映画評「天空の蜂」
このブログを転載して頂いているBLOGOSの招待で、映画「天空の蜂」試写会に行ってきました。
という訳で、ネタばれしない範囲で、見てきた感想などを書かせて頂きます。
上映時間2時間18分
大作と言える長さですが、スリリングな展開で、小気味良く進むため長さは感じません。
社会的なテーマを扱いながら、CGを効果的に使ったアクションシーンも楽しめるエンターテイメント作品になっています。
江口洋介演じるヘリの技術者、木本雅弘演じる原発の技術者を中心として展開される人間ドラマは、さすが東野圭吾作品だけあって、深みのあるものになっています。
俳優さんの演技では、木本雅弘の迫力が印象に残ります。キャラクター自体が、強烈なキャラなのですが、彼が演じることで一層強烈な登場人物になっている感じです。
2枚目俳優だったはずの綾野剛も、彼の”怪演”が光ります。
江口洋介は、父役がはまっています。この映画、社会的な内容でありながら、個人の感情である父子関係が、ドラマに織り込まれた強固な縦糸になっています。江口洋介が、子役の田口翔大とともに、中心を強固な糸を通していたため、見終わった後も、良い鑑賞後感?が残ります。
主役級以外の俳優さんでは、新米刑事を演じる落合モトキがイイ感じです。(イイ役だってこともありますが)
同じく刑事役の手塚とおるも、強烈に嫌なヤツを見事に演じています。
モノ書き目線で見ると、原作を読んでいないので、原作なのかシナリオなのか分かりませんが、2層に積み上げられたモールス信号の複線や、ちょっとしたシーン、台詞まわしが見事です。
ただ、ヘリの飛行や原子炉について、理論的な話を理解できないと、作中の人物の行動が理解しきれない部分がありそうです。私は苦になりませんでしたが、科学的な背景をある程度知っていた方が楽しめると思います。
パンフレットを見ると「20年に渡って”映像化は絶対不可能”と言われ続けた」とありますが、確かにそうだろうと思います。
この手の作品は、大型の舞台装置が必要になりますが、この内容では、自衛隊、防衛産業であるヘリメーカー、作中の原子炉「新陽」の名称モデルと思われる「常陽」「もんじゅ」を運用する日本原子力研究開発機構や「新陽」を運用している炉燃のモデルと思われる日本原燃など……どう考えても、どこも協力しそうにありませんし、実際協力していないようです。
自衛隊は、近年映像作品についてはかなり協力姿勢を見せていますが、原発のこともあってか、協力しなかったようです。
ヘリメーカーも、川重、富士重とも協力しなかったのか、エンドロールを見ると協力したのはエアバスでした。エアバスは、自衛隊にもTH-135等を納入していますが、防衛省の顔色伺いよりも、日本での知名度向上の方が効果があると思ったのかも知れません。
結果、CGが多用されており、CGによって映像化可能になった作品と言えそうです。
また、映画、ドラマ等で自衛隊が出ることが多くなり、衣装などの小道具が揃えられるようになったという点もありそうです。
正直言って、日本映画は、この手の映画が苦手という印象がありましたが、「天空の蜂」は、この印象を打ち破ってくれました。
いい映画です。見て損はありません。
今後も、この手の日本映画が増えてくれるといいなと思います。
天空の蜂公式サイト
9月12日公開です。
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原作は好きだったのですが、福島の事故があって映画化は完全に無いだろうと思ってました。
反原発派が騒ぎそうですし。
投稿: ルフトバッフェ | 2015年8月24日 (月) 00時32分
ルフトバッフェ 様
むしろ、福島の事故があったからこそ、この「原発テロで人が呼べる」という判断がされたのかもしれません。
投稿: 数多久遠 | 2015年8月28日 (金) 23時59分