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指揮統制

2014年4月23日 (水)

あたご事故の処分見直しと雫石事件

あたご衝突事故による刑事事件裁判において、関係者の無罪が確定したことを受け、防衛省内で一旦下された処分の見直しが行われました。

護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」の衝突事故に関する再発防止策の追加及び懲戒処分等の見直しについて
細部は次のとおりです。
Ws000022

事故の主因が漁船側にあるとは言え、あたご側にも過失がない訳では無いため、処分自体がなくなった訳ではありませんが、処分内容は、全員大幅に軽減されています。

以前の記事「あたご事件が隊員の統率に与えた悪影響」で書いたとおり、石破防衛大臣及び防衛省が、政治的判断で隊員の処分を決めたことは、長期に渡って自衛隊に悪影響を与えると思いますが、今回の見直しで、多少の持ち直しもできるでしょう。

今回の見直しに至った理由は、政治的な判断による結論ありきの海難審判に影響されることなく、”正常な”裁判が行われたことによります。
冤罪が頻発する日本においては、これは奇跡と言える事態ですが、その奇跡を起こしたのは、自分の正当性を主張し続けた長岩3佐と後潟3佐の強い意志です。

しかし、それさえも出来ずに汚名を着せられている自衛官も居た可能性があります。
俗に、雫石事件と呼ばれる自衛隊機と全日空機による空中衝突事故です。

事故機に搭乗していた教官パイロットは、執行猶予が付いたとは言え、実刑判決を受け、国家公務員法の規定により失職しています。その後の再審請求を行う事も辞退し、2005年に亡くなりました。

この事故、あたご事故以上に激しいマスコミの自衛隊バッシングを背景に、正常な裁判が行われる環境ではありませんでした。
結果として、当時の事情を知る自衛官は、多くが冤罪を強く疑っています。

既に亡くなっていますが、今なら再審請求すれば、正常な裁判が行われる可能性もあります。
ご本人が亡くなっているため、ご本人のためではなく、自衛隊と日本の国防のために、再審請求すべきではないかと思います。

再審請求する上で現実的な問題は、お金の問題もありますが、新たな証拠がなければ再審請求が認められないことです。
当時、政治的な理由で証言を許されなかった方がいれば、新たな証言を元に請求ができるかもしれません。
また、防衛上の観点から裁判に提出できなかった自衛隊側の資料もあるかもしれません。事件から既に40年以上が経過し、当時は秘匿すべきだった情報でも、今はその必要性を失っている情報があれば、証拠として提出しても良いと思います。

この雫石事件でも、あたご事故と同様に、自衛官は、国への不信感と忠誠を尽くす事への疑問を抱きました。
いざという時に、自衛官が命を投げ出して国防の任に当たれるよう、雫石事件の再審請求運動が盛り上がってくれることを願います。

雫石事件については、こちらの本をオススメします。


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2013年7月20日 (土)

あたご事件が隊員の統率に与えた悪影響

あたご衝突事故の刑事裁判は、業務上過失致死罪などに問われた2人の自衛官の無罪が確定しました。
あたご事故:高検、上告断念へ 期限で自衛官の無罪確定」(毎日新聞13年6月25日)

この事故ですが、海難審判で責任があたご側にあるとされながら、刑事裁判の第1審では、責任は漁船側にあったとされています。
審判及び裁判の経緯、結果については、こちらのブログが詳しいので、こちらをご覧下さい。
イージス艦衝突事故判決下る やはりそれは無謀だったのでは」(ぐり研ブログ11年5月13日)

私が注目したいのは、この事故に対する(事故当時の)政府、防衛省(内局)および海自の姿勢です。

前掲ブログ記事にもありますが、事故直後、マスコミは自衛隊バッシング一色でした。

その結果、当時の石破防衛大臣は、事故直後に航海長を防衛省に呼び出して聴取(事実関係を確認)しながら、艦長を解任するなど、事実に基づき隊員を守ること無く、関係者の切り捨てを決定したようです。

この決定に対して、海自内にどの程度抵抗があったのかは分かりません。(内局が隊員を守ろうとしたとは思えない)
防衛大臣が切り捨ての判断をしている状況で、抵抗したところで抵抗しきれるものでは無かったでしょうが、少なくとも地裁判決後に後潟3等海佐が「省の混乱を見ていて、命を預け得る組織なのか、今も疑問が残る」と発言したように、隊員を庇わず、トカゲの尻尾切りをしようとしたことは、後潟3等海佐だけではなく、多くの隊員に、組織への不信感を抱かせるものだったのではないかと思われます。

これは憶測に過ぎませんが、艦長室のドアに斧が打ち込まれるなど、海自内にあると噂される統率上の問題に対して、この事件における防衛省・海幕の対応(だけではないでしょう)が悪影響を与えたのではないかと勘繰りが出来てしまいます。

今回無罪が確定した2名は、起訴から1審判決がでるまで2年以上に渡って休職させられました。
その間の生活費は、恐らく隊員がカンパするなどして支援したと思いますが、それだけでは不十分でしょうし、カンパさせられた隊員にも不満が発生したのではないかと懸念します。

防衛省は、無罪が確定したことを受け、処分した38名の処分を見直すようですが、一度発生した不信を回復することは容易ではないでしょう。

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2012年4月 4日 (水)

弾道ミサイル等破壊措置の統合任務部隊指揮所は横田

北朝鮮による「衛星」に対して編成された弾道ミサイル等破壊措置のための統合任務部隊ですが、指揮所は、航空総隊司令部の移転に伴い、ギリギリで横田になりました。

総隊司令部 横田移転を完了 「同盟のシンボル」 日米共催で"同居"祝う」(朝雲新聞12年3月29日)

航空総隊司令部の府中から横田への移動は、今回の「衛星」発射とは関係無く予定されていたものですが、ちょうどギリギリになって間に合った形です。
これで、米軍との共同もスムーズに進むでしょう。
ちなみに、以前の記事「BJOCC」で、今回のニュースで共同調整所と報じられているBJOCC(ビージョック、Bilateral and Jpint Operations Cordination Center、(日米)共同統合運用調整所)での共同のイメージが分かる記事(今回は、航空作戦ではなく、弾道ミサイル対処なので、少し違いますが)を書いているので、ご覧下さい。

今回の破壊措置では、日本としては、米軍が持つ、コブラボールやU-2、オブザベーションアイランド等のミサイル観測支援艦や多数のイージス艦から得られる、広範で詳細な情報が得やすくなるでしょうし、アメリカとすれば、北朝鮮に不意を衝かれ、これらの偵察手段の展開等が間に合わないケースにおいても、FPS-5等の固定レーダーからJADGEを通じてデータが得られます。(米軍の持つ固定的な観測手段は、青森県車力におかれている半固定のFBX-Tくらいしかありません)
日米双方にとって、どれだけの情報が貰えるのか、検証する機会にもなるでしょう。

もっとも、まるで航空総隊の横田移駐に合せたかのようなタイミングなので、沖縄タイムス等が陰謀論を展開するネタになりそうな気もしますが、災いをうまく転じさせて欲しいものです。

オマケとして、以前の記事にも載せた航空総隊司令部の写真を載せておきます。
昨年の横田フレンドシップデーの際、エプロンから撮ったものです。
Img_1240
Shousha_mark
今回の件で報道された建物全景写真と照合しても、この建物の上部がエプロンから見えていたことが分かります。
10592
防衛ホームより

これで総隊司令部の位置が分かりますが、何のことはない、朝雲新聞の記事では、バッチリ「米空軍374輸送航空団司令部の隣」と書かれていました。

しかし、並んでいるはずの二つの司令部ですが、ナゼ374輸送航空団司令部庁舎が西向き(のはず)なのに、航空総隊司令部が東向きなのかは、謎です。
まあ、総隊とすれば、374輸送航空団とは基地業務以外では縁がなく、5空軍と地下の共同調整所で繋がっていさえすればOKなんでしょうけど……やっぱりカッコ悪い気がします。

2011年6月 6日 (月)

独断の是非 その2

前回の記事「独断の是非」に対して、やん様及びkuro様より、吉田所長の判断は正しく、処分すべきでないという趣旨のコメントを頂きました。

前回記事が言葉足らずだったところもありますので、補足として記事を書きます。

まず、注水継続という判断自体については、当然正しい判断でした。
大体において、注水を止めること自体が、原発に関して素人である首相の判断なのですから、当たり前かもしれません。

問題は、指揮統制上正しかったかという点になります。
企業内の意志決定に対して、軍事組織の指揮統制論で語ること自体が妥当ではないかもしれませんが、そこは敢えて無視して書きます。

本件については、東電本社及び首相官邸に原子力の専門家と言える人がいないどころか、素人のくせに政治主導だと喚くバカがトップにいるという機微な状況ではあります。

しかし、所長はテレビ会議において、状況を報告することが可能だったはずですし、中止は不適切で、注水を継続すべきだと断固主張することも可能だったはずです。
ですが、それをすることなく、中止を受け入れたように報告しながら、継続するというのは、「独断」ではなく「命令無視」です。
ですから、注水継続という所長の判断が正しいことは確かですが、命令無視は処断されるべきものだと考えて、前回の記事のように書きました。

これに関しては、非常に良い戦例があるのですが、うろ覚えの上、検索しても見つからなかったので、覚えている範囲で書きます。
(詳細を知っている方がいらっしゃいましたら教えて下さい)
太平洋戦争のソロモン諸島あたりでの事です。

アメリカ軍が、日本軍の飛行場を爆撃する作戦を立てていました。
しかし、いざ実施の当日になってから、何らかの情報から危険性が高いとして、作戦中止が決定され、前線の飛行隊にも伝達されました。
中止命令を受領した飛行隊長が、今がチャンスなのだから作戦を決行すべきだとして、作戦決行を上申をしたものの受け入れられず、最終的に命令を無視して作戦を実施しました。
結果は大成功で、日本軍に大きな打撃を与えました。
この時、アメリカ軍は、命令無視をしたものの大戦果上げたこの飛行隊長に対して、懲戒処分と勲章の授与を同時に行ったそうです。

今回のケースは、これと同じようなものではないでしょうか。
注水継続という判断は正しく、チェルノブイリを上回るような事故になっていた可能性さえあったものを防いだのですから、まさに勲章ものです。東電に人事に勲章に相当するものがあるなら、与えられてしかるべきです。
ですが、同時に、東電本社の指示を無視したことは、処分されるべきものです。

もしかすると、私のこの考え方は「軍人的」なのかもしれません。
でも、元自衛官がこのように考えるということは、健全なことではないでしょうか。

もし、私が「所長は正しいのだから処分すべきではない」、と主張するようなら、自衛隊が勝手に暴走したりするのではないかと懸念されても仕方ない事のように思います。

今回の件は、そもそも論として、首相に人の意見に耳に傾ける態度があれば、専門家を無視して注水を止めろなんていう愚かな指示にならない訳ですから、トップがバカだと恐ろしいという話かもしれません。

2011年6月 5日 (日)

独断の是非

福島原発1号機への海水注入は、原発所長の独断で続行されていたそうです。
海水注入、実は原発・吉田所長が独断で継続」(読売新聞11年5月26日)

ということで、今回は、この「独断」の是非を、自衛隊における「独断」とからめて書きたいと思います。

「独断」は、良く「独断専行」と言う4文字熟語で語られるように、基本的に悪いニュアンスを含む言葉となっています。

ですが、軍事組織における「独断」は、必ずしも悪いニュアンスを含んだ言葉ではありません。

戦史を見ても、日本海海戦における追撃戦で第2戦隊司令長官上村中将が、三笠からの一斉回頭命令を無視し、独断でバルチック艦隊を追撃したことが、この海戦の勝利を確定させたことは、独断の良い戦例上げられます。
(逆に、悪い例は、枚挙に暇がありませんが……)

ただし、「独断」を良いものとして評価することに関しては、3自衛隊間でも差があります。
私の「独断」で、各幕の独断に対する評価度を表わすと、こんな感じです。
空自>海自>>陸自

これは、陸海空で、作戦様相が変化する時間が大きく異なるからだと思われます。
言うまでも無く、変化の激しい方が、「独断」を必要とするということです。

私が空自幹部学校でのある教育課程で、独断に関する論文を書かされた際も、2/3くらい学生が、「独断」を肯定的に評価する論文を書いてました。

空自における「独断」について、もう少し詳しく書きましょう。

空自指揮官のバイブルと言える「教範「指揮運用綱要」の解説」には、独断について次のように書かれています。
(一応断っておくと、「教範「指揮運用綱要」の解説」は、基地PXで売っているもので秘ではありません。ただし一般の方には売ってくれませんが)

 指揮官は、状況が急変し、適時、これに応ずる命令を受領できない場合においても、全般の状況を考察して上級指揮官の意図を明察するとともに、自己部隊の任務を判断して状況の変化に応ずる最良の方策を決定し、自主積極的に任務を遂行しなければならない。


これを見ても、空自ではむしろ独断が推奨されていることが分かると思います。

ただし、ここでも「これに応ずる命令を受領できない場合においても」とあるように、今回の原発でのように、テレビ会議で東電本社と話していながら、勝手な判断をしてしまうことは独断専行と言わざるを得ません。

加えて、前記教範の独断の項には、続きとして次のように書かれています。

この際、速やかに自己の企図及び行動について上級指揮官に報告することが必要である。


これに照らせば、海水注水を継続しながら、本社には中止したように報告していることは、指揮統制上、完璧な間違いと言えます。

こんなことは、わざわざ自衛隊の教範を持ち出すも無く明らかなことで、その後東電が所長の処分を検討するのも当然です。
注水継続の吉田所長、処分も検討…東電副社長」(読売新聞11年5月26日)

もっとも、この独断専行により、首の皮一枚がつながった菅政権にとっては、この所長は恩人とも言えるため、処分は不要との認識のようですが……
菅首相、吉田所長の処分必要ないとの認識」(読売新聞11年5月29日)

2009年12月12日 (土)

SSとDC

もう1月号が発売されようという所なので、既に半年も前の号になりますが、軍事研究誌7月号に、ミリタリーライターの芦川淳氏が、「日本防空の最前線、SSとDC」と題して、航空警戒管制組織についてのレポートを書かれています。

その重要さに反比例して、あまり注目されない警戒管制組織を取り上げている貴重な記事です。

実際に、沖縄に所在する南西航空警戒管制隊の第54警戒隊(久米島SS)と南西防空管制群(那覇DC)を取材して書かれているようですが、どういう訳か結構間違いも多いようなので、こちらに書いておきます。

まず、P181にAOCC(Air Operation Control Center)の事を航空総隊作戦指揮所と書いていますが、これは作戦管制所の間違いです。ちなみに、航空総隊作戦指揮所はCOC(Combat Operation Center)の方です。
また、AOCCが航空総隊司令部に置かれるというのも間違いで、AOCCは航空総隊の直轄部隊である防空指揮群に置かれており、航空総隊司令部に置かれるのはCOCです。

その後の指揮統制関係の記述を見てもSOCとDCを混同しているように思えるところもあり、どうも、COCとAOCCを混同されているようです。指揮(command)と統制(control)を弁別されていないのでしょう。
もっともSOCとDCが切っても切れない関係でSOC/DCと呼ばれるように、COCとAOCCも切り離すことは出来ません。特に弾道ミサイル防衛ではそうです。

次に、P187には、「南西警戒管制団の警戒管制群が・・・」という記述があるのですが、他の航空方面隊では航空警戒管制団ですが、南混団だけは、警戒管制団ではなく南西航空警戒管制隊です。また警戒管制群ではなく、防空管制群です。直接取材したはずなのに、なんで間違うんでしょうか。

他にもありましたが、重箱の隅になるので、間違いの指摘はこのへんで止めておきます。

最後に、レーダーやBADGEのJADGEへの換装に伴って、SSやDCの様子が変化していることが書かれていますが、その背景を書いておきます。
従来は、薄暗い中でボゥと浮き上がるコンソールや導光板方式でグリペンで書いた部分が浮かび上がって見えるプロッターで仕事をしていたものが、明るいオフィスのような状態に変わって来ています。
その背景は、COTS品を導入しているという事があるのですが、COTS品でも用が足りるようになった大きな理由は、画面のカラー化です。
今時の方はカラーでないモニターを見たことがない方も多いと思いますが、モノクロだと広範囲に及ぶ膨大な情報を直感的に理解するのは大変です。
そのため、BADGEのコンソールは、シンボルや線の輝度をアナログ的に変化させることができる特殊なものでした。
カラー化により表示できる情報量が飛躍的に上がったので、画面の精度などがCOTS品でも良くなったと言えるのです。
でも、職人技と言える逆文字(プロッターは裏面から書くため、鏡像の文字を書く必要性があった。)を書ける人が減るのは寂しい気もします。

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