オスプレイ配備は、ナゼ佐賀空港なのか?
防衛省は、自衛隊に導入するオスプレイの配備地を、佐賀空港とする方向で調整に入りました。
「佐賀空港にオスプレイ配備 防衛相が検討表明」(産経新聞140720)
小野寺五典(いつのり)防衛相は20日、陸上自衛隊が平成27年度から導入する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて、配備先として佐賀空港(佐賀県)を検討していることを明らかにした。
昨年末、中期防の改訂で、自衛隊への導入が取りざたされるよりも前ですが、自衛隊にオスプレイが配備されるなら、佐賀空港にも近い目達原駐屯地が適切だろうと予想しました。
「オスプレイは離島防衛に寄与するか?」
佐賀空港にオスプレイを配備する軍事的な価値は、佐賀空港からなら、尖閣まで一気に飛行して、人員・装備を降下させ、そのまま自衛隊の分屯基地や空港があり、給油可能な宮古島まで飛行可能だからです。
細部は、上記過去記事をご覧下さい。
佐賀空港と目達原駐屯地は直線距離にして20km程しか離れていませんので、軍事的な意義はほぼ同じです。
上記過去記事でも、輸送対象は西普連だろうとしていましたが、産経の報道でも、オスプレイは、西方普通科連隊を発展的に改組して編成される水陸機動団を輸送することを念頭に置いていると報道されています。
防衛省は、離島防衛強化に向け、「水陸機動団」を新設する方針。離島奪還作戦時に機動団の輸送にもオスプレイを使う予定で、機動団の所在地に近い佐賀空港は利便性が高いと判断したようだ。
と、基本的には2年前に書いた記事の通りなのですが、目達原駐屯地と佐賀空港では、若干の違いがあり、メリットもデメリットもあります。
簡単に見てみましょう。
オスプレイの運用という点では、滑走路長さが660mしかない目達原駐屯地よりも、滑走路長が2000mもある佐賀空港の方が優れています。
オスプレイは、垂直に離着陸の可能な機体ですが、エンジン角度を60°にして離陸滑走した方が、より搭載重量を多くできるためです。
また、水陸機動団を尖閣に送り込んだ後には、物資や予備兵力となるであろう第1空挺団等を輸送する可能性がありますが、佐賀空港であれば、C-1やC-130、C-2と言った輸送機も問題なく運用できるため、ハブ空港として機能させられる点も目達原駐屯地よりも優れています。
政治的な面では、既存自衛隊施設に配備することが望ましいのかと思っていましたが、周辺環境を考えた場合、受け入れの調整を受ける佐賀県としても、佐賀空港の方が望ましいかもしれません。
目達原駐屯地は、周辺に住居もありますが、佐賀空港は有明海に付き出すように作られた干拓地であるため、周辺住民が不安になる可能性も少ないですし、騒音被害の可能性も少ないでしょう。
さらに、上記報道によれば、目達原駐屯地に駐屯している西部方面ヘリコプター隊等のヘリコプター部隊を、恐らく全てではなく一部だと思われますが、佐賀空港に移駐させるという案も提示されています。
また、小野寺氏は陸自の目達原駐屯地(めたばる、佐賀県吉野ケ里町)にあるヘリコプター部隊を佐賀空港に移し、同駐屯地周辺の負担軽減を図る考えも示した。
これは、オスプレイ受け入れのバーターとして、目達原駐屯地周辺の騒音軽減を図るという提案でしょう。
佐賀県は、2035年には人口が現在よりも2割も減少すると試算されています。
「佐賀県の人口、2035年には2割減の68万人」(佐賀新聞120216)
だからと言う訳ではないかもしれませんが、地方の人口減少に警鐘を鳴らした全国知事会議も佐賀で実施されました。
「人口減少で非常事態宣言 「死に至る病」と会長 佐賀で全国知事会議」(産経新聞140715)
そのため、沖縄は別として、北海道を筆頭に、全国各地で自衛隊の誘致や削減防止に動いている自治体は数多くあります。
佐賀県としても、オスプレイ配備は必ずしも嬉しくないかも知れませんが、離島防衛の拠点として、佐賀県内に自衛隊施設・部隊が多数来る可能性が見えるとなれば、地域活性化のために受け入れた方が良いという判断になる可能性は十分にあるでしょう。
佐賀県とすれば、自衛隊のオスプレイを受け入れることで、米軍が来る事を危惧するでしょうが、訓練はあっても常駐する可能性は、現時点では高くありません。
軍事的に価値があり、政治的にも受け入れられる可能性が高ければ、オスプレイの佐賀配備は、アッサリと進むかもしれません。
しかし、一方で若干の問題もありそうです。
佐賀空港の現状は、目で見たわけではないのですがwikipediaを見ると、バードストライクの危険性は高そうです。
干拓地に近い立地のためバードストライクが多発しており、離島空港を除けば全国で最も発生率の高い空港の1つである。
しかし、高速の固定翼機と異なり、離陸滑走する際も、オスプレイの水平面の速度は高くないため、オスプレイでのバードストライクは、それほど多くないのではないかと思われます。
また、佐賀空港が民間空港であるため、保全上の問題も多少あります。
現在佐賀空港に運航している外国の航空会社を見ると、韓国のティーウェイ航空はともかくとしても、中国の春秋航空と春秋航空が出資した春秋航空日本(8月1日より)が運航しているため、これらの便が飛来する際には、見せたくないモノを隠す保全措置が必要です。
が、これは新千歳空港でも小松空港でも同様なため、それほど大きな問題ではないでしょう。
むしろ、オスプレイは見せつけた方が良いかも知れません。
佐賀のローカルニュースは、前述の佐賀新聞のネット版くらいしか見る事ができませんが、今のところ大きな反対はなさそうです。
是非、スムーズに進んで欲しいものです。
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