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航空機一般

2010年10月11日 (月)

F-2欠陥機疑惑は空幕の作為か

F-2の欠陥機疑惑について、もう下火になってきたし今更書くこともないか、と思っていたのですが、「週間オブイェクト」が「防衛省航空幕僚監部(空幕)は小川和久氏のF-2欠陥機説を説明せよ」と題して、鋭い見解を述べていたので、取り上げてみることにします。

JSF氏は、上記の記事中で、小川和久氏のF-2欠陥機説に対する態度の理由として、「F-2は特に大きな欠陥はないが、欠陥機であるという噂を流す必要があった」と一つの仮説を述べています。

JSF氏は、可能性の一つとして書いていますが、私はこれが一面の真実だと思っています。

なお、私はF-2に不具合があったことは世間一般で騒がれる前から聞いていましたが、基本的に担当外の業務だったため、不具合の内容についてはwikipediaに書かれている程度にしか承知していません。
ですので、以下については「業務上知り得た秘密」以外の一般情報を前提に、過分に推測で書かせて頂きます。

まず、試作・試験飛行の段階において、F-2が「欠陥機」だったのか、という本質についてですが、「不具合の存在」=「要求性能の不充足」ですから、その意味では欠陥機とも言えたでしょう。

ですが、例えばASMを4発も抱いた状態で高迎角姿勢とした場合に不安定な挙動を見せる、などというものは、私から見れば「支援戦闘機」として欠陥でもなんでもないと思っています。

そもそも、対艦攻撃編隊が敵による迎撃を受け、退避を行わなければならない状況になっている時点で作戦は失敗です。その時にはASMを投棄して逃げればいいだけです。(あんな大きな外装物を付けているのですから、旋回後の直線飛行でも速度が出ません)

常続的な航空優勢の確保が困難なことから制空権という言葉が使われなくなったように、航空作戦の様相には一瞬の力の空白、防空力の弱くなる瞬間がどうしても発生します。
これをバルタイム(vulnerable time:脆弱時刻とでも訳すべきか?)と呼び、この一瞬を衝くように攻撃作戦を計画することは定石ですが、それに失敗しても良いように要求性能を書くなんて、そもそも要求が過大です。
(極論すれば、対艦攻撃編隊はヨロヨロとでも作戦空域まで進出し、あとはサッサと逃げ帰ってこれればOKなのです。)

では、なぜそのような過大な要求がなされ、欠陥機扱いされなければならなかったかと言えば、そこには日本人的な本音と建前、そして空幕の最大の仕事である予算取得上の必要性というものがあったと思っています。

もう少し突っ込んだ言い方をすれば、空幕はFS(支援戦闘機)としてではなく、FI(要撃戦闘機)として十分な性能が欲しかったが、当時はFS(支援戦闘機)としてしか要求できなかったと言うことです。

以下、もう少し詳しく書きます。
防衛計画の大綱別表において、編成定数が定められていますが、1996年の大綱、いわゆる07大綱において、それまでFI10個飛行隊、FS3個飛行隊と定められていた飛行隊定数が、FI9個飛行隊、FS3個飛行隊と、FIがマイナス1個飛行隊となりました。

一般の方は「なんだ1個飛行隊くらい」と思うかもしれませんが、航空機自衛隊としては、その戦力の根幹であるFI飛行隊数の削減は衝撃的でした。
一部では防空自衛隊と自虐的な揶揄さえあるほど、防空力の維持には心血を注いでいたにも関わらずの措置だったからです。
(そんな揶揄も、専守防衛で防衛だけやれと言われているのですから当然なんですが)

そんな訳で、07大綱以後、1990年代後半、つまりF-2の試作・試験飛行の段階において、航空自衛隊は、要撃戦闘能力の確保に必死だったのです。

防衛計画の大綱改定は、なにも降って湧いた話ではありません。
冷戦の終結以降、防衛費削減圧力は増大し、防空自衛隊の主力であるFI戦力にも大なたが振られるという話は、07大綱の輪郭が見え始める以前から言われていた話です。

ですから、空幕はFSXの要求段階で、FIとしての使用に耐える要求性能を盛り込む努力をしました。
その結実がF-2な訳です。

重複になりますが、対艦攻撃を主任務とするFSに、そもそもそんな高機動性能は必ずしも必要ないのです。
(もちろんあるに超したことはありません。あの翼面積の少ないF-1でもFSとしては使えていたことを考えて下さい)

空幕としては、FIとして使えるモノを調達したかった(本音)にも関わらず、試験飛行の結果、それには問題があることが判明したのです。
FIとしては不十分だけど、FSという建前で取得しようとしている以上、改修予算を付け、メーカーにも「調達中止の恐れもあるぞ」とプレッシャーをかけるためには、欠陥機疑惑は都合が良かったのです。

私は、空幕(あるいは内局)が、意図的にF-2欠陥疑惑を流したとは思っていません。ですが、積極的に火消しをしなかった事も事実です。
(他の国なら、必死に火消しをするのが普通です)

なお、2004年の16大綱において、FIとFSの区分が廃止されましたが、これが廃止されたからF-2を要撃戦闘にも使う事にしたという訳ではありません。
当初より、要撃戦闘に能うる性能を具備するよう計画され、初期に発生した不具合を修正し、実際に要撃戦闘に能うるようになったからこそ、区分の廃止となったと見るべきです。(お役所は、こういう建前が必要なんです)

小川氏は、空幕に知らず知らずの内に、疑惑の片棒を担がされた訳です。
空幕とすれば、未だに燻っているのは想定外でしょうけど。

私は、防衛・軍事の専門家には2種類の方がいると思ってます。
それは、ハードを多少なりとも理解している方と政治的な側面が得意な方です。
(もちろん両立している方もいらっしゃいますが)
小川氏は、どちらかと言えば後者でしょう。(ハードに言及した話は少ないです)
ですから、一度関係者から話を聞いた事象については、別の関係者から聞かないと修正されないんだろうと思っています。

それと、私の感覚での話しになりますが、F-2の不具合について、当時いろいろと言われている方はFIのP(パイロットの隠語)に多かったように思います。
FSのPは、じっと黙って耐えている感じでした。
(単に、私も周りの方がそうだっただけかもしれませんが)

最後に、今でもF-2は欠陥機なのか、という点ですが、もう不具合は改善され、FIとしても十分な潜在力があると見るべきです。
(逆説的ですが、)そうでなければ、「F-2空対空戦闘能力の向上」として(FIとしての)能力向上改修の予算なんて付きません。
空幕も、そして財務省のお役人も、バカじゃないんですから。

2011年1月25日 (火)

海保YS-11引退、運用は自衛隊のみに

YS11:海保最後の機体がお別れの一般公開」(毎日新聞11年1月)

海保のYSが引退となり、YS-11の運用は自衛隊のみとなります。
空自では、現在も電子戦機や飛行点検機として使用されていますが、想像に難くない通り、機体の老朽化で稼働率などには問題があります。(機数も少ないですし)
飛行点検型YS-11FC
Img_4845

点検機の方はU-125に変って行くので問題ないのですが、問題は電子戦機の方です。
C-2を電子戦機とする研究もなされていましたが、先般の大綱及び中期防でも言及はされませんでした。

現場はかなり苦労してると思いますが、ヤリの穂先にだけ注力し、他はおざなりなのは自衛隊の悪しき伝統です。
早く手を付けて欲しいものです。

2011年2月 5日 (土)

政府専用機退役 さもありなんと思いきや寂しさもあり

政府専用機が早期退役となる見込みだそうです。

政府専用機:退役へ 経営再建中の日航、整備困難に」(毎日新聞11年1月24日)

 首相ら要人の外遊や緊急時の在外邦人救出に使う政府専用機「ボーイング747-400型」2機が数年以内に退役する方向となった。「あと10年は使える」(防衛省)というが、機体整備を委託する日本航空が今年度中に同型機を全て退役させ、整備が困難になるため。政府は近く検討委員会を開催し、新型機購入の方向で検討するものの、財政状況が厳しい中「民間機をチャーターすべきだ」との意見も出ている。


JALが整備できないとなると、退役自体は妥当なところでしょうね。

後継は調達せず、チャーターで済ますべきだという意見があるようですが、経済性を考慮すれば当然そうなるでしょう。

国の運用する機体であるべきだ、というならU-4を追加調達すれば、それで十分です。
ヨーロッパへ直行は厳しいですが、中東かモスクワあたりで給油すればすみます。
北京オリンピックの際にも、当時の福田首相がU-4を使用した実績がありますし、一人のVIPのためにジャンボが飛ぶなんて馬鹿げてます。

アフリカの争乱で、にわかに注目を集める邦人救出については、KC-767を飛ばせばいい話です。
追加調達できれば尚良し。

政府専用機は、私も一度だけ搭乗したことがあります。
運行スケジュールに合せたアテンドなど、主に特別空中輸送員と呼ばれるキャビン・アテンダントの訓練のために行われるフライトに、模擬搭乗者として乗りました。
感想は、……普通の民航と変りません。

となれば、やっぱしチャーターでいいような……
大体、政府専用機の走りは、アメリカのエアフォース1ですが、そもそもあれは全面核戦争の際、大統領の戦争指揮を継続するための空中ホワイトハウスで、言ってみれば戦争用なんです。
そこまで考慮していない日本に、政府専用機なんて贅沢です。

ここは一つ、U-4とKC-767の追加調達で、防衛力の増強にも役立つ方向で処置がされて欲しいと思います。

とは言え、政府専用機と特別航空輸送隊がなくなってしまうとなると、ちょっと寂しい気もします。

定期便(空自の基地間を飛んでいるC-1とC-130の定期貨物便、空きスペースで人員移動にも使用される)に乗っていると、時々異様なオーラを発するWAFが乗り込んでくることがありました。
前述の特別空中輸送員です。
多分、日航でアテンドの研修を受けたりするために移動していたんだと思いますが、明らかに「顔で選んでるだろ」という、自衛隊の制服を着ているものの、一種異様な雰囲気を纏っている集団でした。

特輸機がなくなってしまうと、彼女らもバラバラになって、多くは職種転換してしまうんでしょうね。

2011年5月 8日 (日)

墜落は無理にステスル性を追求した結果?

ビンラディン急襲作戦に使用されたヘリがステルスヘリらしいということで、各所で話題になってます。

ヘリにステルス機能? 機密流出 懸念の声」(東京新聞11年5月7日)
ビンラディン急襲作戦で使われた謎のステルス・ヘリコプター」(週刊オブイェクト)
米軍、新型ステルスヘリコプターをビンラディン強襲作戦に使用か」(北大路機関)

ステルスヘリの実現にあたっては、ローターが回転することから、ステルス固定翼機で見られる4ローブRCSパターンにするといった設計思想で実現することは無理じゃないかと思っていたのですが、破壊しきれずに残ったテイルローター部の写真を見る限り、設計思想的には反射角を極力一方向にするため、直線的なデザインとする同様の設計思想で作られているようです。

Amr11050609100001p1
(産経新聞より)

この写真だけで判断することは難しいですが、写真を見る限りテイルロータの断面も直線っぽい形状になっているように見えます。

まだ、開発途中だったということもあるでしょうが、無理にステスル性能を追い求めた結果、飛行特性が悪化し、ホバリング中に制御困難となって落ちたじゃないか、なんて思えてしまいます。
もしそうであるなら、今回の墜落事件は、今後のステルスヘリ開発の方向性にも影響を与える事態となるかもしれません。

なお、墜落したヘリを機密保持のために爆破するというのは、映画「ブラックホークダウン」でも描かれたモガディシュの戦闘でもあった話で、ちょっとした因縁めいたものを感じます。
もっとも、今回は墜落理由が違いますが。

2011年9月17日 (土)

戦闘機になり損ねたP-1哨戒機

前回の記事、「ロシア爆撃機による日本周回飛行の軍事的意味」に対して、海族様から、P-1にAAM-5を積めば良いのでは、という、コメントをちょうだい致しました。

半ば冗談のコメントだったのですが、これは決して悪い案ではありません。
それどころか、一歩間違えば(?)実現していたかもしれない案です。

P-1のAESAレーダーHPS-106は、機体の前後左右に装備され、全周360°をカバーし、対空モードを持っています。
つまり、現状のP-1でも、簡易型早期警戒機としての潜在力を持っていることになります。

おまけに、現状でもマーベリックは搭載できる予定ですから、AAMを携行させることも機体的に無理があるとは思えませんし、必要な機内容積も余力があるでしょう。
AAMを搭載できるように改造することは、それほど難しくないと思われます。

そして実際にAAMを積むプランもあったそうです。それも、海族様に提案して頂いたAAM-5どころか、AAM-4をです。
情報元は、内部情報が豊富で、残念ながら閉鎖宣言が出てしまった、ミリタリー系ブログではメジャーな「keenedgeの湯治場」様です。
P-1恐るべしであります。

XP-1の初期のM社案には、AAM-4はおろか、M61A1やはてはJ/LAU-3を搭載した過激な案があったのですが、実際に海外のP-3Cやニムロッドには試験的にAIM-9を搭載した例があります。


もしこのP-1へのAAM-4搭載が実現し、同機での防空哨戒が行われていれば、前回記事で警戒した太平洋上を迂回してのTu-95によるミサイル攻撃は、単なる鴨ネギと化します。
速度が速いので、会合が難しくなりますが、AAM-4の射程ならTu-22Mでさえ迎撃できたかもしれません。

ロシアが、空中給油機と戦闘機を随伴させれば逃げざるを得ませんが、相手にそこまでの対応を強要できたなら、効果としては十分ですし、警報を出せるので、その際は迎撃機による迎撃を行えば良い訳です。

今後、ロシアと衝突する蓋然性はそれほど高くはないと思いますから、現状でP-1へのAAM-4搭載は必要なかったと思いますが、中国がTu-22Mを欲しがっていますから、もし中国が同機を手に入れるようにでもなれば、真面目に搭載改修を考えるべきかもしれません。

なお、前回記事で書いたTu-95による迂回攻撃ですが、警戒すべき作戦態様が分かりにくかったようなので、補足で簡単な図を載せておきます。
Ws000004
Tu-95の配備基地であるウクラインカから発進し、自衛隊の防空網を避けて東京を南東から突く攻撃経路です。日本から400km以遠を破線で表示しています。(地上レーダーは、地球の曲率のため、高高度でも400km程度が捜索限界になります)

この図でも、Tu-95の飛行距離は1万kmに及ばず、空中給油なしでも十分に飛行が可能な距離です。
早期警戒機を上げていれば、もっと遠くで捕捉できますが、それでも、地上からの迎撃では進出にABを使用しないと、射程が400kmを越えるKh-20(AS-3カンガルー)やKh-22(AS-4キッチン)と言ったミサイルの発射前に迎撃できないので、実際にはCAPを前方に上げておかないと、結構キツイです。前方というか、こんな側方にまでCAPを上げ続けることが、またキツイことですけど。

オマケ
ウクラインカにずらりと並ぶTu-95
Ws000005
グーグルより

2011年9月23日 (金)

イラン、コピーしたコブラを国産と偽って輸出を目論む

イランがパーレビ時代に輸入したAH-1Jコブラをコピー生産し、輸出まで目論んでいるようです。

国産「コブラ」ヘリコプター、大量生産へ:輸出も視野」(イランJam-e Jam紙11年8月28日)

 国防軍需省航空産業代表のマンテギー氏は昨日、高性能ヘリコプター「コブラ」の生産において、自給態勢を達成したことを明らかにした。

中略

 さて今や、マヌーチェフル・マンテギー代表は、イランはこのヘリの生産において自給態勢を確立したばかりか、その輸出をも視野に入れていると指摘している。同氏がメフル通信に述べたところでは、「コブラの生産に多くの労力を費やした。〔‥‥〕コブラの大量生産によって、その輸出も考えるべき段階にわれわれはいる」という。


当然、ライセンス料なんて払わないんでしょう。
お仲間のコピー天国中国と同じで、恥知らずな国です。

2011年10月 6日 (木)

民航機がスプリットS

浜松市沖で発生したエアーニッポン(ANK)機の急降下トラブルは、スプリットSもどきの機動だったことが明らかになりました。

裏返り、らせん状に1900メートル降下 全日空機で重大トラブル」(産経新聞11年9月28日)

スプリットS(wiki)

空戦機動としては基本的なスプリットSですが、民航機のパイロット訓練では行われてないでしょうね。
ですが、こういう事故が起こりうることを考えれば、実機での訓練はともかくとして、シミュレーターでの体験訓練くらいはしておくべきではないでしょうか。やってるならOKですが……

確か、ギムリー・グライダーの後、フォワードスリップ機動をシミュレータで訓練させたものの、誰も同じ事はできなかったというオチのような話があったかと思いますが、あり得ないことも起こりうるのが現実ですから、スプリットSやインメルマンターン、激しいスリップとかはやっておく、更には、自衛隊の訓練機に乗せて実体験させておく、とかはやったらいいんじゃないでしょうか。

2012年5月23日 (水)

F-22飛行制限と機上酸素発生装置 (OBOGS)の不具合

F-22は、昨年4カ月半もの間、飛行停止措置が取られました。

パイロットに酸素を供給する機上酸素発生装置 (OBOGS=Onboard Oxygen Generation System、オボグス)に不具合があり、パイロットが低酸素症に陥る可能性があるためでした。
2010年の11月に発生したF-22の墜落事故は、この不具合による低酸素症が原因と見られています。

部品の不具合→飛行停止措置は、良くある話で、飛行停止措置が解除になったため、対策が出来たのだろうと思っていましたが、有効な対策が採られないまま飛行再開されていたようです。

そのため、パネッタ国防長官が、F-22の飛行制限と対策の実施を指示しました。
F22戦闘機パイロットに低酸素症の懸念―米国防長官が対応を指示」(ウォールストリートジャーナル12年5月17日)

 F-22の訓練飛行については、今後飛行距離が制限される。パネッタ長官はまた、予備の酸素供給システムの開発を急ぐとともに、緊急着陸できる範囲内に飛行を制限するよう命じた。


OBOGS搭載機は、OBOGSの不具合に備えて、小さな液体酸素ボトルemergency oxygen supply (EOS)を搭載しています。ですが、あくまで緊急用で、基本的にマスクを外しても問題ない高度まで降下するためのものです。
そうなると今度は巡航高度まで高度を上げられないため、場合によっては基地に帰るまで燃料が保たないという問題が発生する可能性があります。パネッタ長官がF-22を基地周辺での運用に限るという制限を課した理由も、こういう理屈からでしょう。

改修がなされれば、今後、F-22は、事実上OBOGSを2台積むことになるんでしょうね。

さて、前記記事内容に戻ります。

 空軍はF-22の操縦を拒否したパイロットもいることを認めている。また同機の墜落で死亡したパイロットの未亡人は訴訟を起こした。

低酸素は非常に怖いものです。
パイロットが、機械的な警報が無い場合、努力や注意で回避できるものではありません。
それにも係わらず、2010年のF-22墜落事故原因が、パイロットエラーとされていることなどからすれば、乗りたくないと言い出すパイロットが居ることは、あたりまえにも思えます。

低酸素症(Hypoxia)については、また別の機会に詳しく書きたいと思いますが、自覚症状としては、ちょっとほてった感じがする、頭がボーとする、体がだるい等、で呼吸が苦しいというような事は全くありません。(呼吸の苦しさは酸素不足ではなく、二酸化炭素過多によるものです)
その一方で、簡単な計算ができなくなるなど、知能活動が低下します。しかも、恐ろしいことに知能低下しているので、知能低下していることを自覚することは難しいという事態に陥ります。

2010年のF-22墜落事故では、パイロットのジェフリー・ヘイニー大尉が、OBOGSの作動停止後、適切にEOSを作動させず、誤って
(EOSを作動させるつもりで)機種下げ操作をしたため墜落したと結論付けられています。
他にも多数のパイロットが低酸素を訴えていることを考えれば、この時も低酸素症のため、パイロットが正常な判断力を失っていたと考える方が妥当だと思いますが、なんとも酷な調査結果です。
F-22 oxygen system malfunctioned moments before crash 」(Flightglobal11年11月10日)

The accident investigation board still blames the accident on the pilot, Captain Jeffrey Haney, who failed to activate an emergency oxygen supply (EOS) that could have saved his life and the aircraft.
中略
The investigators said Haney failed to activate the EOS during the 31s period after his normal oxygen supply became restricted.
中略
The report concluded that Haney inadvertently pointed the aircraft at the ground while trying to activate the EOS, a procedure that calls on the pilot to pull up on a small ring tucked into the side of his ejection seat.

Simulator tests later concluded that this manoeuvre may have led to inadvertent stick or rudder movements.

The investigators ruled out loss of consciousness as a possible cause, despite possible oxygen deprivation.


ウォールストリートジャーナルの記事に戻ります。

 空軍はまだ問題の原因究明には至っていない。ホィーラー氏はパイロットが訴えた症状について、酸素欠乏でなく、汚染物質あるいは毒素が原因であることを示す証拠もあるという。


OBOGSが生成する酸素に、エンジン排気が混じった可能性があるようです。
OBOGSの生成する酸素に排気が混じれば、燃焼しきっていない燃料が含まれていた場合、最悪空中爆発などの事故も想定されます。
そのため、前掲のFlightglobalの記事にもありますが、F-22は、排気が混じった可能性があれば、OBOGSを停止させるように作られているようです。

 F22は昨年飛行が再開された後、1万2400回出動したが、その間にパイロットが体調不良を訴えたのはわずか11件だった。空軍関係者によると、症状の発生率がこのように低いため、原因解明が遅れているという。

再現性の低い不具合ほど、原因究明が難しいトラブルはありません。
パネッタ長官が指示したとは言え、この不具合は、長期化する可能性が懸念されます。

ちなみに、航空自衛隊機では、F-2とT-4がOBOGSを搭載していますが、F-22と違い、排気が混じる可能性はないので、日本での心配は無用でしょう。

2012年8月 5日 (日)

低酸素症と航空生理訓練

低酸素症の発生で、運用制限の課されていたF-22ですが、制限の緩和を受け、嘉手納にローテーション配備されるそうです。
F22嘉手納暫定配備へ 不具合対策未完了」(沖縄タイムス12年7月26日)

さて、ちょうどいい機会なので、以前に書くと言っていた低酸素症(Hypoxia)と航空生理訓練について書きます。

低酸素症は、高空を飛ぶ飛行機に搭乗したり、高山に登ったりした場合、あるいは火災や重い気体が滞留した空間に入った場合に発生します。(いわゆる高山病も低酸素症の一種です)
その名の通り、低酸素状態になったが故に生じる症状です。
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パイロットのための航空医学 低酸素症より

低酸素症が怖いのは、自覚症状が乏しい事と、知能活動の低下が起こるため、自分が低酸素症になっていることを自覚することが困難なことです。
後で書く低圧訓練の際、私自身が体験した低酸素状態では、ちょっと顔がほてった感じがしたのみでした。
ですが、この時、999から1づつ引いた数を紙に書かされていたのですが、途中から、めちゃくちゃな数字を書き、文字は乱れ、最後は意味不明の線となってました。
もちろん、本人は、ちゃんと書いていたつもりでした。
そのまま、あと1分も低酸素状態が続いていたなら、危険を感じることもないまま、意識を失い、最終的には死んでいたでしょう。

また、航空機操縦に関しては、自覚症状が乏しいだけでなく、意識を保てる時間が、かなり短いことも問題です。
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パイロットのための航空医学 低酸素症より

高高度で巡航するとなれば、高度は40000ftくらいになりますが、この高度での有効意識時間は僅か30秒です。

低酸素症は、自覚が極めて難しく、それでいて死に直結するモノなので、非常に危険性の高いトラブルです。

そのため、航空自衛隊では、戦闘機やジェット練習機に搭乗する場合、この低酸素症に対応するための訓練が義務づけられています。
後席に搭乗するだけでも必要なため、部外者がこれらの機体に乗る際にも必要です。(ブルインに乗ったキムタクもやったんでしょう)
この訓練は、航空生理訓練と呼ばれており、その中でも低酸素症に関わる訓練項目は、低圧訓練と呼ばれています。
参考:航空生理訓練及び飛行適応検査の実施に関する達

ちなみに修了者は、こう言うものを貰えます。これがないと、戦闘機等には乗せて貰えません。
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入間基地HPより

自衛隊には、降下塔・パラシュートでの降下訓練やディッチングトレーナーでの脱出訓練等、危険でかつ強い恐怖感を抱かせられる訓練は、多々あります。

それに比べると、低圧訓練は、ちょっとドキドキする程度のもので、さして怖くはありません。
ですが、実際に死の直前まで行く体験をさせられるという点では、自衛隊の訓練の中でも最も怖い訓練とも言えます。(ちゃんと管理されているので、危険ではありません。事故が起きた話も聞いたことがないです。耳が痛くなる程度は、当然ありますが)

問題の低圧訓練の訓練内容は、100%酸素を呼吸しながら高度36000ftと同程度まで減圧した後、マスクを外し、低酸素の状態を体験させる訓練や、高高度で与圧が壊れた場合を想定した急減圧訓練を行ないます。
Sf017_1_03
入間基地HPより

これを体験すると、低酸素が如何に恐ろしいかが分かります。
私自身も、急減圧が起きて、大きな音がしたり、周囲の空気が霧で真っ白になったのでもなければ、恐らく気付かずに死ぬだろうなと思いました。

また、これを体験すると、戦闘機に乗るということが、如何に恐ろしいものかも分かります。
戦闘機でも与圧はありますが、完全な与圧にすると、機体を作りあげる上でも大変ですし、被害を負った時に、急減圧でパイロットが戦闘を継続できなくなるため、圧力は十分ではありません。そのため、100%酸素の呼吸可能な酸素マスクを着けて搭乗します。
この酸素マスクですが、装着要領が悪く、酸素が漏れるような状態ですと、ただただ移動するだけのフライトであっても、低酸素になって、目的地に着いたときには死んでいたということにもなりかねないのです。

低酸素症というのは、こう言った怖いものですから、F-22がこれだけで飛行停止になったり、運用制限が課されることも、当然なのです。

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2013年3月25日 (月)

Cudaミサイルの性能を予言してみる

ロッキードマーチンが開発中と伝えられるCudaミサイルについて、幾ばくかの情報が出てきました。
まだまだ情報が少なく、その性能を評価できるとは言えませんが、若干技術的な事にも触れつつ、逆に大胆な推測で予言してみる事は可能だと思うので、チャレンジしてみましょう。

このCudaミサイルについては、日本語情報が少ないですが、アシナガバチ氏が記事を書いてます。
Lockheed Martin社がステルス機搭載用に謎のCudaミサイルを開発中」(アシナガバチの巣作り日記)

情報元は、フライトグローバルです。
Details emerge about Lockheed’s Cuda missile
Cuda
同記事より

F-22は、現在6発のAMRAAMと2発のAIM-9の携行が可能ですが、Cudaミサイルは、これを14発のCudaで代替することを想定しているようです。
F-35であれば、4発のAMRAAMが8発のCudaとなります。

この想定からすれば、Cudaは、両ミサイルの性能を兼ね備えなければならないことになります。
そのため、フライトグローバルの記述でも、AMRAAMと同等以上の特性と書かれています。

しかし、私は敢えて予言しますが、このCudaミサイルには、AMRAAM程の射程はないはずです。
それは、単純にミサイルのサイズから推測される推進薬量が、AMRAAMには及ばないからです。

AMRAAMのサイズは次の通りです。
直径:0.18m
全長:3.7m
単純に円筒だと仮定すると、容積は0.094立方メートルになります。
内部構成を見ると、推進薬は半分程度の範囲を占めていますので、仮にこの容積の容積だと仮定すると0.047立方メートルです。

方や、Cudaを見てみると
全長:1.78m
直径については、正確なデータがありませんが、SDB同等と見られるため0.19mと仮定し、円筒としての容積は0.050立方です。
仮に全容積が推進薬だと仮定すると、AMRAAMと同等程度だと言えます。
Cudaは直撃方式とされ、弾頭部が小さい、あるいはないと予想されるため、推進薬の比率はAMRAAMよりは高い可能性がありますが、その分をサイドスラスタが食っている可能性もあり、実際の推進薬量はやはりこの半分程度だろうと思われます。

一方、空気抵抗の点から見ると、直径がほぼ同じですが、翼部分がAMRAAMよりはかなり小さいため、多少のアドバンテージがありそうです。

しかし、空気抵抗が少なくても、推進薬が半分程度では、対空目標に対しては、やはりAMRAAMと同等レベルの射程があるとは到底考えられません。
数値的には、AMRAAMとAIM-9Xの中間的な数値になるのではないかと思われます。

ただし、機動による回避を行なわない、あるいは意味がないレベルである無人機や車両等には、弾道軌道でミサイルを発射することで、受ける抵抗を低減させ、AMRAAMと同等レベルになっている可能性はあるでしょう。

次に、機動性についての予言をしてみましょう。
これに関して、技術的な事を書き出すと、それだけで記事になってしまうためはしょりますが、Cudaは翼が小さく、空力操舵での機動力は少ないですが、サイドスラスタを装備するため、反応性は速いと思われます。

また、弾体径が全長に比して高いため、横方向の応力についても高い数値が出ると思われます。
更に、全長に比して弾体経が高いということは、加速性能が高い(推進薬の性質にもよるが)可能性が高く、それだけ機動性が高いと思われます。
特に、この加速性能の高さは、ミサイルの機動性を考える上では、非常に重要な要素です。
また、弾体経が太く、横から見た場合の断面積が重量に比して大きい事は、翼が小さいという点を補って、ボディ部で操舵力を生み出す要素になっていると思われます。

また、サイドスラスタの利点の一つとして、ミサイル発射直後の低速度状態における機動性の高さを生み出すという要素も評価すべきだと思います。

これらの点から、Cudaは、非常に高い機動性能を持っている可能性があります。

ここまで、射程と機動性という要素でCudaの性能を予言してみましたが、対航空機での性能を考えた場合、Cudaは、AMRAAMのようなBVR兵器とも、AIM-9のような短射程ミサイルとも概念的に異なる運用要領を想定した、別概念のミサイルではないかと思います。

それは、ステルスでの運用を前提にすることで、長射程性能を不要と考え(参考過去記事「F-35の短射程ミサイル搭載等について」)、中短射程で非常に高い性能を発揮するミサイルを目指しているのではないでしょうか。

いろいろと興味深いミサイルなので、今後も注目して行こうと思いますが、最後にこれだけは外さないだろうという推測を書いておきましょう。

それはズバリ、ネーミングです。
確かにそっくりだ。
3875_aquaimages
wikipediaカマスの項より、オニカマス(バラクーダ)の写真。

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