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航空作戦一般

2014年12月27日 (土)

空中給油機で航空優勢を確保できるのか?

先日の記事「制空権問題は航空機の数だけではない」に対して、名無しさんより、「基地ではなく空中給油機(タンカー)を活用し、安全な後方の基地からの進出でカバーできるのではないか?」と言うご意見を頂きました。
湾岸戦争における米軍でも実績があるのだから、被害を受ける可能性のある下地などよりもリスクの少ない新田原の活用や奄美大島への基地建設をすべきではないか、下地を使うとなれば、世論も影響するし、抗たん化施策に金がかかることを考えればタンカーを使用して遠方の基地から作戦を行う方がコストも良いのではないか、というご意見です。
詳しくは、リンク先コメント欄をお読み下さい。

確かに、検討すべき方策の一つです。
ですが、残念ながら、何のための航空優勢(元記事では制空権の用語)なのか、そのためには”どのような航空優勢”が必要なのかを考えると、この方策では目的を達することはできそうにないという結論になります。

先日の記事で言及した中国軍関係者がまとめた報告書では、次のように述べているそうです。

尖閣諸島周辺をめぐる有事を念頭に「日本による制空権の確保は困難」と断定していることが5日、分かった。日本は作戦機が少なく作戦持続能力が低いことなどを理由に挙げた。


前後の文脈が要約されていますが、的確な表現です。

尖閣は、現状では日本が実効支配しています。
自ずと、有事とは、何らかの形で中国軍が尖閣の実効支配を奪おうとする行動となります。

その際、制空権という言葉が使われなくなり、航空優勢という語に置き換わった理由の一つである、時に”常続的航空優勢”と表現される航空優勢の時間的継続性が問題になります。
分かりにくい表現ですが、航空機の航続距離が伸び、空中給油という手段まで出現したため、SAMによる防護でもしない限り、一定の空域の航空優勢を継続して保つことが、困難になってしまったため、制空権という言葉から航空優勢という言葉に変わったという経緯があります。

尖閣有事においては、日本側は実効支配継続のために、陸自部隊を上陸させる可能性も考えられますが、”例え短時間でも”航空優勢が奪われれば、その間に陸自部隊は空爆で大打撃を受ける可能性があります。
これは水上部隊でも同じです。

つまり、尖閣有事では、日本側は常続的な航空優勢を維持し続けないと、作戦目的である実効支配を継続することが難しくなります。
陸自部隊を上陸させても、壊滅させられてしまう状態では、もはや実効支配は揺らいでいると言わざるを得ないからです。

中国の報告書は、この事を指して「日本による制空権の確保は困難」と表現しているのだろうと思われます。

それに対して、名無しさんのタンカー活用案で、尖閣上空の”常続的”航空優勢の確保が可能かと言うと、無理という結論にならざるを得ません。

タンカーは、給油はできても、弾薬は補給できません。
戦闘では、必ずしも命中させられない状況でも、敵機に回避を強要し、我の被害を防止しつつ、僚機による攻撃機会を作為する場合、あるいは、我の安全を確保する(つまり逃げる)ために、牽制目的でミサイルを発射する場合もあります。
また、搭載しているミサイルを全弾射耗しなくとも、むしろ自衛のための残りミサイルを維持した状況で、帰投して補給しようとるすことが良くあります。

つまり尖閣上空で、彼我ともに撃墜が発生しない程度の戦闘が行われただけでも、基地に帰投して、燃料だけでなく弾薬も補給しなければ、尖閣のような基地からある程度離れた空域の航空優勢確保はできません。

更に、タンカーを使用し、後方の飛行場を根拠地とする場合、過去記事「下地島空港を自衛隊が使用する効果」で書いたことの逆を、中国軍が行うことが可能です。
例えば、一端、上記のような弾薬の損耗をさせるようなリスクの少ない戦闘をしかけて在空機の帰投を強要し、その後に本隊を送り込めば、タンカーを使って遠方から参戦する方法では、後詰めの数的増強が間に合わず、数的優勢を簡単に奪われてしまうからです。

また、タンカー自体、及び給油中のタンカーと受給機は、非常に脆弱なため、ある程度後方におかざるを得ない上、1機づつしか給油できない空中給油では、尖閣上空の航空優勢確保といった作戦では、あまり有効ではありません。

では、タンカーは有効ではないのかと言えば、そんな事はありません。

尖閣のような特定空域の航空優勢確保を行う航空作戦は、作戦の区分からするとDCA(防勢対航空)と呼ばれる作戦になります。
対して、一般的に言って(もちろん例外はありますが)、タンカーが有効に機能する作戦は、OCA(攻勢対航空)やAI(航空阻止)になります。

例えば、尖閣有事では、当然ながら空自による航空優勢確保だけではなく、海自による海上優勢確保も重要ですが、その支援作戦として、上記のAIとして中国艦隊に対する対艦攻撃ミッションを行う際などは、極めて有効です。
航空作戦の指揮を行う司令部では、敵の使用する基地や機体の状況を把握し、敵が、今後どれだけの作戦を行う余力があるか図りつつ作戦を進めます。

那覇基地を中心に、尖閣上空の航空優勢確保のためのDCAを展開していれば、在空機の状況から、中国軍側でも、那覇基地の基地機能の限界を考慮して、自衛隊側がAIまで実施する余力があるのかないのか、ある程度は読めます。
しかし、日本側が十分な数のタンカーを保有していれば、那覇基地の基地機能に負担をかけることなく、極端な話、三沢から発進したF-2部隊に、タンカーで空中給油を行い、尖閣周辺の艦隊を攻撃できます。

政治上、可能であれば、OCAとして中国の空軍基地を攻撃することも、同様に可能です。

簡単に言えば、タンカーは、米軍のような極めて攻勢的な、友軍が攻撃を受ける前に、敵の作戦根拠地を潰してしまうような作戦に向いています。
このことは、米軍が多数を保有していることから見ても類推できると思います。

もちろん、防勢作戦主体となる自衛隊でも、F-2が対艦攻撃を行う際に有効ですから、バランスをとってある程度は必要です。
アメリカのように、叩かれる前に叩き潰すという国家戦略を採るなら、なおさら必要です。

後半は余談になりましたが、尖閣上空の航空優勢確保という命題に対する解法として、基地を整備するか、タンカーを整備するかという選択では、基地を整備する方が適切です。

ただし、これは専守防衛が国家方針であることを前提として考えています。
アメリカのように、敵基地を叩き潰す戦術が可能であれば、話は別です。

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2014年12月 6日 (土)

制空権問題は航空機の数だけではない

中国軍の専門家が、日本による制空権確保が困難と発言したとかで、一部で注目されているようです。
「日本は制空権確保は困難」 尖閣視野に中国軍が分析 海上封鎖で「経済破壊」」(産経新聞141206)

 中国人民解放軍の専門家が航空自衛隊を中心に日本の戦力を検討した報告書で、沖縄県・尖閣諸島周辺をめぐる有事を念頭に「日本による制空権の確保は困難」と断定していることが5日、分かった。日本は作戦機が少なく作戦持続能力が低いことなどを理由に挙げた。海上封鎖などによる日本封じ込めで「経済だけでなく戦力も破壊できる」とも指摘した。中国軍筋が明らかにした。

 中国は昨年11月、東シナ海上空に防空識別圏を設定するなど航空戦力を重視しており、軍事対立を想定した検討が本格化していることを示唆している。(共同)


オリジナルのソースから、相当要約されてニュースになっているようなので、記事の趣旨は、本来の報告書の趣旨とはかけ離れている可能性があります。
ですが、共同の記事としては、中国の専門家が、日中の航空戦力バランスが、中国有利になっていると認識している事を報じています。

で、これを受けて、ネットでも早速装備を追加すべきなんて言う意見が呟かれています。

しかし、この内容は、一部の軍事マニアが、中国の戦車戦力が、日本のそれを上回っているので危険だとしているのと同じようなものです。

何が言いたいかと言いますと、地理などの環境要素を考慮せずに、兵器の数だけで語っても、実際の戦闘様相を変えることはできないという事です。

尖閣諸島周辺での航空優勢確保が困難な事は、以前にもこのブログで言及しています。
参考過去記事「下地島空港を自衛隊が使用する効果

那覇を根拠飛行場として、”尖閣上空の”航空優勢を確保しようとする場合、例え戦闘機の配備数を増やしたところで、那覇の滑走路数、管制能力、エプロンや整備格の容積を含めた整備能力などがネックとなり、実際の航空優勢を確保するための、”尖閣上空の”在空機を大きく増やすことは困難です。

それに対して、中国は、上記過去記事にも書いた通り、市路・福州の両空軍基地だけでなく、尖閣-那覇間の距離と同じくらいの距離に、多くの飛行場を持っています。
設備のハンパな基地が数があったとしても、効率的な運用はできませんが、それでも航空優勢を奪うための戦力集中は容易です。

対する日本は、いざとなれば嘉手納の使用や、それ以上に過去記事で書いた下地島を使う事が効果的です。
ですが、先日の沖縄県知事選挙で翁長氏が当選したことで、宮古や石垣の空港を活用することを含めて、これらの方策は難しくなったかもしれません。

また、そう言った運用上の質的戦力増強策だけでなく、F-35の早期戦力化など、質的向上の努力も続ける必要があります。

これらが出来なければ、現状では、尖閣上空の航空戦力を確保することは、確かに困難です。

こう言った報道が出た時に、航空機の機数だけでなく、「下地が必要だ」という意見が、パッと出てくるようになって欲しいモノです。

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2011年9月14日 (水)

ロシア爆撃機による日本周回飛行の軍事的意味

ロシアの爆撃機、TU-95が日本を1周する周回飛行を実施しています。

ロシア爆撃機が「日本1周」 首相訪問時に福島沖も飛行 前代未聞の露骨な挑発」(産経新聞11年9月9日)

ロシア機の日本海及び太平洋における飛行について(統幕発表11年9月8日)
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統幕発表資料より

産経新聞は前代未聞と書いていますが、日本を包み込むようにほぼ1周したことは過去にもあり、以前にも記事を書いてます。
これは示意行為 ロシア機による日本周回飛行

また、同紙は、この飛行が野田首相の福島訪問に合せたものであり、露骨な挑発の意図が見て取れると書いています。
しかし、この飛行の前8月24日から30日にかけて、TU-22情報収集型と思われる機体による4回もの日本周辺飛行が確認されている他、この周回飛行と同日、フリゲート艦など4隻が宗谷海峡を東進していることが確認されるなど、ロシアは大規模な演習を実施中であり、その状況の中での行動であったことを考えると、野田首相の福島訪問に合せたと考えるのは間違いでしょう。
ロシア機の日本海における飛行について
ロシア機の日本海における飛行について
ロシア機の日本海における飛行について
ロシア機の日本海における飛行について
ロシア軍4隻、宗谷海峡通過=千島列島周辺で演習か-防衛省」(時事通信11年9月9日)

演習自体が野田首相の就任に合わせたモノである可能性はありますが、かなり大規模な演習のようですから、妥当な見方とは思えません。

そして、それだけ大規模な演習の中で、あくまで状況の一つとして日本周回飛行が実施されたことを考えると、そこから読み取るべきモノは、政治的意義よりも軍事的意義だと言えます。
一連の活動の中で、ちゃんと軍事的な意味がある行動をしたに違いないからです。

ただし、日本を1周すること軍事的な意味があるわけではありません。
おそらくこれは、日本側に明確な攻撃目標は明らかにせず、かつ正確な長距離航法を実施(しかもIL-78による空中給油付)した作戦を行わせることを意図しただけでしょう。
実際の飛行ルート及び攻撃目標は、太平洋上を、日本のレーダー警戒網を大きく迂回して、東京に南東から向かうとか、那覇を突くといったものになると思われます。

日本とすれば、ロシアがそう言った作戦態様を考え、それを実施可能とするよう、部隊の錬成を行っている事を警戒しなければいけません。

そしてそれは、航空自衛隊にとって、結構キツイ事です。
作戦正面を限定することが難しくなるからです。
具体的には、AWACSやE-2Cによる警戒網を太平洋側にも大きく広げなければいけませんし、航空機も千歳や三沢ばかりに集中させる訳にはいかなくなります。パトリオットなどSAMの配置も、位置だけでなく射撃方位の変換を意図したモノにしなければなりません。

TU-95は、機体としては結構旧式な機体です。
ですが、こういう使い方をされると、実際の作戦時に実行に移されないとしても、日本としては警戒しなければいけなくなりますので、結果的に有効に使われたことになってしまいます。

ロシアが、北方領土周辺での軍事衝突においても、東京など日本全土を攻撃目標とし、それを行えるだけの能力を錬成していることは留意しておくべきことです。

2010年10月 4日 (月)

普天間は嘉手納の予備飛行場

嘉手納機 普天間を使用 滑走路改修 代替措置」(沖縄タイムス10年9月22日)

普天間の嘉手納への統合なんて言ってた岡田前外相が内閣を去ったので、今更そんなに喧伝する必要はないのですが、航空作戦における基地の重要性が分かるニュースなので、簡単に取り上げてみます。

嘉手納基地は、平行した2本のランウェイを持っていますが、改修工事のため1本しか使えない状態が1年半も続く予定となっています。
今までは、一本のランウェイがフラットタイヤ(パンクのこと)などで閉鎖になっても、もう一本のランウェイで運用を継続できたのですが、改修工事のため1本しか運用できないため、同様の場合にも飛行中の航空機が、他の飛行場にダイバート(目的地変更、自衛隊の場合発音はディバートの方が近い)しなければならない可能性が高くなります。

ニュースは、普天間へのダイバートの訓練を、事前に行うというものです。

有事になれば、ランウェイが2本あっても、両方とも損害を受ける可能性がありますし、平時であっても、天候不良によるダイバートは、例え滑走路が2本あっても発生します。

飛行場を起点に運用される航空機にとって、発進基地とは別に、ある程度の近傍(遠すぎると急なディバート時に燃料が持ちませんし、近すぎると天候不良の際にどちらも運用不能になりかねません)に予備飛行場が必要なのです。

その点、嘉手納と普天間はなかなか良い位置関係にあります。
嘉手納からのダイバート先として、那覇も使えます(事実、那覇着陸予定の民間機が那覇の滑走路閉鎖などで嘉手納に降りることもある)が、米軍機が那覇に降りると沖縄の場合非常にウルサイので、米軍とすればダイバート先として民間機が使用しない空港が欲しいのです。

軍用機を運用する航空基地では、被害を受けることを前提として、抗たん性の向上や予備飛行場の確保が重要です。
普天間の移設案で、米軍が杭打ち桟橋方式(QIP)やポンツーン式を嫌がったのも同様のコンテクストです。

さすがにもう嘉手納統合案を言い出す方はいないと思いますが、米(に限りませんが)軍がどういう発想をするのか正しく認識して発言しないと、日米関係を損なうことになります。

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