あたご事故の処分見直しと雫石事件
あたご衝突事故による刑事事件裁判において、関係者の無罪が確定したことを受け、防衛省内で一旦下された処分の見直しが行われました。
護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故に関する再発防止策の追加及び懲戒処分等の見直しについて
細部は次のとおりです。
事故の主因が漁船側にあるとは言え、あたご側にも過失がない訳では無いため、処分自体がなくなった訳ではありませんが、処分内容は、全員大幅に軽減されています。
以前の記事「あたご事件が隊員の統率に与えた悪影響」で書いたとおり、石破防衛大臣及び防衛省が、政治的判断で隊員の処分を決めたことは、長期に渡って自衛隊に悪影響を与えると思いますが、今回の見直しで、多少の持ち直しもできるでしょう。
今回の見直しに至った理由は、政治的な判断による結論ありきの海難審判に影響されることなく、”正常な”裁判が行われたことによります。
冤罪が頻発する日本においては、これは奇跡と言える事態ですが、その奇跡を起こしたのは、自分の正当性を主張し続けた長岩3佐と後潟3佐の強い意志です。
しかし、それさえも出来ずに汚名を着せられている自衛官も居た可能性があります。
俗に、雫石事件と呼ばれる自衛隊機と全日空機による空中衝突事故です。
事故機に搭乗していた教官パイロットは、執行猶予が付いたとは言え、実刑判決を受け、国家公務員法の規定により失職しています。その後の再審請求を行う事も辞退し、2005年に亡くなりました。
この事故、あたご事故以上に激しいマスコミの自衛隊バッシングを背景に、正常な裁判が行われる環境ではありませんでした。
結果として、当時の事情を知る自衛官は、多くが冤罪を強く疑っています。
既に亡くなっていますが、今なら再審請求すれば、正常な裁判が行われる可能性もあります。
ご本人が亡くなっているため、ご本人のためではなく、自衛隊と日本の国防のために、再審請求すべきではないかと思います。
再審請求する上で現実的な問題は、お金の問題もありますが、新たな証拠がなければ再審請求が認められないことです。
当時、政治的な理由で証言を許されなかった方がいれば、新たな証言を元に請求ができるかもしれません。
また、防衛上の観点から裁判に提出できなかった自衛隊側の資料もあるかもしれません。事件から既に40年以上が経過し、当時は秘匿すべきだった情報でも、今はその必要性を失っている情報があれば、証拠として提出しても良いと思います。
この雫石事件でも、あたご事故と同様に、自衛官は、国への不信感と忠誠を尽くす事への疑問を抱きました。
いざという時に、自衛官が命を投げ出して国防の任に当たれるよう、雫石事件の再審請求運動が盛り上がってくれることを願います。
雫石事件については、こちらの本をオススメします。
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