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防衛政策

2008年9月 7日 (日)

H21概算要求-防衛省改革

平成21年度の概算要求の内、20年度の予算から最も大きく変更されている点は、その冒頭に防衛省改革という大きな項目が設けられている点です。


20年度の概算要求の時点では、まだ守屋元次官の件が問題となっていなかったこともあり、平成20年度の予算では、庁から省への移行という大きな組織改編があったものの、予算面ではそれほど大きな扱いにはなっていませんでした。


事務方トップと言われる次官にからむ問題は、防衛省にとって大きなダメージと言われましたが、制服を着ていたものとしては、これを端として内局のあり方が大きく問題とされていたことは、むしろ喜ばしいことのように感じます。


21年度の概算要求に盛り込まれた防衛省改革の内容は、22年度以降に持ち越された本格的な防衛省改革の端緒でしかありませんが、この項目が概算要求の筆頭に書かれた意義は一般の方が感じる以上に大きなモノがあります。
簡潔明瞭を良しとする防衛省の文書では、項目の順序が非常に大きな意味を持つからです。


心情を正直に言わせてもらえば、多くの制服自衛官にとって、内局は目の上のタンコブです。
制服組のトップ級、統幕を始め各幕僚長でさえ、次官はおろか新米のキャリアにも頭が上がらないという話を耳にしたり、時には実際に目にしました。制服自衛官にとって、同じカマの飯を食べた仲ではない者が我が物顔でいることにはホントに腹が立ったものです。
(民主的な制度に則って、民意を受けて選ばれた首相や大臣は別です。)
しかも、彼らは防衛省の役人でありながら、軍事の実態には通じていません。彼らは、現場を見ることなど滅多にないのです。(制服側で煙たがっているということもある。)
また、私を含め多くの制服自衛官が内局を良く思わない理由の一つには、省外とくに警察庁からの出向者が多くの重要ポストを占め、国防よりも出身官庁の省益のために行動しているのではと思われるケースを良く耳にしたからです。(「日本海クライシス2012」の中でも、それっぽい内容は少しだけ書きました。)


しかしながら、内局を完全に廃止するような事が妥当だと思っているわけでもありません。現場も中央もバランス良く知っている人材でなければ、上に立つにはふさわしくなく、上に行く制服自衛官は、頻繁な人事異動が不可欠だからです。つまり、中央に居て継続的に業務に携わる内局が必要でもあるということです。


21年度中には、本格的な防衛省改革の論議が進展するようなので、現職自衛官の方々が少しでも活躍できるようになることを祈りながら見守りたいと思います。

2008年9月 9日 (火)

H21概算要求-防衛省の意気込み

本年度予算に引き続き、F-15の近代化改修費用が概算要求に盛り込まれている。
改修の内容は従来と同様ですが、21年度概算要求が従来と異なっている点は、防衛省の意気込みです。


平成20年度の概算要求では、周辺諸国による航空機戦力の急激な近代化と取得に要する費用の節減を図るため、2個飛行隊分32機の改修費を計上しました。
この32機という機数は、現中期防で計画されている近代化改修26機を単年で上回る意欲的な数でしたが、実際の予算では20機分の改修だけしか認められていません。


その反省もあってか、21年度概算要求資料では、F-15の近代化改修だけに2ページも費やされています。(20年度の概算要求及び予算資料では僅か半ページだった)
追加された内容には、本年度予算で改修機数が減らされた理由の一つでもある中期防を上回ることについての説明が入っている他、経費節減効果が期待できることをグラフ付で示しています。
なんとしてでも予算化しようという防衛省の意気込みの顕れでしょう。


また、20年度概算要求資料では、改修項目は記載されていたものの、その軍事的な効果については全く記載されていませんでした。
21年度の概算要求資料では、この効果の説明だけでほぼ1ページを費やしています。
これは、防衛省の意気込みというだけでなく、改修の意義が関係者に十分に理解されなかったのではないでしょうか。

実際、この近代化改修によって、同じF-15と言えど、全く別の機体と言って良いほどの差異が生じます。0.5世代位の性能差があると言っても良いと思います。
一応改修項目にも触れておくと、
・FDL搭載改修(Link16)
・レーダー換装
・AAM-4搭載改修
・AAM-5搭載改修(HMD)
・セントラルコンピュータの能力向上
・ジェネレータの能力向上
・空調システムの強化
の7項目となっています。
改修項目それぞれの効果は、相互に効果を高め合っているため、どれが一番とは言いにくいものの、一応上記の記述順序が私の考えた各項目の貢献度です。

各改修項目の意義についても、触れようと思いますが、長くなりそうなので次回にします。


さて、防衛省の意気込みは、21年度予算にどの程度反映されるでしょうか?

2008年9月20日 (土)

H21概算要求-F-15近代化改修とGCI

概算要求関係の前回の記事で書きましたが、F-15近代化改修の項目は、次の7つです。
・FDL搭載改修(Link16)
・レーダー換装
・AAM-4搭載改修
・AAM-5搭載改修(HMD)
・セントラルコンピュータの能力向上
・ジェネレータの能力向上
・空調システムの強化


この内、防衛省が公開している概算要求資料において、改修効果を説明している項目は、次の3つです。
① FDL(Flight Data Link)搭載改修
② レーダー換装+AAM-4搭載改修
③ AAM-5搭載改修(HMD)


この中でも、最も戦闘の様相を劇的に変えるものは、①のデータリンクです。
従来、特に視程外においてパイロットがSA(状況認識)を得るための手段は、自機の機上レーダーと地上及び機上(AWACS)の管制官からのボイスでした。(一部の機体にはLink16とは別のデータリンクがあるが、情報量が少なく、SA向上に資する効果は大きくない)
自機の機上レーダーも、探知追尾能力は地上レーダーとは比較にならないものでしたし、インターフェイスがBスコープだったりで、とても全体状況を把握できるような情報は提供していませんでした。
近代化改修でLink16による情報入手が可能になれば、PPIスコープ同様の鳥瞰的情報が把握できる上、従来では管制官のボイスからしか得ることのできなかった背後の目標についても情報を得ることができます。
レーダー表示については、次のアドレスを参照のこと。
http://homepage1.nifty.com/avionics/data/radar-scope.html


このデータリンク搭載により、パイロットは管制官による支援がなくとも、相手の側方などの敵レーダーの覆域外から、自機のレーダーを使用することなく接敵することが可能になります。


今回の近代化改修は、たとえ防衛省の要求が満額回答を得たとしても、F-2などを含む戦闘機全体としては、まだまだ一部です。
そのため、依然として(要撃)管制官は必要ですが、その重要度は確実に下がってきています。
逆に、2機あるいは4機のエレメントリーダー、フライトリーダーの重要性はさらに高いものになって行くでしょう。
また、Linkをささえる通信電子の重要性は上がって来ます。

Linkが普及すると、航空自衛隊内における各職種の重みも変わってくるでしょう。

2008年12月18日 (木)

環境問題は防衛にやさしくない!

タイトルが間違ってないか?
と思う方もいらっしゃると思いますが、間違えているわけではありません。


先週の土曜13日まで、東京ビックサイトにてエコプロダクツ2008が開催されてました。
http://www.eco-pro.com/
小中高校生も授業の一環で来ていると見えて、大変な盛況振りでした。
地球環境の維持は、われわれが生きてゆく上で大切なモノですが、防衛に無配慮では大変なことになります。


もちろん、環境問題に関する全てが防衛に悪影響を与えるわけではありません。
防衛、特に防空に悪影響を与えるのは、風力発電用の風車です。

そんなもの送電線と大差ないだろ、と思う方も多いと思いますが、実は送電線と風車では大違いなのです。


その理由には2つあります。
一つには、風車によるレーダーエコーが常に変化することです。
定常的なレーダーエコーは、単純なグランドクラッタだと言えます。現代のレーダーは、単純なグランドクラッタをマスク処理などで自動的に消去してくれます。
それ故、送電線もグランドクラッタの発生原因になりますが、レーダーにとってさほど障害とはなりません。
ですが、常に変化するレーダーエコーは、レーダーにとっては、ニュートラックが発生し続けているということに他なりません。
現代のフェイズドアレイレーダーは、ビームを自由に撃てるため、追随している目標以外の新たなレーダーエコーを捕捉すると、目標として確立するため、周辺を含めて集中的にレーダービームを撃ちます。
それ故、風車はレーダーのビームマネジメントに過大な不可をかけてしまう結果になります。
つまり、風車がある場所以外の目標捜索効率まで低下させてしまうという結果になるのです。

ただし、逆に言えば、旧式なレーダーではさほど影響しないとも言えます。


風力発電用の風車が(特に固定式)レーダーとって良くない第2の点は、レーダーと風車の設置適地が重複しやすいことです。
レーダーは、広い捜索覆域得るため、見通しの良い場所に設置することが基本です。そして、見通しの良い場所は、多くの場合風通しの良い場所でもあります。
結果、防衛省がレーダーの周りに広い用地を持っているのでなければ、レーダーの目の前に風力発電所が作られることにもなってしまう訳です。(方や送電線は極力風を避けて設置されます)

具体的地名には触れませんが、実際に問題となっている場所もあるようです。


こう言った省庁間の連携不足とも言われる問題は、旧郵政省時代から使用する電波の周波数割り当ての問題などが指摘されて来ました。
そのため、現在では総務省や国交省とは、それなりに連携できているように思います。
ですが、経産省、特に資源エネルギー省や環境省とはまだまだのようです。

環境も大切ですが、各省庁は、防衛にもちゃんと配慮した施策をとって頂きたいと思います。

2009年2月 5日 (木)

方面隊が消える?

ちょっと古い話ですが、軍事研究誌の昨年2008年10月号に、藤井久氏が書いた「登場するか陸上総隊」なる記事が載っていました。


戦闘部隊に関して、海自は自衛艦隊司令官、空自は航空総隊司令官という単一の指揮官が存在するのに対して、陸自では各方面隊司令官が横並びという状態を改めるべく、陸上総隊が登場するのではないか、という記事でした。


私の現役時にも、何度か耳にしたことのある話で、根も葉もない噂レベルの話ではありません。
日本の国土程度の広さでは、単一の指揮官では指揮しきらないというほど広くはないため、検討されることはもっともでしょう。
なにせ、上記記事では書かれていないものの、陸自の各方面隊司令官が横並びになっている本当の理由は、自衛隊創設当時、官僚がクーデターを警戒したからだという話もあるくらいです。


さて、ここからやっと本題です。
ブログタイトルに書いた方面隊は、藤井氏の記事で触れられている陸自方面隊の事ではありません。

となると、そう、空自の航空方面隊の事です。
バカなことを言うなと思う方もいらっしゃるでしょうが、全く可能性のない話ではないのです。


その理由は、一つには彼我共に航空機の能力(特に航続距離)が向上し、容易に方面隊の境界を越える事態が発生しやすくなった事。
第二に、新たに任務に加わった弾道ミサイル防衛では、方面隊による作戦運用が不可能なこと。
(目標が他国の領域にあるうちから対処を開始し、指揮下にある海自部隊を含め、全国の部隊を一元的に運用しないとまともに対処できない)

次に、上の内容とも関連しますが、JADGEをはじめとした指揮統制手段の能力向上により、総隊が直接指揮を執ることも可能になってきていることです。


方面隊の機能は、単に作戦運用に止まらないため、実際に方面隊が廃止されると諸々の問題が発生します。
ですが、今後それらの問題解決を計り、方面隊廃止の方向に行かないとも限りません。

実際、今後の(航空)自衛隊をどのような組織とするかという議論の中では、たびたび話題に上っていた話なのです。

今後、本当に方面隊が廃止される方向に行くかは分かりません。

ですが、予算が減少するなか、災害派遣や国際貢献と言った新任務が増えている状況を考えれば、より効率的な部隊運用でもある総隊による一元運用は、決して非現実的なプランではありません。


蛇足ですが、以前は逆に総隊無用論というものもありました。
それは、方面隊レベルで十分な部隊運用と練成ができるにも関わらず、総隊という結節は無駄ではないかというものです。言い方を変えると(方面隊からすると)、総隊は余計な口を挟むな!ということだったのですが、総隊の価値と存在感が高まったため、近年ではあまり聞かれません。

2009年6月 5日 (金)

問題は「人物」

防衛省設置法の改正案が成立しました。
これによって、制服組を政府中央から遠ざけるものとして長年問題視されて来た防衛参事官制度が廃止され、防衛相補佐官が新設されることになりました。

防衛省設置法改正案が成立、防衛相補佐官を新設 (読売新聞09年5月27日)
********************
 政治任用の「防衛相補佐官」新設を柱とする防衛省設置法改正案は、27日午前の参院本会議で自民、民主、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。
中略
 補佐官は、防衛相が民間の有識者から3人まで起用できる。
後略
********************

防衛参事官制度の廃止は、制服組から、より専門性の高い助言ができるようになるでしょうから、これについては諸手を挙げて賛成です。

問題は新設される「防衛相補佐官」の人選です。
「民間の有識者」から人選されることになるわけですが、経済などと比べ、防衛の有識者と言われるような人には、ピントのずれた方が多すぎます。
今のところ、個人名まで聞こえて来ておりませんが、オカシナ人が就くようなら制度として改悪だったということに成りかねません。
実際に誰が就く事になるのか注視したいと思います。

まあ少なくとも、守屋氏のような不正はなくなるでしょうから、この点では改善と言えるでしょうが

2009年7月22日 (水)

問題の「人物」

以前の記事「問題は「人物」 」において、新設される防衛相補佐官に関して、誰が就くのかが問題だと書きましたが、拓殖大教授で、空自OBでもある森本敏氏(68)が内定したとの報道がなされています。

新設の防衛相補佐官に森本敏氏内定 防衛省改革の一環 」(朝日新聞09年7月15日)

率直な感想としては、「変な人が就かなくて良かったな。」という所です。
妙な書き方になりましたが、自衛隊OBでありながら、この方の印象は、安全保障・防衛問題の専門家というより、まともな国際政治学者といったところなので、あまりピンと来ない、というのが正直なところなのです。

良い言い方をすれば、非常に大局的な視点でモノを語る方で、防衛相補佐官の存在意義を考えれば良い人選なのかもしれません。
但し、例えばFX選定問題などでも、政治的な要素を重視した判断をする傾向が強いのではないのか、という懸念もあります。

補佐官として気になる行動(発言)があれば、また書いてみます。

2009年7月25日 (土)

現実路線なら良いかな?

以前の記事「不審船? 」において、民主党が海賊対処新法に反対していたため、彼らが政権を取ってもらっては困ると書きましたが、政権奪取が現実性を帯び、彼ら自身が考え直してくれたようです。

民主が海賊対策に海自容認、外交で現実路線 」(読売新聞09年7月23日)
民主、「インド洋撤収」を政策集から削除 現実路線へ 」(朝日新聞09年7月23日)

民主党がまとめた2009年の政策集において、防衛政策における非現実的な政策のほとんどを改めています。
海賊対策のため自衛隊派遣の容認、インド洋での海上自衛隊による給油活動の継続、日米地位協定改定や思いやり予算削減についてのトーンダウンなど、外交にも配慮した現実路線への転換を打ち出しました。
また、国連安保理決議にもとづく貨物検査の実施を盛り込み、北朝鮮対策として貨物検査特措法案の法整備にも舵を切っています。

個人的には、北朝鮮や中国に近く、アメリカのMDや在日米軍基地による極東域へのパワープロジェクションに日本が必須であることを踏まえれば、日米地位協定の改定問題などは、もっと強い姿勢で臨んでも良いと思ってますが、日米安保が片務条約である内はある程度仕方のない部分かもしれません。

民主党は、国防費の削減は行うつもりでしょうが、国債の格付け低下が不安視されるほどの財政状況ですから、これは仕方がないことでしょう。
政権交代はほぼ確実なようですが、今回の政策集にまとめられたとおり、現実的な政策に転換するのであれば、政権を取ってもらっても良いかな?

2009年8月 8日 (土)

報告書は時限爆弾

首相の私的諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」が、報告書をまとめています。
報告書の全文はコチラ
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ampobouei2/dai11/siryou1.pdf

新聞各紙も内容について報じるとともに、社説でも取り上げています。
米国へのミサイル、迎撃も可能に…安保懇報告書」(読売新聞09年8月4日)
「北朝鮮の対米ミサイル迎撃可能に」安保防衛懇が提唱」(朝日新聞09年8月4日)
北ミサイルに日米共同対処 集団的自衛権行使を勧告 政府安防懇が報告書 武器輸出三原則は緩和」(産経新聞09年8月4日)

防衛有識者会議 大胆な提言を新大綱に生かせ」(読売新聞社説09年8月5日)
安保懇報告―憲法原則踏まえて論戦を」(朝日新聞社説09年8月5日)

ソースをザラっと読み、各紙の報道を見てみると、ニュースそのものに関しては、背景などを踏まえて説明している朝日の記事が一番分かりやすいです。
朝日の社説の方は、専守防衛の堅持と集団的自衛権の行使を認めるなとの立場となっており、予想通りではあります。ただし、社説の結び方は流石にうまい。
以下朝日社説の結び部分です。
********************
「報告書を受け取った麻生首相は、防衛に対する自民党の責任感を強調した。一方の鳩山民主党代表は「政権をとったら我々の視点で見直す」と述べた。だが、政権選択の総選挙で、安全保障政策があいまいなままではならない。憲法原則を含め、民主党の考えをはっきり聞かせてもらいたい。」
********************
確かにその通りですね。

さて、報告書の内容は、リンクを張ったニュースを見るか、時間のある方は全文のリンクを張ってあるのでそちらを見てください。
目玉の内容については、別に記事にします。

今回の記事では、この報告書の影響について考えてみます。
「安全保障と防衛力に関する懇談会」自体は、首相の個人的な諮問機関であるため、この報告書自体は、なんら強制力を持ちません。
そのため、この報告が当初から新大綱や中期防衛力整備計画のベースとなるべく考えられていたものとは言え、民主党が政権を取れば、ひっくり返される可能性は十分にあります。
各紙ともこのことには言及しています。

ですが、防衛計画の大綱の見直しのための布石である今回の報告書は、現政府がアメリカから受けている圧力(要望というべきか)の反映も受けているはずです。懇談会の委員には、学者だけでなく元防衛事務次官の佐藤氏や元統幕議長の竹河内氏なども含まれており、内情を踏まえた議論がされたはずです。

政権が民主に変わったとしても、アメリカの意向が変わったりはしないでしょう。
そうなると、今回の報告書は、年末から年明けにかけて、防衛計画の大綱見直し議論を通じて、民主鳩山政権の時限爆弾になるかもしれません。

なかなか意欲的な内容(集団的自衛権の行使、武器輸出3原則の緩和、国際平和協力に関する恒久法の制定)が含まれた今回の提言は、連立を組む可能性のある社民党には到底受け入れ難いものですし、民主党内左派からも抵抗を受けるでしょう。
鳩山氏がこれらをまとめ上げられなければ、細川政権のように、早期に瓦解するかもしれません。

2009年8月10日 (月)

「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書-集団的自衛権の行使

今回は、前回紹介した「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書の目玉の一つとなっている集団的自衛権の行使に関するに政府解釈の変更について書いてみます。
全60ページある報告書の内、集団的自衛権について記載した箇所は、実際には少ししかないので、最初にその部分を転載します。
********************
(2)法的基盤の確立
安保法制懇談会では、「米国に向かうミサイルを迎撃すること」、「日米が共同で活動している際に米軍艦船に危険が及んだ場合にこれを防護すること」は、いずれも同盟国として果たすべき日本の任務であり、これらが常に可能となるよう、警察権や武器等防護の論理によらずに、集団的自衛権に関する従来の政府解釈を変更すべきである旨提言された。本懇談会は、この提言を強く支持し、これらの論点について以下のように考える。
① 米国に向かうミサイルの迎撃
北朝鮮の弾道ミサイルの性能が向上することにより、その射程には、日本全土に加え、グアム、ハワイなど米国の一部も含まれ、日米は共通の脅威にさらされることとなる。ミサイル防衛システムは日米の緊密な連携により運用されるものであること、またグアム、ハワイ等は日本が攻撃を受けた際に米軍が来援する拠点であることから、米国に向かうミサイルを迎撃することは、日本の安全のためにも必要であり、可能な手段でこれを迎撃する必要がある。従来の集団的自衛権に関する解釈を見直し、米国に向かうミサイルの迎撃を可能とすべきである。
② 米艦船の防護
本年(2009 年)4 月の北朝鮮によるミサイル発射の際には、自衛隊と米軍の艦船が日本海に展開したが、未だ日本に対する武力攻撃が発生していない状況で公海上の当該米艦船に対する攻撃が行われ、かつ、これが自衛隊艦船に対する攻撃と認めがたいとき、自衛隊の艦船が米軍艦船を防護するための法的根拠は見いだしにくい。
しかし上述のとおり、弾道ミサイルへの対処は、日米が緊密に連携して行うものであり、ミサイルの警戒にあたる米軍艦船について自衛隊艦船が防護できないとすれば、日米同盟の信頼性の低下を招き、北朝鮮に対する有効な軍事的対処ができなくなり、日本の安全を大きく損なうおそれがある。したがって、このような場合においても自衛隊が米艦船を防護できるよう、集団的自衛権に関する解釈の見直しも含めた適切な法制度の整備が必要である。
********************

報告書では、兵器の名称には触れていません。
ですが、① 米国に向かうミサイルの迎撃に関しては、具体的にはイージスSM-3によって、ハワイやグアムに向けて発射されたミサイルの迎撃を行うべき、という内容です。
SM-3、特に開発中のBlock IIであれば物理的には可能でしょうから、これはもう軍事上の話というより、政治・外交上の話です。
日米同盟が片務状態であることなど、多くのアメリカ人は承知していません。
日本がアメリカのコミットメントを求めながら、ハワイやグアムを見捨てるような行動を採れば、日米関係は急激に悪化します。
イザその時になってから法解釈論議をしている余裕はないので、これは報告書の提言どおり、解釈変更を行っておくべきです。

個人的な見解としては、FPS-5などで捕らえた迎撃に必要な航跡データをアメリカに提供している以上、現状でも既に集団的自衛権を行使している状態だと思っています。
もし、米軍のイージスが1隻も日本近海に展開していない状態で、北朝鮮が不意に弾道ミサイルをグアム方面に発射した場合、下甑島のFPS-5などが航跡を捕らえ(車力の米軍AN/TPY-2レーダーは、監視範囲などの点から、グアムに向かう航跡を捕らえられない可能性が高い)、航跡データがJADGEを通じて米軍のネットワークに流され、それを元にハワイグアム方面のイージス艦がSM-3を発射して迎撃すれば、これはもう、どう考えても集団的自衛権の行使でしょう。

② 米艦船の防護は、もっと切実な問題です。
日本のBMD対応イージス艦は4隻体制の予定ですが、北朝鮮がノドンの使用を使用して日本を攻撃する場合、200発以上の弾道ミサイルを迎撃しなければならない可能性があります。
時間的な飽和状態にならなるか否かはハッキリ言えませんが、短時間に集中して発射されれば、おそらく飽和する可能性が高いと思われますし、そもそも200発ものSM-3弾を保有していません。
自ずと米海軍のイージス艦による迎撃にも期待しなければならない訳です。

報告書では、米海軍艦艇の防護を自衛隊艦艇が行うことのみが記述されていますが、艦艇に対する攻撃は、SSMだけでなく北朝鮮軍機による攻撃の可能性もありますし、飛来するミサイルの迎撃のみを考えるとした場合でも、AAM-4改であれば、艦艇に向かうSSMやASMも迎撃できます。
当然、空自機によるエアカバーを行わなければならないケースも想定される訳です。

米海軍艦艇に守られていながら、その艦艇を守ることが出来ないなどという論は、どうやっても通りません。
集団的自衛権が行使できなければ、日本自体を弾道ミサイルの脅威から守ることが出来ないのです。

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