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2015年9月 3日 (木)

トランプ発言は沖縄を平穏にする

アメリカ大統領選の共和党候補中、トップを走るトランプ氏の発言が、注目を集めています。
「トランプ発言」で米国に広がる日米安保不公正論」(週刊文春2015年9月10日号)

「日米安保条約の規定ではアメリカは日本が攻撃されれば、日本を防衛する義務がある。だが日本はアメリカが攻撃されても支援しなくてよい。これでよいと思うか」

 会場からはいっせいに「ノー」という声が上がった。


日米安保条約の片務性を解消せよという主張です。
リンク記事にもある通り、過去にあった”安保ただ乗り論”と同じです。

トランプ氏の発言を報じるこれらの記事では、アメリカの国力衰退により、基調として、義務だけを負うのは嫌だというアメリカ世論があると言われます。
この記事の後半で、トランプ氏のような右派だけでなく、左派にも同じ主張があると報じているのは、まさにこの世論分析を裏付けるものです。

トランプ氏の日本非難は共和党保守右派の極端な少数意見だと日本側では受け取られそうである。

 ところが同種の「日本不公正論」は民主党左派、つまりリベラル派にも実は存在するのだ。下院外交委員会の7月15日の公聴会でブラッド・シャーマン下院議員が日本を批判した。

「9・11同時テロでアメリカ人が3000人も殺されたとき、同盟諸国はみな集団的自衛権を発動して支援してくれた。だが日本はそうしなかった。日米同盟だけは片務的だからだ。自国の防衛負担をアメリカに押しつけるのだ。こんな同盟は前世紀の遺物であり、21世紀には合わない」


しかし、トランプ氏が片務性解消を唱える理由には、もう一つ、大きなものがあります。
それは、彼が日米の政治課題を先読みしていることです。

安保法制は、まもなく参院で可決成立する見込みです。
安保法制が成立し、”明文的に”日本が集団的自衛権を行使できることになれば、アメリカは、日米安保条約を、現在の片務条約から双務条約に変更する改訂を持ちかけることができるようになります。
(現時点で持ちかけたとしても、憲法で禁じられていると言われてしまうため、アメリカとしても言いにくい)

日本とすれば、双務化改訂により義務が増えることになります。
そのため、義務の増加を考えれば良い話ではありません。

ですが、片務のままでは、尖閣や沖縄が中国から脅かされても、アメリカが本当に軍事力を行使してまで条約を履行しようとするかは不透明です。
双務条約化されていれば、アメリカのコミットメントが強化されることが期待できます。

そのため、自民党政権が継続していれば、この改訂を受け入れるでしょう。

その時、トランプ氏が大統領であれば、また大統領になれていなかったとしても、今声を大にして片務性を非難したトランプ氏は、先見性ある政治家と見なされますし、改定をトランプ氏の成果だとアピールできます。

しかし、安保条約の片務性を解消し、双務条約とすることに対しては、安保法制以上に、左派マスコミ・反対派が強硬な態度を見せるでしょう。
自民としても、困難な政治課題です。
ですが、自民としても、積極的に取り組む意義があります。

それは、現状ではアメリカにとって不平等な安保条約が、日米双方に平等なものになるならば、現状では日本にとって不平等な日米地位協定も、また同様に平等なものにできるはずだからです。

日本は、沖縄などで米兵による問題が起きるたび、日米地位協定の改定を模索してきました。
しかし、安保条約がアメリカにばかり義務を課している状況では、地位協定だけを平等にするのはフェアではないため、アメリカに飲ませる事ができませんでした。

安保条約を双務化するなら、逆に不平等な地位協定もセットで改訂させるべきですし、可能なはずです。

安倍政権の狙いも、恐らくここにあります。

まるで、風が吹けば桶屋が儲かる話のようですが、トランプ氏が日米安保の不平等を非難すれば、それは地位協定の改定による沖縄の平穏につながるはずです。

台湾や東南アジアの政治・軍事環境を考慮すれば、普天間を沖縄から遠く離れた場所に移転させることは困難です。

ならば、地位協定を改定し、海兵隊が無法を行わないように、行われた場合は、日本の法律で裁くことができるようにすべきです。

そのためには、まず、安保法制を成立させることが必要です。

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防衛関係法規・規則」カテゴリの記事

コメント

数多先生

地位協定の改訂は、外務省の腰が重いと聞いています。

それはそうとして、現状、日本には米軍基地があり多額の資金も提供(思いやり予算や湾岸戦争の時の資金提供)してるわけですが、それでも日米安保のためになんの貢献もしてないと言うことなのでしょうか?

トランプ氏はマケイン氏を揶揄して軍人保守層からそっぽ向けられてるから大統領にはならんと思いますけどね。

こんにちは

トランプ氏の意見は概ね理解しましたが…果たして本土から都落ちした左翼集団により「反日反米病」に罹患した沖縄愚民に理解力が有るとは甚だ怪しい( ̄^ ̄)

トランプ氏の発言は片務性の解消というより日米安保の解消もしくは日本の隷属化といったもの
対韓同盟に言及した際の発言からしてもね、片務性の解消なんて高尚な考えじゃない

そんな訳ないでしょw
米国に限らず一次裁判権が兵士を受入れた国ではなく、兵士を派遣した国に認められると言うのはNATOの地位協定上の原則で
日米間だけが特別な訳ではない事はご存知ですか?
その背景には自国内であれば、被疑者の人権は米国の憲法で保障されるのに対して、米軍の兵士として他国に駐留した途端に米憲法の
保護から外れて他国の裁判権で裁かれる事に対する異論、他国の司法制度に対する米国内の不信があると本間浩さんは
ドイツ駐留NATO軍地位補足協定に関する若干の考察の中で述べています。

米兵の一次裁判権と言うのは現在NATO諸国(集団的自衛権を容認)との間でさえ認めていないのです。今更日本が集団的自衛権を認めた
所で交渉に応じたり、実際に日本へ譲歩したりする訳が無いんですよ。

デタラメもいい加減にして欲しいものですな。

しやもし 様
腰が重いのは承知しています。
ですが、これをやらねば、沖縄の安全は確保できないでしょう。

金で命は買えないということだと思います。
自衛官だったもののマインドから言わせて頂けば、金だけだして役に立ったと言っている人がいれば、軽蔑の対象でしかないでしょう。

土方 様
翁長氏が知事になったとは言え、多数の支持があるとは言えません。
反対票も多かったですし、それ以上に無党派層がいます。
在沖メディアがああだからと言って、全ての人が、あんな風に考えているわけではないです。

シュピーゲル 様
トランプ氏の言説がマトモだとは言いませんが、彼の言説は、彼の本音というだけではなく、かなり計算されていると思いますよ。

名無し 様
NATOがどうだから、日本はそれ以下しかあり得ないというのは、暴論だと思いますよ。
「米軍はヨーロッパから出て行け」なんて言われてませんからね。

他の方へのレスでも書きましたが、落とし所がどこになるにせよ、日本政府がこれをやらなければ、沖縄の防衛は立ちゆかないでしょう。

何が暴論なんですかね。
今現在集団的自衛権を認めているNATO諸国との間でさえ、米国は自国の兵士の一次裁判権を受入国側に認めていません。
それなのに、何を根拠に日本が集団的自衛権を認めれば、米国は日本に対して米兵の1次裁判権を認めると考えるんですか?
どう考えても、NATO諸国にも地位協定改定の要求が飛び火して難題を抱え込むだけでしょうに。

法案が可決成立すれば、地位協定が改定されるかの様な根拠の無い噂を流して反対派を動揺させあわよくば切り崩そうとする所謂
"心理戦"を気取ってるんだとしたらそっちのセンスが無い事は自覚されたほうがいいでしょうね。

今国会で法案が可決されたとして、本当に政権が地位協定で定められた米兵の1次裁判権を日本に委譲する様交渉するのか
そして米側が本当にそれを認めるのか、お互いに注視して行きましょうね。

アメリカにおべっか使ってもねえ?
アメリカ自体はアメリカの利益優先、自国民保護だからねえ、安保法を制定してもたいして変わらんでしょ

数多先生、上の上の名無しの人

日米地位協定の改訂とは、
「最低限NATO並み」
なのと違うん?

1次裁判権に関しては日本でも韓国でもNATOでも何処でも派遣国(米国)が持ってます。
ですから、その点においては日米地位協定の内容は既にNATO並みと言えますよ。
但しドイツは安保条約に基づく地位協定を更に補則する協定を結んで
より細かく駐留軍(米軍)の行動を規定していたりします。
NATO並みと言う人たちはこういう点を取り入れようと言っているのではないですかね。

現実的には、兵員と軍属(予備役も含む)は除き、基地協定の範囲外にすることですかね。
日米安保で援軍にならない奴は、日本の防衛に役立っていません。
兵員や軍属の家族は、家族であるという理由で地位協定に含まれるというのは、止めるべきです。

名無し① 様
そうですね。
注視してゆきましょう。
ですが、一応言い添えておきますが、1次裁判権を日本側が持てるようになるなどとは書いてませんよ。

落とし所がどこになるにせよ、単なる運用改善で済ませるわけにはいかないのです。

シュピーゲル 様
日本は、アメリカにとっても有益な位置にあります。
その立場を利用した交渉を行う事と、おべっかは違います。

しやもし 様
彼の土俵の上に立ってコメントすると、言っていないことを認めたことにできるとお考えなのでしょう。

名無し② 様
どこまでやれるかは、日本がどこまで言うか、それ以上に、中国の脅威をアメリカがどこまで認識し、日本の協力が、彼らにとってどれだけ有益かによるだろうと思います。

Suica割 様
それも、一つのプランかもしれませんね。

実際軍属の家族に拠る不法行為とその賠償責任と言うのは問題になってます。
2013年の3月に座間市の神社と住宅が放火されて全焼しました。
犯人はキャンプ座間に勤務する米軍軍属の家族でしたが一切保証せず帰国しています。
これは地位協定では公務外の軍人・軍属の不法行為による損害は米軍側が賠償すると
定められているからなのですが、実はその家族によるものに関しては定められて
いないんです。米兵(厳密にはそうではありませんが)の逃げ得と言うのは過去の話と
思う人も多いかもしれませんが、実は今現在でも起きているのです。

>1次裁判権を日本が持てるようになるなどとは書いてません
じゃあどんな意味で

不平等な地位協定もセットで改訂させるべきですし、可能なはずです。

地位協定を改定し、海兵隊が無法を行わないように、行われた場合は、日本の法律で裁くことができるようにすべきです。

こんな事を書いたんです?
問題無いと信じてるならBlogosに新しくエントリ立てて同じ事書いて
広く皆さんからの意見を聞いてみたら如何ですか?
どんな反応が返ってくるかとても楽しみですね。

文章のプロなら二枚舌なんてみっともない真似せずに
自分の言った事、書いた事に責任持ちなさいよ。それがモノ書きの矜持じゃないんですかね。

名無し 様
問題だと認識されているなら、それこそ改善させる努力の一環として、安保法制も必要でしょう。

むしろ賛成してくれてもいいくらいだと思いますが。

なお、トップに書いている通り、コメントにはハンドルをお願いしております。

>それこそ改善させる努力の一環として、安保法制も必要でしょう。

今回の新法と地位協定における米兵の裁判権は全く別個の問題です。
日米の首脳・閣僚級に限らず政府・議会・軍のいずれかでも
集団的自衛権と裁判権の問題をリンクさせて協議する発言があったんですか?そんな事誰も言ってないでしょう。

私は事実として既に集団的自衛権を認めているNATO諸国に対してでさえ米国は自国の兵士の裁判権を認めていない事を指摘しました。
既にこの時点で貴方の主張は現実と矛盾していますが
その件についてはどう説明されるのですか?

単なる無知で言っているなら、1個人の資質云々で済む話ですが
在りもしない地位協定の改定などと言う嘘を言い触らすのは
更に沖縄を騙す事に他なりませんよ。

名無し 様

誰かが言っている話なら、私が記事を書く必要はありません。
評論はしますが、報道は新聞テレビにまかせます。

なお、前回も書きましたが、ハンドル使用をお願いします。

>誰かが言っている話なら、私が記事を書く必要はありません。

だからと言って実現する見込みが極めて低い地位協定の改定が新法の成立によって
さも実現するかの様な"デマ"を吹聴していいわけじゃ無い事位判るでしょ。

実際地位協定以前におもいやり予算でも日米の溝は深いという報道が
チラホラ出てきてる訳で。この件も君のロジックなら日本が集団的自衛権を認めれば
現状ではアメリカにとって不平等な安保条約が、日米双方に平等なものになる。
ならば現状では日本にとって不平等なおもいやり予算も、また同様に平等なものにできるはずだけど、実際にはアメリカはそれに応じようとはしていない。

アメリカは思いやり予算の改定にすら応じてないのに、地位協定の改定には応じると考えてるなら、新たにエントリでも立ててその辺を詳しく論じてみたらどうです?

いつまで自分の主張と現実との乖離から逃げ回るつもりなんだか。

名無し 様
ご意見は、ご意見として伺っておきます。

なお、今回も書かせて頂きますが、コメントにはハンドル使用をお願い致します。

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