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テロ対策

2015年5月27日 (水)

ドローン規制に実効性はあるのか?

官邸ドローン事件を端緒として、ドローンを規制すべきなのか、規制は可能なのか(実効性はあるのか)等、様々な議論が出ています。

これらの問題に関して、一応専門家でありながら沈黙していたのは、単に書いている小説が山場を迎えているという全く関係のない理由でした。
が!
いろいろと言いたいことはある訳です。

議論の傾向を見ていると、規制の必要性については、ドローンの有効活用という観点からも必要と言う声が大勢を占めているようで、とりあえず安堵しています。
現状は、道路交通が右側通行なのか左側通行なのかも定まっていない状態ですから、規制が必要なのは当然です。
適切な規制がされなければ、空中衝突や落下の危険性が増大するでしょうから、今後の物流その他に多大な貢献を与えそうなドローンが有効活用されない結果に繋がります。
これは、重大な経済的損失です。

その一方で、規制などしても、官邸など重要施設の防護には役に立たないという主張もあります。

対ドローン兵器については、レーザー兵器がいいとか、適当な兵器はないとか言う主張が数多くあります。

評価要素としては、次の3点でしょう。
①発見(監視)・類別・識別が可能か?
②有効な効果を及ぼし得るか?
③付随的被害が許容しうるか?

①発見(監視)・類別・識別が可能か?
これは、言及している方が少ないですが、最も規制問題に絡む評価要素です。

ドローンの監視は、小型でRCSも小さいため、暗視能力もあるオプティカルサイトでないと難しいでしょう。
濃霧の際に監視能力が低下しますが、その時はドローンの飛行も困難になるので、そこそこの性能のオプティカルサイトで、発見は可能なはずです。

なお、レーダーは、官邸など都市部、特にオリンピック警備など常設でない場所では、周波数確保の点でも障害が多いため、パッシブセンサーであるオプティカルサイトが適切です。補完でサーチライトを使用しても、害は少ないですし。

類別は、ドローンなのか、無害な鳥なのか、公用、あるいは報道のヘリなのかという区別ですが、オプティカルサイトで自動化することは難しいですが、発見の際に警報を出して人間が補完すれば、かなり容易に実施できます。画像認識技術を使えば、鳥の場合は警報を出さない程度は、可能でしょう。

識別は、これからは、官が使用するドローンも多数飛行するでしょうから、その官使用ドローンとテロリスト・犯罪者が使用するドローンを区別することになります。
そのため、及び例え大した害意がなかったとしても、私的財産であるドローンを撃墜する根拠を与えるためにも、規制は必要です。

②有効な効果を及ぼし得るか?
これは、評価要素として考えるべきではありますが、事実上必要の薄い要素です。
小銃だろうが、機関砲だろうが、今後出てくるであろうレーザー兵器だろうが、破壊力は十分過ぎるからです。
なにせ、ドローンは大した飛行性能もない上に、脆弱だからです。

なお、特殊なものとしては、F-35が搭載すると言われる高出力電磁波等で、コントロールキルするという方法もありまが、対ドローンウエポンは、市街地で使用する可能性があることを考えると、③の評価要素的に100%×です。

③付随的被害が許容しうるか?
ドローン迎撃を考える場合、最も注目すべき評価要素がコレです。
官邸にせよ、今後行わざるを得ない、オリンピック警備でも、東京のど真ん中で使用する訳ですから、普通の機関銃や機関砲を撃つのは無理があります。

以前の記事で書いた、空中で破裂する機関砲弾は、効果範囲が他の施設に及ばないようにセットすれば、通常の状態であれば付随的被害を無くすことが可能です。
GUN派が息を吹き返すか?

これら調停時限信管を装備した機関砲弾は、ドローンを撃ち落とすには最適の効果を持ちますが、やはり採用は×です。
なぜなら、不発の発生は不可避だからです。
こんな中口径弾が不発になって、落ちてきたら、人体なら、上半身と下半身がお別れすることになるでしょう。

こうしたことから、適当な兵器はレーザーしかないという人もいます。

ですが、レーザーは開発中で、いずれは一般化するでしょうが、近々に相応の数を配備するためには、コストまで考えると非現実的です。

官邸だけならいいですが、官邸だけでなく、重要な官庁は数多くありますし、オリンピック警備には、どれだけ必要になるか……

そうすると、適当な兵器がないと思うかも知れませんが、そんなことはありません。
開発は必要ですが、大した開発コストも、配備コストもかけずに、付随的被害の発生を防止しながら、ドローンを打ち落とせる兵器は作れます。

それは、こんなモノを使えば良いのです。
Nepalrubberbullets
wikipedia「ゴム弾」ページより

弾丸形状は、発射する銃器の口径と使用する状況で考慮する射程で様々なモノが考えられますが、共通するのは、樹脂製の軽量の弾丸を使用すると言うことです。
具体的には、発射後に十字型に開くものや、散弾状のものが考えられます。
相応のダメージと、威力範囲を狭くできると言う点では、十字に開く形式の弾丸を、口径の大きい銃器及び機関砲で使用することがいいと思いますが、実用化するためには、試射をして決めれば良いことです。

こうした弾丸は、軽量、かつ空気抵抗が大きいため、空気抵抗による減速が著しく、射程が短くなります。ですが、対ドローンを考えた場合、そもそもそれほど射程は必要ありません。そして、例え大型のラジコン機であっても、かなり脆弱なため、これらの弾丸でも十分に効果を及ぼす、つまり撃墜することができます。

命中しなかった弾丸は、やがて速度を失って地上に落ちてきますが、軽量で空気抵抗が大きい形状ですから、ゴミにはなっても、地上への被害は無視できるレベルにできます。

ホビー用のBB弾のように生分解性プラスチックで作っておけば、環境問題にもなりません。

ある程度射程のある機関砲の場合、弾速が著しく遅くなるため、見越し角を変える必要からFCSのプログラムをいじる必要がありますが、その程度は国内企業で十分に対応可能です。

12.7mm機関銃などで使用する場合は、バラマキながら弾道を目視で修正すればいいので、弾丸の開発以外は開発要素も少なく、訓練を含め、費用は最小限で済みます。
夜間用には、化学的に発光するプラスチックがいいかも。

機関銃・砲の場合、砲身の加熱である程度射撃した以後は、装填した次弾が溶ける可能性はありますが、清掃が必要なだけで、実害はないでしょう。

これに限らず、対ドローン用として、もう開発してればいいのですが……
私が、日本工機とか銃砲弾メーカーの人間だったら、こんな儲け話は放ってはおかない!

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2015年2月 7日 (土)

オタクが風刺画やクソコラ以上にイスラムを不快にさせる可能性

日本のオタクが、シャルリー・エブド以上に、ISだけではない一般のイスラム教徒にまで、不快な思いをさせる可能性が高まっています。

それは、キリスト教の聖遺物の名を付けたオブジェを、イスラムのシンボルである月に突き刺すという行為です。

詳細に言うと、アニメ「エヴァンゲリヲン」に出てきた「ロンギヌスの槍」を、ロケットで月まで運び突き刺そうというものです。
時に、西暦2015年 「エヴァ」のロンギヌスの槍を月に突き刺すプロジェクトが始動」(ねとらぼ150130)

形状は、アニメで描写された形状ですが、「ロンギヌスの槍」という名前は、キリストの死を確認するために突き刺された槍で、刺したローマ兵の名前をとって「ロンギヌスの槍」と呼ばれています。キリストの血が付いた物体として、聖骸布や聖杯と並ぶキリスト教における聖遺物の一つになっています。
その名前が付いたミニチュア大のオブジェを、実際に月に刺そうというのです。

一方で、月はイスラムのシンボルとなっており、多くのイスラム教国の国旗に使われている他、イスラム圏における赤十字が、赤新月となっています。
Flag_of_turkeysvg
トルコ国旗(wikiより)

この行為に対して、金木犀氏が、ブログ「文系宇宙工学研究所」において「『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』に反対します」という記事を書いてから注目が集まり、資金を集めるクラウドファンディングのページにも反対意見が集まるようになってきています。
ネトラボも、反対意見を報じています。
「ロンギヌスの槍を月に」プロジェクトへ反対意見広がる 宗教的イメージ懸念、ネットでは賛否両論」(ねとらぼ150204)

この問題に対しては、私も金木犀氏と全く同意見で、プロジェクトには反対です。
プロジェクトを立ち上げた方々には、悪意は無いのでしょうが、思慮が足りないと言わざるを得ません。

これによって、テロが惹起されるかどうかまでは分かりません。
しかし、不快な思いを抱くイスラム教徒がいることは間違いないでしょう。キリスト教徒にしても、聖遺物の名を冠した物体を勝手に使われ、イスラムとのもめ事のネタになりかねない行為は、迷惑と思うかもしれません。

このクラウドファンディングは、目標金額1億円として1月30日に始まり、わずか1週間あまりで3400万あまりを集めています。
このペースで集金が進むと、〆切りの4月5日までには、余裕で1億円の集金を達成する見込みになっています。
(日程消化12%で、達成率34%)
Photo_2

クラウドファンディングREADYFORのスクショ
エヴァンゲリオン20周年ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト

プロジェクトを立ち上げた方々は、営利だけが目的で、シャルリー・エブドのような政治性は、全くないのでしょう。
そのため、金木犀氏の反対意見に対して、「ウザイ!」と言った罵声めいた意見を言うアニメファンもいます。

しかし、誰であれ、その行為によって嫌な思いをするのであれば、そのような行為をしないのが日本人の美徳であるはずです。

実際に資金が集まってしまえば、打ち上げを請け負うのがアメリカ企業であるため、アメリカ政府及び日本政府がストップをかけるかもしれません。
しかし、その前に反対意見を盛り上げて、このプロジェクトを推進している「『ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト』実行委員会」と「HAKUTO」が、プロジェクトを中断してくれることを望みます。

この実行委員会は、有志企業、メンバーなどにより構成されているとありますが、ちょっとググっただけでは、どこがスポンサーなのかは分かりませんでした。
ですが、恐らくエヴァの版権を持つ企業その他でしょう。
企業が判明すれば、そこに抗議すべきと思いますが、分かりませんでしたので、こうして声を上げることにしました。

ただし、月はイスラムのシンボルとは言え、現実の月というより、トルコ国旗や赤新月旗にあるような三日月の形象がシンボルとなっています。
これには、もともとこの三日月がビザンチオン(現イスタンブール)のシンボルだった事が関係しており、コーランとの関係が薄いため、それほど不快感をあたえるものではないかもしれません。
しかし、ほとんど意義のない趣味の行為に関わらず、懸念だけがあるのですから、やはり不適切なのは間違いありません。

なお、このニュースについては、既にAFPが海外にも報じていますが、今のところ海外からの反応はわかりません。
「ロンギヌスの槍を月に刺そう!」エヴァンゲリオン20周年」(AFP150207)

しかし、海外の反応より前に、日本人の手で止めさせるべきです。

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2015年2月 3日 (火)

テロリストには、珍呼(ちんこ)運動で反撃しよう!

ISによる日本人人質事件で、日本のツイッターユーザーによるクソコラグランプリが、世界的に有名になりました。
しかも、一部では、これをISに対するカウンターテロとして有益であると評価しています。
イスラム国(ISIS)に対するツイッター利用者の攻撃と海外からの評価
日本のネットユーザーたちはISISを打ち負かしている?

クソコラ自体は、単なるおふざけから始まったモノでしょう。
ですが、こんなおふざけには、日本人の文化的背景が影響していたのだろうと思うと、日本にできることは、難民支援だけではないことに気付かされます。

私自身も、ツイッターでクソコラグランプリを目にして、眉間に皺を寄せた口ですが、これらの記事を見て、またマトメでも晒されているIS関係者が作成したクソコラ返しを見て、確かにこれがIS関係者には、宣伝戦においてダメージを与えていることに気づかされました。
IS関係者が作ったとされる画像などは、もはや彼等もどう返したらいいか分からずパニックになっているようにさえ見えます。
Is

そして、このクソコラ攻撃が効果的であるなら、他にも取り得る手段がないかと考えた時、思い起こされたのは「珍呼(ちんこ)運動」です。

珍呼運動は、wikipediaにも記述のある暴走族の呼び換え運動で、暴走族を珍走団と呼び変える事で、イメージを悪化させ、参加者を減らそうという運動です。

この運動は、芸能人やネットの中ではそれなりに盛り上がったものの、マスコミが採用しなかったため、残念ながら、成功したとは言えません。
ですが、一部では、暴走族を揶揄する言葉として定着してもいます。

暴走族に対する、「ちょっとカッコイイ」的なイメージに傷を付けることは、いくばくかはできたと言えます。

ISに対しては、世界各国から参加者が集まっていますが、その理由の一つには、あの残虐的な手法を含め、彼等に力があるように、IS自身が宣伝戦を行っているためでもあります。

できればIS自体を呼び換えたいところですが、「IS」あるいは「ISIS」「ISIL」等も、ある意味呼び換えですし、固有名詞ですから、コレをこれ以上呼び換えることは難しいかもしれません。

ですが、「テロ」及び「テロリスト」「テロリズム」は、呼び換えても良いのではないかと思います。

「テロ」は、「恐怖」を意味するラテン語から派生した言葉で、英語でもTerrorは恐怖を意味します。

恐怖を与える者には、当然それなりに力があると認識されます。
テロリストがテロを行うのも、ISが殊更残虐な殺害を行うのも、根源は同じです。

ですので、この「テロ」等の言葉を、滑稽で、力が弱く、卑怯な存在であるような言葉に言い換えることができれば、非常に間接的ながら、カウンターテロとして機能するでしょう。

できれば、全世界的に、同じようなイメージを抱かせる言葉がいいですが、さすがに難しいでしょう。

現在、最悪なテロを行っているのがISやボコ・ハラムですから、彼等には理解可能な言葉であることが望ましいと思われます。
コーランに出てくる、滑稽で、力が弱く、卑怯な人物でもいれば、その人物から取るなどが良さそうな気がします。

言語毎に、違っても良いかもしれません。
日本の場合、近代のテロだと色がついてしまうので、古事記ですとか日本書紀から引っ張ってくるとか……古すぎるか……
私は、ネーミングは苦手なので、これ以上は書きません。

悪魔の詩訳者殺人事件で、テロリストに殺された五十嵐一助教授が生きていれば、アラビア語使用者にも通じる適当な名前を考えてくれたような気がします。

問題は、珍呼運動でもそうでしたが、一般化するかどうかです。
いいネーミングが出てきたら、どなたか影響力のある人が取り上げて、マスコミ報道を変えてもらうように、全世界的な運動にしてくれないかなと思います。

まずは、良いネーミングが必要です。
海外の方も含めて、誰か良い名前を考えて頂けないでしょうか。

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2015年1月10日 (土)

シャルリー・エブド、五十嵐一とサラディン

フランス風刺週刊紙シャルリー・エブドを襲ったテロ事件を聞いて、真っ先に思い出したのは、1991年に発生した悪魔の詩訳者殺人事件(wiki)です。

この事件は、もう20年以上も前の話なので、20代以下の方では知らない人の方が多いと思われます。
ですが、日本で発生したイスラム教テロリストによる犯行が強く疑われる事件であることは、思い起こされてしかるべきです。
殺害された五十嵐一助教授は、シャルリー・エブドの風刺と同様に、イスラム教を風刺したサルマン・ラシュディの小説『悪魔の詩』を日本語に翻訳していました。
そのため、イランのホメイニ師から死刑宣告を受けていたために発生した事件だと見られています。

この事件は、wikiにもあるとおり、殺害された五十嵐助教授が、殺害を予感していたかのようなメモを残していただけでなく、講義でも度々殺されるだろうと発言していたにも関わらず、シャルリー・エブドとは異なり、警察は護衛をしていませんでした。
その上、事件後も有力容疑者がいたにも関わらず政治的配慮で、まともな捜査がされなかったなど、当時の日本政府の弱腰外交がモロに透けて見える事件でした。

とまれ、ここで言いたいのは、シャルリー・エブドの事件が、日本には無関係の事件ではなく、過去にも同種の事件が起きており、今後、日本でも起こる可能性があるということです。

9.11後、自衛隊も含め、公安関係機関がイスラム教徒によるテロ警戒を行いましたが、恐らく、その後も継続して情報は収集していたでしょう。
今回のシャルリー・エブド事件を受けて、警察庁も警戒を強めているようです。

イスラム教徒に実害を与えたわけでもない週刊誌関係者や翻訳者を殺害するという、我々には理解不能な価値観・宗教観で生きている人間が、現代に生きている、それも精神異常ではなく、思想信条として生きていることに衝撃を受けます。

日本に居住する大部分のイスラム教徒は、そのような思考を持っているわけではないでしょうが、上記の悪魔の詩訳者殺人事件が単独犯であったのか怪しいですし、9.11後に公安がマークしなければならないような人物が日本国内に居たことも事実です。
この悪魔の詩訳者殺人事件に対しても、日本のイスラムコミュニティが否定も肯定もしていない点は、残念にも思います。
過去に発表した協会の見解(イラク問題、同時多発テロ事件について)(日本ムスリム教会HP)

もう、ここからは主観の問題だと思いますが、こうしたテロ、憎しみと怨恨の連鎖を止めるためには、イスラム社会にサラディンのような人物が現れてくれることではないかと思っています。

サラディンは、十字軍を迎え撃ったイスラム側の中心人物ですが、軍事的に優れていただけはなく、敵に対しても寛容の精神を持って臨んだことで有名です。
その寛容さは、彼の精神的な資質によるものかは、遠い昔の話ですから分かりません。

私は、資質よりもむしろ、戦いを終息させるための戦略的寛容だったのではないかと思いますが、それこそ今のイスラム世界の指導者に必要なものではないかと思います。

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2012年7月17日 (火)

屋根の上の地対空ミサイル……東京での五輪開催に意外な障害

前回の北京オリンピックの際、中国は、テロを警戒して、会場周辺に地対空ミサイルを配備しました。
テロ対処等には万全を期す方向で考える私としても、「やりすぎじゃね?」と思ったのですが、今回のロンドン五輪でも地対空ミサイルを配備する方向のようです。
アパート屋根の上の地対空ミサイル 住民、テロ攻撃に不安、差し止め訴訟に発展」(産経新聞12年7月4日)

 ロンドン五輪へのテロ攻撃に対抗するため、英国防衛省(MOD)が計画しているのが、五輪競技施設近くの民間アパートの屋根の上に地対空ミサイルを配置するというものだ。今回の五輪は都市部で開催されるため、周辺に十分な防衛拠点を築くことができない。そこでMODが目を付けたのがアパートの屋上。ここに地対空ミサイルを配備することで空からのテロ攻撃に対抗できるという。


どうも、この流れが定着しそうです。
そうなると、これは東京がオリンピックを誘致するための障害となりかねません。

テロに対する備えも、開催地決定の考慮要素とされるであろうにもかかわらず、東京では、地対空ミサイルによる会場警備が、政治的にも、法的にも、難しいからです。

政治的な問題は、もちろん周辺住民の反対です。
前掲記事のようにロンドンでさえ問題になっているのですから、軍事アレルギーのある日本なら尚更でしょう。

自分の住むアパートの屋根に高性能爆弾が配備されるというのは物騒なもの。案の定、アパート住民によるミサイル配備の差し止めを求める訴訟が起こされた。住民を代表する弁護団は「アパートに住む住人の人権を侵害するもの」とし、「人口密度の高い住宅街にミサイルを配備することは容認できない」としている。


また、同記事は、テロにおいてもSEAD(シード:敵防空網制圧)/DEADが行なわれ、これによって配備地であるアパートが危険にさらされる可能性も指摘しています。

空からの攻撃を想定した場合、第一目標として周辺の地対空ミサイルを破壊。攻撃の第二波として五輪施設を破壊するというシナリオが考えられる。つまり、防御のための地対空ミサイルは格好の攻撃目標にもなり得るわけだ。


反対住民が出るのも、さもありなんです……

法的な問題もあります。
自衛隊が、テロ機に対して地対空ミサイルを撃つためには、治安出動が必要ですが、治安出動は「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもつては、治安を維持することができないと認められる場合」に発令されるものなので、オリンピックだからという理由で発令できるとは考えられないからです。
(日本の場合、理解不能な解釈論を持ち出して、発令できることになるんでしょうけど……)

ちなみに
防衛出動が発令されていれば可能ですが、オリンピック開催のための警戒で防衛出動なんて、治安出動以上にありえません。
警護出動は、自衛隊の基地等か米軍基地等周辺でしか使えないので、ムリです。
災害派遣では、武器が使えませんし、被害が出る(テロ機が突っ込む)前に対処することはできません。
対領空侵犯措置は、外国機なら可能ですが、日本国内でのテロのために、わざわざ外国機を用意して領空侵犯するテロリストはいないでしょう。

ロンドンでの地対空ミサイル配備は、裁判所判断になるみたいですが、ロンドンでも行なわれると、東京がオリンピックを誘致するためには、考慮しておく必要がありそうです。

最後に、爆発物としてのミサイルの安全性に関しては、「抱いて寝ろ」と言われても、私は平気です。(そのくらい安全)

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2011年8月 6日 (土)

自民が検討する法改正案で、「本当に」自衛隊による原発防衛が可能になるのか?

自民党が、自衛隊法の改正を次期衆院選マニフェストに盛り込み、原発の防護を自衛隊が実施することを可能とさせる方向で検討しているそうです。

自衛隊による原発防衛可能に」自民が法改正を検討」(産経新聞11年7月2日)

 1日に非公開で初会合が行われた「原発警備に関する検討会」(座長・浜田靖一元防衛相)が自衛隊法81条の2で定める「警護出動」の対象に、原子力関連施設を追加するなどの検討を始めた。自衛隊を常駐させる場合、在日米軍基地へのテロ行為を想定した現在の警護出動の発動要件を緩和することも考える。警察との役割分担も見直す。

 国内の原発警備は、2001(平成13)年9月の米中枢同時テロ以降、警備強化時に警察が軽武装の「原子力関連施設警戒隊」を派遣することになっているが、平常時は民間の警備員が警戒するだけ。内部告発ウェブサイト「ウィキリークス」が5月上旬に公開した米外交公電は、米政府が日本の原発警備を憂慮していたことが記されている。


法的根拠として、警護出動を使おうとしているようです。
警護出動は、現在、自衛隊の基地等及び在日米軍基地等のみを対象としています。これに原発を含めるつもりのようです。

しかし、記事では「自衛隊を常駐させる場合」と書かれていますが、警護出動は部隊を平常時にも常駐させることを考慮したものではなく、果たして効果的な対処ができるのか疑問です。
テロは、こちらが警戒している時に実施してもらえるものではありません。

自衛隊法

(自衛隊の施設等の警護出動)
第八十一条の二  内閣総理大臣は、本邦内にある次に掲げる施設又は施設及び区域において、政治上その他の主義主張に基づき、国家若しくは他人にこれを強要し、又は社会に不安若しくは恐怖を与える目的で多数の人を殺傷し、又は重要な施設その他の物を破壊する行為が行われるおそれがあり、かつ、その被害を防止するため特別の必要があると認める場合には、当該施設又は施設及び区域の警護のため部隊等の出動を命ずることができる。
一  自衛隊の施設
二  日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定第二条第一項の施設及び区域(同協定第二十五条の合同委員会において自衛隊の部隊等が警護を行うこととされたものに限る。)
2  内閣総理大臣は、前項の規定により部隊等の出動を命ずる場合には、あらかじめ、関係都道府県知事の意見を聴くとともに、防衛大臣と国家公安委員会との間で協議をさせた上で、警護を行うべき施設又は施設及び区域並びに期間を指定しなければならない。
3  内閣総理大臣は、前項の期間内であつても、部隊等の出動の必要がなくなつたと認める場合には、速やかに、部隊等の撤収を命じなければならない。


というか、そもそも自衛隊の出動任務全てが、発令された時のみの一時的なものとして規定されています。
その中でも、警護出動は、出動に際して、事前に知事の意見を聞かなければならないこととなっており、結構使いにくい出動という印象でした。
もっとも、原発の警護に反対する知事は、せいぜい沖縄県知事くらいでしょうけど。(ただし、幸いなことに沖縄に原発はない)

また、(武器を使用する)権限としては、警察官と同様の権限を付与する警職法7条の準用の他、警護施設が被害を受ける場合にも危害射撃が可能になっており、一応これで事足りそうです。

職務上警護する施設が大規模な破壊に至るおそれのある侵害を受ける明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを排除する適当な手段がないと認める相当の理由があるときは、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。


やはり問題は、部隊を常駐させられるか、と言う点だろうと思います。
お得意の奇妙な解釈論を持ち出せば可能なんでしょうが、やはり法の趣旨を考えた場合、出動任務で常駐警備をさせることは、適当とは思えません。

出動任務ではない、恒常的な任務と権限の付与をするか、あるいは逆に、警察にも重火器を持たせるかすべきです。
ただし、警察に重火器を持たせるとしても、彼らにも警護出動時のような、警職法7条の条件に当てはまらないケースでも危害射撃を許可しないと、意味はありません。

2011年1月 5日 (水)

原発防護 イスラエルに倣うなら法整備が必要

イスラエルが原発上空でアンノウンを撃墜したニュースが報じられています。

イスラエル、原発上空で未確認飛行物体を撃墜」(CNN10年12月17日)

イスラエル国防省は16日、ネゲブ砂漠にあるディモナ原子力発電所の上空で空軍が未確認飛行物体を撃ち落としたと発表した。
未確認飛行物体は飛行禁止区域に現れたため、空軍が緊急発進して撃ち落としたという。

(中略)
空軍の対応は、物体を検知した場合の対応手順に従ったものだと国防省は説明している。


ホントは日本もこれくらやらないといけないと思いますが、やるための法的裏付けさえないのが実態です。

唯一、コレに近い対応が出来るのは、自衛隊法第82条の3に定められた弾道ミサイル等に対する破壊措置だけです。(もちろん対象は弾道ミサイルの可能性のある目標だけ。それも防衛大臣による命令が必要です。)

本当なら、以前もちょっとだけ言及した領域警備の一つとして法的枠組みが整備されることが必要です。

何か起きてからじゃないと法整備もされないのが日本の悪い癖です。
実害が無い程度に、誰か原発にテロでもしてくれないだろうか。(小型機で突っ込む程度なら大丈夫ですから)

2010年11月15日 (月)

陸自部隊 違法出動の可能性?

陸自部隊が違法に出動している可能性がネットで指摘されています。

ソースは、在日米軍の監視活動をしているリムピースのHPです。
APEC期間中、陸自NBC部隊が「災害派遣」

災害派遣の垂れ幕を掲げた車両が、実体的にはAPECの警備支援を行っているようです。
101112vhcmaku
101112vhc3
101112vhc0
101110gsdf1
写真は全てリムピースHPより転載

現在、防衛省は災害派遣が行われた場合にはHPのお知らせページに掲載していますが、15日現在、この横浜ノースドックでの災害派遣については一切触れられていません。

実態的にはAPECの警備支援を行っているのに、災害派遣として行動しているのならば、違法な出動です。
自衛隊法には、地震防災派遣という災害が起る前に部隊を派遣する根拠もありますが、これは特定の大震災が予想されるケースのもので、今回は該当しません。

私は、自衛隊がAPECの警備支援をすることには全く異論はありません。
特に、警察において不足しているであろうNBCテロに対する対処準備として、自衛隊が控えているのは非常に適切だと思います。

ですが、それを災害派遣を根拠に行っているとしたら違法ですし、当たり障りの少ない災害派遣を装っているとしたら姑息です。

こう言ったケースでは、警察庁から防衛省に依頼があれば、国家行政組織法を根拠とし、
官庁間協力としてNBCテロの警戒を行うことは可能です。
もし実際にNBCテロが行われれば、その時点で災害派遣を発令すればよいことです。

おそらく、今回のケースは、この官庁間協力で動きながら、目立たないようにという配慮で災害派遣を偽っている、あるいは災害派遣が発令された場合の準備として垂れ幕を出しているだけだと推測しますが、リムピースで取り上げられるなど目立っているので誉められたものではありません。

発令された場合の準備でしたら、災害派遣の垂れ幕だけは出さずにおくべきでしょう。

2010年9月 7日 (火)

自衛隊にも防疫研究機関を

映画「アウトブレイク」のモデルともなっている致死性の極めて高い凶悪な疫病、エボラ出血熱に関して、米陸軍感染症医学研究所が効果的な発症予防薬を開発したそうです。

エボラ熱、発症抑制は可能 米陸軍の研究所が実験で成功」(産経新聞10年8月23日)

軍の研究所がエボラの研究をしているのは、凶悪な疫病が生物テロとして使用されかねないからです。

日本もサリンを撒くような団体が出現するような国です。
それに先日の口蹄疫被害でも災害派遣に駆り出されるようにもなっています。

自衛隊も高度な疾病対策と防疫法を研究する機関が必要ではないでしょうか。

2010年5月20日 (木)

法制化しなさいよ

首相官邸の周辺に建設される高層ビルが官邸の安全確保上問題であるとして、官邸側が建築主に「お願い」をしていることが記事になっています。
官邸丸見え? 周囲に建設のビルに「窓の向き配慮を」」(朝日新聞10年5月14日)

官邸に限らず、重要施設には周辺の建築制限をかける等の配慮が必要です。
「普通」の国はやってます。
現時点で「お願い」せざるを得ないことは仕方ありませんが、ちゃんと法制化の動きをとらないといけません。

防衛省が六本木から市ヶ谷に移った時、「折角新設するのに、こんな脆弱そうな施設で良いんですか?」、と言う趣旨の発言をして白い目で見られた記憶があります。

当時からコストの問題だけでなく、法整備がないことも問題でしたが、官邸が問題になるくらいなのですから、やはり法制化の動きをとるべきです。

それとも、国会議事堂や議員会館が問題にならないとだめですか?

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