H28概算要求-その3_鮮明な対中国路線
防衛白書等でも路線がハッキリしているので、当然と言えば当然ですが、来年度の概算要求にも対中国路線が鮮明に現れています。
その2で書いた、陸自の海兵隊化も、投入場所の想定は、尖閣や先島を始めとした沖縄の島嶼ですから、相手は言わずもがなの中国ですし、その他の項目でも、やはり対中国を意識している要求事項が多くなっています。
海兵隊化と同様に、戦場を南西諸島・東シナ海を念頭においた要求は、中国が想定脅威です。
○ 新哨戒ヘリコプターの開発(295億円)
浅海域を含む我が国周辺の海域において対潜戦の優位性を確保するため、複数のヘリコプターとの連携により、敵潜水艦を探知する能力等を付与した哨戒ヘリコプターを開発○ 与那国島の沿岸監視部隊に関連する施設の整備(76億円)
○ 南西地域における移動式警戒管制レーダーの展開基盤の整備(3億円)
移動式警戒管制レーダーの展開基盤を奄美大島に整備することにより、隙のない警戒監視態勢を保持○ 戦闘機部隊等の体制移行の実施
・南西地域の防衛態勢の強化を始め、各種事態における実効的な抑止及び対処を実現する前提となる航空優勢の確実な維持に向けた態勢を整えるため、戦闘機部隊の体制移行の実施
・築城基地の戦闘機部隊を2個飛行隊とするとともに、新田原基地のF-4部隊と百里基地のF-15部隊を入れ替え
・航空自衛隊の戦術技量の向上を図るため、戦技研究や関係部隊への指導を実施する飛行教導群を広大な空域に隣接する小松基地に移動○ 南西警備部隊の配置(194億円)
島嶼防衛における初動対処態勢を整備するため、警備隊等の配置に関連する○ 輸送機(C-130H)への空中給油機能付加(12億円)
島嶼部に対する攻撃への対応等における十分な捜索救難活動の範囲及び時間を確保するため、救難ヘリコプター(UH-60J)に対する空中給油機能の付加改修に必要な
改修用部品を取得
展開・輸送能力の強化も、政治的な理由や訓練用地の確保が難しい等、平時から多くの部隊を置くことが難しい沖縄地域に戦力を投入することが大きな目的であり、対中国を意識したモノだと言えます。
○ 新空中給油・輸送機の取得【機種選定中】
○ ティルト・ローター機(V-22)の取得(12機:1,321億円)
・輸送ヘリコプター(CH-47JA)の輸送能力を巡航速度や航続距離等の観点から補完・強化するティルト・ローター機を整備し、水陸両用作戦における部隊の展開能力を強化
・長期契約による一括調達により、12機のティルト・ローター機(V-22)を確実に調達するとともに、調達コストを縮減
・その他教材等関連経費等(219億円)○ 輸送機(C-2)の取得(1機:229億円)
現有の輸送機(C-1)の減勢を踏まえ、航続距離や搭載重量等を向上し、大規模な展開に資する輸送機(C-2)を取得○ 機動戦闘車の取得(36両:259億円)
機動運用を基本とする作戦基本部隊(機動師団・機動旅団)等に航空機等での輸送に適した機動戦闘車を整備し、作戦基本部隊の機動展開能力を強化
また、沖縄からは離れますが、小笠原における珊瑚密漁で問題化した太平洋側島嶼の防衛問題も、脅威は中国しかありません。
○ 太平洋側の島嶼部における防空態勢の在り方に関する検討(0.6億円)
太平洋側の島嶼部における防空態勢の在り方に関する検討を推進するため、調査研究を実施
同様に、展開能力に資する要望としては、陸上総隊の新編準備もあります。
○ 陸上総隊(仮称)の新編に向けた準備
陸上自衛隊における全国的運用態勢強化に資する統一司令部を新編するため、これに係る関連事業を計上
・陸上総隊(仮称)司令部庁舎等の整備(朝霞)(92億円)
一般の方には分かりにくいと思いますが、現在は、各方面総監が大臣直轄であるため、戦力を方面をまたいで展開、指揮移管をする場合は、大臣が命令を出さなければなりません。陸上総隊ができれば、多忙な上、専門知識が少ないため、判断してもらうために多くの報告をしなければならない大臣ではなく、知識豊富な、陸上総隊司令官が迅速に判断し、部隊を動かせます。
さらに、ここまで言うと、うがち過ぎかもしれませんが、次の要求は、ちょっと注目しています。
○ 可変深度ソーナーシステムの開発(97億円)
護衛艦に搭載する新たなソーナーシステムとして、層深下に潜航した潜水艦の探知類別能力を向上させるため、えい航式ソーナーにアクティブソーナーの機能を付加し、複数の護衛艦で相互連携による捜索を可能とする可変深度ソーナーシステムを開発
注目しているのは、バイスタティック能力を得ようとしている部分ではなく、探知”類別”能力を獲得するためとしている点です。
中国の原潜は、探知も類別も容易です。ですが、中国が12隻も運用しているキロ級は、静粛性が高く、パッシブ探知が困難です。
アクティブで探知した場合は、そうりゅう型やおやしお型と類別することが難しく、対潜艦艇にとって厄介な存在です。
この要求は、中国のキロ級対策でしょう。
また、場合によっては、自衛隊艦艇が南シナ海に展開する場合、ベトナムのキロ級と中国のキロ級を識別する必要さえでてくるかもしれません。
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