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空母保有

2011年7月24日 (日)

対空母に空母しか浮かんでこない発想の貧困

「空母には空母」を、という意見は、ネットでも後を断ちません。

私は、これには断固反対ですが、逐一反論するような体力はありませんし、以前にシリーズ記事を書いたので、これ以上詳細を書こうとは思っていませんでした。(ネットで議論をしようとも思いませんし、特定の個人攻撃みたいなことは好きではないので)

ただ、全国紙で堂々と空母を保有すべきと書いているのを見ると、ちょっと突っ込まずにおれません。
「22DDHは計画を白紙撤回し、空母を建造すべきだ」(産経新聞11年7月23日)
Chn11070610400002p1
改修中のワリャーグ(産経新聞より)

細かい話は、以前のシリーズ記事を見て下さい。2008年の記事なので、若干情報が古いですが、基本は変ってません。
ですので以下は、エッセンスだけ大雑把に書きます。

さて、中国が空母を保有することに対抗して、日本の空母保有を議論する場合、重要なのはその目的です。

アフリカへの政治・軍事的プレゼンスを強化して、資源確保や国際世論の形成を誘導するなどと言った目的なら、それを実行するための目標として、インド洋に空母機動部隊を遊弋させることは適切です。必須と言っても良いと思います。

ですが、日本の防衛と南シナ海までのシーレーン防衛ならば、もっとコストパフォーマンスの高い手段があります。

政治的・技術的なハードルが最も低い手段は、潜水艦の質・数的増強です。実際、現在防衛省が講じようとしている手段もコレです。

これに加え、政治的に可能であれば、対艦攻撃能力を持たせた爆撃機の保有が効果的です。
(P-1でも、若干その効果があることは以前記事に書いた通りです。前掲のリンクを参照して下さい)

近海に限れば、FXの配備(何になるにせよ)、及びF-2の対艦攻撃能力を更に強化することも、もちろん効果があります。
空中給油があれば、いくらでも範囲を広げられると思う方がいるでしょうが、日本の位置から南シナ海南部を攻撃しようとすれば、給油機に対する脅威が高く、作戦はリスキーで、また、企図の秘匿が困難になるため、実行可能性も低いものになります。日本の位置がオーストラリアなら、それでもOKですが。

政治的にも、技術的にも冒険ができるなら、日本も対艦弾道ミサイルを開発・配備すべきです。(冒険と書きましたが、空母保有ほど冒険だとは思いません)

中国が空母を保有しようとしていることに対して、対策は必要です。
ですが、対空母に日本も空母を保有するというのは、発想が単純過ぎますし、何より経済が低迷し、今後も期待できないことを考えれば、コストパフォーマンスの高い、非対象戦術を考えて行く方が得策です。

なお、こう言う記事を書くと、「空母に爆撃機なんてバカじゃないかJK」、「対潜防護された空母機動部隊に潜水艦だけで対抗できる訳ないだろ」みたいなコメントが来るのは解っていますが、専門書が難しければ、トム・クランシーの「レッド・ストーム作戦発動(ライジング)」でも読んで頂ければと思います。

2010年11月29日 (月)

P-1調達は中国空母の牽制にもなる

次期中期防でのP-1調達数が10機となる見込みのようです。
防衛省:哨戒機P1、10機調達へ 対中警戒強化」(毎日新聞10年11月17日)

P-1ですから、その主任務は、報じられている通り、不審船や潜水艦に対する監視と対処です。

ですが、多少なりとも、中国が建造中の空母に対する牽制にもなります。

中国の空母に対抗して、日本も空母を持つべきという議論があります。
以前の記事で、対抗して空母を持つくらいなら、経済性などの観点から爆撃機を持つ方が良い、という趣旨の記事を書いた事があるのですが、P-1配備は、爆撃機導入と同じ効果をもたらす可能性があるのです。

それは、P-1が対艦ミサイルの運用能力を持ちながら、B-1などと同様に、高い低空飛行能力と、それなりに長い航続距離を持つからです。

爆撃機やP-1が対艦攻撃力を持つことにより、敵機動部隊にとって脅威になるのは、その航続距離によるところが大きいです。
(近くならF-2の方がいいに決まってます)

例えば、もし日本が中古のB-1を買って運用するようなことになれば、フィリピンの南を回り込んで、海南島を奇襲することだって可能になります。
P-1では、そこまでの長駆作戦は困難ですが、それでもF-2だけの場合よりも、余程遠方まで脅威を及ぼせます。
(なお、F-2+給油機による長駆作戦も可能ですが、情報の秘匿が困難で、奇襲は難しいように思います。奇襲が難しいと後述する敵空母への常時警戒を強いることができず、牽制としての効果は今ひとつです。)

P-1が対艦攻撃力を持っていると、中国の空母は日本近海に接近する以前から、攻撃を警戒せざるを得なくなるのです。

P-1の場合、速度が低いので、実際に対艦攻撃ミッションを実施すると、迎撃を受けた際に逃げ切れないため、帰ってこれない可能性が高いと考えられます。
となると、実際に作戦を行うのは躊躇われますが、可能性を考慮させることで牽制するには十分です。

攻撃を受ける可能性があれば、中国の空母は、(日本から遠方にあっても)常時警戒を解けないため、運用の困難さが増大します。

P-1が配備されたら、模擬ASMを抱いて南シナ海まで進出させる訓練をこれ見よがしに実施しておくと効果的でしょう。

ちなみに、P-3も対艦ミサイルを運用できますが、流石に遅すぎて作戦実施はリスクが高すぎです。

2008年12月26日 (金)

艦隊の防空能力 (空母保有論議その7)

このシリーズもやっと最終回を迎えました。
最後に、艦隊の防空能力について書きます。


海自艦隊の防空能力を語る上で、最も問題な点は、艦隊防空可能なイージス艦がわずか6隻しか存在しないことです。

世界最強と比べても詮無いことかもしれませんが、米海軍の空母機動部隊では、空母の護衛となるタイコンデロガ級巡洋艦とアーレイバーク級駆逐艦は、全てイージスシステムを装備し、艦隊防空能力を持っています。一例として横須賀を母港とする第7艦隊の第15駆逐隊の編成を見てみると、
タイコンデロガ級巡洋艦×2隻 VLS各122セル
アーレイバーク級駆逐艦×7隻 VLS各 90セル
となっており、艦隊防空に使用されるスタンダードミサイルの搭載数は、VLSの半数にしか装填していなかったとしても400を優に超えます。


日本が空母を保有する際には、ひゅうが型護衛艦と同様に、個艦防空用のESSMを装備することになるでしょうが、個艦防空だけで十分なはずはありません。
ESSMについては、限定的な艦隊防空能力があるとも言われますが、ESSM搭載改修の施された汎用DDで空母を守る場合、空母の直近に位置しなければならなくなります。
(一般的に、接近してくるミサイルは迎撃し易いが、横行する目標は迎撃し難い)
そうなれば、対潜戦での縦深も浅くならざるを得ませんし、各艦相互に船影がレーダーマスクとなり、対空戦闘での支障にもなります。


やはり、艦隊防空能力のあるイージス艦で対空防御を行うことが望ましいのですが、昨今の情勢では、イージス艦はMDの主力でもあるため、空母の護衛にまわすことは困難でしょう。
MDの実施においては、元来艦隊防空用だったイージスが、逆に守られる立場になっているくらいです。


海自に空母を配備するためには、SM-6の開発状況も見ながら、防空能力の高いイージス艦を増やしていかなければなりません。
しかし、あたご型の2隻を配備した以降、海自は19DDなど、汎用型護衛艦の更新に向かっています。
海自自身、空母保有に関して、願望はあったとしても、展望はないのでしょう。


個人的には、政治が空母保有を認めるくらいなら、(対艦攻撃能力もある)爆撃機を保有した方が得策だと考えてます。
ここ最近でも、中国による空母保有が噂されてますが、対抗して空母を保有するよりも、中国の空母に脅威となる爆撃機or(長距離)攻撃機を持った方がコストパフォーマンスは高いでしょう。

2008年10月23日 (木)

海自空母に対する攻撃 (空母保有論議その6)

大分間が開いてしまいましたが、空母保有についての続きです。


残りの話題は、艦隊の自己防御能力ですが、想定脅威をはっきりさせないと議論が空論になってしまうため、今回は多少将来のことまで含めた艦隊に対する脅威について書きます。


日本が空母を保有する場合、想定される戦場で最も可能性の高いものは、尖閣や中台危機がらみの東シナ海における対中国戦です。

その際の空母に対する脅威は、やはり対艦ミサイルです。


先日の潜水艦騒ぎのおかげで、海自の対潜能力について、疑問が呈されることもありますが、こと対中国を考えた場合、ヘリを搭載した多数の護衛艦と世界最高水準にあると言われる通常動力型潜水艦を備えた艦隊が、空母に対する中国潜水艦の接近を許すとは到底思えません。


そんなわけで、以下では中国の対艦ミサイルの運用能力について、まとめてみました。


まず対艦ミサイル運用可能な水上戦闘艦を見てみると、小はミサイル艇から大は駆逐艦まで、総数136隻にも及びます。搭載される対艦ミサイルは、亜音速のYJ-83などの他、超音速の3M80MBEなども運用されています。
当然、これらの全てを東シナ海に集められるわけではありませんが、いざ日本と事を構えるとなれば、集中させてくることは当然でしょう。
この中で、他の方の論中ではあまり言及されていませんが、ミサイル艇にはもっと注意すべきです。沿岸防衛用と言われていますが、東シナ海であれば、十分に活動できます。

駆逐艦
・Luda級×10隻以上
  HY-2×6orYJ-83(C-803)×16
・Luhu級×2隻
  YJ-83(C-803)×16
・Luhai級×1隻
  YJ-83(C-803)×16
・Luyang級×2隻
  YJ-83(C-803)×16
・LuyangⅡ級×2隻
  YJ-62(C-602)×8
・Luzhou級×2隻(建造中?)
  YJ-83(C-803)×8
・ソブレメンヌイ級×4隻
  3M80Eor3M80MBE×8

フリゲート
・JianghuⅠ~Ⅱ級×19隻
  SY-1×4
・JianghuⅢ~V級×9隻
  YJ-8orYJ-81orYJ-83×8
・JiangweiⅠ級×4隻
  YJ-8×6
・JiangweiⅡ級×10隻
  YJ-83(C-803)×8
・Jiangkai級×3隻
  YJ-83(C-803)×8

ミサイル艇
・037-II型×24隻
  YJ-8×4
・520T型×6隻
  YJ-8×6
・022型×40隻(一部建造中)
  YJ-83×8


次に対艦ミサイルを運用すると思われる航空機を見てみます。

ただし、対艦ミサイルを運用可能な機種、機数はもっと多いものの、任務が別と思われる機体や退役している可能性が高いものは除外しました。
以下に上げた航空機は、全て海軍所属機です。防空任務が付与されていないこともあり、要時には戦略機動で集中されると見る方が妥当です。全てが投入されれば、亜音速ミサイルだけでも360発も撃てることになる他、Su-30MKK2が運用する超音速ミサイルも相当数になることが分かります。

爆撃機
・H-6×約30
  YJ-83×4

攻撃機
・JH-7×約60
  YJ-83×4
・Su-30MKK2×24機
  YJ-91×不明


艦艇、航空機とも、中国による戦力集中の問題だけでなく、日本側もミサイルが撃たれるまで座して見ているわけではないにせよ、これだけの戦力があるという点は、最も注視すべき点です。更に、これらは極めてハイペースで増加中です。
数的には、一部に留まりますが、迎撃が難しい超音速ミサイルにも留意しなければなりません。

また、ミサイル艇やJH-7は、ミサイルプラットフォームとしての能力(防御力など)が低く、脅威でなはいと見る向きもありますが、私はむしろ重要視しています。
確かに、艦隊中の空母を狙い撃ちすることは難しいでしょうが、衛星などで艦隊の位置が分かっていれば、搭載レーダーでの目標補足することなしにミサイルを発射すれば、YJ-83であれば十分な射程があることもあり、艦隊中のいずれかの艦艇にはミサイルを指向させられます。
人権意識がなく伝統的に人海戦術を採用する中国の場合、被害発生をためらわないということも重要です。022型ミサイル艇やH-6、JH-7などは、必ずしも帰還を考慮していない可能性もあります。


さらに、日本の空母保有を考えた場合、ここに現れていない最大の脅威があります。
それは、中国がTu-22M3バックファイアを輸入することです。
現在は、まだロシア側が輸出に難色を示しているようですが、日本が空母を保有するとなれば、ロシアもそのあたりは考慮するでしょう。そして、バックファイアの戦力化にはある程度時間がかかるとしても、日本が空母を戦力化するよりは早いと思われます。

2008年8月19日 (火)

空母の行動監視(空母保有論議 その5)

空母の行動監視(空母保有論議 その5)
日本が空母を保有すべきと考えている方は、艦載機の防空能力に加えて護衛艦隊の防空能力を非常に高く評価しているように思えます。
そこで、艦隊の防空能力について書きたいと思いますが、その前に関連した話として、空母の隠密性?と行動監視について書いておきます。

どういう思考なのか理解できかねますが、艦隊の位置把握が困難だと考えている人がいるようです。
しかし、巨大で大量の赤外線を放出する空母の位置は、偵察衛星で簡単に確認できます。もちろん、監視したい海域をカバーできる軌道を持つ衛星を一定数持つことが条件ですが、今や敵対国の衛星を撃墜するほどの衛星技術を持つに至った中国が、衛星によって東シナ海や西太平洋を監視できないと考える方が無理があります。
実際に中国は、「遥感」と名づけられた多目的情報収集衛星や「海洋」と名づけられた海洋観測衛星を運用しています。
中国は、その技術力の割に、専用の偵察衛星は保有していませんが、逆にあらゆるものが国家のために使用される国です。これらの衛星も、軍事目的に使用されていると思われます。
また中国は、数日から十数日の運用の後、大気圏に再突入させて回収する返回式衛星(FSW:Fenhui Shi Weixing)と呼ばれる独特の衛星を得意としています。現在まで30回以上も打ち上げられた返回式衛星の多くは、軍事目的の偵察衛星であったようです。中国は、緊要な時期が来れば、返回式衛星を打ち上げ、目的とする海域を監視することが出来るということです。

衛星での監視は、断続的なものになりますが、艦艇の移動速度(最大でも35ノット(時速65km)程度)からすれば、艦隊が艦載機の戦闘行動半径外にいる間は十分と言えます。

艦隊が艦載機の作戦可能範囲に入るころには、中国は、防空目的も含め、AWACSなど長距離の洋上監視能力をもつ機体によりリアルタイムの監視を始めるでしょう。
中国は、戦力化には苦労しているようですが、IL-76をベースにしたKJ-2000AWACS、Y-8をベースにしたKJ-200AEW(2006年に1機が墜落しニュースになった)の他、KJ-200とは別のY-8ベースのAEWも保有しているようです。また、SAR(合成開口レーダ)を装備したTu-154も保有しており、洋上監視については相当な能力を有しています。
衛星による概略位置情報があれば、空母の捕捉は簡単でしょう。

目標を捕捉すれば、次は攻撃に移ることになりますが、続きは次回に書きたいと思います。

2008年8月 2日 (土)

空母保有による効果(空母保有論議 その4)

空母保有の効果として、作戦を主導的に展開して敵に対抗措置の実施を強いるということが言われます。しかし、これは米軍のように常に攻勢作戦の実施を前提としている軍隊なればこそです。つまり、敵の策源地を攻撃するという国家意志がなければ成り立ちません。
具体的に書けば、空母に台湾の南を迂回させ、香港周辺など中国南部の基地などを攻撃する事を、日本政府が選択できるかということです。
それが可能ならば、中国は空母艦載機よりも多数の機体を防空のために準備し、CAP及び地上待機させて防空態勢をとり続けざるを得なくなるため、敵戦力の集中を阻害できることになります。
しかし、言わずもがなですが、近い将来において日本政府が取り得る選択肢の中に、そんなオプションはありません。

そうなると、空母を保有することの効果は、適当な位置に遊弋し、作戦空域における航空優勢確保のため、艦載機を上げることになります。
この場合、近い将来に作戦空域となる可能性のある場所は、尖閣諸島周辺か日中中間線付近以外には考えにくいため、空母は先島近海か、先島北方海域に位置することになります。

すると、自ずと先島にある下地島・宮古島空港を陸上基地として利用することとコストパフォーマンスの比較をせざるを得ません。
結果は、(空母保有論議 その2)で述べた通りです。

空母は、アメリカのように「攻撃は最大の防御」を良しとする軍隊では非常に効果的です。
日本も、今後は敵の策源地攻撃を行うようになるかもしれません。しかし、尖閣などの問題では、中国が先島や沖縄を攻撃をする事態にでもならなければ、とても中国本土を攻撃するようなことはできないでしょう。専守防衛を是とするわけでもないとしても、それほど攻勢的な作戦を先制して行うことは政治的に困難です。
一方、中国としても、住民のいる先島を攻撃することは、空母を攻撃することよりもハードルが高いものとなるはずです。
やはり、中国、あるいは台湾との間で発生する離島を巡る争いの場合は、その上空で行われる小競り合いレベルで、質の優位が結果に強く反映される戦闘になる可能性が高いものと思われます。

またアメリカも、今後はパワープロジェクション能力に占める空母の比率を下げるでしょう。
アメリカは、湾岸戦闘以降、アフガンやイラクなどでの作戦において、Bシリーズ(B2、B1、B52)の爆撃機が、非常に高い戦果を上げていることから、爆撃機の大幅な増強を予定しています。B2の後継となるLRSSの配備は、大幅に前倒しされ、2018年の予定になりました。
精密誘導兵器の能力向上と、アビオニクスやステルスによる高い侵攻能力から、例え地球の裏側であっても、空母を使用する事なく攻撃が可能となっているのです。
LRSSは、どのような機体になるかは決まっておりませんが、現在のBシリーズ3機種よりも強力な打撃力となることは間違いないでしょう。

自衛隊も、攻勢作戦に使用するという目的で空母保有を検討するのならば、同じコストで爆撃機を整備した方が、より高い効果を期待できるようになって来ています。

2008年7月26日 (土)

陸上基地は脆弱か?(空母保有論議 その3)

陸上基地は、開戦劈頭に弾道ミサイルや巡航ミサイルによる攻撃によって使い物にならなくなるため、空母を保有すべきだという論があります。
攻撃を受ける可能性があることは当然ですが、自衛隊とて座して見ている訳はありません。艦隊が防空能力をもっていることと同様に、弾道ミサイルや巡航ミサイルに対する防御力を備えるとともに、損害を受けた施設を復旧させる能力を持っています。

弾道ミサイル攻撃に対しては、ご存じの通りイージスとパトリオットが対処します。沖縄に所在し、パトリオットを運用する第5高射群には、現在のところPACー3が配備される予定はありませんが、先島や那覇を弾道ミサイルから防衛する必要が発生すれば、PACー3を運用する高射群が展開することになるでしょう。高射群は各5個の発射機を運用する4個の高射隊から構成されるため、PACー3ミサイルを最大限調達保有したとすれば、極めて短時間に集中して発射された弾道ミサイルに対して、1個高射群が320発のPACー3ミサイルをもって迎撃できることになります。(また当然、ミサイルの再搭載も可能)

中国は、先島を攻撃できる弾道ミサイルとして、東京までも射程に入る中距離弾道ミサイルのDF-21を百基以上保有している他、主に台湾用と言われるものの、海岸近くに配備すれば先島まで到達させられると思われるDFー11AとDFー15を千基前後保有しています。
さすがに、これだけの数をすべて先島に投入されたら、イージスやパトリオットがあっても、基地は相当の被害を受ける可能性がありますが、日本がノドンやテポドンに備えるためにすべてのイージスやパトリオットを投入できないのと同じように、台湾が中国に併合されない限り、すべてを先島に振り向けることはできないでしょう。
先島に対する弾道ミサイル攻撃については、いずれもっと突っ込んだシミュレーションをしたいと思います。

巡航ミサイルに対しては、パトリオットに加えて、陸自の中SAM、そして次期基地防空火器も対処にあたります。
防衛省がどの程度の脅威評価をし、どれだけの部隊を先島や那覇に展開させるかは分かりませんが、1個護衛隊群が有するよりもはるかに濃密な防空火網を構成できます。

ミサイルが防空火網を突破し、被害が発生した際には、施設隊を中心とした被害復旧が実施されます。飛行運用に最も支障の発生するランウェイが損傷した場合には、3Rマットなどを使用した応急措置が講じられることになります。また一部の特殊な飛行場を除けば、それまでの間も、タクシーウェイを利用した離着陸は可能です。
修復に要する時間は、損傷の度合い次第ですが、離着陸を可能にするだけなら、かなりの短時間で復旧します。施設隊は、模擬の滑走路を実際に爆破し、修復する訓練を毎年実施しています。

「日本海クライシス2012」で描いたような地上の脅威、対物狙撃銃、対戦車ミサイル、ロケット砲や迫撃砲での攻撃はやっかいです。しかし、陸自による対処が可能であれば、潜入できる兵力規模には限りがあるでしょうから、それほど時間を用さずに排除できるはずです。
場所が先島であれば、潜入自体が極めて困難ですし、離脱はまず不可能の決死任務になります。さらに下地島の場合は、民家も少ないため、攻撃可能位置に接近することさえ不可能でしょう。
逆に那覇の場合は、飛行場を見下ろす位置に多くのマンションなどがあるため、排除には少々てこずるかもしれません。

陸上基地が敵の攻撃に対して脆弱か、あるいは抗たん性が高いかという問題は、敵が基地を攻撃できるミサイルをどの程度保有しているか、また空母保有論議を前提とした場合、艦隊の防空能力とも関わってくるため、一概に述べることは困難です。ですが、攻撃する側からすれば、陸上基地への攻撃は、艦隊を攻撃するよりもはるかに高いコストをかけなければならないことは確かです。

2008年7月22日 (火)

空母による防空(空母保有論議 その2)

空母を海上の航空基地と考え、尖閣など離島上空での航空優勢確保に使用するという考えている方がかなりいらっしゃるようですが、空母での防空は非常に困難です。それがたとえ軽空母ではなく正規空母でもです。

2ちゃんねる軍事板での論議でも、分かっている方は防空で空母を使用しようとしている段階で否定しますが、空母は攻勢作戦では非常に強力ですが、防空での能力は陸上の航空基地とは比較になりません。

その理由は、一言で言えば、一定時間内にさばける航空機の発進(発艦)、帰投(着艦)処理能力の差です。
発進(発艦)について見れば、陸上基地では、2機編隊での編隊離陸を続けざまに実施できますが、空母では一機づつカタパルトを準備して発艦させなければなりません。着陸(着艦)については、陸上基地では、ブルーインパルスなどのアクロバットチームが最後の演目として見せるコンバットピッチを思い出して頂ければ分かりますが、編隊が一気に着陸できます。方や空母では、アレスティングフックを利用して着艦するため、一機着艦させるたびに着艦機を移動させ、ワイヤーを準備してし直さないとなりません。
それに加えて、空母は甲板上の絶対的スペースが不足しているため、防空では非常に重要な再発進の能力が、陸上基地とは大差があります。具体的には、射耗したミサイルを再搭載し、燃料を補給する作業ですが、陸上基地では広いエプロンを活用して飛行隊ごと作業することも可能ですが、空母では数機の再発進準備だけでも大変な混乱になります。

攻勢作戦では、発艦と予定どおりならば着艦も計画どおりに実行できます。そのため、空母の発着艦能力に合わせて作戦を組むことが可能ですが、防勢作戦では、基本的に敵の侵攻状況に合わせて動かなければならないため、空母の発着艦処理能力がネックとなってしまうという訳です。

敵の規模が、空母での発着艦処理能力の範囲ならば、防勢作戦でも遂行は可能です。しかし、尖閣諸島などで相手をしなければならないと見られる中国空軍は、量だけではなく、今や質においても自衛隊を凌駕しそうな状況です。同じコストをかけるのであれば、先島の戦力発揮基盤を充実させるべきです。

2008年7月19日 (土)

空母保有論議 その1

以前に一度書きましたが、「しらね後継は軽空母」スレで空母保有についてたびたび話が出ています。スレッド名がスレッド名なので当然かもしれませんが、時に空母厨と呼ばれるような、とにかく空母欲しい!という方が多いようです。

何度かレスを付けているのですが、スレッドの流れの中での話で、そのまま転記しても良く分からないと思います。
なので、要点を抜き出して、要点毎に何回かに分けて書こうと思います。

第1回目は、いきなり結論から書きます。
現状の防衛環境では、当面の空母保有については反対です。
日本が湾岸戦争のような戦争に積極的に関っていくのなら、空母は戦力の投射のために非常に有効なので、空母保有も検討すべきでしょう。ですが、そこまでしなくても有効な国際貢献はいくらでもできます。

それよりも、中国が異常とも思える急速な軍拡を進めている以上、日本はそれを押さえ込むために有効な戦力を効率的に整備すべきです。
具体的には、中国による台湾や尖閣への侵攻、日中中間線を越えた場所での強引な油田開発など、日本を含む周辺国との問題を中国が軍事力によって解決しようとする場合の対応力の整備ということです。

これらの事態に対して、空母が役に立たないというわけではありません。
ですが、空母による効果と、空母を整備するためのコストを、これらの事態により有効に対処できる能力の整備に当てることを考えた場合、空母の保有は非効率だと言うことです。

これらの事態が発生した際、日本が対処しなければならない中国の戦力は、空軍と海軍、そして中国では第2砲兵と呼ばれる弾道ミサイル、加えて尖閣に上陸する小規模な陸上戦力です。

この中で、弾道ミサイルは、沖縄本島を含む日本本土に使用することはないでしょうから、先島諸島に対する攻撃だけ考慮しておけば大丈夫でしょう。もし那覇に弾道ミサイルを撃ち込むようなことをするならば、アメリカに大々的な攻勢をかけてもらう必要が生じ、中国もそれは望まないはずだからです。

日本は、対潜能力については相当な能力を持っていますから、これら事態に対処するためには、防空と対水上攻撃能力を強化してゆかなければならないでしょう。そして、日本が防衛力を行使したい範囲を考えると、そのための戦力発揮基盤としては、どうしても宮古島、下地島が必要になります。

下地島と宮古島の空港がどうしても使えないとなれば、空母の保有も考えて行かなければならないでしょうが、今は沖縄の人も、自衛隊に対しては相当理解して頂いてます。
詳しくは別の機会に書きますが、下地島と宮古島を戦力発揮基盤とすることは、理解して頂けるだろうと思います。

台湾や尖閣などの問題から中国と衝突することになる場合、この2島を基点に、強化した航空戦力を展開できれば、空母を保有するよりも余程効率的に活動できるでしょう。

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