対空母に空母しか浮かんでこない発想の貧困
「空母には空母」を、という意見は、ネットでも後を断ちません。
私は、これには断固反対ですが、逐一反論するような体力はありませんし、以前にシリーズ記事を書いたので、これ以上詳細を書こうとは思っていませんでした。(ネットで議論をしようとも思いませんし、特定の個人攻撃みたいなことは好きではないので)
ただ、全国紙で堂々と空母を保有すべきと書いているのを見ると、ちょっと突っ込まずにおれません。
「22DDHは計画を白紙撤回し、空母を建造すべきだ」(産経新聞11年7月23日)
改修中のワリャーグ(産経新聞より)
細かい話は、以前のシリーズ記事を見て下さい。2008年の記事なので、若干情報が古いですが、基本は変ってません。
ですので以下は、エッセンスだけ大雑把に書きます。
さて、中国が空母を保有することに対抗して、日本の空母保有を議論する場合、重要なのはその目的です。
アフリカへの政治・軍事的プレゼンスを強化して、資源確保や国際世論の形成を誘導するなどと言った目的なら、それを実行するための目標として、インド洋に空母機動部隊を遊弋させることは適切です。必須と言っても良いと思います。
ですが、日本の防衛と南シナ海までのシーレーン防衛ならば、もっとコストパフォーマンスの高い手段があります。
政治的・技術的なハードルが最も低い手段は、潜水艦の質・数的増強です。実際、現在防衛省が講じようとしている手段もコレです。
これに加え、政治的に可能であれば、対艦攻撃能力を持たせた爆撃機の保有が効果的です。
(P-1でも、若干その効果があることは以前記事に書いた通りです。前掲のリンクを参照して下さい)
近海に限れば、FXの配備(何になるにせよ)、及びF-2の対艦攻撃能力を更に強化することも、もちろん効果があります。
空中給油があれば、いくらでも範囲を広げられると思う方がいるでしょうが、日本の位置から南シナ海南部を攻撃しようとすれば、給油機に対する脅威が高く、作戦はリスキーで、また、企図の秘匿が困難になるため、実行可能性も低いものになります。日本の位置がオーストラリアなら、それでもOKですが。
政治的にも、技術的にも冒険ができるなら、日本も対艦弾道ミサイルを開発・配備すべきです。(冒険と書きましたが、空母保有ほど冒険だとは思いません)
中国が空母を保有しようとしていることに対して、対策は必要です。
ですが、対空母に日本も空母を保有するというのは、発想が単純過ぎますし、何より経済が低迷し、今後も期待できないことを考えれば、コストパフォーマンスの高い、非対象戦術を考えて行く方が得策です。
なお、こう言う記事を書くと、「空母に爆撃機なんてバカじゃないかJK」、「対潜防護された空母機動部隊に潜水艦だけで対抗できる訳ないだろ」みたいなコメントが来るのは解っていますが、専門書が難しければ、トム・クランシーの「レッド・ストーム作戦発動(ライジング)」でも読んで頂ければと思います。
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