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田母神元空将論文問題

2010年3月10日 (水)

ヒラメ化

田母神氏を招待→見合わせ要請 防衛省統幕学校卒業式」(朝日新聞10年3月4日)

旧来慣行として行ってきた統幕学校卒業式への歴代校長招待を一旦は田母神元空幕長にしておきながら、その後出席を見合わせるように要請したそうです。

田母神元空幕長が歴代校長の一人だったため、自動的に招待したのでしょうが、やっぱりヤバイということになったのでしょう。

自衛隊では上の視線ばっかりを窺っている人の事を、嘲りの意味も込めて「ヒラメ」と呼びますが、防衛省上層部(恐らく制服も含めて)がヒラメ化しているのではないかと思えてしまいます。

2009年1月31日 (土)

驚いた事、驚かなかった事

先日、現役自衛官時代に机を並べ、共に田母神元空将の下で幕僚として働いた方から、田母神元空将の応援をしてやって欲しいというお手紙を頂きました。


このブログでは、田母神元空将の論文問題を何度か取り上げて来ました。
その中で、田母神元空将に対する応援は、それなりにして来ましたし、世論の反応は注意深く見たきたつもりです。


その中で、驚きと共に感じた事は、田母神元空将は、私が応援する必要はないのではないか、という事です。
私なんかが微々たる応援などしなくても、それほど叩かれてはいないし、支持する声もかなりあるように感じました。


特に驚かされた事は、おそらく最も一般の方の反応に近いであろうテレビの反応です。政治バラエティーと言える番組では、何度か田母神元空将の件が取り上げられましたし、ご本人も出演されてました。
それらの中で、田母神元空将は驚くほど好意的に取り上げられていましたし、明確に支持するコメンテーターの方も多かった事は、正直言って驚きでした。
保守を自認する私が驚くんですから、革新系の方は衝撃を受けられたでしょう。


もちろん批判的な主張はいくらでもありますが、それについては、驚きは感じません。
新聞なぞはこぞって批判していますが、十分に予想されたことです。
(中国の潜水艦についての情報を新聞記者に伝えた事件の事もあり、自衛官が発言することについては、擁護する姿勢を示すかと思われた読売新聞までが批判的だったことは、少々驚きでした。)


逆に、世間一般では結構驚きをもって迎えられていたものの、私自身は驚かなかった事は、諸外国の反応です。
特にアジア諸国から相当に叩かれる、という予想が随分とありましたが、実際には殊更騒ぎにはなりませんでした。
その理由は、更迭が決まっていたということもあるでしょうが、最大の理由は、どこの国でも、国を守る軍人が愛国的であることは当たり前だからでしょう。
我々日本人でも、中国の抗日戦争記念日などで、一般市民が騒いでいれば違和感を感じても、軍がパレードを行っても誰も気にしない事と同じではないでしょうか。


今回の田母神元空将の論文問題は、日本の愛国心などについての歴史の中では、実はエポックメイキングな事象だったのかも知れません。
10年後に、今回の件がどう評価されるのか、興味深い所です。

2008年12月24日 (水)

ダブルスタンダード (田母神元空将論文問題)

前のエントリー「やっぱり内規違反とは言えない」で、触れた通知文書「部外に対する意見の発表について(通知)」について、一つ引っかかっている点があります。
通知文書(内規)のアドレス
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1980/az19810223_00814_000.pdf


この文書ですが、当初の発簡は昭和56年とかなり古いのですが、昨年の1月と8月に一部修正が入ったのか、再度発簡されているようです。
さらに、文面中「従来よりしばしばいわれてきたところであるが、今後は更に」という表現が入っており、防衛省内において、今回の件以外にも問題となった事例があったことが窺われます。
昨年のことなので、田母神元空将の「関係ねえ」発言や東大での講演は関係ないでしょう。


今回の論文だけがことさらに問題とされ、これら以前の事案が闇に葬られていることを考えると、防衛省(というより防衛相)はダブルスタンダードだなと思えます。


そして、今回の事案以降にも、ダブルスタンダードの一例と思われる事象も発生しています。

それは、佐藤正久参議院議員が自身のサイトで防衛部会について書いている中で触れた、五百旗頭防衛大学校校長の論文です。
http://east.tegelog.jp/index.php?itemid=1934


以下、佐藤正久議員のサイトからの転載です。
********************
本日の部会において、最も紛糾したのは、11月9日付の毎日新聞に掲載された五百旗頭真・防衛大学校校長の論文だった。この論文では、今回の田母神さんの空幕長解任に触れ、「これに関連して想起するのは、1928年の張作霖爆殺事件である」として、「軍部に対するブレーキが利かないという疾患によって、日本は滅亡への軌道に乗った<中略>このたびの即日の更迭はシビリアンコントロールを貫徹する上で、意義深い決断であると思う」と綴られている。


ある議員が問題視したのは、今回の田母神論文事案と張作霖爆殺事件を同一視しているという点と、あわせて、この五百旗頭論文は「部外への意見発表」であるが、その手続きがなされていたのか、という点だった。
防衛省は、手続きの有無について、即座に答えられず、また論文の内容については確認していない、との発言があり、議員の間からは、「これこそ懲戒の必要があるのではないか」との怒号にも似た声が相次いだ。
********************


ブログ「週間オブイェクト」で、JSF氏は、「防衛大学校はそれより制約はありますが、研究の名目で政府方針と異なる見解を述べる事は可能です。」と書いています。
一般論ではその様に理解されるでしょうし、私自身は政府方針と異なるものでも、私的見解として述べることは許容されるべきだと考えています。
ですが、悪法も法なりで規則は規則です。
防衛省が即座に答えられなかった点を見ると、おそらく手続きはなされていなかったのでしょう。


なお、件の内規が防衛大学校校長に対しても適用されるのかという点は、文書のあて先に防大校長が入っている点から、明らかに防大校長にも適用されると言えます。
この内規のあて先には、「施設等機関の長」というものが入ってます。そしてこの施設等機関とは、防衛省設置法で規定されています。
(設置)
第十四条 防衛省に、次の施設等機関を置く。
  防衛大学校
  防衛医科大学校
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S29/S29HO164.html
その長が、防衛大学校では校長になることは自明です。


手続き問題に関する限り、田母神元空将と五百旗頭防大校長の件は明らかにダブルスタンダードです。
やはり防衛相にとって、問題は内容(謝罪外交の一端)だったのでしょうね。

2008年12月22日 (月)

やっぱり内規違反とは言えない (田母神元空将論文問題)

先日のエントリー(「本当に内規違反だったのか?」)で書いた、田母神元空将の論文発表が内規違反だったか否かを規定する根拠文書について、調べがついたのでご報告します。


調査の方法は、単純に防衛省(の広報)に電話をして、根拠文書を問い正しただけです。


私が問いただした際にも、防衛省の回答は「違反ではない」ということでしたが、それに関して記述した文書は、先日のエントリーで触れた「部外に対する意見の発表について(通知)」だそうです。


一応、この文書がが判断基準になるようなので、内容を転載しておきます。

(読みやすくするため若干省略、注釈付)

********************

官広第814号(56. 2.23)
改正官広第284号(19. 1. 9)
官広第8361号(19. 8.30)


(あて先)各幕僚長 殿 (他略)


(発簡)大臣官房長


部外に対する意見の発表について(通知)

標記について、下記のとおり定められたので通知する。



1 出版物、テレビ、ラジオ等を通じ、あるいは講演会等において、職務に関し意見を発表する場合は自らの立場と責任を自覚し節度をもって行うことは当然のことである。このことは従来よりしばしばいわれてきたところであるが、今後は更に、一層留意するとともに、発表に際してはあらかじめその旨を上司に届け出るよう改めて周知徹底されたい。
2 事務次官、防衛参事官、衛生監、技術監、施設等機関の長、各幕僚長、情報本部長、技術研究本部長、装備施設本部長、防衛監察監及び各地方防衛局長にあってはあらかじめ大臣官房長(大臣官房広報課長気付)に通報するものとする。
********************


以前にも書いたとおり、単なる「通報」で良いこと、「文書により」とは記述されておらず、電話連絡でも問題ないと読めることから、やはり田母神元空将は内規違反ではなかったと言えます。

2008年12月14日 (日)

本当に内規違反だったのか? (田母神元空将論文問題)

前々回のエントリー「田母神元空将の更迭・処分 (田母神元空将論文問題)」に対して、Bambi氏より、次のようなコメントを頂きました。

********************
田母神氏の内規違反の件を調べて。。。というより、管理人様と同じく違和感を感じ、防衛省に問い合わせたところ、「違反ではない」「原則、届けが必要だが例外がある」と返答をいただきました。
私は、まったく部外の人間で素人ですので、これは、なんと考えれば良いのか。。。爾来、戸惑っております。
********************


以前のエントリーでも書いたとおり、私自身、この件については、田母神元空将の内規違反だと認識しておりました。
ですが、防衛省の回答の通りだとすると、記憶違いがあったのかもしれません。
そこで、出来る範囲で調べてみました。

その結果、今回の件に関係すると思われる文書は次の2件でした。


まず一つ目は、大臣官房長が各幕僚長などに宛てて発簡した「部外に対する意見の発表について(通知)」です。
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1980/az19810223_00814_000.pdf
これを読むと、航空幕僚長は、「大臣官房長(大臣官房広報課長気付)に通報」しなければならないことになっています。
今回の件では、部外への論文発表は許可が必要と報じられていました。ですが、この文書では、「許可」ではなく一方的な「通知」で良い事となっています。
また、文書が必要だとも報じられていましたが、文書を要することは明示されていません。広報課長気付とされていることから、文書が必要と読めなくもないですが、通常文書が必要な場合は、「文書により」と明示されるため、広報課長に連絡が行っていれば十分であると読めます。


もう一つは、当の航空幕僚長が定めた「航空自衛隊の広報活動に関する達」です。
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/g_fd/1960/gy19610107_00001_000.pdf
この達の25条では、「隊員が航空自衛隊に関し、部外発行の新聞等に論文記事等を投稿し、(中略)努めて事前に広報担当官を通じて所属部隊等の長に届出るものとする」とされています。
この達でも、努めて届け出ることとされているだけで、義務であることは規定されていません。
また、そもそも航空幕僚長が達として発簡したもので、航空幕僚長を縛る物でもありません。ただし、自分で規定している以上、その趣旨に反することをしないことは当然です。


なお、この文書の根拠文書である「防衛省の広報活動に関する訓令」には、部外に対する論文発表などについての規定はありません。
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1960/ax19600729_00036_000.pdf


ということで、現在のところ例外規定を含め、違反であると読める内規は、見つかっておりません。

私自身の記憶は、(小説の発表を意図していた為)部外への著作物の発表について調べた際に、文書を調べた結果見つけたものだったと記憶しているのですが、もしかすると兼業の禁止についての文脈と混同してしまったかもしれません。
「隊員の分限、服務等に関する訓令」第14条及び第15条
http://www.clearing.mod.go.jp/kunrei_data/a_fd/1955/ax19550903_00059_000.pdf


なお、兼業の禁止について規定している15条の1に続き、同条の2において、前々回のエントリーでも触れた海外渡航についても規定されています。


完璧に調べたとは言えない状態ですので、もう少し調べて後日(少々時間がかかるかも)記事としてUPします。

2008年12月11日 (木)

シビリアンコントロールを逸脱していない (田母神元空将論文問題)

田母神元空将がシビリアンコントロールを逸脱していたとする主張があります。
ですが、私はそうは思いません。


田母神空将は、自身の歴史認識がどうあれ、求められた職責は果たしてきています。

以前の記事でも書きましたが、田母神元空将は、アメリカに対して反感を持ちつつも、MDを中心として「協同」を進める方向で努力されていました。
(現在の安保条約の解釈と、集団的自衛権行使の観点から、防衛省自衛隊では、日米に関しては「共同」とは言われても「協同」と言われることは決してありません。ですが、MDについては再三書いている通り、実質的に「協同」状態にあります。)
田母神元空将は、自衛隊よりも、政府主導で行われたMDの推進を、自分の感情は排して推進していた訳です。


論文の発表自体が、シビリアンコントロールの逸脱だとする意見もありますが、それは言いすぎだと思います。
発表に至る手続き的問題(事前の許可)と内容が村山談話に反する見解であるとは言え、直接職務に関係のない歴史認識を披露したことをシビリアンコントロールの逸脱とするなら、逆に自衛官には歴史認識を含む思想教育が必要だと言うことになります。
これからは、服務の宣誓だけでなく、村山談話支持の宣誓でもしろと言うつもりでしょうか。


おまけに、政府見解と異なる見解の発表が問題だというなら、田母神元空将が同じ論文中に記述した集団的自衛権に関係する下りの方が余程問題となるはずです。
集団的自衛権についての法解釈は、内閣法制局がまとめた法解釈なわけですから、田母神元空将の論文を問題視するならば、むしろこの点において問題とされなければおかしいはずです。


また、自衛隊のイラク派遣に対して、名古屋高裁が一部違憲判決を下し、これに対して田母神元空将が「そんなの関係ねえ」という発言したことに関しても、2つの点からシビリアンコントロール上でも問題はありません。(発言が高級幹部として品がないという批判はその通りでしょうが。)
第一に、まだ2審が終了しただけで、判決は確定していないため、判決に強制力は発生していない。
第二に、判決中、違憲であるとした部分は傍論の中で述べられている。
傍論とは、判決理由にはならないが、こういう考え方もあるということを示した部分であり、この時の判決自体は、派遣をやめる必要はないとしていました。判決理由も、当然にやめる必要がない理由を述べています。
まさに「そんなの関係ねえ」という通りだった訳です。
この点をちゃんと報道している報道機関がほとんど無いことは、日本の報道機関の異常性を示すモノだと言わざるを得ないと思っています。


しかし、政府とすれば、政府見解とことなる認識をどうどうと発表する姿勢をもって、シビリアンコントロールから逸脱しそうな危険人物と判断することは、致し方ないことだと思っています。
田母神元空将は、更迭に際して浜田防衛大臣が「これこそ文民統制だ」と言った通り、シビリアンコントロールによって解任された訳です。

2008年12月 9日 (火)

田母神元空将の更迭・処分 (田母神元空将論文問題)

田母神元空将の更迭、処分については、正直な心情を言えば残念だが、致し方のない事だし、妥当なモノだと思っています。


更迭直後の記事において、更迭されることを含めて内諾があったのではないかとまで書いた通り、あの論文の内容は、政府見解に反する以上、政府として座視できない内容であり、更迭も当然だろうと感じています。

歴史認識に係わらず、政府見解は、閣僚内でも閣内不一致として問題となります。それを考えれば、首相の幕僚たる航空幕僚長としては、内心どう思っているにせよ、それを公に口にすることは問題でしょう。
そして、問題となることを予見できなかったという点において、更迭は妥当なことだったと言わざるを得ないと思っています。


残念なのは、田母神元空将自身、こんな騒ぎになるとは思っておられなかったと言われており、政治状況を読めていなかったことです。
「鵬友」(航空自衛隊幹部会誌)に同様のものが載ったことがあると言えど、部内誌と部外の公募論文では訳が違います。
佐藤守氏がブログで書いていた通り、歴史認識について似通った人との付き合いが多く、判断を誤ったのかもしれません。


ただし、佐藤正久参議院議員が指摘している通り、階級章に4つの星がつく「航空幕僚長たる空将」から、役職なしで3つの星しか付かない普通の空将への更迭は、表面的にも実質的にも「降任」であり、懲戒処分の審理なくして処分されたことになります。
懲戒処分における「降任」は、最も重い「免職」に次ぐ処分であり、制服を着ていた者ならば、極めて重い処分であることは直ぐに分かります。


このことを含め、民主党を始めとして、懲戒処分を求める動きがあったことには憤慨を覚えます。
懲戒に対しては、あの論文発表が懲戒処分に当たるか否かを審理する訳ですが、田母神元空将も受けて立つ構えだった通り、とても処分に値するとは思えません。

唯一、懲戒処分における当たるか否かについて疑義のある点は、官房長に文書で報告していなかった事ですが、少なくとも口頭では報告しています。内規違反ではありますが、せいぜい注意か口頭注意(最も軽い懲戒処分が「戒告」ですが、懲戒処分には当たらないものの、そこまでに至らない問題に対しては、「注意」が行われる)程度です。

内規では、部外に対する発表に事前の報告、許可を求めていますが、同様に海外渡航も事前の報告、許可が必要な事になっています。

何年か前、この内規に反して、無許可で海外に渡航していた隊員が何人もいたことが問題になりましたが、私が記憶している限り、懲戒処分を受けた隊員はいなかったはずです。
もちろん、立場が違うという考えもあるでしょうが、高級幹部に文書で報告を求めることは、部内にいたことのある者としては不自然にも思えます。


離任式も行わずに定年退職を適用したことで、組織としての処分は十分にされていたと思います。

2008年12月 7日 (日)

田母神元空将の人望と指揮官型 (田母神元空将論文問題)

田母神元空将の更迭問題が発生した以後、ネットでは自衛隊関係者による田母神元空将擁護の書き込みがかなりの数ありました。


個人的な心情を書かせてもらえば、わたし自身も田母神元空将を擁護したいとさえ思っています。
それは、田母神元空将が部下に慕われる方だったからに他ならなりません。


文芸春秋11月20号でも、田母神元空将に批判的な論調の記事を書きながらも、記者から好かれていた事が書かれています。


なお、「お前は田母神元空将のことを知っているのかよ」という感想を持たれる方がいると思うので、今のうちに申し述べておきますが、私は某部隊の司令部において、幕僚の一人として、直接に仕えさせて頂いた経験があります。


自衛隊では、広義の指揮は、狭義の指揮、統御、管理の3つに分類されます。
狭義の指揮は、純粋に命令を与えて部下の行動を律するというもの。

統御は、部下のやる気を起こさせ、部隊を行動させていくというもの。

管理は、人事管理など、部隊を組織的に行動させるための調整を行うものです。
実際に部隊を指揮する指揮官は、この3つの全ての要素において部下を指揮している訳ですが、それぞれの指揮官のパーソナリティや部隊の規模などによって重点は違ってきます。


田母神空将は、この3つの指揮の分類で言えば、統御に優れた指揮官でした。
論文が問題となった以降でも、新聞紙上で「朴訥とした中にもユーモアを交えた語り口には定評がある」と表現されたように、司令官の訓示など、隊員として、ともすれば「かったりい」というような印象を抱くものでも、田母神空将の訓示は聞いているものを引き付け、「この指揮官ならば」と思わせるものがありました。

また、幕僚が起案した命令等の文書指導においても、狭義の指揮タイプなら事細かに注意し修正させるところですが、田母神空将の場合は、大筋が合っていれば、あとの細部は幕僚に任せるといったスタンスで、任された幕僚が意欲的に業務に取り組めるよう仕向けることがうまい方でした。


また、今回の論文や東京大学での講演などでもその片鱗が見られますが、田母神空将は、「ヒラメ」(上のご機嫌ばかり見る)とは対極にあり、首を切られても構わないという姿勢で上に臨んでいたため、部下としては非常に心強い方でした。


そして、この統御型指揮官だからこそ、自分の国の正当性といった隊員の士気に影響しそうな問題について、強いお考えを持っていたのだろうと思います。
(私自身は、現在の自衛隊が正当ならば、過去の正当性はどうでも良いと思っている為、田母神元空将とは考えが異なります。)

2008年12月 5日 (金)

自衛官の思想的マジョリティー (田母神元空将論文問題)

田母神元空将の論文問題は、ネットだけでなく、雑誌などでも取り上げられ、未だにホットな話題のようです。
私の中にも、未だ整理しきらないものの、書きたいことがかなりあります。
そこで、関連した記事を何回かに分けて書こうと思います。


まず最初に、自衛隊OBとして、多くの方が気になるであろう、歴史認識に関する自衛官の思想的マジョリティーがどんなところにあるのか、端的に言えば、田母神元空将のような思想が自衛隊内において一般的なのかどうかについて書いておきます。


今回の論文中、もっとも問題とされた歴史認識について、田母神元空将の考えは、決して多数派ではありません。


おそらく、最も多数なのは無関心派(私も)でしょう。

受験に近現代があまり必要ないこともあって、基本的に知識不足であることも、世間一般と同様です。(幹部よりも曹士隊員の方がこの傾向が強い)
ただし、その無関心派内でも、60年以上経過した現在でも、謝罪ばかりを繰り返す謝罪外交に対しては、憤慨している者が多数です。


この無関心派に次ぐのが、日本の過ちは認めつつ、当時の国際政治状況を鑑みれば、致しなかったとする考えです。幹部では無関心派を超えるかもしれません。


その次が、日本の過ちを明確に認める立場です。以外に思われるかも知れませんが、幹部でも少なくないように思います。


その一方、田母神元空将のような、侵略を認めないといった考えは、ほとんど聞いた記憶がありません。
実際にはある程度の数がいるのかもしれませんが、自衛隊内でも、こう言った考えはむしろタブー視されている状況です。


そして、こういう状況だからこそ、田母神元空将としては、この状況を問題視して、幹部学校のカリキュラムに取り上げたり、訓示やモーニングレポート後のコメントで語ってきたのではないかと思います。


今回の事件で、自衛隊が国民の信頼を失ったといった意見があります。
それは、上に書いたように、自衛隊の内実が国民一般とそう乖離していないにもかかわらず、田母神元空将のような考えの者が多いのではないかとする疑念を抱かせたという点において、残念ながらその通りなのかもしれません。

2008年11月 2日 (日)

田母神空将の歴史感と職務姿勢

前回の記事は、ニュースを見て慌てて書いたので、触れ忘れた分がありました。そこで前回に引き続き、田母神空将の論文と更迭問題について書きます。


今回の件は、特に歴史認識が問題となっています。ですが、正直に言いまして、私は戦争や戦闘には興味はあっても過去の歴史には興味がないため、田母神空将の論文に関して、どの程度正しくどの程度誤りがあるのかは分かりません。
そのため、歴史認識はとまれ、これまでの田母神空将の職務姿勢について書きたいと思います。


いろいろ騒がれている中で、田母神空将が太平洋戦争に関して反米的な内容を書いていることをもって、彼が日米同盟を怪しくしていると言うような論調が一部にあります。
あの論文を読んで喜ぶアメリカ人はいないと思いますが、田母神空将が日米同盟に多大な貢献をしてきたことは、日本以上に米軍関係者が理解しています。


現在、日米共同の下、MDが強力に推進されています。
それは、まもなく実施される航空総隊司令部の横田基地移転に象徴されていますが、実際に最も重要な点は、米軍へのBADGE、JADGEデータの提供です。
これは、小説中にも描いたように、状況によっては集団的自衛権の行使ともなるものです。
現在まだ政府解釈の変更は行われておりませんが、既にフライング実施されていると言えます。


そして、これを先頭にたって推し進めたのが、田母神空将でした。
彼は、2007年3月に空幕長に就任する前、2004年8月から2年半の間、航空総隊司令官でした。
この間に、総隊から米軍へのデータ提供が開始されると共にCOC/AOCCの横田移転と共同使用の流れが固まりました。
その後、幕僚長となってからも、田母神空将は、この件を積極的に進める立場でした。

そのため、その功績が認められ、今年8月15日に、米大統領からの「リージョン・オブ・メリット・ディグリー・オブ・コマンダー(司令官級勲功章)」を贈呈されています。
http://www.asagumo-news.com/news/200808/080828/08082808.html


今回の論文が、シビリアンコントロール上の問題と見る向きもありますが、田母神空将は、政府の歴史認識に異なる思想をもちつつも、官僚として求められていたことについては、求められる以上の仕事をして来ています。

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