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2015年11月 8日 (日)

H28概算要求-その5_10式戦車調達は3両のみ!_自己変革能力を伸ばした防衛省

H28の概算要求では、地味ながらも注目すべき点がありました。
10式戦車の調達数量がわずか3両になったことです。

図らずも、過去記事「H25概算要求-その5_10式戦車はせいぜい3両でOK」や「戦車に引導を渡す機動戦闘車」で主張・予言したことが現実となった訳ですが、注目すべき理由は、これではありません。

この調達数量低下は、防衛省が自己変革能力を身につけた証左と見るべきだからです。

上記過去記事では、私が3両でOKと言いつつ、そんなことはできっこないと見ていました。
それは、過去記事「自衛隊の無謬性と自己変革能力」を見て頂けば分かると思います。
調達計画を大きく変更しようとすると、財務省が「では、今までの計画は間違っていたということですか?」と言ってくるため、変更することが困難だったのです。

10式戦車についても、2009年に制式化し、まだ72両しか生産されていません。
調達数量を3両に落とせば、退役までの総生産量が200両に届くことはありえないでしょうし、100両に届くかさえ怪しくなります。
560両生産された61式戦車、870両あまりが生産された74式戦車、340両あまりが生産された90式戦車と比べれば、非常に少ない数で、高額の開発費を投じて新規開発したことは失敗だったと言わざるを得ません。

しかし、それで良いのです。
10年一昔どころか、20年先を見越して開発するのですから、ある意味失敗があって当たり前です。
もちろん、税金を使う以上、失敗をしない努力は必要ですが、失敗を認めずに無駄を続けるよりも、失敗を認めて方向転換すべきなのです。

ですが、上記の財務省との関係もあって、防衛省・自衛隊の自己変革能力は疑問符を付けなければならないものでした。

それが、戦車という非常に象徴的な装備の調達において、失敗を認めて方向修正を図ることができるようになったというのは、評価すべき点だと思います。

経済性を考えれば、3両ではなくゼロにすべきところですが、国内新規開発ではなく、ライセンスだった戦闘ヘリ、AH-64アパッチの調達によるゴタゴタで富士重工が防衛省を提訴したように、10式もゼロにすると防衛産業との関係が悪化します。
上記過去記事で、私が3両と書いたのも、3両くらい調達しておけば、関係維持ができるだろうというドンブリ感情の結果です。

今後、10式の調達は、しばらくは3両程度で推移し、10式に引導を渡した形になった機動戦闘車の現場での評価なども見ながら、どこかで打ち切りになるのでしょう。

失敗を認めて、方向修正を図るのは、自己変革能力を持った健全な組織として、妥当な行動です。

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防衛予算」カテゴリの記事

コメント

久しぶりです。

毎年3両は産業に取って恩より迷惑であるの可能性が高い。一年位なら我慢しますが、これ以上なら往生際良く生産を打ち切る方が産業にとって楽でしょう。

こう想定するなら、今回の削減は長期な物より、場凌ぎの物と想う方が自然でしょう。概算を見る限り、28年度ではV-22を12機も買うらしい。これは普段の調達量を遥かに超えた物ですし、恐らく一括調達で値段を少しでも抑えたかったでしょう。そこで、10式が犠牲品に成ったではないでしょう?

だが、もしこれは長期な変化で、そして「勝者」は機動戦闘車で有るなら、私はこれが間違いだと評価します。戦車対兵站や戦車対飛行機ならまだ相談の余地が有るが、勝負は戦車対装甲車なら別です。

表を読む限り、あの機動戦闘車は毎年36両を買っても値段か7億に成っています。やって見なければ確証がないが、もし10式も毎年36両を買うなら、値段はそう違わないでしょう。

つまり、あの装輪軽戦車は主力戦車にも匹敵する値段で有りながら、火力・防衛力・走破性・C4Iすら圧倒的に劣る。幾ら戦略機動性があるとしても、路面から展開できないならこれで終りです。

私も装輪軽戦車を全否定する訳じゃない。例えば、一個連隊位を作って快速応変部隊として使うも良い。或いは、これを基盤にAPCも作って、大量生産によって値段を下がらせましょう。ですが、どの道、あれは戦車の代わりじゃない。

これは一時的な物だとこっちが祈っています。

現在では、クラスター弾の進化により、ほどほどの装甲では、
少数ののクラスター弾で数十両まとめて破壊され部隊が行動不能になります

現代的なクラスター弾をもつ相手と戦争をすることがないっていう前提なら、
この決定はいいと思うけど、どうでしょうかね

クラスター弾は日本が廃棄したが日本の周辺国はどこも廃棄していません

機動戦闘車が思ったより高価についてるからねぇ(10Tkと同数程度の調達数だと10dTkとあまり変わらない?)
まとめ買いを利用せんといかないで緊急性の低い10Tkが割り食っただけでしょ?(むしろ財務省から制限された結果では?)
逆にまとめ買いできるということは機動戦闘車がまとまった調達数になれば10Tkも遅れを取り返すのに利用できるということ
まあ、90Tkの退役が始まる頃(2020年頃?)に補填できるようにしたら良いからねぇ
今回の件だけで調達中止の前兆だというのは流石に・・・

おそらく、10式戦車が制式化されたのは平成22(2010)年でしょうか。
当方、重箱の云々は失礼に当たると思ったのですが、一度伺ってみたい事がありまして、
防衛省を始め官庁では、西暦と和暦をどの様に使い分けをされているのでしょうか?
例えば、将来的な見通しを計画する時などは、例えば「平成50年」とするのかどうか、
予算などは「H28」で、装備には「10式」など何か決まりがあるのか、以前から気になっておりました。

正直、手元の免許証にしても「平成○○年まで」となっているので、
時々「ドキッ!」としてしまいます・・・

10式ですが、最初の6年で76両、以後年産3両というと、87式偵察警戒車にそっくりですね(最初の4年で63両、6年で75両生産し、以後は年産4-1両)。少なくとも87式では、既存車両の部品生産の維持を兼ねている=維持生産のような気がするのですが、気のせいでしょうか。

もちろん陸自としては、MCV生産が一定レベルに達したら、90式の後継を兼ねて再び10式を増産したい、という狙いなのでしょうが、89式も、87式も同じ狙いだったはずなので、予断は許しません。数多さんの「調達中止の兆候」という見積もりも、必ずしも的外れではないかと思います。

なお、MCVがあれだけ生産して単価7億円というのは、(悪い方向に)予想通りですね。高級なFCSを積んでおり、10式戦車よりも「大幅に安くなる」理由がないことと、初年度であることを考えると、こんなものかと。まあ、安くなると期待しているのは維持費ですから、そこを見ないとわかりません。

将来、IFV型を単価5億円程度で、重APC型を単価2.5億円ほどで生産できれば、それはそれで良いと思うのですが。。。そしてこれを実現しようと思うと、いずれにせよ96式APCよりもかなり高価になるので、10式の増産も難しいかもしれません。。。(また、戦車かIFV/APCかのせめぎ合いが始まるのでしょうね。。。)

一方で、将来はオスプレイやAAV7の維持費が非常に重くのしかかるので、そっちの方が厳しいかもしれません。

というわけで、10式が調達中止へ行くのか、将来増産するのか、現時点ではわからない(というか陸自にもわからない)のではないかと思います。長期予算プロファイルを(陸自は用意していると思いますが)、公開して欲しいところです。それを見ればわかるはずですからね。。(普通はどの国の軍隊も、長期予算プロファイルを公開するものなのですが、、、、)

>10式戦車についても、平成10年に制式化し、まだ72両しか生産されていません

こんなこと書いてるようだと信用無くすよ?

>10式戦車72両

平成27年度までに予算化されたのが76両みたいですね。いわゆる掴みの数字では間違いだと騒ぐ話でもないと思います。

あまり細かい数字で議論すると「正確に間違う」可能性が出ますので寛容に見ていただければ良いのではないでしょうか?

平成10年制式化に突っ込んでんだけど・・・
90Tkの10年後内に制式化ってw

>そこじゃない

あっ失礼です。すっと読み流してました。

「十式戦車 ヲ 貶メル者 是即チ 陸軍不要論者 ニ 他ナラズ」
と、真顔で言っていた軍団が居りましたが、
彼らは今どこで何をしているのでしょうかねぇ・・・

10式買う位ならUH-Xを一機でも多く迅速に揃えたい所ですね

おはようございます

削減削減で、戦車の製造インフラや技術基盤はどうすんの?

>戦車製造インフラ・技術

機動戦闘車等で一息はつけるのでしょうが・・・

正直、現在の定数では維持できるのかは微妙かと実際開発製造から手を引いた国も有ります。

防衛予算が多くない中。戦車開発製造能力を残すのであれば、ロシアのアルマータシリーズのような共通の車体で戦車・装甲車・自走砲等を開発・製造する工夫が必要と思われます。

一応生産技術や運用技術を維持するための最低限の需要はあるのですかね
本土戦になって新戦車が必要になるとは全く考えられませんが

香港からの客人 様
年3両程度の生産は、日本の防衛産業にとっては珍しい数ではありません。
むしろ、今までの戦車だけが特殊だったくらいです。
この概算要求を見ても、
99式自走155mmりゅう弾砲 3両
軽装甲機動車         6両
96式装輪装甲車       8両
水陸両用車(AAV7)     11両
NBC偵察車           1両
機動戦闘車          36両
輸送防護車           4両
ですので、日本の装備調達はこんなものなのです。

ただ、確かに、一括調達の影響を受けたという要素はありえます。

名無し 様
教団の方ですか?
当ブログでは、ハンドルの使用をお願いしております。

CBU-97 SFWなどのことでしょうか。
戦車を含む装甲車両用なので、戦車も破壊されます。

シュピーゲル 様
読みとしか言えませんが、私はそうは思っていません。
記事は、修正しております。

kani 様
記事、修正しておきました。
ありがとうございます。

防衛省の暦は、基本和暦です。
時々に応じて、西暦も使いますが、正式な文書では和暦使用です。

ドナルド 様
87式偵察警戒車の調達と似ていたとしても、おそらく偶然でしょう。
大綱等の影響で、状況が大きく変わっているという要素が大きいと思います。

機動戦闘車は、単価の削減が目的だったわけではありませんし、量産効果が出るのは数十両作った場合でしょうから、高く付いているのは目論見が外れたという訳では無いと思います。

自衛隊は、長期の調達計画を、ホントに出しませんね。

エンリステッド 様
記事は、修正致しました。

神速のタヌキ 様
あの方は、軍事以外の方に指向してるみたいですね。
他の教団の方々も、ゲームなど、軍事話題から離れつつあるのでしょう。

ももも 様
その通りだと思います。
ただ、UH-Xは、今後も果たしてすんなり行くのかどうか……

土方 様
ぽち 様
防衛省は、従来のような全ての技術に関して、基盤維持するか見直すと言っています。
戦車に関しては、国産路線に見切りを付けるかも知れません。

読みではなく数多氏の願望じゃないの?

FY28は米国調達品(オスプレイとかAAV7)が多いので、代わりに調達が下がってしまったんですよ。
中期防の途中見直しが無い限り、H30までに残り18両(=44-26)買うと思いますよ。

シュピーゲル 様
願望ではなく、主張です。
日本の防衛環境を考えれば、300両の戦車でも多すぎます。

ただし、以前も書きましたが、日本の政策として、大々的に海外活動をするなら、戦車も再び増やす必要がでるかもしれません。
政治的には、反対ですが。

あいし 様
私は、そうすべきとは思いません。
コストパフォーマンスを考えた場合、非効率です。

300でも多いとする根拠を示した人を知らない

主張=[名](スル)自分の意見や持論を他に認めさせようとして、強く言い張ること。また、その意見や持論。「―を通す」「自説を―する」

まあ願望と主張で意味が違ってくるわけではない
願望を主張しているに過ぎない、という言い方もできるわけである

シュピーゲル 様
教団の方だったんですか。

であれば、当ブログのコメント欄でなく、そちらはそちらのブログ等で、”主張”を展開されるのが良いのではないでしょうか。

>300でも多いとする根拠を示した人を知らない

オブの人達は何両あれば満足なのん?

教団とは敵対してますしブロックされてますが、なにか?
何を思って教団と決めつけるのか不可解です
そういう決めつけを数多氏自身され憤ったのではないでしょうか?
それを他者に対してなさるというのは数多氏もその程度の人なのでしょう
尚、ご自身の分析もなく300でも多いと発言されても、はて?それで良いのか疑問を堤すのは当然ではないでしょうか、「俺が言うのだから減らしても大丈夫」では納得出来るものではないでしょう

この地域で圧倒的に強大な空海軍を擁する日本に向かって兵隊や戦車を載せた
お船でどんぶらこと本土侵攻してくるなどという有りもしない自体に投資するのは誰が見てもナンセンス
軍事的にも政治的にも馬鹿げてる
組織防衛に走りがちな防衛省ですら現在及び近い未来ではそうした在来型の侵略は
ないと認めてしまってるご時世なのに
あり得るのは少数のゲリラ・コマンドー攻撃、辺境無人島の奪取、弾道弾による示威などでしょう
いずれにしても戦車の出番はない

上の「この地域で~」は自分ですがハンドル入れ忘れてました
それと強大な空海軍というのは当然同盟国の米軍も含めています
誤解があるといけないので

ぽち氏
http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2013/05/post-9364.html
こちらでも分かるように数多氏自身も不用論者ではないですがね

神速のタヌキ 様
教団の方々のロジックは、「戦車は強い、故に大量に必要」というだけで、日本の置かれた地理、政治的環境無視なんですよね。

シュピーゲル 様
それは失礼致しました。
記事趣旨が、300両でも多いことを非難する記事であれば、当然その理由、ロジックは書きます。
コメントでは、そこまで書かないというだけです。

ぽち 様
おっしゃる通りですね。
防衛省も、大綱でそのように規定していますし。

某映画で空挺部隊が戦車部隊にボコられてたせいで戦車不要論を支持できない

名無し 様
その某映画とやらは、日本が舞台だったんでしょうか?

どんな兵器も、使用される環境(地形地物だけでなく、戦略環境など含む)を考えないと、意味はありません。

数多久遠 様

 映画は「遠すぎた橋」です。まあアレは作戦案に問題があったのですが。

名無し 様
返信が遅れて申し訳ありません。

「遠すぎた橋」ですか
作戦案に関わることかもしれませんが、アレに教訓を得るとしたら、「戦車を配備すべき」ではなく、「(空挺)歩兵に十分な重装備を持たせるべき」じゃないでしょうか。

それがあれば、作戦が成功していた可能性もある訳ですし。

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