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災害派遣

2015年8月 8日 (土)

茨城沖サメ対策は、水中弾を使って災害派遣をしたら?

茨城の海水浴場沖にサメが出現し、遊泳禁止になっている海水浴場もあるようです。
茨城沖、新たにサメ16頭 海水浴場で防護網設置」(産経150807)
サメ出現でビーチ閑散、観光に打撃 茨城県内の海水浴場」(産経150807)
PhotoPhoto_2

サメの出現は、たまたま黒潮で流されたのではなく、海水温の上昇が関係する自然現象でしょう。
なので、駆除しようとしたところで簡単にはゆきませんが、人が死傷する可能性があるのですから、可能な対策は行うべきだと思います。
現状、防護網で安全確保をしていますが、サメが千葉や東京湾に向かわないとも限りません。

ですが、大型の魚類であるサメを駆除する具体策は、コストも考えるとなかなか難しいと思われます。

沖縄やオーストラリアでは、サメがウヨウヨしていますから、完全に駆逐することは不可能で、数を減らすための駆除が行われています。
方法としては、餌を付けたロープで、釣るのですが、茨城沖のように絶対数が少ないサメを駆除する方法としては適切とは思えません。
オーストラリアのサメ駆除作戦、172匹を捕獲」(CNN140509)
【動画あり】4mの巨大サメ、重すぎて計量エラー 八重山で88匹駆除」(沖縄タイムス150731)

しかし、茨城沖のように絶対数が少なく、ヘリによって目視観測ができているのでしたら、有効な方法がありそうです。

ヘリなどの航空機で捜索し、空中から機関銃で射撃すれば良いのです。

ですが、この方法にも問題があります。
通常の銃弾は、例え強力なライフルでも、水中ではあっという間に速度が衰え、威力がなくなってしまうのです。
映画やドラマでも、銃を持った襲撃者から逃れるため、水中に潜って逃げるシーンがよく現れますが、銃弾は水中ではあっという間に速度(つまり威力)を失います。

このビデオは、水中でAK47を撃った動画ですが、弾丸は1.5m程で止っています。
(2分42秒くらいからが良く分かります)

報道されている写真を見ると、サメはかなり浅い所を泳いでいるようですが、それでも水中での銃弾の威力が衰えることを考えると、普通の機関銃で撃っただけでは不十分かもしれません。

ですが、以前にも取り上げた技術研究本部が行っている「飛しょう体の水中弾道特性に関する研究」というのがあります。
実験では、かなり良い結果が出ているようで、写真を見る限り数メートル先でも威力を保持している様子です。
また、海外でも、同種の銃弾が開発されています。

銃弾の形状を変えるだけなので、作るのは容易でしょう。
これを使ってヘリからサメを撃てば、十分な効果がありそうです。

自衛隊が行う場合、名目は災害派遣になるでしょう。
災害派遣を実施するための3用件、「公共性」「非代替性」「緊急性」については、緊急性も非代替性も怪しいですが、最近は、これら要件に照らし合わせてかなり怪しい状況でも派遣が行われていますし、過去には災害派遣として戦闘機でトドを撃ったことすらあるくらいです。

問題があるとすれば……
ここでもシーシェパードなどの環境テロリストやワシントン条約でしょうか。

前掲CNNのオーストラリアでのサメ駆除に対して、シーシェパードが批判しているようです。

    これに対してサメの保護を訴えていたシーシェパードの関係者は、「捕獲された172匹は大部分が、人を襲ったこととは無関係のイタチザメだった」と批判。生きて放されたサメも「ショック状態」になって海の底に沈んでしまうと主張している。


また、私は詳しくありませんが、ワシントン条約が関係するようです。
宮古 サメ駆除の制度適用は困難か、ワシントン条約絡む」(琉球新報19960727)

2014年2月19日 (水)

雪害、自治体・自衛隊が災害派遣を躊躇ったワケ

歴史的な大雪による災害に関連して、自衛隊の災害派遣について、自衛隊自身や派遣要請をする自治体の対応について、批判が起こっています。
大雪:埼玉県が自衛隊派遣断る 秩父市が要請」(毎日新聞14年2月18日)

この雪害に関して、世論の大勢は、積極的に自衛隊を投入すべきだという考えのようです。
冒頭リンクの記事などは、毎日新聞なのに、災害派遣を躊躇った埼玉県を悪者扱いしているくらいです。
また、適当なニュースが見つかりませんでしたが、山梨の被災でも、同様の批判が起こっています。

世論の怒りは、サッサと派遣を要請しない県は、天ぷらを食べている安倍総理と同じでケシカラン、とでも言いたい様子ですが、自治体の防災担当者が派遣要請を躊躇した事には、それなりの理由があります。

山梨などは、民主党の輿石元幹事長を国会に送り込んでいる土地であるため、日教組などからの吊し上げを恐れ、派遣要請を躊躇したという側面も、確かにあるでしょう。

しかし、そう言った考えが、過去の日本では主流であったため、自衛隊が災害派遣を行うに当たっては、災害派遣の3要件を満たしている必要があるとされています。
その3要件とは、「公共性」「非代替性」「緊急性」です。
関連過去記事:「ハエ駆除における、災害派遣3要件の適用」「自衛隊による防疫活動

佐藤議員は、今回の雪害が3要件を満たしていると言っています。
Ws000016
自治体、それに自衛隊も、実際に派遣で出ている訳ですから、最終的には、満たしていると判断したはずです。

ですが、私から見ても、3要件を満たすか否かは、かなり怪しい感じがします。
死者も出ている状況ですから、「緊急性」は、さほど問題ありません。除雪を行うのが公道であれば、「公共性」も問題ないでしょう。
しかし、「非代替性」は、大いに問題があります。

「非代替性」とは、過去の記事でも書いたとおり、他の組織等の能力では十分な効果が得られない、という条件です。
その根幹には、災害派遣によって”民業を圧迫”してはならないという、公務全般の原則が関わっています。

この「非代替性」が怪しいというのは、もっと大量の降雪がある雪国を見れば明らかです。
東北や北陸自動車道などは、大雪になると頻繁に通行止めになります。今回の大雪を遙かに上回る降雪が頻繁に発生している訳ですが、災害派遣が要請されることはありません。自治体が、土建業者に発注して除雪を行っているからです。
埼玉でも山梨でも、災害派遣を要請するのではなく、こうした業者に発注することが、本来のスジなわけです。また、そうしないと降雪地の住民は除雪のために税金を払うものの、埼玉や山梨では国民全体が税金を払っている自衛隊にやらせるという不公平が生じることにもなります。

今回、この「非代替性」要件を満たしていると判断された理由は、埼玉や山梨では、急遽業者に発注しようにも、受注できる業者が不足していたため、”代替困難”だったためでしょう。
ですが、要件を満たすか否か、怪しい状況だった事は間違いありません。

しかし、近年の災害派遣では、この3要件を満たすか否か怪しい状況でありながら、派遣が実施されるケースが増えています。
過去記事で書いたハエ駆除もそうですし、新潟地震の際の被害後家屋の除雪作業などは、公共の利益ではなく、個人の利益のために行った訳ですので、「非代替性」だけでなく、「公共性」さえも怪しい派遣でした。
また、離島ではあたりまえの公共サービスの一つにもなってしまっている急患空輸などは、かなり以前から疑問視されています。(何せドクターヘリを持っている自治体であれば、当然そちらが行うべき業務です)

これを、間違っているなどと言うつもりはありません。
自衛隊をどう使うかは、主権者である国民が決めれば良いことですから、世論が派遣を支持するなら問題ありません。
そもそも、この3要件を必要とすること自体も、以前は朝日や毎日と言った左派系マスコミが、自衛隊の災害派遣を国民の目を慣らさせるための手段だと言って糾弾していたからです。
その批判を逃れるために、言うなれば、仕方なく派遣したというイイワケとするために作られたのが3要件だとも言えます。

今回の災害で、世論は明確に派遣を支持していました。
今後は、この3要件が怪しいケースでも、更に災害派遣が行われるケースが増えるでしょう。

自衛隊とすれば、例え3要件が怪しくても、要請がさえあれば、要請があったから派遣したと言い訳ができます。
それだけに、自治体の防災担当者は、更に勉強をして、左派系マスコミや自治労にも的確に反論できる体制を整える必要があるでしょう。

また、そのためにも、自治体の防災担当部局への退職自衛官の採用をもっと積極的に進めるべきだと思います。
今回問題になった埼玉と山梨は、共に県庁に1名の退職自衛官を採用していますが、迅速な派遣を行うためには力不足でした。
退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況

しかし、その一方で、やはり「非代替性」については、留意されることが重要だと思います。
今回のケースでは土建業者、またハエ駆除であれば害虫駆除会社などは、「なんで発注してくれないんだ!」と思っていたかもしれません。
また、ゲスな勘ぐりをすれば、今回要請に積極的だった自治体は、あと1ヶ月ちょっと分しか残っていない今年度予算が惜しいため、自衛隊をタダで使おうと思った可能性もあります。

ここからは蛇足です。
ここで言及した災害派遣の3要件の出典、正直に言って記憶があいまいです。
自衛隊の内部文書であり、災害派遣の虎の巻と呼ばれる「災害派遣の参考」には、これでもかという程書かれていたことは覚えているのですが、大元を改めて調べて見ましたが見つかりません。
多分、国会答弁か何かだと思うのですが……
なお、「災害派遣の参考」は、確か表紙が青かったため青本と呼んでました。しかし、こちらのサイトに出ている公開された資料では、表紙が青くないです。(変わったのか?)

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2013年4月23日 (火)

地方公共団体防災関係部局における退職自衛官が急増

防衛省が公開する資料「退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況」が、2012年12月31日付の情報に更新されました。

以前の資料更新は、2012年3月末でしたから、この変化で2021年度9ヶ月の成果が見て取れることになります。
退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況2012

3月末の時点で、総数は203人でした、これが、わずか9ヶ月で253人にもなっています。
一気に25%も増えたことになります。
その前の資料更新が約2年前で、その時から前回までに22人しか増えておらず、かつ、この間に東日本大震災が発生していることからしても、今回の急増ぶりは、非常に顕著だと言えます。

防衛省資料には、この急増理由は書かれていません。

推測できる関連ネタとしては、24年度になって、防衛予算の一部に「退職予定自衛官のスキル向上のための職業訓練の充実等」として1.3億円が支出されていることが上げられます。
これは、防災部局に就職するためには、他幕(陸であれば海空、海であれあば陸空など)についても深い知識が必要ですが、実際には他幕についてはあまり知らない自衛官が多いための訓練だろうと推測していましたが、この訓練と就職援護活動がうまくリンクした成果が、この急増なのではないかと思います。

既に、以前の在職状況資料は閲覧できないので、詳細な比較はできませんが、見た感じ都道府県レベルには変化が少なく、市町村レベルが多いような気がします。
これは、前述の職業訓練の成果として考えるなら、幹部ではなく、曹レベルの活用が増えたのではないかと推測します。

県レベルの無配置県が、長野と沖縄であることは変りありません。
問題だと思いますが、随分放置されています。この両県で災害が発生して、自衛隊の対処が遅れたら、県の責任でもあると思います。

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2012年5月26日 (土)

退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況2012

防衛省が公表している資料「退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況」が2012年3月31日付の情報に更新されました。

以前の記事「退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況」を2010年の6月30日付の情報を元に書いていますが、その時の状況と比較してみましょう。

総数
 181人→203人
県庁等に多数を配置している都道府県
 1位 広島(5人)・長崎(5人)→変らず
 2位 東京(4人)→変らず
県庁等に無配置都道府県
 福井・長野・沖縄→長野沖縄

総数で22人増えています。やはり、震災の影響でしょうね。以前の詳細記録が出てこないのですが、東北エリアが特に増えているような気がします。

前回記事で、批判した無配置県ですが、福井は、やっと1名を配置しました。
あれだけ原発があって、原発災害が想定されるんですから、当たり前です。

今後、継続して不安なのは、やはり沖縄です。
県民保護を考えれば、備えあれば憂いなしのハズなんですが……

「なんくるないさ~」の県民性は、備えなくても憂いなしのようです。

2011年8月 4日 (木)

東日本大震災にともなう災害派遣で変る国民の自衛隊感情

統合任務部隊が解散し、自衛隊による災害派遣も、福島を除き、ほぼ終了しました。

大手メディアは、それほど触れませんが、朝雲新聞を見ていると、今回の災害派遣によって、自衛隊に対する国民感情が相当変化したことがわかります。(以下、写真はいずれも朝雲新聞から)

幼稚園児が人文字を作ったり。
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「陸前高田市上空でUH1ヘリ撮影 「感謝」 園児がハートの人文字」(朝雲新聞11年7月7日)

自治体が、派遣された自衛官の慰労会を行ったり。
「市民の誇り 感謝の集い 千歳市 災派部隊と留守家族の労ねぎらう」(11年朝雲新聞7月14日)

自衛官が呼ばれて、大学生どころか、小中高校で講演したり。
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「地本長らも頑張る 大震災の災派で講話に奔走 過酷な活動詳しく 自治体と自衛隊 連携の重要性も強調 小・中・高校生など熱心に聞き入る」(朝雲新聞11年7月21日)

いずれも、従来では考えられなかった事です。
以前だったら、日教組が狂ったように騒ぎ立てているはずです。

子供の将来なりたい職業でも、自衛官は急上昇しているようですし。
災害は不幸ですが、自衛隊に関する認識が改善されたことは、不幸中の幸いと言えることだったかもしれません。

(オマケ)在日米軍に対する考えも変っています。
「トモダチ作戦に感謝の大漁旗 被災地から米軍司令官らに」(朝日新聞11年7月27日)

2011年7月21日 (木)

ハエ駆除における、災害派遣3要件の適用

以前の記事「自衛隊による防疫活動」で、災害派遣を実施するにあたっては、災害派遣の3要件(「公共性」「非代替性」「緊急性」)を満たす必要があると書きましたが、東日本大震災では、ものすご~く拡大解釈されてるな、と思っていました。
(それに反対するつもりはありません)

その拡大解釈ですが、ここに来て、遂に極まれりといった感じです。なんと、自衛隊がハエ駆除までしています。
東日本大震災:陸自がハエ駆除隊派遣へ」(毎日新聞11年7月15日)
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ハエ駆除を実施する防疫支援隊(産経新聞より)

これだけだと寂しいので、前述の3要件に照らして、このハエ駆除隊が、どのあたりで拡大解釈されているのかを書いてみます。

ハエ駆除において、もっとも拡大解釈されているのは「非代替性」です。

「非代替性」というのは、他の組織等の能力では十分な効果が得られないから派遣するのだ、という条件です。
その根幹には、災害派遣によって民業を圧迫をしてはならない、と言う考え方があります。

今回、ハエ駆除隊として150人を派遣することになる訳ですが、東北以外から150人の業者を出張させればいいはずだと思いますから、この「非代替性」は、正直満たされてはいないでしょう。

被災地の方は、困っているのでしょうが、「俺にやらせろよ」と思っている、害虫駆除業者の方も少なくないと思います。


7月23日追記

今後、日本でウエストナイル熱やデング熱と言った、昆虫媒介の危険な伝染病が発生するような事態になれば、今回の派遣が貴重な先例になるかもしれません。

2011年5月27日 (金)

東日本大震災災害派遣のベストショット

今回の東日本大震災にともなう自衛隊の災害派遣で多くの写真が報道されましたが、私なりのベストショットと思われるものを取り上げてみます。

5
4月2日付の毎日新聞のサイトに載せられていたものです。
キャプションには「自衛隊車両がずらりと並ぶ校庭で隊員に自転車を押してもらい笑顔を見せる女の子=岩手県山田町の山田高校で2011年4月2日午前9時15分、木葉健二撮影」とあります。

従来、マスコミが取り上げる自衛隊の姿は、「なんだか良く分からず怖いモノ」という偏見に満ちたものでしたが、小さな子供にも受け入れられる自衛隊の姿が報じられるようになったことは、非常に喜ばしいことだと思います。

2011年5月24日 (火)

そこは誉めるところ

福島原発に投入された74式戦車は、結局現場に投入されず終いだったようです。

菅勇み足、政府主導でまたボロ「74式戦車」投入も結局出番なし…」(夕刊フジ11年5月9日)

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朝雲新聞より

 「菅直人首相はじめ、政府主導で『戦車でも何でも使え!』と投入が決まった。確かに74式は冷戦時の核戦争を想定して車内を与圧できて、装甲も厚いので一定量は放射線を遮断できる」と軍事ジャーナリストの世良光弘氏。しかし、38トンという重さが問題だった。

 「原発敷地内には地下ケーブルが張りめぐらされている。74式の重さではケーブルを遮断してしまうので東電側が使用を断ったという。ヘリからの放水を含め、もう少し菅首相や政府が、自衛隊の制服組と話し合えば、無駄な動きを取らなくて済んだはずだ」と世良氏は指摘。後先考えずに感情で物事を判断する菅首相のボロが、またひとつ出た形だ。


「兵は拙速を尊ぶ」という言葉がありますが、
『戦車でも何でも使え!』はまさに拙速の指示でした。
良く検討した結果、やはり使わない方がよさそうだったので使わなかったというだけで、持ってきた事によるマイナス効果はほとんどありません。
原発関係者に確認しないまま投入してケーブルをブチブチしてたら話になりませんが、良く検討した結果投入できたはずなのに現場に無かったと言うミスじゃないのですから、これは問題ないどころか、混乱した当時の状況を鑑みれば、良い指示だったと思われます。

菅首相を擁護するつもりは微塵もありませんが、そこは誉めるところです。

2011年5月 6日 (金)

米軍への支援要請は防衛省・自衛隊に

先日の震災関連の記事で、ロバート・エルドリッヂ氏の提唱する災害における日米相互支援協定に賛成する事を書きましたが、相互支援協定は直ぐに無理であるとしても、米軍の能力を円滑に投入できるようにするシステムは必要です。

活動限定にいら立ちも 米軍即応部隊「待機」」(産経新聞11年3月19日)
3月19日の記事ですから、発災後の混乱が続いている時の話になりますが、米軍への支援要請が的確に出来ていなかった証左です。

この記事で書かれている海兵隊第31海兵遠征部隊は、結局エセックス他の艦上で3月27日まで待たされました。
27日になって投入された先は、孤立していた気仙沼湾の大島です。揚陸艇を使っての上陸で、海兵隊ならではの場所に投入された訳ですが、訓練中の東南アジアからトンボ帰りで駆けつけた彼らを、10日以上も洋上に放置していたことになります。

情報がないので実態はよく分かりませんが、現在は「調整」を行っている自衛隊が実質的に米軍への派遣要請を取り仕切っていると思われます。

今後は、訓令や通達によって、災害派遣を受けた防衛省・自衛隊が、米軍への支援要請を行えるようにすべきではないでしょうか。

2011年4月29日 (金)

沖縄こそ、防災活動への米軍参加が必要

ネットには載っていませんが、4月16日付の読売新聞に、ロバート・エルドリッヂ氏の「米軍も防災訓練に参加を」という寄稿文が載っています。

氏は元大阪大学准教授で、在日米海兵隊基地外交政策部次長でもあります。
氏のHP
氏は、沖縄を中心とした日米関係論の専門家で、多数の論文や著書があります。
沖縄問題の起源―戦後日米関係における沖縄

硫黄島と小笠原をめぐる日米関係

奄美返還と日米関係―戦後アメリカの奄美・沖縄占領とアジア戦略


本当は寄稿文の全文を転載したいところですが、さすがにタイプがキツイので、以下に要約を書きます。

 在日米軍は、「トモダチ作戦」として日本国民への支援作戦を続けているが、すでに我々は教訓を集めて将来について考えている。
 それは、日本国内の防災訓練に在日米軍が参加する機会を増やす必要があるということだ。現在、在日米軍は東京都や静岡県など一部の自治体の訓練にしか参加していない。しかし、これは決して驚くべき事ではない、。阪神大震災(1995年)が起きるまで、地方自治体は自衛隊との間でさえ、防災訓練を取り入れてこなかったからだ。
(中略)
 私は、日米両国が災害時における相互支援協定を早急に締結し、日米のどちらかの国が被害を受けた時に備えて、協力関係を積み重ね、育成する訓練を実施すべきだと提言したい。
 提案するのは、「災害における日米相互支援協定」だ。(中略)
 まず、自衛隊と在日米軍の対応能力と協力関係を向上させるため、東海地震や東南海地震、南海地震を想定した2国間訓練を速やかに実施すべきだ。同じような災害訓練は、米国各地でも行えば、さらに良いだろう。日本各地で行っている防災訓練に、在日米軍や米政府の機関をオブザーバーとして参加できるようにすることも重要だ。
(中略)
 人間は、自然の破壊に対して立ち向かう(スタンド・アップ)することはできない。だが。日米が共に立つ(スタンド・トゥギャザー)ことはできるはずだ。


災害における日米相互支援協定という案は、非常に良い案で、日本側として真剣に検討すべきものでしょう。
それがなければアメリカの援助が期待できないというものではありませんが、法的地位を明確化し、必要な権限付与を事前にできるようにしておけば、もっと早く、そしてもっと効果的に米軍が動けるようになります。
それに、氏が米軍人の一人として言うことができない隠された本音として、日本人の世論を改善し、日米安全保障条約を片務条約ではなく、「相互」安全保障条約とすることにも貢献するだろうと思います。

さらに、法的地位や権限を明確化することで、防災に米軍が参加することに及び腰な自治体を積極的になることを即すことができます。
ここで、自治体の姿勢に言及するのは、この寄稿文を読んだ時に、私が自衛隊の担当者として調整段階から参加した沖縄での防災訓練のことが思い出されたからです。

当時は、阪神大震災の後で、多くの自治体が自衛隊の防災訓練には非常に積極的になっていたにも関わらず、沖縄の防災担当者は非常に及び腰で、勢い込んで出て行った調整会議には拍子抜けと言うか、やり場のない怒りさえ感じました。
沖縄では、自衛隊の防災訓練参加でさえ、そんな調子ですから、米軍に至っては言うまでもありません。

ですが、沖縄こそ米軍を防災活動に参加させるべき県です。

在沖の自衛隊は、人員数まで調べがつきませんでしたが、陸自が15旅団のみ、空自は南西航空混成団、海自に至っては沖縄基地隊のみと小規模です。
災害時には本土から支援が来ると言っても、海で600kmも隔てられており、来援は大変です。
しかも、今回のように津波災害などあった日には、港湾はもとより、松島基地以上に海に近く、遠浅のリーフにせり出した形の那覇基地は甚大な被害を受けること間違いなしなので、空海の輸送とも相当に困難となることが予想されます。

一方で、在日米軍は、他国に展開している場合も多いですが第3海兵遠征軍を中心とした海兵隊が1万6千人、嘉手納の空軍は中心部隊の18航空団だけでも1万8千人にも及びます。陸軍と海軍も少数ですが、所在しています。

自衛隊が少なく、米軍が多いとなれば、どう考えても災害時は米軍の力に期待すべきです。

しかも、沖縄は決して地震・津波被害が少なくありません。
1771年に発生した八重山地震による明和の大津波は、最大波高40m、最大遡上高は80mにも達したと言われ、1万2千名もの死亡・行方不明者という被害が発生しています。死傷率で考えれば、今回の地震・津波被害よりも遙かに被害が大きかったと言えます。
八重山地震(wiki)
また、宮古島は、他の沖縄各島と異なりハブがいませんが、この理由が津波により全島が水没したからだとする説もあります。

この状況を踏まえれば、沖縄こそ米軍を災害対処に活用すべきという論が出てくるべきですが、沖縄世論の形成に大きな影響を及ぼす地方紙の状況は……
沖縄、米軍への共感じわり 地元紙は「普天間問題に利用」主張」(産経新聞11年4月7日)
沖縄でも米軍への共感が広がる中、沖縄の主要地方紙2紙ともが、米軍の活動を売名行為だとしています。
こんな社説もありました。
米軍の災害支援 それでも普天間はいらない」(琉球新報11年3月18日)
ネットで叩かれたこんな記事も
存在意義アピールに「不謹慎」 在沖海兵隊が震災支援で」(琉球新報11年3月17日)

沖縄の方は、歪んだ地方紙に染められることなく、本当に必要なことが何なのか考えて欲しいと思います。

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