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2015年5月

2015年5月31日 (日)

安保法制だけで終わらない防衛関係法制の不備

自衛隊OB同士で言い合うのは気が引けるのですが、問題の背景が透けて見えた事例だったので、取り上げてみます。

海自OBで、最近はテレビにも出演される軍事評論家の文谷数重氏が、対領侵について言及されています。
領空警備で先制攻撃って、なんかロックかも

記事が取り上げているツイートは、”自衛官のリスク”について発言しており、このツイートが安保法制論議に関連したモノだと分かります。
Photo
リンク

ツイートは、防衛関係法制について、問題が多いことの事例として、対領空侵犯(以下、”対領侵”と記述)措置での法不備を上げています。
これに対して、文谷氏が反論されています。

 要は、「領海外で相手が撃ってこないのに、射撃していいように法制を改めろ」と主張しているようにしか見えない。

 そもそも、スクランブル発進と領空侵犯は同義ではない。日本領空が侵犯されないための予防的措置である。予防措置で領空外で攻撃していいというような法制を作るのは、公海使用の自由、国際法態勢への挑戦でしかない。

 また、領空侵犯したからといって撃っていいわけでもない。国内的にも、国外敵も必要な段階を踏む必要がある。この手の意見には、国境を超えたから問答無用で攻撃して良い、撃ち落としてよいとする頭がある。だが、平時に緊張状態でもないのにそんなことはしない。そもそも、今までの領空侵犯例を見ても、落とさなければならないほどの必要性はない。


元ツイートも少々不正確ではあるのですが、この文谷氏の反論を見ると、対領侵の法不備について、ご存じないのだろうと思われます。

対領空侵犯措置は、国際法的には、警察権に基づく行為で、分かりやすく言えば、地上において、警察が行っている不法入国の取り締まりを、空において行っているものです。

地上では、警察の手に負えない場合は、治安出動により、自衛隊が警察の手助けをする仕組み(法律)が出来ています。

海においては、海上保安庁が取り締まりを行っており、手に負えない場合は、海上警備行動によって自衛隊が手助けする仕組み(法律)になっています。

そして、空においては、普段から自衛隊が行うことになっておりますが、必要な法律が欠落したままなのです。

陸上における治安出動は、完全に領域内の話なので、領域に入るかどうかのところで、同じような状況になる海上での警察権行使、特に主に海上自衛隊が実施する海上警備行動(以下、”海警行動”と記述)と比較してみましょう。
(ただし、国際法上、海上では無害通航権が認められていたり、逆に領域の外まで追跡権が認められているなど、海と空では、かなり違いがあります)

自衛隊法で、海警行動について記述した条文は2カ所あります。

一カ所は、行動について記述した第6章中の第82条です。

(海上における警備行動)
第八十二条  防衛大臣は、海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合には、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に海上において必要な行動をとることを命ずることができる。


もう一カ所は、権限について記述した第7章中の第93条です。

(海上における警備行動時の権限)
第九十三条  警察官職務執行法第七条 の規定は、第八十二条の規定により行動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。
2  海上保安庁法第十六条 、第十七条第一項及び第十八条の規定は、第八十二条の規定により行動を命ぜられた海上自衛隊の三等海曹以上の自衛官の職務の執行について準用する。
3  海上保安庁法第二十条第二項 の規定は、第八十二条の規定により行動を命ぜられた海上自衛隊の自衛官の職務の執行について準用する。この場合において、同法第二十条第二項 中「前項」とあるのは「第一項」と、「第十七条第一項」とあるのは「前項において準用する海上保安庁法第十七条第一項 」と、「海上保安官又は海上保安官補の職務」とあるのは「第八十二条の規定により行動を命ぜられた自衛隊の自衛官の職務」と、「海上保安庁長官」とあるのは「防衛大臣」と読み替えるものとする。
4  第八十九条第二項の規定は、第一項において準用する警察官職務執行法第七条 の規定により自衛官が武器を使用する場合及び前項において準用する海上保安庁法第二十条第二項 の規定により海上自衛隊の自衛官が武器を使用する場合について準用する。


では、次に対領侵について見てみましょう。
対領侵については、記述が1カ所しかありません。

行動について記述した第6章中の第84条です。

(領空侵犯に対する措置)
第八十四条  防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 (昭和二十七年法律第二百三十一号)その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる。


海警行動に関しては、その
行動を行うことを第6章で規定し、その際の権限を第7章で規定しています。
それに対して、対領侵は、対領侵措置を行う事
自体は、第6章で規定していながら、その際の権限が定められていないのです。

この
第6章の規定で行動根拠を与え第7章の規定で権限根拠を与えるという条文の構造は、海警行動だけでなく、防衛出動など、あらゆる行動でこの構造が取られています。

ですが、対領侵だけが違うのです。

これに対して、政府(防衛省)の見解は、国会答弁等において、この第84条で規定されている”必要な措置”に武器の使用も含まれるという解釈をしており、防衛白書にさえ、次のように記載されています。
(ただし、一時は、政府もこの84条に武器使用は含まれないという見解を取っていたこともあります)
Photo_2

この法不備の原因は、自衛隊法成立時の日ソ関係にあったようです。
http://gunjihougaku.la.coocan.jp/ryousin6html.html

問題は、7章の権限規定の不備だけではありません。

対領侵における武器使用は、「領空侵犯に対する措置に関する訓令」及び「領空侵犯に対する措置に関する達」において、細部が規定されているとされていますが、内容は公開されていません。
ですが、基本的に正当防衛及び緊急避難に該当する場合のみと言われています。

その一方で、海上警備行動における武器使用では、文谷氏の言う「領海外で相手が撃ってこないのに、射撃していいように法制を改めろ」がなされた状態になっています。
(ただし、”領海外”の部分は空では適用されない国際法の追跡権に基づくものなので、この部分を航空の世界では適用できません)

根拠は、自衛隊法93条の海警行動時の権限を定めた条文で準用が規定されている海上保安庁法の第20条第2項です。

第二十条  海上保安官及び海上保安官補の武器の使用については、警察官職務執行法 (昭和二十三年法律第百三十六号)第七条 の規定を準用する。
○2  前項において準用する警察官職務執行法第七条 の規定により武器を使用する場合のほか、第十七条第一項の規定に基づき船舶の進行の停止を繰り返し命じても乗組員等がこれに応ぜずなお海上保安官又は海上保安官補の職務の執行に対して抵抗し、又は逃亡しようとする場合において、海上保安庁長官が当該船舶の外観、航海の態様、乗組員等の異常な挙動その他周囲の事情及びこれらに関連する情報から合理的に判断して次の各号のすべてに該当する事態であると認めたときは、海上保安官又は海上保安官補は、当該船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由のあるときには、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。
一  当該船舶が、外国船舶(軍艦及び各国政府が所有し又は運航する船舶であつて非商業的目的のみに使用されるものを除く。)と思料される船舶であつて、かつ、海洋法に関する国際連合条約第十九条に定めるところによる無害通航でない航行を我が国の内水又は領海において現に行つていると認められること(当該航行に正当な理由がある場合を除く。)。
二  当該航行を放置すればこれが将来において繰り返し行われる蓋然性があると認められること。
三  当該航行が我が国の領域内において死刑又は無期若しくは長期三年以上の懲役若しくは禁錮に当たる凶悪な罪(以下「重大凶悪犯罪」という。)を犯すのに必要な準備のため行われているのではないかとの疑いを払拭することができないと認められること。
四  当該船舶の進行を停止させて立入検査をすることにより知り得べき情報に基づいて適確な措置を尽くすのでなければ将来における重大凶悪犯罪の発生を未然に防止することができないと認められること。


この規定により、ただ逃走を続けるだけで、攻撃をしてこない船舶に対して射撃を行えるようになっています。

この規定は、1999年に発生した能登半島沖不審船事件において、逃走を続ける不審船に対して、警告射撃しかできず、結果的に逃走を許してしまった事の反省として規定されました。

海保法の改正によって、この規定が加えられたのは、2001年11月でした。
そして、そのわずか1ヶ月後、九州南西海域工作船事件が発生します。

この時は、この規定に基づき、逃走を続けるだけの不審船に対して、海保の巡視船が機関砲による船体射撃を行っています。

海警行動時は、この規定が準用されるため、海上においては、相手から攻撃を受けなくても、つまり正当防衛や緊急避難に当たらなくても、人を殺傷しても全くおかしくない攻撃が可能となっています。

不審船事件は、この後パッタリとなりを潜めます。
この海保法の改正によって、北朝鮮が不審船での工作活動を諦めたのだと思われますが、そうした規定が不備のまま残されている空においては、不審な航空機が飛来しても、法の不備により国民が死ぬような事態になりかねません。

なお、ほぼ余談ですが、文谷氏は、次のようにも述べています。

 だいたい、日本のスクランブルで、相手に撃ち落とされるような危険性があるのだろうか? 対象はたいていは大型機であって、まず戦闘機を落とす力はない。しかも、翼下に兵装を吊っていない戦闘を意図していない状態での飛行がほとんどである。

日本周辺で良く見られる大型機ですと、ベアとバジャーですが、機体によっては、こんなのが付いてたりします。
ベア(wikipediaより)
800px_95_23__4

バジャー&H-6
(wikipediaより)
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その場合、当然近寄らないようにするのですが、基本的には速度を合せて飛ぶ(見かけ上止っている)
ため、もし撃ってくれば、非常に危険です。

自衛隊関係者でも、対領侵法制の不備をご存じない方がいらっしゃるようですが、この問題が、いつまでも解決されない理由の一端は、この点にあるのかもしれません。

空自だけが問題意識を持っても、ダメなんでしょう。

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2015年5月27日 (水)

ドローン規制に実効性はあるのか?

官邸ドローン事件を端緒として、ドローンを規制すべきなのか、規制は可能なのか(実効性はあるのか)等、様々な議論が出ています。

これらの問題に関して、一応専門家でありながら沈黙していたのは、単に書いている小説が山場を迎えているという全く関係のない理由でした。
が!
いろいろと言いたいことはある訳です。

議論の傾向を見ていると、規制の必要性については、ドローンの有効活用という観点からも必要と言う声が大勢を占めているようで、とりあえず安堵しています。
現状は、道路交通が右側通行なのか左側通行なのかも定まっていない状態ですから、規制が必要なのは当然です。
適切な規制がされなければ、空中衝突や落下の危険性が増大するでしょうから、今後の物流その他に多大な貢献を与えそうなドローンが有効活用されない結果に繋がります。
これは、重大な経済的損失です。

その一方で、規制などしても、官邸など重要施設の防護には役に立たないという主張もあります。

対ドローン兵器については、レーザー兵器がいいとか、適当な兵器はないとか言う主張が数多くあります。

評価要素としては、次の3点でしょう。
①発見(監視)・類別・識別が可能か?
②有効な効果を及ぼし得るか?
③付随的被害が許容しうるか?

①発見(監視)・類別・識別が可能か?
これは、言及している方が少ないですが、最も規制問題に絡む評価要素です。

ドローンの監視は、小型でRCSも小さいため、暗視能力もあるオプティカルサイトでないと難しいでしょう。
濃霧の際に監視能力が低下しますが、その時はドローンの飛行も困難になるので、そこそこの性能のオプティカルサイトで、発見は可能なはずです。

なお、レーダーは、官邸など都市部、特にオリンピック警備など常設でない場所では、周波数確保の点でも障害が多いため、パッシブセンサーであるオプティカルサイトが適切です。補完でサーチライトを使用しても、害は少ないですし。

類別は、ドローンなのか、無害な鳥なのか、公用、あるいは報道のヘリなのかという区別ですが、オプティカルサイトで自動化することは難しいですが、発見の際に警報を出して人間が補完すれば、かなり容易に実施できます。画像認識技術を使えば、鳥の場合は警報を出さない程度は、可能でしょう。

識別は、これからは、官が使用するドローンも多数飛行するでしょうから、その官使用ドローンとテロリスト・犯罪者が使用するドローンを区別することになります。
そのため、及び例え大した害意がなかったとしても、私的財産であるドローンを撃墜する根拠を与えるためにも、規制は必要です。

②有効な効果を及ぼし得るか?
これは、評価要素として考えるべきではありますが、事実上必要の薄い要素です。
小銃だろうが、機関砲だろうが、今後出てくるであろうレーザー兵器だろうが、破壊力は十分過ぎるからです。
なにせ、ドローンは大した飛行性能もない上に、脆弱だからです。

なお、特殊なものとしては、F-35が搭載すると言われる高出力電磁波等で、コントロールキルするという方法もありまが、対ドローンウエポンは、市街地で使用する可能性があることを考えると、③の評価要素的に100%×です。

③付随的被害が許容しうるか?
ドローン迎撃を考える場合、最も注目すべき評価要素がコレです。
官邸にせよ、今後行わざるを得ない、オリンピック警備でも、東京のど真ん中で使用する訳ですから、普通の機関銃や機関砲を撃つのは無理があります。

以前の記事で書いた、空中で破裂する機関砲弾は、効果範囲が他の施設に及ばないようにセットすれば、通常の状態であれば付随的被害を無くすことが可能です。
GUN派が息を吹き返すか?

これら調停時限信管を装備した機関砲弾は、ドローンを撃ち落とすには最適の効果を持ちますが、やはり採用は×です。
なぜなら、不発の発生は不可避だからです。
こんな中口径弾が不発になって、落ちてきたら、人体なら、上半身と下半身がお別れすることになるでしょう。

こうしたことから、適当な兵器はレーザーしかないという人もいます。

ですが、レーザーは開発中で、いずれは一般化するでしょうが、近々に相応の数を配備するためには、コストまで考えると非現実的です。

官邸だけならいいですが、官邸だけでなく、重要な官庁は数多くありますし、オリンピック警備には、どれだけ必要になるか……

そうすると、適当な兵器がないと思うかも知れませんが、そんなことはありません。
開発は必要ですが、大した開発コストも、配備コストもかけずに、付随的被害の発生を防止しながら、ドローンを打ち落とせる兵器は作れます。

それは、こんなモノを使えば良いのです。
Nepalrubberbullets
wikipedia「ゴム弾」ページより

弾丸形状は、発射する銃器の口径と使用する状況で考慮する射程で様々なモノが考えられますが、共通するのは、樹脂製の軽量の弾丸を使用すると言うことです。
具体的には、発射後に十字型に開くものや、散弾状のものが考えられます。
相応のダメージと、威力範囲を狭くできると言う点では、十字に開く形式の弾丸を、口径の大きい銃器及び機関砲で使用することがいいと思いますが、実用化するためには、試射をして決めれば良いことです。

こうした弾丸は、軽量、かつ空気抵抗が大きいため、空気抵抗による減速が著しく、射程が短くなります。ですが、対ドローンを考えた場合、そもそもそれほど射程は必要ありません。そして、例え大型のラジコン機であっても、かなり脆弱なため、これらの弾丸でも十分に効果を及ぼす、つまり撃墜することができます。

命中しなかった弾丸は、やがて速度を失って地上に落ちてきますが、軽量で空気抵抗が大きい形状ですから、ゴミにはなっても、地上への被害は無視できるレベルにできます。

ホビー用のBB弾のように生分解性プラスチックで作っておけば、環境問題にもなりません。

ある程度射程のある機関砲の場合、弾速が著しく遅くなるため、見越し角を変える必要からFCSのプログラムをいじる必要がありますが、その程度は国内企業で十分に対応可能です。

12.7mm機関銃などで使用する場合は、バラマキながら弾道を目視で修正すればいいので、弾丸の開発以外は開発要素も少なく、訓練を含め、費用は最小限で済みます。
夜間用には、化学的に発光するプラスチックがいいかも。

機関銃・砲の場合、砲身の加熱である程度射撃した以後は、装填した次弾が溶ける可能性はありますが、清掃が必要なだけで、実害はないでしょう。

これに限らず、対ドローン用として、もう開発してればいいのですが……
私が、日本工機とか銃砲弾メーカーの人間だったら、こんな儲け話は放ってはおかない!

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2015年5月23日 (土)

意味も意義も不明な「自衛官のリスク」論議

自衛隊は、究極のブラック組織だという主張があります。

確かにその通りです。
何せ、入隊時に生存権の放棄を宣言させるのですから、自由や平等どころの話ではないわけで、ブラックもブラック、真っ黒けです。

服務の宣誓
 私は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊重し、心身をきたえ、技能をみがき、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて専心職務の遂行にあたり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。


ですが、誰一人として、強制されて自衛官になっている訳ではありません。
(以前には、騙されて入ってくる人もいましたが……)

基本的人権を制限されてまで、自衛官が自衛官たる理由は、そうすることで、この社会を守ることができると信じるからです。

自衛官であろうとすることで、平和を希求する無辜の民が、もっと簡単な言い方をすれば、普通の国民が、日本に害意を抱く外国勢力等に、その幸福を阻害されないためです。

そのため、自らリスクを受け入れている存在が自衛官(他にもいろいろなリスクを自ら受け入れている職業はあります)である訳ですが、安保法制に関連して、奇妙な図式が発生しています。

安保法制を推進する与党は、自衛官のリスクは増大しないと言い、民主党等の野党は、自衛官のリスクが高まるから反対だと言います。

一番大切なのは、自衛官のリスクではなく、国民全体のリスクであるはずです。

この点からすれば、民主党岡田代表の意見は、(言葉の上では)まっとうです。

必要性、それに伴うリスク、双方を説明する責任は政府の側にある。説明したうえで、必要性が高いからリスクがあってもやらなければいけないときちんと説明をするのが(安保法制を)やろうとしている政府の責任

安全保障法制「自衛隊のリスクの問題を委員会質疑でも取り上げて行く」岡田代表

自衛官は、命令が妥当なものであれば、死ぬことを命じられても、それに従うことを受任した存在です。

日本から遠く離れた場所で、危険な任務をさせる必要が、本当にあるのかという議論は必要でしょう。
しかし、自衛官のリスクが高まるかどうかというのは、本質から外れているどころか、見当違いの議論です。

政府(と大多数の国民)は、日本から遠く離れた場所であっても、自衛官に危険な任務を遂行させないと、日本で平和に暮らしている国民が、近隣諸国から危害を加えられる危険性が高まっていると認識しています。
だからこその「安保法制」です。

「自衛官のリスク」議論は、この本質から目をそらすための欺瞞工作のように思えてなりません。

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2015年5月19日 (火)

陸上自衛隊は、どこで戦うのか?

今話題の「安保法制」では、自衛隊が日本から遠く離れた地域で戦闘することなどが考慮されています。
反対派は、自衛隊が日本の防衛と関係のない戦闘を行うための法案だとしていますが、防衛省自身が、国外での戦闘と、日本を直接防衛するための戦闘を、どの程度の比重で考えているかを占うための一つの小さな情報が、先日リリースされました。

陸上総隊司令部の朝霞駐屯地への新編について

防衛省は、2017年に新編予定の陸上総隊の司令部を、朝霞駐屯地に置くことを決めました。

この情報は、率直に言って、以外でした。
海空は、戦闘部隊の司令部を、在日米軍の司令部所在地と同じ場所に置いているにもかかわらず、陸だけが別の場所と決まったからです。

陸 自衛隊:
朝霞  在日米軍:座間
海 自衛隊:
横須賀 在日米軍:横須賀
空 自衛隊:
横田  在日米軍:横田

同一の場所にいるということは、ITが発達した現代でも、非常に重要なことです。
膝つき合わせての談判が、コミュニケーションを取る上で、最も効果的な方法であることは、誰の目にも明かです。

それ故、司令部を同一地に置かない陸上自衛隊であっても、ヤマサクラと呼ぶ日米協同演習を、全国の各方面隊毎、それぞれの場所で、膝をつき合わせて実施しています。

にもかかわらず、陸上自衛隊は、全国の方面隊を指揮下に置く陸上総隊の司令部を、座間ではなく朝霞に置くと言います。

もちろん、座間に場所が無かったという可能性はあります。
ですが、キャンプ座間に隣接する座間駐屯地には、中央即応集団司令部やその他の部隊が所在しており、なんならこれらの部隊を追い出して、陸上総隊司令部を置いても構わないはずです。

それに、キャンプ座間には、こんな広大で、周辺からクレームの多いゴルフ場まであります。
Camp_zama
wikipediaより
場所がない、なんてことはありえません。

にも関わらず、在日米軍の司令部と別の場所に陸上総隊を置く理由は何か?
前掲の防衛省資料には次のように書かれています。

朝霞駐屯地が、政経中枢との一体性を維持しながら全国の陸自部隊を指揮統制する上で最適な候補地であるとの結論を得た


つまり、陸上総隊では、在日米軍との連携よりも、政府中央との連携の方が重要だと言うことです。

海空自衛隊は、在日米軍との連携を重視するが故に、同一場所に司令部を置き、膝つき合わせての連携をしようとしています。
それは、主に中国海空軍との戦闘において、日米が連携して戦うことを重視しているからです。

しかし、防衛計画の大綱等においても、日本に対する大規模な着上陸作戦が行われる可能性は低いと見られています。
陸上自衛隊は、対中国等で日本を直接に防衛するための作戦において、在日米陸軍と協同するよりも、国外において、米軍以上に、現地国との調整をしなければならなくなってきているのです。
そのため、日本政府中央と密接な連携のし易い朝霞を選んだと言えそうです。

なお、対米軍でも、在日米軍よりも、現地の米軍部隊を指揮する司令部との調整が必要となります。

この事を見ても、陸上自衛隊は、もはや日本の国土の直接防衛よりも、安倍首相の推し進める積極的平和主義を実現するための組織と目されていると言えそうです。

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2015年5月11日 (月)

北朝鮮SLBM発射画像が合成である決定的理由

北朝鮮が潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験に成功したと伝えられましたが、ほどなく合成写真疑惑が報じられる結果になっています。
北朝鮮のミサイル写真は合成? 韓国メディア指摘」(産経150510)

既に各方面で指摘されているようですが、合成を疑っている理由は噴煙の量や、発射されているミサイルの角度です。

そのそも、このミサイル発射情報は、北朝鮮の労働新聞がリリースしたものです。
労働新聞に掲載された写真は5枚でした。
Nc1
Nc2
Nc3
Nc4
Nc5

確かに、噴煙は少ないように見受けられますし、ミサイルの角度も写真間で差異があります。

しかし、噴煙の量は、推進薬が不明なミサイルでそれを言っても確かとは言えません。
また、ミサイルの角度に至っては、当然複数の場所から観測・撮影していれば、異なって当然です。
水中発射のコールドロンチの場合、次の動画のように、圧縮空気等で水上に打ち出された後、ロケットに点火されるので、発射直後は不安定で、同一ポイントから撮影していても、角度は変わります。


私も、水面ではじかれ、横に広がる噴煙が足りない気がするものの、「コラだ!」と断言できるかと言うと……

しかし、「これはおかしくないか?」という写真が1枚あります。
Nc5_2

この写真の何がおかしいかと言うと、金正恩氏が視察している位置が、近すぎるのです。
コールドロンチの場合、次の動画のような事故が起こりえます。


この動画のように、射出後に、単にミサイルに点火しなかっただけならば、まだマシです。
ミサイルにも寝ぼけたやつが時折混じってまして、しばらくたってから点火するケースもあるのです。
その際、水面に落ちたミサイルが、たまたまこの視察船の方を向いていたなら……

ロシアは、コールドロンチが好きですが、アメリカは、そうした事故を防止する観点もあって、戦術的には有利なコールドロンチをあまり採用しません。
潜水艦発射の場合、水中からのホットロンチが危険なためコールドロンチを採用しますが、そのくらいでしょう。

実際、潜水艦でのコールドロンチの事故としては、中国の潜水艦発射弾道ミサイルJL-2の発射試験において、射出したミサイルが点火せずに落下し、落ちてきたミサイルによって発射した潜水艦が大破する事故も起きています。

北朝鮮の陸上でのミサイル試験では、それ以上に事故も起きています。
にも関わらず、初めての実射試験で、こんな近くから視察するなんて、狂気の沙汰です。
勇気を示したかった、実は替え玉である……という可能性もありますけど。

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