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2016年6月

2016年6月30日 (木)

元空将発表は確信犯_現場の危機感と乖離する政府の認識

東シナ海上空において、中国軍機が空自スクランブル機に攻撃動作を行った事が、元空将の発表で明らかになっています。
東シナ海で一触即発の危機、ついに中国が軍事行動 中国機のミサイル攻撃を避けようと、自衛隊機が自己防御装置作動」(JBpress160628)

この情報は、一部では注目され、政府関係者への確認を行った検証報道もされています。
一線超えた中国軍機 尖閣、東シナ海上空の緊張高まる ネットで発表の元空将、改めて警鐘 政府関係者は「前例のない接近だった」と吐露」(産経新聞160630)

詳しい状況は、これらの記事を直接見て頂くのが良いと思います。

それ以上に、私が注目したのは、織田(おりた)元空将が、この記事を公表しようと思い至った理由です。

元空将とは言え、織田元空将はOBであり、今月に入って発生したこうした事態について、本来、防衛省・自衛隊が発表した以上の事を知ることはできません。
ですが、産経が政府関係者に確認したところ、事実のようです。
つまり、現役の防衛相関係者、恐らく空自の将官レベルの方が、織田元空将に話したのでしょう。

これを公表したことにより、織田元空将、及び彼に話した現役自衛官は、自衛隊法及び秘密保護法によって訴追されてもおかしくありません。
当然、織田元空将は、その事を承知した上で書いたのでしょう。つまり、確信犯です。

ではなぜ、訴追される可能性があることを承知で書いたのか?

 今回の事例は極めて深刻な状況である。当然、政府にも報告されている。

 だが、地上ではその深刻さが理解しづらいせいか、特段の外交的対応もなされていないようだ。だからニュースにもなっていない。問題は、こういった危険な挑発行動が単発的、偶発的に起こったわけでなく、現在も続いていることだ。

 これら上空での状況は、海上での中国海軍艦艇の動きとは比較にならないくらい大変危険な状況である。政府は深刻に受け止め、政治、外交、軍事を含めあらゆる観点からの中国サイドに行動の自制を求めるべきである。

 しかしながら、参議院選挙も影響してか、その動きは極めて鈍い。


ここで指摘されているような事象は、ソ連邦が健在で、航空自衛隊が北海道周辺空域で神経を研ぎ澄ませていた頃にも発生していません。

1987に沖縄上空の領空侵犯機に対して、警告射撃を行った事件がありますが、射撃の事実という政治的はインパクトを別として、現場の危機感という点では、今回の事象は、この警告射撃をはるかに上回ります。

 筆者は戦闘機操縦者だったので、その深刻さはよく分かる。まさに間一髪だったと言えよう。冷戦期にもなかった対象国戦闘機による攻撃行動であり、空自創設以来初めての、実戦によるドッグファイトであった。

織田元空将は、こう書いていますが、操縦者でなかった私でも、司令部勤務のおかげで、どのような状態だったか、想像はできます。

パイロットは当然として、管制を行う那覇DC、そして恐らく開設していただろう南西航空混成団のSOC、そして横田にあるAOCC、COCとも、恐らくパニックに近い状況だったでしょう。

スクランブル機が、撃墜されるかもしれない状況だったのですから、当然です。

そして、航空自衛隊が、今後同様の事態を恐れ、スクランブル機を中国軍機に接近させないという行動を取った場合、尖閣の実効支配は中国のものになります。

問題は、この現場の危機感を政府が共有していないことです。
織田元空将による発表は、この政府が危機感を共有していないことを明らかにすることが目的だったのでしょう。

自衛隊法、秘密保護法によって逮捕でもされようものなら、政府の無作為は、より注目を集める事になります。
そこまで考えた上での発表だったのかもしれません。

今回の事件は、民主党政権が対応をしぶり、適切な対応をしなかった尖閣諸島中国漁船衝突事件に似ています。
そして、織田元空将の発表は、ビデオを公表した映像流出事件に似ているのです。
この時も、現場の危機感を、政府が共有していませんでした。

織田元空将も、そして私も、このような事態は、冷戦期にもなかったと書きました。
もし、似たような状況を探すと、太平洋戦争終結後、北方領土では物足らず、北海道侵攻のチャンスを伺っていたソ連が、北海道領空にソ連機を侵入させていた頃にまで遡ります。

当時、自衛隊は存在せず、日本には打つ手がなかったため、在日アメリカ軍に対領空侵犯措置を依頼し、米軍機がソ連機を”銃撃”(撃墜は未確認)しています。

中国軍が、攻撃動作まで取ってきている状況です。
自衛隊の対応も、レベルを上げないと、尖閣の実効支配は、自動的に中国のものになります。

織田元空将が書いているとおり、空の戦闘は、理解し難い物です。
特に、ミサイルが主力となっている現代の戦闘は、尚更です。
ですが、中谷防衛大臣をはじめ、政府関係者には、理解してもらう必要があります。

なお、織田元空将は、確信犯などではなく、猪突猛進、イケイケドンドンの人なのではないか、だからよく考えもせずに発表したのではないかと考える人もいるでしょう。
ですが、私は、そんなことはないと考えています。
織田元空将は、豪放磊落な方が多い戦闘機パイロットにおいて、少数派のインテリです。
私が以前に書いた小説『黎明の笛』に登場させたインテリ高級自衛官のモデルでした。

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2016年6月23日 (木)

成功した?_ムスダンの飛翔をシミュレーションしてみた

22日に発射された北朝鮮の中距離弾道ミサイルムスダン、2発の内1発は成功したとの見方が報道されています。

焦点:高度1000キロ超えた北朝鮮ミサイル、「発射成功」の見方強まる」(ロイター20160622)

中谷元防衛相は同日午後の会見で「中距離弾道ミサイルとしての一定の機能が示された」とだけ述べ、発射の成否については明言を避けた。

しかし、防衛省関係者は「あれほど角度をつけずに打ち上げず、普通に発射していれば、われわれが見積もっている距離を飛んだ可能性がある」と話す。


2発目に発射されたムスダンは、約400キロを飛んで日本海に落下し、最大射高は、1000キロを超える高度に達していたとのことです。

しかし、こんな数字だけ報道されても、良く分からないでしょう。
そのため、ムスダンの飛翔をシミュレーションしてみました。

防衛省はムスダンの射距離を2500キロ─4000キロと推定し、主目標をグアムだと推定していると報じられています。

つまり、今回発射されたムスダンが、もし仮に、適正な角度で発射されたとした場合、射距離が2500キロを超えていれば、一応成功、グアムまで飛翔可能だったなら、大成功と言えるはずです。

報じられているデータは、飛距離と射高だけなので、他は適当なパラメーターを入れて計算します。
ただし、飛距離は約400キロとされており、ほぼ分かっていますが、射高は1000キロ以上とされているため、1000キロなのか1999キロなのか分かりません。

そのため、射高も1000キロを辛うじて超えた程度だったと仮定します。
その際の飛翔経路は、こんな感じでした。
4001000

すごい角度ですね。
発射角は、83.5°というシミュレーション結果です。

このミサイルを、概ね最大飛距離になる発射角45°で発射すると、こうなります。
400100045

この時、飛距離は2040キロとなりました。
つまり、射高が辛うじて1000キロを超える高さだったとすれば、一応の成功にもう一歩だったということになります。逆に、報じられているとおりに、防衛省関係者が発言したのであれば、今回、1000キロを十分に超える高度まで飛翔していたと思われます。

では、大成功ラインのグアム到達ができる性能だったのか、検討してみます。
ウォンサン-グアム間の距離は約3350キロです。
最大射程で、この距離を飛翔するミサイルは、次のような飛翔経路となります。
335045

ちなみに、この時の最大射高は約970キロです。

このミサイルを、距離400キロしか飛ばないところまで発射角度を上げます。
3350857

発射角度は85.7°となり、最大射高は、約1700キロとなりました。

恐らく、これ以上の詳しいデータは公開されないと思いますが、1000キロ以上と報じられた射高が、1700キロ程度であったならば、ムスダンは既にグアムに到達する性能を持っていることになります。

……ですが、ミサイルが本当に脅威かどうかは、目標の距離に到達できるかどうかだけではありません。
十分なペイロードがあり、威力のある弾頭を投射できなければ、高架上からトラックが落ちてきたのと大差ないのです。

実は、このシミュレーションも、手抜きなので、実はペイロードをいじっただけなのです。つまり、積み荷を軽くしたら、射高1000キロだったミサイルが、1700キロまで上がり、グアムまで飛べる性能が出たというシミュレーションなのです。

なので、実は今回の発射が、空荷、つまり弾頭なしでの飛翔だったのであれば、まだ脅威ではないことになります。
ですが、これを判断することは非常に困難です。

自衛隊や米軍は、今回の発射と落下の際の詳細なレーダーデータを、これから解析するでしょう。
そして、特に落下時の大気圏内突入後の減速状況とミサイルの外形からシミュレーションされる空気抵抗で、落下時のミサイルの総重量をシミュレーションします。
そして、北朝鮮の技術レベルで、ミサイル本体の重量を推定することで、ペイロードがどの程度だったのか分析するでしょう。

そのデータ。
興味は尽きませんが、もちろん、公開されることはないでしょう。

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2016年6月 5日 (日)

北海道男児不明、田舎の子供をなめてはいけない

北海道の男児行方不明事件で、捜索態勢に問題があったのではないかと言われています。

演習場方面が捜索対象ではなく、結果的に読み違えだったようですが、子供の心理と田舎の子供の感覚からすれば、検討してしかるべきルートだったように思います。

と言うのも、私も子供の頃、似たような経験をしたことがあったからです。
(私も田舎出身です)

ただ、私の場合は、山道に放り出された訳ではありません。
何をしたかは覚えていませんが、悪戯をしてしかられたということは覚えています。で、「お前たちなんか、この家から出て行きなさい!」と母親に怒られたのです。

小学校入学前で、2才年下の弟が一緒だったので、私が5才、弟3才の時だったと思います。

出て行けと言われた私は、売り言葉に買い行動で、弟を連れ、無言のまま家出しました。
で、何となく追いかけられる気がしたので、道路ではなく、付近にあった山に入り、山を越えて隣の集落付近を走る道路に抜けるつもりでした。

今回の事件と同様に、子供が山にの方向に向かうなんてありえないと思われたようですが、子供は子供なりに考え、「出て行け」と言われたり、放置されたりすれば、親から離れようと行動することは考えられる行動です。
大和君も、2回目に車から降ろされた際、追いかけなかったとのことですから、同じような心理状態だったのかもしれません。

しかも、田舎の子供は、都会に暮らす大人とは感覚が違います。
山を抜けて何キロも歩くことを大した事だとは思っていません。楽しい近道であったり、秋であれば、ただで美味しいモノを食べられる帰り道だったりします。

あのあたりの警察なら、そのあたりの感覚は覚えていそうですが、車に乗ってばかりで子供の頃を忘れたのだろうかと思ってしまいました。

しかし、大和君が、当てもなく山に入っていったとは思いません。

方向感覚のない人のことを方向音痴と言いますが、多人数が運転する車を乗ると、山を抜けて行動していた時の感覚が、ルートを右とか左ではなく、常に方角で意識しているのだと分かります。(なので、自衛隊に入る前から、地図は常に北を上にして考えていました)

大和君の場合は、親から離れながらも、行きたい場所にちゃんと行けるよう、あの地域の東側にあるJR函館線を目指していたのではないかと思うのです。
家出した5歳の時の私が、隣の集落付近を走る道路を目指したように。

登山などしなくても、幼少の頃から山に入っていれば、真っ直ぐ歩くことは不可能だと分かっています。なので、目指したのは、演習場の先にあった鹿部町ではなく、函館線でしょう。道路や線路ならば、大体の方向が分かっていれば、その内かならず辿り着きます。

しかし、思いの外時間がかかり、自分が居場所を見失ったと思ったのではないでしょうか。そして、暗くなってしまったため、発見した廠舎に潜り込んだのでしょう。

その後、天候も考え、むやみに動かなかったのは、見事です。私だったら、天候の回復した時を見計らって、再度函館線を目指していたかも知れません。

この事件で、心のケアが必要と言われていますが、私は疑問です。
家出の際、お昼頃に家を出たと思いますが、山を抜けて、道路に辿り着いた時は、既に暗くなり始めていました。
3才の弟を連れていたこともあって、どうするか考えると、どうにもできない事を理解しました。
で、そこから道路を2kmくらい、父親の勤め先まで歩いて行きました。

母親にしかられ、家出を敢行した私にとっては、父親に頼る事は無条件降服でした。

以後、経済的に自立しなければ、反抗など無意味と悟った私は、反抗期らしい反抗期を示す事なく成長しました。
ですが、この時の経験が、その後の人生に大きな影響を与えたことは間違いありません。
早い内に、経済的に自立することも含め、小学生の頃から就職先として自衛隊を意識し始めます。今でも、実家には、どこでもらってきたのか、陸自方面隊のエンブレムシールが貼ってあったりします。

大和君にとっても、よい経験になったのではないでしょうか。

彼が、強い自立心と冷静な行動力を持っている事は間違いありません。
今回の事で、私と同様に、早い内から経済的に自立したいと思うかも知れません。

捜索にでた28普連は、今から彼に唾を付けておいた方が良いでしょう。

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