし、ロシア艦艇は津軽海峡を通峡することさえある昨今、ロシアが国後水道に拘る必要性は少なくなっていますし、日本がロシアを封じ込める必要性も少なくなくなっています。
その意味で、日本側が国後水道を国際海峡として指定し、ロシア艦の通峡を妨害しないとでも約束すれば、ロシアが面積等分飲む可能性もゼロではないとは思います。
ですが、可能性が乏しいことは歴然とした事実でしょう。
この意味では、完全ではないにしろ、国後水道の通峡拒否を軍事的に実行できる3島返還も同じです。
ロシアは、ロックバンドが不法に逮捕されたりすることもある程であり、日本や西欧ほど民主化されてはいませんが、一応ちゃんとした選挙が行なわれる国になっています。
何にでも目くじらを立てる必要性がある国ではなくなっています。少なくとも、中国よりは、遥かにマシな国です。平和条約を締結しても良いでしょう。
安倍政権が、ロシアに面積等分を飲ませる事ができるなら、それに越したことはありませんが、私はそれが出来るとは思いません。
3島返還も不可能だと思っています。
しかし、ちっぽけな2島返還では、国内世論も承服しないでしょう。
なので、私は2島返還+2島譲渡で決着をはかったら良いのではないかと考えています。
歯舞・色丹を返還してもらい、国後・択捉は本来は日本の領土であることを認めさせた上で、ロシアに売却するのです。
ロシアに実を取らせて、日本は名を取るというところです。
売却代金は、現金でなくとも、電力や資源の現物返済でも構わないと思います。これを足がかりに、日露の経済協力も進むでしょう。
2島譲渡の障害は、ロシアが今までも北方領土の領有権はロシアにあると主張してきた姿勢と相反することです。
そこは、プーチン大統領のイニシアティブ次第ですが、実を取れる以上、可能なのではないかと考えています。
北方領土問題が解決し、ロシアと真に友好的な関係が築けるのであれば、日本としては対ロシア、対中国の2正面戦略をとる必要性から開放されます。
2島を売却してでも、北方領土問題を解決した方が良いだろうと考える理由は、この点に尽きます。
恐らく、「ロシアは信用できない国だから、対ロシア戦力を対中国に振り向けることはできない」という主張は、多いでしょう。
しかし、前述のようにソ連・ロシア自体の変化もありますし、アメリカや西欧が対ロシアの戦力を大幅に削減する中、日本だけが冷戦時と変わらぬ対処をロシアに対して続けている事の方が、世界から見たら異質に見えると思います。
もちろん、北方をがら空きにすることはできませんが、海によって隔てられている以上、ある程度の海空戦力を残せば、陸上戦力は大幅に削減でき、南方に振り向けられます。
そして、量的な緩和を図るだけで無く、質的にも、島嶼防衛に則した戦力体系に、大きく変容させることが可能です。
この場合、大きく変化させるべきなのは、やはり陸自でしょう。
機甲や特科を大幅に削減し、空中・水上機動能力を高めた戦力組成に切り替えるべきです。
安倍政権が森元首相をロシアに行かせ、北方領土問題の解決を意図する理由の一つには、陸幕を押えるという意図もあるのではないかと思えます。
最近のコメント