知事選、衆院選に見る沖縄県民の投票行動
11月16日に行われた沖縄知事選の結果、仲井眞前知事が、有権者の10%近くにも及ぶ約10万票の大差で敗れていたため、衆院選でも自民党議員の苦戦は必至と見られていました。
結果も、4つの小選挙区全てで、自民党議員は敗北し、比例復活しています。
沖縄メディアは、この結果を、普天間の辺野古移設に反対する民意の表われだとしています。
「沖縄、野党が全勝 「辺野古反対」民意再び」(琉球新報20141215)
それに対して、櫻井よしこ氏は、沖縄の民意が成長できなかった結果だと評しています。
「民意の成長が果たせなかった沖縄県知事選現職敗北の“失望”」
選挙が民意を反映するための制度ですから、琉新の評価に間違いはなく、その結果が、大局観の乏しい感情的な投票行動であったのなら、櫻井氏の評価も間違いとは言えないでしょう。
しかし、果たして本当にそうだったのか?
衆院選の結果を、全国と比較して見た時、私には疑問に思えました。
12月14日に投票が行われた第47回衆院選は、国政レベルでは、大した争点もなく、最大野党である民主党に対して国民が懲りていたため、投票率は戦後最低だった前回の59.32%を大きく下回り、52.66%にしかなりませんでした。
それに対して、沖縄だけは、普天間移設問題という大きな争点があり、選挙前に、知事選の勢いを駆り、沖縄県民が大きな不満をぶつける選挙になるのではないかと予想していました。
しかし、確かに移設反対を唱える候補が勝利したものの、沖縄でも投票率は過去最低の52.36%でした。
「衆院選:沖縄県内投票率 過去最低52.36%」(沖縄タイムス20141215)
この投票率に対して、上記リンク記事は次のように評しています。
過去最低の投票率は、有権者から安倍晋三首相の「大義なき自己都合解散」と批判された今選挙の争点が不明瞭で、投票行動に結びつきにくかったことが影響したとみられる。
また、県内では知事選のほか、市長選や統一地方選など選挙の当たり年となり、有権者に選挙疲れが出たとの見方もある。
「沖縄の総意」を政府に突き付けるための選挙だと息巻いていた沖縄メディアとしては、こう書かなければならなかったのでしょう。
普天間移設が争点となった選挙は何度もありますが、仲井眞前知事がゴーサインを出し、それをひっくり返しかねない翁長新知事が就任した直後の国政選挙として、今回の選挙は非常に大切な選挙でした。
普天間の辺野古への移設拒否が県民の総意であるなら、死票が多くなる小選挙区で単に勝利するだけでなく、大勝を示したかったはずです。
しかし、結果を見ると、歴史的に左派が強い2区、辺野古を抱える3区は、移転反対派が有権者数の10%程度上回ったものの、宮古・石垣などの八重山と本島南部の4区は、辛うじて反対派が勝利した形ですし、那覇の1区に至っては、最終的には賛成に回るだろう維新の下地氏の票を、自民の国場氏と共に容認派にカウントすれば、容認派の方が有権者数の10%程度多かった結果となっています。
つまり、得票数で考えれば、結構接戦と言える状況でしたし、投票率が低く、投票をしなかった人は、単に無関心だった可能性もありますが、恐らく複雑な心境だったのでしょう。
知事選に立ち返っても、仲井眞氏は翁長氏に10万票の大差を付けられましたが、ここにも出ていた下地氏が7万票あまりを得ており、仲井眞氏+下地氏(容認)vs翁長氏+喜納氏(反対)では、それほど大きな差はありませんでした。
しかも、投票率も64%あまりで、決して高くありません。
つまり、キャスティングボートを握る悩んでいる層が、「投票しない」という投票行動を選んだ結果が、知事選・衆院選の結果です。
政府・与党は、この点を読んでいます。
そのため、早速、沖縄振興予算の減額というムチを振るう構えです。
「沖縄振興予算、概算要求から減額 政府方針」(沖縄タイムス141226)
この他にも、アメとムチを使い分け、上記の悩んでいる層にアピールしてゆくつもりなのでしょう。
今後の沖縄世論に注目です。
なお、余談ですが、政府のこの動きに対して、沖縄タイムスは、こんなセンセーショナルな紙面を作っています。
(政府一転 沖縄を冷遇)
沖縄を冷遇と書き、沖縄差別を色濃く出そうとしていますが、特段の厚遇から、相当の厚遇に落としただけです。
沖縄同様に、北海道開発庁があった北海道などは、次のリンクのような状態ですし、北海道・沖縄に限らず、今は地方は非常に苦しい状態です。
「「燃えるゴミ」が燃やせない町・夕張に、暗い日本の未来をみた」
歴史的経緯はあるにせよ、このような書き方を止めないと、冷たくなりつつある本土の沖縄への視線が、更に悪化するような気がします。
昔と違い、沖タイ、琉新を目にする本土民の数は、2ケタも3ケタも違います。
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