韓国イージスは、欠陥艦か?!
先日の北朝鮮による弾道ミサイル発射を監視していた日米韓のイージス艦の内、韓国のイージス艦だけが、目標である弾道ミサイルを見失っていたようです。
「北の弾道ミサイル「見失った…」韓国軍の“手抜き防衛”に国民激怒 信じられない軍事力」(産経160314)
北朝鮮が事実上の弾道ミサイルを発射した2月7日、韓国海軍は最新鋭イージス艦2隻を派遣していた。韓国紙の中央日報(電子版)によると、午前9時半に発射された北朝鮮のミサイルは、発射6分後に韓国海軍イージス艦のレーダー画面から消えた。
突然の目標ロスト(消失)に、海軍では「弾道ミサイルが空中で爆発し粉々になったのでは」などといった声が飛び交い混乱。急いで米国と日本に情報提供を求めたという。
報道が事実であれば(多分事実なのでしょう)、韓国が展開させていた2隻のイージス艦が、共にターゲットロストしたということになります。
バージョンが多少異なるとは言え、日米韓のイージス艦は、全てSPY-1レーダーを装備しており、目標の捜索追尾能力に著しい違いがあるわけではありません。
レーダーが模造品ということもなく、アメリカからの輸入です。
そのため、産経新聞は、韓国のイージス艦のみが追尾に失敗した理由を、軍人の能力不足と断じています。
韓国の国防部では「推進部分が切り離され、弾頭だけになったためレーダー反射面積が小さく、今回は正確に追跡できなかった」などと説明したが、同じ機材(レーダー)を使う日米の艦船は問題なく追跡できていたのだから、言い訳にならない。原因はレーダー操作員をはじめとした軍人の能力不足にあるのだが、その根底には「そもそも高価なイージス艦は韓国軍に必要だったのか」という重要な問題がある。
中略
海上自衛隊ではイージス艦4隻が、米国が40回に渡って実施したSM-3発射実験に参加し、実際に模擬弾道弾を迎撃している。それなりの経費を費やし、厳しい訓練を重ねているのだ。
一方の韓国海軍は発射実験どころか、SM-3を持ってもいない。さしたる必要性もなく、見栄で仕入れたイージス艦では、手に余すのも当然なのだ。
中略
韓国イージス艦は、SPY-1システムこそ米国謹製だが、船体は韓国製だ。さらに乗組員も日米並の弾道ミサイル対処訓練など体験したことがない。艦の能力とは、人の能力を抜きにしては語れないのだ。
韓国を貶め、自衛隊を賞賛する記事は、受けがいいのでしょう。
確かに、韓国軍人の能力不足だった可能性は否定できません。
ですが、2隻ともロストしたことを考えると、単純な軍人・隊員の練度と考えるのは危険です。
と言う訳で、韓国艦だけが追尾に失敗した理由を推察してみましょう。
レーダー、特に、フェイズドアレイ方式のレーダーが目標をロストする理由は2つあります。
一つは、記事中で、韓国国防部も言い訳に使っていた、目標のRCSが小さいことなどによる、SN比の低下で、目標がノイズに埋没してロストに至るケース。
もう一つは、何らかの理由(多くは目標の高機動)により、目標に向けたハズのレーダーのビームが、目標から外れてしまうことで、ロストに至るケースだ。
今回の場合、日米は追尾継続できているため、RCSの問題であるとは考え難い。
可能性が高いのは、ビームが外れてしまった可能性です。
では、韓国艦だけが、ビームをハズしてしまう可能性があり得るのか?
結論から言えば、あり得ます。
艦載レーダーが、地上配備レーダーと最も異なる点は、艦の揺動により、レーダー自体が動いてしまうことです。
昔の、レーダーを機械的に回転させながら、ファンビームと呼ばれる扇状のレーダービームを放射していた時は、それほど大きな影響はありませんでした。(もちろん影響はありますが)
しかし、フェイズドアレイレーダーが、高出力でビーム幅を絞ったペンシルビームと呼ばれる細いレーダービームを放射するようになると、艦の揺動を補正してやらないと、レーダービームが狙った場所に照射できず、レーダーが機能しない結果となります。
「電磁波は、光速で進むのだから関係無いだろ」と思う方もいるかもしれませんが、弾道ミサイルの追尾迎撃を行うような長距離・高速度では、光速は、補正が必要な程度の遅さなのです。
参考過去記事:対艦弾道ミサイルの可能性について補足
なぜ、この事を書いたのかと言えば、韓国のイージス艦は、この点で欠陥を抱えている可能性があるからです。
艦の揺動を補正する方法は、フィードバックを行うか、フィードフォワードを行うかという技術的選択があるにせよ、最も大切なのは、揺動を正確に検知する方法です。
韓国艦は、この部分において、経費削減のため、米国システムを採用せず、自国の装置を組み込みました。
アメリカのイージス艦は、慣性航法装置として、レーザーリングジャイロを備え、デジタル、アナログ技術を駆使したAN/WSN-7を装備しています。
一方で、韓国艦は、素性の不明な代替システムを装備しています。
可能性の一つではありますが、AN/WSN-7の角度分解能などの精度がどの程度だという情報に基づき、韓国は、自国システムを採用した可能性が考えられます。
その際、分解能が同程度だったとしても、例えば応答性が劣っていたような場合では、今回の弾道ミサイルの追跡では、艦の揺動データが、SPY-1に入ってくる事が遅れたため、(高速、大加速度、長距離であるが故)不適切な場所にレーダービームを打っていた可能性が考えられるのです。
上記の推測は、あくまで推測です。
ですが、今回の韓国艦だけがターゲットロストをしたという結果を鑑みれば、韓国のイージス艦は、欠陥を抱えている可能性があります。
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元々彼の国のイージス艦は、
「日本が持っているから同じ物が欲しい」という、
幼稚な理由で導入された兵器ですからね。
実戦で使うことを想定していなかったのではないでしょうか?
投稿: 神速のタヌキ | 2016年3月15日 (火) 06時28分
発射距離が近いため見失いやすいことは、
考えられないですか?
素人の考えですみません
投稿: 山田 | 2016年3月15日 (火) 07時50分
神速のタヌキ 様
幼稚な理由というか、我々日本人からすると信じがたいですが、韓国は、真面目に仮想敵国として日本を想定していますから、対日本戦用に必要だという感覚だったのではないでしょうか。
山田 様
距離が近いことで、角速度が増大するという要素はありますが、システムは加速度も加味しつつ、必要な移動量をカバーできるだけの範囲でビームを振ります。
なので、距離が近かったというのは、理由にはならないでしょう。
それに、もしそうなら、もっと早い段階でロストします。
投稿: 数多久遠 | 2016年3月16日 (水) 00時58分
おはようございます
>>さしたる必要性もなく、見栄で仕入れたイージス艦では、手に余すのも当然なのだ。
ついでにKFXにしたって、我が国が導入するからってだけでF-15からF-35に乗り替え。おバカなミンジョクが、身の丈に合わない事をするからだ。
朝鮮戦争時、マッカーサーが日本の自衛隊を応援に向かわせると連絡したら、李承晩は「そんな事してみろ! 金日成と停戦して日本軍を叩いてやる!」とまで言った、実力が伴わないおバカ大統領の国民ですから…何でもカンでも我が国に集れば何だって手に入る(実際、日韓友好議連の連中のせいで、奴等は付け上がった)と思い込んでいますから( ̄^ ̄)
朝鮮有事の際、韓国のイージス艦だけが目標をロストして撃沈されればいい(^_^) バカは死んだって治らんだろうから、我が国の安全保障上南北朝鮮は共倒れになれば一番☆
投稿: 土方 | 2016年3月17日 (木) 08時43分
韓国は少ない予算で大変ですね
日本を仮想敵国とすると日中という大国に挟まれて頭には北朝鮮が引っ付いてるんですから
ただ韓国が中国に呑まれると半島を通して狭い海峡を隔て人民軍と対峙する事になるわけですから日本としてもあまりこの状況は好ましくないですよね…
投稿: もーもー | 2016年3月18日 (金) 18時26分
土方 様
見栄というより、韓国の考えでは、対日戦用なのでしょう。
日本が弾道ミサイルを有しないので、あまり重きを置いていなかったかもしれません。
もーもー 様
韓国にとって、ずいぶん前から、日本は仮想敵国です。
私も、基本的には、韓国が対中国のバッファーになると考えていました。
ですが、既に韓国は、米日ではなく、中国にベットする事を固めたように思えます。
投稿: 数多久遠 | 2016年3月21日 (月) 14時00分
角速度の増大が原因でないなら、レーダーモードの設定ミスとかは無いのでしょうか?
イージスのシステムがどうなってるのかは知りませんが、仮に対空モードで弾道ミサイルを追尾しようとした場合、普通の戦闘機やミサイルは垂直方向に急加速する事は無いでしょうから、レーダーのビームの振り方も垂直方向より横方向や距離の変化を捉えるためのビームの振り方に偏った方が追尾効率は良いはずです。
(逆に弾道ミサイル追尾モードは横方向への移動はあまり考慮しなくても良く、縦方向への大きな変化を見越してビームを振ってるはず?)
そこへ弾道ミサイルの縦方向への急加速でレーダーの予測を超える位置に行かれてしまったというのは?
投稿: 今村 | 2016年3月25日 (金) 21時54分
今村 様
韓国軍の練度が低くとも、さすがにモードを間違えるようなことはないと思っています。
そのくらいは、米軍がちゃんと指導しているでしょう。
それに、加速の絶対値は、弾道ミサイルよりも、通常の地対空ミサイルや空対空ミサイルの方が高い値になります。
弾道ミサイルの場合、小型ですとかなりな値ですが、今回の様な大型ミサイルは、加速度が大きいと、構造的に破壊されてしまうので、それほどではありません。
イージスの場合、僚艦の発射するスタンダードも追尾しないと、目標を誤認したりオーバーキルを発生させる可能性もありますから、通常の対空戦闘用モードでも、垂直方向での60~70Gくらいの加速には対応していると思います。
投稿: 数多久遠 | 2016年3月26日 (土) 23時49分
本文と関係ないですが、北大路機関さんのURLが下記に変わっております。
http://blog.goo.ne.jp/harunakurama
投稿: | 2016年4月 5日 (火) 08時58分
名無し 様
ご教示、ありがとうございました。
リンク修正しておきました。
投稿: 数多久遠 | 2016年4月 5日 (火) 23時08分
韓国イージス艦はSPY-1レーダーを搭載していますが、イージスシステムは仏タレス社で全て
統合したものです。韓国のは欧州型イージスシステムです。
SPY-1レーダーは元々防空レーダーで、対空ミサイル防御、戦闘機からの防御用で、高度3万
メートル程度の目標迄を想定しています。韓国はSPY-1レーダーとSM-2ミサイルを使う為に
Baselineソフトを入れているに過ぎません。イージスシステムは仏タレス製です。
ところで、宇宙空間を飛ぶMD弾道ミサイルを追尾するには、MD専用ソフトBMD 3.6~4.0を導入
しないと追尾できません。これは、MD弾道演算に特化したもので、これを稼動させるにはイージス
システムBaseline7.1を停止させないと使えません。メインコンピュータも全てMD用に使用します。
それだけ弾道ミサイルの追尾には演算パワーを必要とします。
防空システムBaseline7.1ソフトでも通常ミサイルとして追尾できますが、宇宙空間監視ソフトで
ないので、手動で追尾して宇宙空間に物体が飛んでいる程度にしか補足できません。
もともと、防空システムは宇宙空間をマッハ20で飛ぶ人工衛星や弾道ミサイルを監視するもので
はありません。
そして、最新の弾道ミサイル追尾迎撃ソフトBMD5.1からは、MD専用スパコンが搭載されるので、
本来のイージスシステムBaseline7.1はそのまま使えるようなります。これでMDソフトを動かすと
、本来の艦隊防空システムが無防備になるという欠点も解消されます。
SPY-1レーダーのハードはBMD5.1とBaseline7.1の両方をこなす性能を持っています。むしろ
大量のデータ処理をする演算コンピューターとソフトの方が追いついていない状況です。
投稿: 名無し | 2016年8月 4日 (木) 19時10分
名無し 様
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投稿: 数多久遠 | 2016年8月11日 (木) 17時55分