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敵基地攻撃能力

2009年6月17日 (水)

仰天のコピー

街を歩いていると、こんなポスターを見つけました。
O0320042610198585769
「憲法9条改正。」
「北朝鮮のミサイルから日本を守ります。」
憲法はまだしも、ミサイルから日本を守ります、にはビックリしました。
政党は幸福実現党。聞いたことのない政党名です。おまけになにやら怪しそうです。
家に戻りググッて見ると、幸福の科学にからんだ宗教政党・・・・。
リンクは張りません。アクセス元として記録が残るのもなんですので。興味のある方はググッて下さい。

某連立与党の宗教政党は、自らの事を宗教政党であるとは言っていませんが、こちらは公言しています。ポスターからも胡乱な雰囲気が出てますが、この辺に理由があったんですね。
ちなみに、私は敬虔な?無神論者、あるいは不可知論者なので、宗教政党は禁止しても良いとさえ考えてます。

さて、ミサイルから日本を守るとあった点が気になったので、どうやって守るつもりなのか、サイト内を見てみました。
すると、「北朝鮮が核ミサイルを日本に撃ち込む姿勢を明確にした場合、正当防衛の範囲でミサイル基地を攻撃します。」とありました。
以前の記事「敵基地攻撃に関する政治家の問題認識 」でも書いたとおり、ミサイル基地(あるいはTEL)に対する攻撃によって、弾道ミサイルの発射阻止を行うことは不可能です。
もちろん、純軍事的には攻撃を行った方がMDだけによって防衛するよりも確実なことは間違いありませんが、政治的な側面を考慮すると、マイナス面の影響の方が多いように思えます。

このあたり、技術的な可能性をちゃんと認識できないという点は、やはり宗教政党だからでしょうか。

2009年4月18日 (土)

敵基地攻撃に関する政治家の問題認識

北朝鮮による「弾道ミサイル」発射に関連して、敵基地攻撃が議論されるようになりました。
法的な問題はまた別の問題ですが、軍事的合理性からしたら議論されて当たり前の問題です。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200904/2009040600796


ですが、誤った認識を基にして議論されているのであれば、誤った結論しか出てきません。
先生方が、正しい認識をしているなら、かまわないのですが、鴻池官房副長官のMDに関する認識が、未だにピストルの弾を比喩に出す程度の認識であることを見ても、多くの先生方が正しい認識を持っているとは到底思えません。


さて、私がここで何を問題視しているかと言えば、敵基地攻撃によって北朝鮮による弾道ミサイル発射を未然に防止できるかのような認識がされているらしい事なのです。
上に挙げた時事の記事を見ても、「敵基地攻撃は、中略、発射場などを先制攻撃するもの」と書かれており、「敵基地攻撃」の目標が弾道ミサイルであるかのように書かれています。


ですが、「敵基地攻撃」の能力として、現実的に可能などんな装備を保有しようとも、ノドンの発射を事前に阻止することなど不可能です。

対北朝鮮を考える時、現状でも圧倒的な制空戦闘能力とJDAMによる精密攻撃能力がありながら、ノドンの発射を事前に阻止できない最大の理由は、地上に対する偵察・監視能力です。
既に実戦配備されているノドンの移動式発射機(TEL)は、地下などにある格納庫から地上に姿を現してから1時間以内にミサイルの発射が可能と言われています。


これを捕捉するためには、衛星では到底遅すぎます。
イラクでの米軍によるスカッドハントでは、E-8が使用されましたが、それでもスカッドの捕捉は困難でした。
たとえ日本がE-8を保有したとしても、山がちで森林の多い北朝鮮では、国土のほとんどが砂漠のイラクよりも、監視が困難であることは疑うべくもありません。
E-8の後継となるべきE-10も、開発試作機のみで量産は中止されてしまっています。E-8が改修されるとしても、劇的な性能向上は望めません。


例え日本海上空で空中給油をしつつ、JDAMを抱えてスタンバイしたとしても、ノドンをミサイルの発射前に発見することは困難なのです。

国会議員の先生方がこの事をちゃんと認識し、敵基地攻撃能力とは、あくまで敵に被害を強要、あるいは指導者の殺害を企図し、ノドンによる攻撃を抑止する事だと認識されているのなら良いのですが、誤解によって敵基地攻撃能力が語られているなら、後で自衛隊が責められかねません。


この点、ちゃんとした報告を受けているらしい浜田防衛相は、敵基地攻撃論には否定的です。
http://www.asahi.com/politics/update/0410/TKY200904100324.html


議論は大いにして頂くべきですが、絵空事ではなく、地に足の着いた議論をして頂くべきです。

2008年7月 2日 (水)

トマホークでノドンハントができるか?

ミサイル総合スレに、巡航ミサイルでノドン(スカッド)ハントを行うという議論がでてました。
タクティカルトマホーク+センサーという論も出てましたが、誤解に基づく意見も多かったので、次の通り書き込みました。

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スカッドやノドンが、発射の直前に燃料注入しなければならないというのは間違いです。
燃料がケロシンなのかジメチルヒドラジンなのかは見解が分かれているようですが、スカッドは燃料を注入したまま保管、運用できました。
当然スカッドをベースとしたと見られるノドンやテポドンも、同じであると推測されてます。
参考:軍事研究07年9月号掲載の野木恵一先生の論考
(防衛省、自衛隊の中でさえ間違えている人が多数いるので、無理も無いですが・・・)

そのため、書かれている通り、タクティカルトマホークでなければ、ノドン(スカッド、テポドン)ハントには使えません。
おまけにタクティカルトマホークのコストだけでなく、ニアリアルタイム以上のデータリンクと偵察能力がなければTELは攻撃できません。
いくら数を増やしたところで、間隔をおいた偵察しかできない偵察衛星では、攻撃が間に合いません。
DSPやSTSSの早期警戒衛星は、ミサイルの発射後に赤外線を捕らえるものなので、こちらも当然間に合いません。

ノドンハントをするには、高精度なセンサーと指揮統制機能が必要になります。
できればE-8を使いたいところですが、防空機能が生きている状況では使えない(北朝鮮は山間地が多いので、洋上では無理)ので、グローバルホークの情報をAWACSで中継するなどして、航空機かタクティカルトマホークで攻撃するしかないでしょう。
おそらく一刻を争うことになるため、タクティカルトマホークの飛翔時間さえもどかしいのではないでしょうか。

先の話になりますが、完成さえすれば、センサーも攻撃能力も自前で持っているF-35がベスト

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これに対して、酸化剤が液体酸素なんじゃないか→発射直前の注入が必要なんではないかという趣旨のレスがあったので、次のように書きました。

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酸化剤は、抑制赤煙硝酸が使われます。
硝酸、四酸化二窒素、フッ化水素を加えたもので、酸化剤として機能する成分は、四酸化二窒素と硝酸になります。
金属腐食性、毒性があるため、扱いやすい物ではありませんが、常温保存可能でミサイルに注入したまま運搬できます。
当然、液酸ほど効率はよくありませんが、ケロシンの酸化剤としても使用可能です。

北朝鮮が輸入、リバースエンジニアリングしたとされるスカッドはCタイプで、
燃料・酸化剤は非対称ジメチルヒドラジン+抑制赤煙硝酸です。
スカッドを原型とするノドンでも同様だと見られています。
ちなみにケロシンを使用していたものはAタイプのみで、酸化剤は硝酸?(by Wiki、確かに硝酸だけでも酸化剤になりますが)だったようです。

http://www004.upp.so-net.ne.jp/weapon/irfna.htm

冷戦初期のICBMなどでは、ケロシン+液体酸素が使用されていたため、発射直前に注入作業が必要だったことは確かです。

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ノドン(スカッド)は発射直前に燃料注入するという誤解は、まかりとっているというよりも、大勢を占めているような気がします。(液酸について書かなければならないとまで思ってませんでした。)
余談ですが、数多くいる軍事評論家の中で、野木恵一先生はハードや理論をちゃんと分かっている数少ない方です。

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