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2015年10月20日 (火)

H28概算要求-その4_本格的空母の必要性

来年度の防衛省概算要求を見ていると、いずれ、本格的な空母が必要となりそうな予感を抱かせられます。
防衛省・自衛隊は、既に導入を見据えているようにも見えました。

空母は、建造にも運用にも莫大なコストがかかるため、戦域が日本周辺に留まるのなら、私は基本的に反対です。
ですが、集団安全保障の行使に踏み切った以上、戦域が日本周辺に留まるのなら、という条件は、必ずしも当てはまりません。

そうした政治的な理由だけではなく、H28の概算要求を見ていると、DDGによる防空だけでは、足りないのではないかと思わせられます。

それは、現在でも相当進行している海自のヘリ重用が、さらに強まる内容になっているためです。

○ 哨戒ヘリコプター(SH-60K)の取得(17機:1,032億円)
○ 哨戒ヘリコプター(SH-60J)の機齢延伸(2機:10億円)
○ 多用途ヘリコプター(艦載型)の取得【機種選定中】
○ 新哨戒ヘリコプターの開発(295億円)

冒頭の2ページ、海自ヘリ関係だけで4件、1337億円も要求されています。
そして、これが冒頭2ページに来ているということは、それだけ重要な要求だと考えられているということです。

また、陸自に配備されるオスプレイが、おおすみ型やいずも型などで運用される可能性も、ヘリの重用と言えます。

現代の水上艦運用は、艦載ヘリがないと成り立たない状況になっています。
静粛性が向上した潜水艦の探知は、ヘリ頼みといって良いほどですし、水平線の彼方から飛来するシースキミングミサイルの警戒にも、ヘリが欠かせません。
もちろん、対艦戦闘を行うための目標捜索にも使えます。

多くのヘリが、艦艇を離れて、つまり艦艇よりも前進して運用されることになりますが、このヘリに対する防空を、固定翼機なしに行う事は困難です。
現在の防空用SM-2では、実効的な射程は、とてもヘリを防護するには心許ない数値です。

SM-6が配備されれば、かなり条件は改善しますが、中国のステルス機開発や空対空ミサイルの性能向上を考えると、将来的には、とても十分とは言えないでしょう。

そうなると、固定翼機を運用せざるを得ないのですが、集団的自衛権行使が可能になったとは言え、空自部隊の海外展開運用は政治的なハードルは、相当高いと言わざるを得ません。

コストが高く付いても、F-35Cの導入とカタパルトを備えた本格的な空母が必要になるかもしれません。

防衛省・自衛隊が、空母導入を念頭に置いているのではないかと考えた理由には、実は、もう一つの要求がありました。

○ 新早期警戒機(E-2D)の取得(1機:238億円)
南西地域をはじめとする周辺空域の警戒監視能力の強化のため、新早期警戒機を取得

AWACSよりも老朽化しているため、E-2の更新が検討されることは、ある意味当然なのですが、E-2からAWACSに切り替えるという選択もあるなか、E-2の更新とした理由には、元々艦載機であるE-2の空母上での運用が、念頭にあるのかもしれません。

さらに、これは、勘ぐりすぎかもしれませんが、F-Xの選定でタイフーンが落とされた理由も、艦載機化が見えないせいだったのかも知れません。
F-35であれば、AとCの違いはあれ、共通点が多く、運用上も整備補給上も、対応は容易です。
一時期、F-18が有力視されていた理由の一つだったと考えることもできます。

来年あたりには、空母保有の有効性を検討する研究なんかが盛り込まれてもおかしくないかも知れません。

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防衛予算」カテゴリの記事

コメント

素人の考えですがちょっと飛躍し過ぎな感じがします。まず艦載ヘリの護衛との考えですがそもそも空自のエアカバーの範囲外でそこまでの本格的な作戦を海自単独でするものでしょうか?今回確かに集団自衛権が成立しましたがよほど切羽詰まった情勢にでもならない限りインド洋派遣やイラク派遣程度のレベルにしか派遣されないと思いますし今の自衛隊にそれ以上のレベルでの派兵は能力的にも国内情勢的にも難しいと考えます。万が一にも情勢が急変して南シナや東シナ海に行くとなった場合でも米軍の制空権の下での活動になるかと。
次期早期警戒機がアドバンスホークアイになったのも他の候補がピースアイしかなく彼方は発展性や性能に米軍との情報リンクの問題等で見劣りした為にホークアイを選んだと言うだけな気がします。現に国産早期警戒機の実証研究ではP-1なんて選んでますし。

艦隊防空は、米海軍でもイージス艦が担当していると思いますが。
かつてはF-14+AIM54で艦隊防空を担っていましたが、イージス艦が本格配備されてからは、F-14(+AIM54)の後継機は開発・配備されていません。
F/A-18A/Dは、A-4・A-7の後継機で、F/A-18E/FはA-6の後継機。
で、F-35CはF/A18の後継機。(F-35BはAV8-Bの後継機。)
ということで、海自がCTOL積載空母+F-35Cを「艦隊防空目的」で保有しようと企図することはないような。

ウーン空母ですか?

基本、過ぎる装備だから止めた方が良いんでしょうが(現状でも威勢の良い政権の割には大して予算・人員が拡充されたワケではない)。

集団安全保障体制の確立や中国とのゲームで。見せる手札として空母のようなモノの保有を目指す世論や機会主義の海上自衛隊の思惑が合致すればひょっとしたら?

何せ日本人は海軍力で中国に凌駕されたことが日清戦争以降無い。中国空母の運用が本格化すれば、海軍力が劣って見えてしまうことに日本人は本能的に恐れている・・・

多目的艦でしたか?「強襲揚陸艦」の保有が具体的に語られていますが。その多目的の中にF35Bの運用が組み込まれる可能性は多少は有るかもしれない。F35は少数でも持たざる軍隊にとっては脅威でしょうし。

良くてひゅうがが退役するころの話しじゃないですかね?
基本的にファッツ氏のコメントに同意

数多様

私もファッツさんのご意見に賛成です。

>ですが、集団安全保障の行使に踏み切った以上、戦域が日本周辺に留まるのなら、という条件は、必ずしも当てはまりません。

いや、まず、集団安全保障の行使に踏み切ったからといって、日本周辺以外に大々的に戦域を広げるかどうかは、直接は関係ないかと思います。存立危機事態の定義についての質問の中で、「イラク戦争にはいかない」、首相がそう明言した上で採決した以上、似たような戦争に行ったら法律違反で訴えられます(裁判の判決がどうなるかは別の話です)。

次に、集団的自衛権の行使に踏み切っている多数の国家の中で、本格的空母を保有しているのは米軍だけです。「自国空母のエアカバーの下でしか集団的自衛権の行使を遠国で実施しない」というのは、唯一米国を除けば、世界のどの国も採用していない考え方と思います。英軍ですらそうではありませんから。

ちなみに本格空母を持つなら、6万t級の中型空母でも、空母5000億円、搭載機9000億円(140億円 x 1.3 ×50機(艦上36機+地上予備でギリギリ))=1.4兆円 (航空機の x1.3はF35AとCの価格差相当)。3隻は必要なので、調達費だけで4.2兆円が必要になります。30年に分割しても、1年あたり1400億円。昨今の海自予算で言えば、護衛艦がゼロになります。

さらに言えば空母は運用経費がバカ高い。人件費込みにすると少なくとも調達費の3倍は軽く行くでしょう。つまり少なく見積もって、年間4200億円。調達費と合わせて年間5600億円相当。しかもこの3隻、潜水艦や機雷、巡航ミサイル(+対艦弾道弾も?)に弱く、手厚い護衛が必要です。

これを安い(=現実的)と思うか高いと思いか、ですが、私は後者の立場です。同じ金額で、SSM連隊や戦闘機、潜水艦を整備し、兵站を整え、燃料弾薬人員を充実させる方が優先でしょうし、もっと言えば、莫大な国家の借金を返す方が優先かと(なにしろ利子がつくので)。

(余裕がある時代に)日本が小型空母を保有していて、それを拡大していく
みたいな話だったら、賛成出来るかもしれませんけど
現実は違いますし

ドナルドさん
概ね賛成ですがこれは頂けない。
>莫大な国家の借金を返す方が優先かと

それはいわゆる「クニノシャッキン」とかいう財務省の詐欺文句に
騙されてるんですかね?正しくは「政府の借金」でございますよ。
そもそも減らす必要なんて全くございません。増えるのが当たり前なのです。
要は経済成長させて政府債務対GDP比を減らしていけばいいだけなのです。

もちろんだからといって防衛費のコストパフォーマンスを無視しろ、減らす必要ないから
ガンガン防衛費上げろなんていうつもりは毛頭ありませんが。

数多久遠氏の基本スタンスを考えるに、この記事は半分冗談か煽り目的かと思いますので、こちらも半分冗談のネタのつもりで

とりあえず以前から指摘されている問題ではありますが
最前線で活動する情報収集・監視・偵察(ISR)用機材がもたらす情報の質によって、戦場の趨勢が決定的に左右される時代において
これら高価で貴重な情報収集航空機材をどうやって護るのか?というのは本当に頭の痛い問題になっていくと思います
特に海自相手の場合、哨戒ヘリを失った護衛艦の能力を考えれば、防御の硬い艦本体より、真っ先に長距離対空ミサイルで哨戒ヘリを狙う方が手っ取り早く簡単ですし、敵がそれをしない理由が無いと考えるからです

ですので、仮にこれら機材と搭乗者を護る手段が、将来的に他に無さそうだとの予測がある場合には、コストが高く付くとしても、護衛目的の空母の導入が秘かに検討されているのかもしれないと思います

ただ、

個人的には、米軍において、近年、著しい進歩が示唆されている指向性エネルギー兵器の、艦艇及び航空機への搭載が、この問題を解決する答えとなっていくのではないかと予想しています

例えば、近接防御用レーザーを装備し、ミサイル防御に特化した、僚艦防空ならぬ、僚機防空ヘリorコイン機とか(笑)
それならDDHでそのまま運用できてお得です
艦載機に関しては、対空ミサイルさえ無力化できてしまえば敵の戦闘機なんか相手にする必要は無い、そっちは空自のお仕事と割り切ってしまうのも一つの手かもしれないという事で

私は空母保有自体は賛成ですねー
やはり航空機と艦艇の防空能力は段違いですし哨戒監視効果判定も航空機にはかないません
それによく言われますが同型艦三隻以上なんて実現してるのはアメリカくらいですし無理に拘る必要も無いかと思います

それに潜水艦隊のバシー海峡封鎖に場合によってはエアカバー掛けると言う選択肢も出来ますし

まぁただそんな予算があるのか?何処がわりを食うのか?ってのは気になりますけど

日頃から楽しく拝見させていただいています。
私も今は空母必要ないかと思いますが、思考実験として考えるなら、「同型艦3隻の必要性」「目的的に固定翼機が必要なのか」「固定翼機の必要性=空母の必要性なのか」あたりを疑うと面白いかと思われます。

あと1つ要望です。本HPですが、スマホ表示にすると記事が古い順に表示され、事実上スマホHPは使用できない状態です(最新の記事へのボタンなし)。新しい順にしていただけないでしょうか。

防空用となると正規空母とはいっても米の原子力空母よりはかなり小さなものになりそうですね
その分価格も下がるので一長一短ですが

ファッツ 様
今後、自衛隊の活動範囲は、相当拡大して行くとおもいます。
逆に、拡大させないなら、ヘリを対潜哨戒型オスプレイに変え、陸上基地から運用することもできるでしょう。

myu5 様
イージスSM-2で迎撃できるのは、接近する対艦ミサイルであって、爆弾しか運用できない旧式機を除き、母機の迎撃は、事実上不可能です。
母機迎撃を行っているのは艦載機です。

エンリステッド 様
確かに、強襲揚陸艦の保有論議の中で、少しずつ話がでてくるでしょうね。

シュピーゲル 様
日本の国内事情的には、そのくらいのペースかもしれませんが、国際情勢の変化は、もっと早そうに思います。

ドナルド 様
クイーン・エリザベス級を本格的と言うかどうかは論点になるでしょうね。
それに、シャルル・ド・ゴールもあります。

経費については、私も高いと思っています。
が、海自・防衛省の目論見は、空母も視野に入れているというのが本記事の主旨です。

メリッサ 様
まさに、身の丈は考える必要がありますね。

ナオ 様
経済論議になってしまいますが、私は現在の国債依存率は、危険な水準だと思います。
政府の感覚が、年金を食いつぶした厚労省と同じような感覚に思えてなりません。

日本酒命 様
煽りやネタのつもりはありません。
海自は本気じゃないかと思っている状況です。

指向性エネルギー兵器は、水平線下には無力ですから、前方に出る対潜ヘリ防護には、あまり有用ではありません。

もこもこ 様
やはり課題は予算でしょうね。
配備するなら、3隻はいらないとしても、2隻は必要でしょうから。

銀魚 様
「目的的に固定翼機が必要なのか」は、私はSM-6でも不十分と考えています。
「固定翼機の必要性=空母の必要性なのか」は、陸上基地が確保できれば良いことになります。多くの友好国を確保できるかどうかでしょうね。

スマホ表示の問題は、私も以前に認識したのですが、ココログのスマホ表示は、そうなってしまうようです。
申し訳ありませんが、PCでご覧下さい。

US-2ラブ 様
電磁カタパルトを作れれば、小型でもそれなりの能力を持たせられると思います。
蒸気カタパルトは、原子力がないとかなり厳しいでしょうから。

というか、成立した安保法制でもヘリ空母でなく正規空母を必要とする蓋然性がないでしょう、非常に限定的であるのに

シュピーゲル 様
この点については、私は野党の言い分も妥当だと思っています。
いくらでも、拡大解釈は可能ですので。

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