日本の安全保障法制を大変革する歴史的な安保法制が、衆院を通過しました。
しかし、衆院は通過したものの、首相自身が、国民の理解が深まるように丁寧な説明に力を入れたいと語ったように、国民の理解は必ずしも得られていません。
実は、ここで言う「理解が得られていない」には、2種類あります。
「支持されていない」と「(文字通り)理解されていない」です。
「支持されていない」は、ここでは問題にしません。
「理解されていない」理由を、ちょっとばかり考えて見ます。
もちろん、その理由には、いくつもありますが、影響が大きいのは2つだと思います。
① 内容が多すぎて、考える気にさえならない
② 政権サイドの(説明)戦略ミス
まず、①ですが、改正される法が10本、新規制定が1本となっています。
しかも、それらは密接に関わっており、もともと安全保障法制に興味を持っていた人でもなければ、相互の関係を含めて、非常に分かり難い内容です。
そして、それらは、今まで現実には生起していない事象を取り扱うモノであるため、非常にイメージし難いものです。
結果、ほとんどの人にとっては「何だか良く分からん」状態になっているように思われます。
その結果、「何だか良く分からん」モノを、強引に通そうとしている印象を与え「何だか信用ならん」という世論になっているのではないでしょうか。
もう一方の②、政権サイドの(説明)戦略ミスは、この安全保障法制のミソが、集団的自衛権でありながら、集団的自衛権への理解納得を得ることを避けたような説明を取っていたことです。
自民党のサイトに掲載されている安保法制関係資料の内、最も素人向けと思われる政策ビラ「平和安全法制の整備」には、集団的自衛権について、次のように説明されています。
集団的自衛権の行使により、何ができるかとの問いに対して、2つのケースを例示しているのですが、どちらも、国民に疑念を与えかねない例です。
前半のアメリカの輸送艦を守るケースは、艦船はアメリカ艦であっても、日本政府の行動は、日本国民を避難させるために運航している船を守ること、つまりは日本人を守るための行動です。
日本人を守るための行動が、集団的自衛権でなければできないというのは、世間一般の”感覚”からしたら、理解困難です。
ここで重要なのは、”感覚”です。なぜなら、良く理解できない人に対する説明なのですから、”感覚”的に理解できなければならないのです。
それを、ある程度は意識したからこその例示なのですが、例が良くありません。
後半の、機雷除去も、同様によろしくありません。
野党はおろか、内閣法制局長官にまで、日本にとっての脅威になるのだから、個別的自衛権の行使によって実施可能と言われてしまっています。
機雷は、無差別テロと同じように、不特定多数の艦船が被害を受ける可能性があります。多くの国民は、日本人にとっても直接的な脅威であると”感覚”的に考えるでしょう。
安倍首相は、集団的自衛権でなければ不可能だと言っていますが、”感覚”的に理解されないのですから、この例ではダメなのです。
日本の掃海能力は、装備の質・量だけでなく、技術の面においても、世界トップクラスではなく、間違いなくトップです。
この法案が成立した以後、ホルムズ海峡に機雷が撒かれるような事態になれば、当然期待を持たれることになります。
そのため、この例を出しておくことで、その時には、スムーズに動けるという思惑があるのでしょう。
法案成立前の今の時点では、伏せておくことにしますが、こうしたものしか出さない理由には、その他の理由も推測できます。
なので、自民党の気持ちは分かります。
しかし、それにしても、”感覚”的に、なんとなく分かるというのは非常に重要なのです。
この点で、やはり(説明)戦略ミスがあると思えてなりません。
何とか、参院を乗り切って欲しいものだと思います。
にほんブログ村
最近のコメント