ドローン規制に実効性はあるのか?
官邸ドローン事件を端緒として、ドローンを規制すべきなのか、規制は可能なのか(実効性はあるのか)等、様々な議論が出ています。
これらの問題に関して、一応専門家でありながら沈黙していたのは、単に書いている小説が山場を迎えているという全く関係のない理由でした。
が!
いろいろと言いたいことはある訳です。
議論の傾向を見ていると、規制の必要性については、ドローンの有効活用という観点からも必要と言う声が大勢を占めているようで、とりあえず安堵しています。
現状は、道路交通が右側通行なのか左側通行なのかも定まっていない状態ですから、規制が必要なのは当然です。
適切な規制がされなければ、空中衝突や落下の危険性が増大するでしょうから、今後の物流その他に多大な貢献を与えそうなドローンが有効活用されない結果に繋がります。
これは、重大な経済的損失です。
その一方で、規制などしても、官邸など重要施設の防護には役に立たないという主張もあります。
対ドローン兵器については、レーザー兵器がいいとか、適当な兵器はないとか言う主張が数多くあります。
評価要素としては、次の3点でしょう。
①発見(監視)・類別・識別が可能か?
②有効な効果を及ぼし得るか?
③付随的被害が許容しうるか?
①発見(監視)・類別・識別が可能か?
これは、言及している方が少ないですが、最も規制問題に絡む評価要素です。
ドローンの監視は、小型でRCSも小さいため、暗視能力もあるオプティカルサイトでないと難しいでしょう。
濃霧の際に監視能力が低下しますが、その時はドローンの飛行も困難になるので、そこそこの性能のオプティカルサイトで、発見は可能なはずです。
なお、レーダーは、官邸など都市部、特にオリンピック警備など常設でない場所では、周波数確保の点でも障害が多いため、パッシブセンサーであるオプティカルサイトが適切です。補完でサーチライトを使用しても、害は少ないですし。
類別は、ドローンなのか、無害な鳥なのか、公用、あるいは報道のヘリなのかという区別ですが、オプティカルサイトで自動化することは難しいですが、発見の際に警報を出して人間が補完すれば、かなり容易に実施できます。画像認識技術を使えば、鳥の場合は警報を出さない程度は、可能でしょう。
識別は、これからは、官が使用するドローンも多数飛行するでしょうから、その官使用ドローンとテロリスト・犯罪者が使用するドローンを区別することになります。
そのため、及び例え大した害意がなかったとしても、私的財産であるドローンを撃墜する根拠を与えるためにも、規制は必要です。
②有効な効果を及ぼし得るか?
これは、評価要素として考えるべきではありますが、事実上必要の薄い要素です。
小銃だろうが、機関砲だろうが、今後出てくるであろうレーザー兵器だろうが、破壊力は十分過ぎるからです。
なにせ、ドローンは大した飛行性能もない上に、脆弱だからです。
なお、特殊なものとしては、F-35が搭載すると言われる高出力電磁波等で、コントロールキルするという方法もありまが、対ドローンウエポンは、市街地で使用する可能性があることを考えると、③の評価要素的に100%×です。
③付随的被害が許容しうるか?
ドローン迎撃を考える場合、最も注目すべき評価要素がコレです。
官邸にせよ、今後行わざるを得ない、オリンピック警備でも、東京のど真ん中で使用する訳ですから、普通の機関銃や機関砲を撃つのは無理があります。
以前の記事で書いた、空中で破裂する機関砲弾は、効果範囲が他の施設に及ばないようにセットすれば、通常の状態であれば付随的被害を無くすことが可能です。
「GUN派が息を吹き返すか?」
これら調停時限信管を装備した機関砲弾は、ドローンを撃ち落とすには最適の効果を持ちますが、やはり採用は×です。
なぜなら、不発の発生は不可避だからです。
こんな中口径弾が不発になって、落ちてきたら、人体なら、上半身と下半身がお別れすることになるでしょう。
こうしたことから、適当な兵器はレーザーしかないという人もいます。
ですが、レーザーは開発中で、いずれは一般化するでしょうが、近々に相応の数を配備するためには、コストまで考えると非現実的です。
官邸だけならいいですが、官邸だけでなく、重要な官庁は数多くありますし、オリンピック警備には、どれだけ必要になるか……
そうすると、適当な兵器がないと思うかも知れませんが、そんなことはありません。
開発は必要ですが、大した開発コストも、配備コストもかけずに、付随的被害の発生を防止しながら、ドローンを打ち落とせる兵器は作れます。
それは、こんなモノを使えば良いのです。
wikipedia「ゴム弾」ページより
弾丸形状は、発射する銃器の口径と使用する状況で考慮する射程で様々なモノが考えられますが、共通するのは、樹脂製の軽量の弾丸を使用すると言うことです。
具体的には、発射後に十字型に開くものや、散弾状のものが考えられます。
相応のダメージと、威力範囲を狭くできると言う点では、十字に開く形式の弾丸を、口径の大きい銃器及び機関砲で使用することがいいと思いますが、実用化するためには、試射をして決めれば良いことです。
こうした弾丸は、軽量、かつ空気抵抗が大きいため、空気抵抗による減速が著しく、射程が短くなります。ですが、対ドローンを考えた場合、そもそもそれほど射程は必要ありません。そして、例え大型のラジコン機であっても、かなり脆弱なため、これらの弾丸でも十分に効果を及ぼす、つまり撃墜することができます。
命中しなかった弾丸は、やがて速度を失って地上に落ちてきますが、軽量で空気抵抗が大きい形状ですから、ゴミにはなっても、地上への被害は無視できるレベルにできます。
ホビー用のBB弾のように生分解性プラスチックで作っておけば、環境問題にもなりません。
ある程度射程のある機関砲の場合、弾速が著しく遅くなるため、見越し角を変える必要からFCSのプログラムをいじる必要がありますが、その程度は国内企業で十分に対応可能です。
12.7mm機関銃などで使用する場合は、バラマキながら弾道を目視で修正すればいいので、弾丸の開発以外は開発要素も少なく、訓練を含め、費用は最小限で済みます。
夜間用には、化学的に発光するプラスチックがいいかも。
機関銃・砲の場合、砲身の加熱である程度射撃した以後は、装填した次弾が溶ける可能性はありますが、清掃が必要なだけで、実害はないでしょう。
これに限らず、対ドローン用として、もう開発してればいいのですが……
私が、日本工機とか銃砲弾メーカーの人間だったら、こんな儲け話は放ってはおかない!
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