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周辺国動向

2015年12月29日 (火)

日韓合意は、「人命は地球よりも重い」発言に等しい

慰安婦問題が、日韓政府間で合意に達し、「最終的かつ不可逆的に解決される」ことになったそうです。

ですが、この合意は、日本がテロに屈することを宣言した「人命は地球よりも重い」発言に等しいように思えます。

日本政府は、日韓請求権協定が存在するため、従来より、慰安婦問題は”最終的に”解決済みとしてきました。
ですが、今回の合意で、”2度目の最終合意がありうる”ことを示したことになります。

これは、テロの有効性を示した「人命は地球よりも重い」発言と同じように、徴用問題などでも”2度目の最終合意がありうる”と韓国人に印象づけてしまうように思えます。

政府は、今回の合意に、日韓請求権協定の確認を明文化して入れ込み、そのことによって徴用問題なども解決済みであることを韓国政府に迫っているようです。
しかし、尹外相は、日韓請求権協定に対して、「私たちの立場は変化がなく、この先も変化はない」と語ったということで、この合意に確認が明文化されようとも、慰安婦問題以外の徴用問題などは、引き続き懸案とし続ける考えのようです。
28日午後に日韓外相会談、共同会見も予定 韓国メディアは慰安婦像撤去など日本側要求を批判」(産経151228)

また、政府間の合意であれば、普通は、政権が交代しても、その合意は守られるべきものです。
しかし、韓国相手には通用しないでしょう。
既に死に体となりつつある朴政権との合意など、前大統領が軒並み訴追されるような韓国にあっては、政権が変われば簡単に変わりそうです。
特に、次の政権交代が、今回の合意を認めないことを主張して実現されれば、選挙公約のため、間違いなく反故にされるでしょう。

韓国は、合意の文書化に反対しているようです。
文書化されなければ、100%反故にされそうです。

2度目の最終合意がありうる事を示し、徴用問題などに火を注いだ上、慰安婦問題も結局解決しないようなら、この合意の責任は、一体誰が取るというのでしょうか。

不利益を被るのは、我々国民です。
10億円の基金は、我々の税金で支払われるのですから、強制的に一人頭10円の募金をさせられたようなものです。
10円は、金額的には大したことがなくとも、政府の意図とは逆に、韓国人に日韓請求権協定が意味のないものだったと認識させ、日本批判を勢いづかせるようなことにならないか、それが不安です。

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2015年5月11日 (月)

北朝鮮SLBM発射画像が合成である決定的理由

北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験に成功したと伝えられましたが、ほどなく合成写真疑惑が報じられる結果になっています。
北朝鮮のミサイル写真は合成? 韓国メディア指摘」(産経150510)

既に各方面で指摘されているようですが、合成を疑っている理由は噴煙の量や、発射されているミサイルの角度です。

そのそも、このミサイル発射情報は、北朝鮮の労働新聞がリリースしたものです。
労働新聞に掲載された写真は5枚でした。
Nc1
Nc2
Nc3
Nc4
Nc5

確かに、噴煙は少ないように見受けられますし、ミサイルの角度も写真間で差異があります。

しかし、噴煙の量は、推進薬が不明なミサイルでそれを言っても確かとは言えません。
また、ミサイルの角度に至っては、当然複数の場所から観測・撮影していれば、異なって当然です。
水中発射のコールドロンチの場合、次の動画のように、圧縮空気等で水上に打ち出された後、ロケットに点火されるので、発射直後は不安定で、同一ポイントから撮影していても、角度は変わります。


私も、水面ではじかれ、横に広がる噴煙が足りない気がするものの、「コラだ!」と断言できるかと言うと……

しかし、「これはおかしくないか?」という写真が1枚あります。
Nc5_2

この写真の何がおかしいかと言うと、金正恩氏が視察している位置が、近すぎるのです。
コールドロンチの場合、次の動画のような事故が起こりえます。


この動画のように、射出後に、単にミサイルに点火しなかっただけならば、まだマシです。
ミサイルにも寝ぼけたやつが時折混じってまして、しばらくたってから点火するケースもあるのです。
その際、水面に落ちたミサイルが、たまたまこの視察船の方を向いていたなら……

ロシアは、コールドロンチが好きですが、アメリカは、そうした事故を防止する観点もあって、戦術的には有利なコールドロンチをあまり採用しません。
潜水艦発射の場合、水中からのホットロンチが危険なためコールドロンチを採用しますが、そのくらいでしょう。

実際、潜水艦でのコールドロンチの事故としては、中国の潜水艦発射弾道ミサイルJL-2の発射試験において、射出したミサイルが点火せずに落下し、落ちてきたミサイルによって発射した潜水艦が大破する事故も起きています。

北朝鮮の陸上でのミサイル試験では、それ以上に事故も起きています。
にも関わらず、初めての実射試験で、こんな近くから視察するなんて、狂気の沙汰です。
勇気を示したかった、実は替え玉である……という可能性もありますけど。

2014年10月 4日 (土)

イスラム原理主義と民主主義が、尖閣危機を招く

風が吹けば桶屋が儲かるではないですが、イスラム原理主義と民主主義が、尖閣危機を招くという図式ができつつあります。

産経以外(というか、石平氏以外)は、報じていませんが、朝日新聞などの左派系メディアが金科玉条としている”文民統制”が、中国では怪しくなってきています。

中国の場合、軍組織が国軍ではなく、共産党という党の軍隊なので、そもそも文民統制という言葉を使うことが不適切であるという、技術的問題は無視して書きますが、本来は、中国共産党という文民による組織が、軍を指揮しています。

ところが、最近になって、軍人が中国共産党の意向に沿わない発言・活動をすることが多くなってきました。
「掘削は続ける」政府方針まで宣言、習政権乗っ取る強硬派軍人」(産経新聞140626)

訪米中の房峰輝氏は、米軍関係者との共同記者会見でベトナムとの紛争に言及した。彼は「中国の管轄海域での掘削探査は完全に正当な行為だ」とした上で、「外からどんな妨害があっても、われわれは必ずや掘削作業を完成させる」と宣した。
 ベトナムとの争いが始まって以来、中国側高官が内外に「掘削の継続」を宣言したのは初めてのことだが、宣言が中国外務省でもなければ掘削を実行している中国海洋石油総公司の管轄部門でもなく、解放軍の総参謀長から発せられたことは実に意外である。


習近平氏もヒヤリ…目に余る中国軍の「外交権干犯」」(産経新聞141002)

習主席がインド入りした当日の17日、中国との国境に接するインド北西部ラダック地方で、約1千人の中国軍部隊が突如インド側に越境してきて、それから数日間、中国軍とインド軍とのにらみ合いが続いたという。
中略
アメリカ海軍大学校で開催中の国際シンポジウムに参加した中国海軍司令官の呉勝利司令官が香港フェニックステレビのインタビューに応じ、米中関係のあり方について「米中間では原則面での意見の相違があり、その解消はまず不可能だ」と語った。それは明らかに、習主席や中央指導部の示す対米関係の認識とは大きく異なっている。


軍人が、このような専横な態度を示せるようになってきた理由は明確ではありませんが、当然、軍と共産党の力関係において、共産党が軍を頼らざるを得ない構図が出来ていると思われます。

そして、それは恐らく、イスラム国を生んだイスラム原理主義と、香港でデモを起こさせている民主主義です。

香港のデモは、第2の天安門事件化する懸念があるとおり、現在のところ警察組織で対応できていますが、状況次第では、軍を投入して弾圧せざるを得ない可能性があります。

イスラム国は、ウイグル問題などで、中国が国内のイスラム教徒を弾圧していることから、中国を敵視しており、中国政府は、イスラム過激派の流入を懸念しています。
「イスラム国」敵にまわした中国 懸命の親イスラム路線もウイグル弾圧で迫害国家に」(産経新聞140905)

「イスラム国」のリーダーは7月、中国をイスラムの敵だと名指しして非難したうえ、イスラムの「兄弟」たるウイグル人を解放するために新疆を占拠すると公言した。
中略
 中国にとって深刻なのは、ただでさえ手を焼いているウイグル族の散発的反乱が今後、「イスラム国」のこの「宣戦布告」で勢いづき、中東・中央アジアからのイスラム過激派の支援や戦闘員の流入が急増しそうなことである。これではますます「中国対イスラムの戦争」という何としても避けたかった様相を呈してしまう。

中国、有志国連合参加に前向き 対イスラム国、ウイグル族が戦闘員参加の可能性」(産経新聞140910)

中国側は最近、少数民族のウイグル族のイスラム教徒がイスラム国の外国人戦闘員として加わった可能性があると指摘している。
 米高官は同紙に「中国は国内外でのテロへの懸念を強めている。米国の国益や価値観と一致するような方法による(中国参加の)機会がないか検討している」と述べた。


つまり、中国国内において、共産党による一党独裁体制を危うくしかねないのが、イスラムと民主主義となっており、それを抑えるためには、
共産党が軍を頼らざるを得ない状況が生起しているといことです。

そのため、習近平を始め共産党中央は、勝手な言動を行う軍人を、抑えられなくなっていると思われます。

日本であれば、政府方針どころか、過去の歴史認識でも政府見解と異なれば首が飛びますが、中国では、発言は言うに及ばず、中印国境で軍を勝手に越境させても、軍司令官を首にできない状況です。

ここまでの状況になっていますから、尖閣に対する日米のコミットメントが低下すれば、中国軍は、いつ尖閣で事を起こしてもおかしくありません。

南シナ海で起きているASEAN諸国との紛争も、軍が、共産党中央の意向を無視して動いている可能性も否定できないでしょう。

軍事組織は暴走するという信念に基づき、自衛隊の文民統制には、過剰なまでの反応を見せるマスコミが、こうした状況にも、ほとんど沈黙しているのは、どういう訳なのか、不思議でなりません。

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2014年4月 4日 (金)

ノドン発射に見る金正恩の思考回路

先月26日、北朝鮮がまたしてもノドンを発射しました。

発射時刻は、日本時間の2時35分と42分の2回と報じられています。
この時刻は、ハーグにおいて開催された日米韓首脳会談の開始時刻、オランダ現地時間25日18時35分と完全に一致しています。

それだけに、この発射は、日米韓首脳会談に向けたメッセージであることは間違いありません。

北朝鮮、もっとありていに言うと、金正恩とすれば、包囲網を強める日米韓に対して、断固たる抵抗の意志を示したということなのでしょう。
具体的には、当然の事ながら、ノドンを始めとした弾道ミサイルによる反撃を行うという意志表示です。

しかし、日米韓首脳会談は、実際には一応平穏の内に終了しました。
会談開催前には、朴槿恵大統領が、安倍首相に対して歴史問題に言及する可能性もささやかれ、荒れる可能性さえありました。
ですが、朴槿恵大統領は歴史問題に触れるつもりだったかもしれませんが、まさに会談が始まるタイミングでミサイル発射があったことで、結果として歴史問題には言及できなくなりました。もしそんな事をしていれば、アメリカからは無能な人物と見放されたでしょう。

結果的に、ノドンの発射は、日米韓3カ国の協調を強めただけで、楔を打ち込む事にも、牽制にもなっていません。全くの逆効果だった訳です。

会談に合せてノドンを発射すれば、この様な展開になることは、我々の側からすれば、簡単に読める話です。
しかし、金正恩には読めなかった。
だからこそノドンを発射した。

これが何を意味することは、北朝鮮が掲げる「先軍政治」(あるいは先軍思想)が、決してお題目ではなく、北朝鮮・金正恩の思考を規定するものになっていると言うことだろうと思います。
クラウゼヴィッツは、「戦争はそれ以外の手段を以ってする政治の延長である」と言っていますが、金正恩にとっては、逆に、政治こそ戦争の延長であって、軍・戦争こそが全てにおいて優先されるべきものとなっています。

金正恩の思考が、このようなものである事を踏まえると、日本が取るべき方策は、単純に導けます。
北朝鮮に対して圧倒的な”軍事的”圧力を、米韓と協力して与えることです。

この事は、最近になって拉致問題が進展の兆しを見せている事でも実証されていると言えます。
安倍政権が、集団的自衛権行使に舵を切り、日米韓が連携して北朝鮮に軍事的な行動を採る可能性を強めた事で、北朝鮮としては、一番与しやすい(北朝鮮に強硬な姿勢を取る必要性が薄い)国である日本を切り崩しにかかっているのでしょう。

金正恩の思考では、政治は軍事作戦に寄与すべきものでしかありません。
日本が、拉致問題の進展等の政治的果実を望むなら、策源地攻撃能力の獲得を目指すなど、北朝鮮に軍事的圧力を高めることが必要だろうと思います。

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2014年2月16日 (日)

靖国参拝に対する”失望”の真意

今更な感がありますが、安倍首相の靖国参拝に対するアメリカの態度について、軍事的観点から書いてみたいと思います。

結論を最初に書きます。
今回のアメリカの態度は、安倍首相と外務省の感覚に軍事という観点が乏しいため、靖国参拝の時期を誤った事が原因かもしれません。

安倍首相の靖国参拝後、大使館の報道官が「米国政府は失望している」と声明を発しました。

報道では、必ずしも声明の全文が報じられた訳では無いため、アメリカが靖国参拝に対して”失望”したと理解した方も多いようですが、報道官は、「近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに失望している」と言っています。また、声明発表後の記者会見において、この”失望が、靖国参拝に対してなのか、それとも中韓の反発に対してなのかという質問に対しても、「日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させる行動を取ったこと」だと明確に回答しています。
その後、アメリカ国務省の報道官も、「参拝そのものに論評を加えたものではなく、中国や韓国との関係悪化を懸念したもの」だと述べています。

日本に気を使ったため、このような表現になったと見る向きもありますが、私はもっと単純に、緊張悪化が”アメリカの不利益”となるために”失望”したのだと考えています。

以前の記事「李大統領の竹島訪問阻止は可能だった」でも書きましたが、朝鮮半島有事において、日本が周辺事態法を適用して米軍の後方支援を行うか否かは、戦局に大きな影響を与えます。
先日も、参院予算委で安倍首相が集団的自衛権を行使することになれば、対象が同盟関係にある米国以外にも広がる可能性に言及しています。
「集団的自衛権:「密接な関係国には権利。国際的な常識」」(毎日新聞14年2月7日)

現在の韓国・北朝鮮間の軍事バランスからすれば、朝鮮半島危機が生起しても、北朝鮮が核を使用しない限り、韓国が敗北することはないと思われますが、日本が米韓を支援しなければ、韓国に駐留する米陸軍第8軍を中心として、米兵の死傷者が増大することは間違いありません。(もちろん韓国の軍・民間人も)

アメリカの世論は、モンロー主義の再興で世界の警察官であることに否定的になりつつあり、米兵の死傷者の発生には以前に比べかなりセンシティブです。
もし日本の支援が怪しい状況になれば、アメリカ政府として、北朝鮮に強い態度を取ることも難しくなってしまいます。

さらに、この政治的な構造は、実際に死傷者が発生しなくとも、つまり危機が高まっただけでも、政治的に問題になりかねない点が重要です。

朝鮮半島での危機が高まった際、米軍は在韓米軍の増強を図ろうとするでしょう。
その一方で、北朝鮮はそれを阻止したがります。
この状況で、例えばのケースですが、北朝鮮が弾道ミサイルを使用して日本を恫喝する、例えば、1996年の台湾総統選挙における台湾海峡ミサイル危機のように、相模湾等にノドン等を打ち込み、日本が米軍を支援すれば、弾頭の代わりに核廃棄物を詰め、ダーティ・ボムとしたミサイルを東京に打ち込む、などという恫喝をしてきた場合、日本国民が対米支援に反対する可能性はかなりあると思われます。
(弾道ミサイル防衛はありますが、ミサイルの打ち方によっては、迎撃確率を低いものにもできるため、100%の迎撃は不可能です)
正直に言って、現時点での日韓関係でも、このような恫喝が行われた場合、日本国民が米韓支援を支持するとは言い切れません。
韓国を助けるために、原発事故以上の被害を負う可能性を受け入れるのですから、最近の韓国の態度を見れば、感情的には、私でも嫌です。
現状でも怪しいと言える状況であるのに、靖国参拝で、韓国が無思慮に日本批判を繰り返せば、(アメリカは最近の韓国の姿勢から、そうなると読んだと思います)、反射的に日本の反韓感情も高まり、日本が米韓を支援しない可能性が高まります。

アメリカが、”失望”を表明した理由には、日中関係の悪化、具体的には尖閣危機が発生し、アメリカが巻き込まれる可能性を懸念したということも、もちろんあるでしょう。

しかし、ここまで述べたような懸念を踏まえて考えれば、安倍首相と外務省の感覚に、軍事という観点が乏しいため、靖国参拝の時期を誤ったという見方ができます。

前述の記者会見で、ある記者が、過去の首相による靖国参拝に対してはアメリカは声明を発しなかったが、今回に限って声明を発した理由を聞いています。
それに対する答えは、「ある特定の時期に地域の緊張を悪化」させた事だと答えています。

We were commenting on something at a certain period in time that we thought would hurt tension in the region


これは、日中及び日韓間の関係が悪化しているここ数ヶ月、あるいはここ数年を事を指しているとも取れますが、ニュアンス的には、もっと短いタームを指しているように思えます。

安倍首相の靖国参拝は12月26日でした。
そこから遡ること、わずか2週間あまり、12月9日には、北朝鮮で張成沢の粛正が公式発表され、13日には処刑が公表されました。
その背景には北朝鮮中枢での権力闘争の可能性もあり、粛正は半島情勢を一気に不安定化させる可能性もありました。

延坪島砲撃事件は金正恩が主導していたとの見方もあるくらいですから、この張成沢粛正の後、米韓軍事筋は当然に緊張します。

安倍首相の靖国参拝は、その中で行われた事になります。
在日米軍にとっては、非常に間の悪い参拝だったでしょう。

アメリカが表明した失望の真意は、「時期を考えろ!」だったかもしれません。

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2014年1月23日 (木)

安重根記念館に理解を示せ!

安重根記念館が作られたことで、日本政府を含め、これに反対する動きが多数あります。
安重根記念館 中韓連携に強く反論せよ」(産経新聞14年1月21日)

しかし、この不随意反射のような反対をする前に、良く考えてみれば、これはむしろチャンスだと気づくべきです。

ミソは、この記念館がソウルではなく、ハルビンに、中国によって設置されたことです。

従来、安重根は、中国にとって、触れたくない人物でした。
産経新聞も過去にはこのように書いています。(wikiから引用)

中華人民共和国では、安重根が「日本の首相経験者を暗殺した人物」として高い知名度を持っているが、中国政府は、安重根の評価は反日勢力を刺激し、国内の社会不安を増大させるとして、積極的な評価は行っていなかった。


中国にとって、安重根は、”反日の闘士”であるならば問題はありません。しかし、”民族自決の闘士”であるならば、存在を認める事はできない人物であるということです。

朝鮮民族は、韓国及び北朝鮮に大多数が居住していますが、中国内にも、吉林省の延辺朝鮮族自治州を中心として200万人が居住しているとされる他、北朝鮮からの難民も多数入っていると見られています。

延辺朝鮮族自治州も、漢民族の移住が進められたため、人口比率では漢民族の方が多い状況ですが、朝鮮族自治州となっているとおり、歴史的にも漢民族の土地ではありません。

このような状況にあって、”民族自決の闘士”が評価されれば、ウイグルやチベットにも民族自決の炎が燃え上がりかねません。

この安重根記念館の設立は、中国にとって宣伝戦の一つです。ですから、守るだけではなく、反撃することも可能です。
この宣伝戦で掲げられている剣は、諸刃の剣だからです。一歩誤れば、自分を傷付ける剣なのです。

日本とすれば、これを利用することができます。
安重根記念館に、そして安重根自身に理解を示すべきです。抗日の闘士ではなく、民族自決の闘士として。

人殺しは評価できませんが、チベット独立運動の象徴であるダライラマや東トルキスタン(ウイグル)独立運動でのラビア・カーディルと並べて評価・理解を示すことで、中国に揺さぶりをかけることができます。

戦闘の推移次第では、一旦は設置した安重根記念館を閉館ないしは撤去するかもしれません。
そうなれば、中韓関係にも楔を打てたことになるでしょう。

日本政府としては、過去に殺人罪で罪に処した以上、表立って肯定的な評価はできないかもしれません。
官房長官がテロリストと評したことに関して、ここで書いたような配慮があるなら、評価するとの向きもありますが、恐らく単純に反発しただけでしょう。
安重根を「テロリスト」とする意義

ですが、マスコミを含めた民間レベルなら、自由にモノが言えます。

安重根を非難しようが評価しようが、今更、日韓関係には大した影響はありません。
ですが、反日の闘士ではなく、朝鮮民族自決のために戦った闘士としてイメージ戦略を行うことで、対中国では、攻めの宣伝戦ができます。

官房長官も、いっそのこと、次のように言い直したら良いのです。
「テロは評価できない。だが、ダライラマやラビア・カーディルのように、民族自決のために命をかけて戦った事には理解を示したい」

中国がなんとコメントするか見物です。

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2013年11月16日 (土)

中国、必死のアピールも日本マスコミはスルー

先日、「H-6の沖縄通過飛行は集団的自衛権行使問題に対する恫喝」、「Y-8による第1列島線突破飛行の軍事・政治的意味」の記事で、中国が接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を推し進め、沖縄を越えて、太平洋上において米空母機動部隊の接近阻止を図る事を意図しており、この行動は安倍政権が推し進める集団的自衛権行使に関する解釈変更に対して、那覇を叩くと言う恫喝(ブラフ)だと書きましたが、日本のマスコミは、中国の恫喝意図については、(恐らく理解できないからだと思いますが)完璧にスルーでした。

そのため、中国は業を煮やしたのか、H-6とY-8をセットにして、3日連続で飛行させ、もはや必死とも見えるアピールをしています。
中国機の東シナ海における飛行について」(25日分)
中国機の東シナ海における飛行について」(26日分)
中国機の東シナ海における飛行について」(27日分)

ですが、今回マスコミは、当初のY-8以上に、完璧なスルーでした。

軍事音痴も極まれれりな気がします。
ここまで必死にアピールしてるんだから、取り上げてあげればいいのに……
まあ、他国の恫喝が、一般の人に対して効かないという意味ではありがたいのですが……

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2013年9月21日 (土)

H-6の沖縄通過飛行は集団的自衛権行使問題に対する恫喝

2ヶ月ほど前にも、洋上監視型Y-8が、沖縄を越えて太平洋に進出し、その意味を記事にしていますが、今度はもっと意味の分かりやすいH-6が、同じような経路を通って太平洋に進出しています。
参考過去記事:Y-8による第1列島線突破飛行の軍事・政治的意味

統幕発表:中国機の東シナ海における飛行について

今回確認されたH-6
Ws000023
統幕発表資料より

飛行経路
Ws000022
統幕発表資料より

H-6は、基本的には爆撃機ですが、海軍が保有する対艦攻撃を主任務とする機体もあります。
統幕発表資料では空軍機なのか海軍機なのか発表されませんでしたが、飛行経路からすると、海軍機であることが強く疑われました。
そして、この件については、日本国内で大きく騒がれた訳ではなかったものの、むしろ中国がアピールする形で、海軍機だったことが中国政府によって発表されています。
中国軍爆撃機の南西諸島通過に中国「訓練、特定国に向けたものでない」」(産経新聞13年9月9日)

中国国防省は9日、「海軍の航空機が西太平洋で訓練をした」とした上で「特定の国や目標に向けられたものでもない」とする談話を発表した。


空自は、H-6がどこまで進出したのか、追いかけて調べなかった(恐らく航続距離の関係で追い切れなかったものと思われます)ようですが、この対艦攻撃型H-6(D型orG型)が太平洋まで進出した軍事的な意義は明確です。
Y-8についての前掲過去記事と同様に、中国が接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を推し進め、沖縄を越えて、太平洋上において米空母機動部隊の接近阻止を図るつもりだと言うことです。

その上で、中国がわざわざ発表したことを考えると、今回のH-6の飛行は、Y-8以上に政治的な意味も見て取ることができます。

H-6は、原型機体が旧ソ連のTu-16であり、中身はモダナイズされてはいるものの、基本的な飛行性能は、1950年代に開発された旧式機です。
沖縄本島から迎撃機が上がれる状況では、太平洋上まで進出して対艦攻撃を行う事は、100%不可能です。

つまり、中国海軍がH-6により太平洋上で接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を行うためには、嘉手納の米空軍、そして”日本が集団的自衛権を行使するならば”那覇の空自戦力を叩いた後でなければ実施できないということです。

この事実を踏まえると、H-6の、そしてY-8の太平洋進出飛行は、安倍政権が推し進める集団的自衛権行使に関する解釈変更に対して、那覇を叩くと言う恫喝(ブラフ)であるとも言えます。

中国が那覇を攻撃する具体的手段としては恐らく弾道ミサイルがメインになるでしょう。
また、J-20の開発が順調に進めば、J-20も投入されるでしょうし、J-11やJ-10、そして無人攻撃機による航空攻撃もありえます。

いずれにせよ、7月のY-8、9月のH-6と、我が国の集団的自衛権行使問題の進展に合わせた飛行は、中国国防省が、わざわざ「特定の国や目標に向けられたものでもない」と白々しい談話の発表を行ったことからしても、その裏には政治的な意味があると見るべきでしょう。

コレが、集団的自衛権行使の解釈変更に対する恫喝であることを報じるマスコミが皆無なことは、中国としたら当てが外れたと思っているかもしれませんが……

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2013年6月 9日 (日)

日韓防衛協力は必要なのか?

日韓関係の悪化に伴い、韓国側が日韓防衛協力に積極的でないことを報じるニュースが度々流れます。
韓国側「日韓防衛相会談は困難」 歴史認識など背景か」(朝日新聞13年5月29日)

アジア安全保障会議の場を利用した日韓防衛相会談について、韓国国防省関係者は29日、開催は困難との見通しを示した。歴史認識問題や日韓の防衛協力をめぐる韓国内の厳しい世論が背景にあるとみられる。
中略
日韓間では昨年、軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の締結をめぐって韓国内で批判が高まり、署名の直前に延期された経緯がある。また、日本の閣僚らの靖国神社参拝や歴史認識問題に韓国側が反発し、韓国外相が訪日を中止するなど日韓だけの対話ができない状況が続いている


半島情勢が悪化すれば、北朝鮮が大量のノドンに化学兵器やダーティボムを搭載し、日本に打ち込んでくる可能性はかなり高いと思われます。
これを迎撃するため、日本政府は弾道ミサイル防衛の努力をしているのですが、これを効率的なものにするためには、イージスやFPS-5の見通し範囲外(下限より下)の情報、つまり、韓国国内のレーダー情報は是非とも欲しいところです。

ですが、前掲記事にもあるとおり、韓国が軍事情報包括保護協定(GSOMIA)に応じようとしないため、現在はこれを入手できる態勢が整っていないものと思われます。

この観点から見れば、日韓防衛協力をなんとか推し進めて、ノドンの脅威を無力化したいところです。

ですが、そもそも、そんな努力を日本側がする必要があるでしょうか。

日本にとって、経済的な面で韓国は決して小さな存在ではありません。ですが、必須な存在でもないでしょう。
半島情勢が悪化し、ソウルが火の海となったとしても、それが日本の死活を制する問題にはなりません。
韓国が、親しみを持つべき存在なら、それは利害だけで判断する問題ではりませんが、韓国の反日感情を鑑みるに、そんな配慮をすべき存在とも思えません。

にもかかわらず、半島情勢が悪化した際に、介入する米軍を支援し、結果として日本がノドンの標的となるのは、純粋に対米配慮です。

以前にも「李大統領の竹島訪問阻止は可能だった」として、対米支援をブラフとして使うことを記事として書いてますが、日韓防衛協力、そしてその先にあるGSOMIAが、半島情勢悪化時に韓国を支援するためのものであるにも関わらず、韓国がそれに積極的でないなら、日本はもう韓国など無視して、半島情勢悪化は周辺事態として認定しないとでも発言すれば良いのです。

アメリカが、日本による支援を必要とするなら(するに決まってますが)、韓国の説得などアメリカにやらせておいたらいいのです。

日韓防衛協力なんて、止めてしまえばよろしい。
日本は半島情勢に対しては中立を保つだけでも、日本の安全は確保できるのですから。

こう言う本音は、責任のある政治家は対アメリカで支障があるため発言できません。私のような一介のブロガーだからこそ、声を大にして言いたいと思います。

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2013年4月 8日 (月)

北朝鮮による恫喝激化は予想された事態

北朝鮮による恫喝の激化は、予想された事態です。

その理由は、金正恩が凶人だからという訳ではありません。
弾道ミサイル技術の進展により、北朝鮮の米国本土への攻撃が実行可能になりつつあるからです。

手前味噌な話になりますが、以前にHPで公開していた小説は、北朝鮮が米国に到達可能な弾道ミサイルを開発したことにより、アメリカによる核の傘の信頼性低下が発生し、それを見込んだ北朝鮮が、アメリカのMDへの協力中止を要求して、日本に武力行使を行なうという内容でした。
ちなみにその小説は、2007年に執筆し、2008から公開してました。

北朝鮮による恫喝は、過去にも何度も例がありますが、今回ほど派手なものではありませんでした。
それは、北朝鮮自身が、いくら大口を叩いた所で、アメリカを恐怖させることは出来ないと知っていたからでしょう。

しかし、昨年12月の衛星打ち上げにより、アメリカに直接攻撃する能力があることを示したことで、その恫喝に現実味が増しました。
北朝鮮の十八番である瀬戸際外交が、朝鮮半島での紛争という地域紛争の瀬戸際から、アメリカへの核攻撃という瀬戸際にステップアップしたとも言えます。

そして、北朝鮮は、その効果を確かめつつ、現在の恫喝激化に傾倒していると思われます。
北朝鮮:無関心から一転 米メディアの関心、急速にアップ」(毎日新聞13年4月1日)

北朝鮮が3月30日に「南北関係は戦時状況に入る」との特別声明を発表するなど、米国や韓国に向けた挑発的言動を強める中、北朝鮮に対する関心が米メディアの間で急速に高まっている。主要な新聞、テレビは北朝鮮の動向を連日詳しく報道し、記者会見では北朝鮮に関する質問が相次いでおり、米国では異例の事態だ。


米国内での報道が、北朝鮮に注目すれば注目するほど、北朝鮮は恫喝外交を強化し、アメリカから譲歩を引き出そうとするでしょう。

しかし、この北朝鮮による国家規模のテロ(と要求)に対して、オバマ政権は、普通のテロと同様に、一切見返りを与えない方針です。

 オバマ大統領は3月13日のABCテレビのインタビューで「我々が現在試みているのは悪い行為に見返りを与えないことだ」と、挑発が続く間は一切の交渉に応じない考えを明言した。CBSテレビは同30日、米高官の「北朝鮮は戦争しない」との見方を報じており、北朝鮮に取り合わないことが米側の戦略となっている。


このままでは、北朝鮮は、被害を与えずに恫喝を強め続けることを迫られます。

もしかすると、アメリカは真珠湾を待っているのかもしれません。

現在、ムスダンの発射準備が進められていると伝えられています。
北ミサイル「ムスダン」と断定 政府、衛星写真を分析」(産経新聞13年4月6日)

ムスダンの射程からすると、目標はグアム近海だと思われます。
米国は迎撃体制 グアムにTHAAD配備へ」(スポーツ報知13年4月5日)

単に打ち上げ能力を示すだけでは十分ではないと判断したのでしょう。
北朝鮮としては、アメリカが、9.11を契機として、アフガンに自衛権を行使したような事態にならないよう、グアムから十分に離した位置に着弾させるつもりだと思われますが、まかり間違ってグアムに落ちないとも限りません。

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