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2015年1月

2015年1月24日 (土)

IS人質問題に対する政府対応の危険性と解決策

ISの日本人人質2名の殺害予告に対する政府対応は危険です。
日本人2人の身代金支払い、明言避ける政府」(読売新聞150122)

政府は2億ドル(約236億円)の身代金の支払いの可能性について慎重な物言いに終始している。

 菅官房長官は22日の記者会見で、他国のケースを含めたイスラム国への身代金支払いの可否について、「人命最優先は国家にとって当然のことだ。同時にテロに屈することはない」と語り、明言を避けた。安倍首相も20日の事件発覚直後の記者会見でも、「人命確保に全力で取り組んでいく。いずれにせよ、国際社会は、決してテロに屈してはならない」と述べるにとどめた。


政府関係者の発言は、多分に国内政治を意識した発言で、日本国民の救助に全力を挙げるという姿勢を示すためでしょう。

しかし、IS関係者が日本政府の対応を注視していると見られるなか、このような政府の対応は、ISに誤ったメッセージを与えてしまう危険が危惧されます。

金銭を払うだけではなく、何らかの形で人質の命と引き替えに、取引を行うなら(例えば2億ドルの支援を止める等)、ISにとって、日本は、利益を引き出せるオイシイ相手ということになります。

そうなれば、各方面で指摘されているとおり、今後ISは、日本人を人質にすることで、金銭的あるいは政治的利益を得ようとするでしょう。

ISは、日本国内の支持者にサポートさせれば、テロリストを日本国内に送り込んむことも難しくないと思われます。
そうしたテロリストは、例えば、多数の乗客が乗ったフェリーをシージャックするような事も容易なはずです。

生還を望まないテロリストであれば、警察が強行手段を採った場合にも、自爆を含めて人質を殺してしまうような行動を採ってくる可能性も高く、もし事件が発生すれば、発生後の対処は極めて困難です。
前述のフェリーが、修学旅行生などを乗せていた日には、極めて過酷な決断を下さなければならない状況になるでしょう。

つまり、今回の2名を助けるために、ISと取引すれば、次の人質事件がどこで起こるか分かりませんが、次は4名、その次は8名となって行く可能性が高いと言うことです。

一度詐欺被害に合った人は、だましやすいとして、再度詐欺の標的にされるようなものです。

ですから、今回人質になった2名の自己責任なのかどうかは一切関係なく、今後の人質被害を防ぐためには、ISに利益を与えてはいけませんし、身代金の支払いの可能性について慎重な物言いをする事も不適切です。

また、政府関係者でなくとも、身代金を払ったり、2億ドルの支援を止めるように主張する方は、別の日本人を危険に晒していることを認識すべきでしょう。
国会議員でありながら、そのような行動をしている方に至っては、常軌を逸しているとしか思えません。
山本太郎氏、仰天のツイート「2億ドルの支援を中止して下さい」」(zakzak150122)

この他、田原総一朗氏などは、政府が身代金の支払いに応じないだろうとしていますが、その理由を、「欧米から非難される」からとしています。
イスラム国に拘束された後藤健二さんは日本政府に迷惑をかけたのか??田原総一朗氏に聞く

イスラム国は「2億ドルを支払え」と要求している。日本政府としては2億ドルを出すこと自体はそんなに大変ではないだろう。だが、身代金を支払えば、欧米から批判されるのは間違いない。

いまから約40年前、福田赳夫首相のとき、日本の過激派に日航機がハイジャックされる事件が起きた。過激派が多額の金と獄中にいる仲間の釈放を要求した。これに対して、福田首相は「人の命は地球より重い」と言って要求に応じたが、欧米から非難を浴びた。

中略

僕は、日本政府は金の支払いをしないのではないかと思う。そのことで日本国内から、なぜ人命を大事にしないのかと、少なからぬ批判が出る可能性があるが、それでも過去の教訓と現在の国際情勢から、過激派の要求には応じないだろうと考えている。


この人の場合は、身代金を支払うことが、更なるテロを招くことは承知しながら、欧米諸国が悪だという印象付けをしたいがためにこのような表現になっていると思われます。

ISと取引することはできません。
しかし、
今後の人質事件の発生を抑えつつ、2名の開放を交渉する手段が無いわけではありません。
政府も、これを狙っている可能性があります。

それは、ISにとって、日本が必ずしも敵ではなく、状況次第では共闘できる相手であることを理解してもらうことです。

「敵の敵は味方」という格言は、アラビア起源だと言われます。
その真偽は不明ですが、IS構成員にとっては受け入れやすい考え方だと思われます。

この点を踏まえた時、ISと連携を深めているウイグル族が、中国共産党と対立するため、その中国と国家レベルで対立する可能性が高い日本は、ISの味方でもあるわけです。

ISが支援するウイグル族の中国国内での活動と尖閣問題等による日中間の緊張を裏で連携させ、中国に2正面作戦を強要することは、双方にとって非常なメリットです。

この構図は、ISにウイグル族が多数流入している事と、それに反応するように、日本人が人質に取られている事に対して、中国が非難していることからも見て取ることができます。
東南ア経由でイスラム国に=ウイグル族の密出国警戒-中国」(時事通信150123)
中国政府、日本人人質問題で<イスラム国>を非難・・・「罪なき庶民に対する極端な行為。無事釈放を願う」
(サーチナ150123)

問題は、この方向で解決を図ろうとする場合に、ISの指揮・統治機構がまともに機能しておらず、日本の意図を理解してもらうことに困難がある可能性が高いことです。
また、このような極めて政治的な交渉を、人質の解放よりも、日本政府非難や自己の保身に利用しているように思われるジャーナリストや大学関係者任せる事は到底できません。

トルコやウイグル人組織に仲介を頼むことが適切だろうと思いますが、政府が実際にどういったルートで交渉を行っているかは情報が出てくるはずもありませんから、実際の動きを把握することは困難でしょう。

ですが、安倍首相を含めた政府関係者のISに対する非難トーンが、非常に低いモノであることから見ても、政府は、利益は渡さないものの、共闘する可能性をちらつかせて交渉を行っているのではないでしょうか。

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2015年1月17日 (土)

US-2を上回る中国の飛行艇開発を歓迎する

中国は、US-2を上回るとする大型飛行艇開発を進めています。
「世界最大の飛行艇」と中国メディア  「日本に圧力」と伝え続けて1年近く・・・新明和「US-2」を意識」(サーチナ141217)

 日本の新明和工業(本社・兵庫県宝塚市)が開発した飛行艇の「US-2」への対抗心を強く感じる。「中国はこの機(JL-600)によって、日本の飛行艇US-2を一気に抜いて、世界最大の飛行艇製造国になる」などと紹介した。


昨年の年頭には、年内にも初飛行という情報が流れていたのですが、今のところまだ飛行したという情報はありません。以前から2015年の初飛行予定と言われていましたので、恐らく今年中には飛ぶのでしょう。
もっとも、中国のことなので、うまく行かなかった試験については、情報公開しないでしょうから、既に実施して失敗している可能性も……


ニュース中で飛行しているのは、1986年から実戦配備されている水轟五型です。

さて、このJL-600飛行艇ですが、機体が大型で、ペイロードと航続距離でUS-2を上回る性能を目指しているそうです。

それを聞くと、日本としては歓迎できない話に思えるかもしれませんが、恐らく、この機体は、軍事的にも、民間転用したUS-2の海外セールス的にも、ライバルにはならないでしょう。
そうなれば、以前の記事「防衛情報を公開する意義」で書いたように、中国に非効率な軍事支出をさせる結果となるため、日本としては歓迎すべきものと言えます。

何故ライバルとならないかですが、それは情報が全く出てきていない離着水可能波高や離水距離・着水距離が、US-2に遠く及ばないであろうからです。

US-2は、3mを越える波高でも離着水可能ですが、その実現のためには、やっかいな技術であるBLC(境界層制御)等を搭載しています。
が、歴史の浅い中国の航空機開発陣が、同等のものを作ることは困難だと思われます。
となると、離着陸速度は、US-2よりも速く、離着水可能波高はUS-2以下となるでしょう。
その上、機体が大型のためUS-2以上に構造的に不利です。
たとえ、離着陸時の速度が同じであっても、離着水可能波高はUS-2以下となるでしょう。
結果的に、離着水可能波高は相当な性能差がでるでしょう。

そうなれば、この機体は、内陸の湖沼や渤海のような穏やかな海でしか使い物にならないのではないかと思われます。
実際、現行の水轟五型は、渤海と黄海でしか使われていません。
結果、軍事的には大した脅威になりません。

また、JL-600飛行艇は、US-2の民間転用型でも検討されている消防飛行艇型も検討されているようですが、なんとか内陸の大型湖沼を利用して、消防に使用することはできるでしょう。

そうなると、US-2のセールスに影響する可能性がでてくるワケですが、離着陸時の速度が速く、離水・着水距離が長く、大型の湖沼がないと運用できないと思われます。
結果、恐らく使用可能な水域を抱える国は少なく(アフリカの一部くらいか)US-2のセールスにも、大きな影響は出ないと思われます。

恐らく、今頃開発には相当に苦労しているのではないでしょうか。

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2015年1月10日 (土)

シャルリー・エブド、五十嵐一とサラディン

フランス風刺週刊紙シャルリー・エブドを襲ったテロ事件を聞いて、真っ先に思い出したのは、1991年に発生した悪魔の詩訳者殺人事件(wiki)です。

この事件は、もう20年以上も前の話なので、20代以下の方では知らない人の方が多いと思われます。
ですが、日本で発生したイスラム教テロリストによる犯行が強く疑われる事件であることは、思い起こされてしかるべきです。
殺害された五十嵐一助教授は、シャルリー・エブドの風刺と同様に、イスラム教を風刺したサルマン・ラシュディの小説『悪魔の詩』を日本語に翻訳していました。
そのため、イランのホメイニ師から死刑宣告を受けていたために発生した事件だと見られています。

この事件は、wikiにもあるとおり、殺害された五十嵐助教授が、殺害を予感していたかのようなメモを残していただけでなく、講義でも度々殺されるだろうと発言していたにも関わらず、シャルリー・エブドとは異なり、警察は護衛をしていませんでした。
その上、事件後も有力容疑者がいたにも関わらず政治的配慮で、まともな捜査がされなかったなど、当時の日本政府の弱腰外交がモロに透けて見える事件でした。

とまれ、ここで言いたいのは、シャルリー・エブドの事件が、日本には無関係の事件ではなく、過去にも同種の事件が起きており、今後、日本でも起こる可能性があるということです。

9.11後、自衛隊も含め、公安関係機関がイスラム教徒によるテロ警戒を行いましたが、恐らく、その後も継続して情報は収集していたでしょう。
今回のシャルリー・エブド事件を受けて、警察庁も警戒を強めているようです。

イスラム教徒に実害を与えたわけでもない週刊誌関係者や翻訳者を殺害するという、我々には理解不能な価値観・宗教観で生きている人間が、現代に生きている、それも精神異常ではなく、思想信条として生きていることに衝撃を受けます。

日本に居住する大部分のイスラム教徒は、そのような思考を持っているわけではないでしょうが、上記の悪魔の詩訳者殺人事件が単独犯であったのか怪しいですし、9.11後に公安がマークしなければならないような人物が日本国内に居たことも事実です。
この悪魔の詩訳者殺人事件に対しても、日本のイスラムコミュニティが否定も肯定もしていない点は、残念にも思います。
過去に発表した協会の見解(イラク問題、同時多発テロ事件について)(日本ムスリム教会HP)

もう、ここからは主観の問題だと思いますが、こうしたテロ、憎しみと怨恨の連鎖を止めるためには、イスラム社会にサラディンのような人物が現れてくれることではないかと思っています。

サラディンは、十字軍を迎え撃ったイスラム側の中心人物ですが、軍事的に優れていただけはなく、敵に対しても寛容の精神を持って臨んだことで有名です。
その寛容さは、彼の精神的な資質によるものかは、遠い昔の話ですから分かりません。

私は、資質よりもむしろ、戦いを終息させるための戦略的寛容だったのではないかと思いますが、それこそ今のイスラム世界の指導者に必要なものではないかと思います。

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2015年1月 6日 (火)

知事選、衆院選に見る沖縄県民の投票行動

11月16日に行われた沖縄知事選の結果、仲井眞前知事が、有権者の10%近くにも及ぶ約10万票の大差で敗れていたため、衆院選でも自民党議員の苦戦は必至と見られていました。

結果も、4つの小選挙区全てで、自民党議員は敗北し、比例復活しています。

沖縄メディアは、この結果を、普天間の辺野古移設に反対する民意の表われだとしています。
沖縄、野党が全勝 「辺野古反対」民意再び」(琉球新報20141215)

それに対して、櫻井よしこ氏は、沖縄の民意が成長できなかった結果だと評しています。
民意の成長が果たせなかった沖縄県知事選現職敗北の“失望”

選挙が民意を反映するための制度ですから、琉新の評価に間違いはなく、その結果が、大局観の乏しい感情的な投票行動であったのなら、櫻井氏の評価も間違いとは言えないでしょう。

しかし、果たして本当にそうだったのか?
衆院選の結果を、全国と比較して見た時、私には疑問に思えました。

12月14日に投票が行われた第47回衆院選は、国政レベルでは、大した争点もなく、最大野党である民主党に対して国民が懲りていたため、投票率は戦後最低だった前回の59.32%を大きく下回り、52.66%にしかなりませんでした。

それに対して、沖縄だけは、普天間移設問題という大きな争点があり、選挙前に、知事選の勢いを駆り、沖縄県民が大きな不満をぶつける選挙になるのではないかと予想していました。

しかし、確かに移設反対を唱える候補が勝利したものの、沖縄でも投票率は過去最低の52.36%でした。
衆院選:沖縄県内投票率 過去最低52.36%」(沖縄タイムス20141215)

この投票率に対して、上記リンク記事は次のように評しています。

 過去最低の投票率は、有権者から安倍晋三首相の「大義なき自己都合解散」と批判された今選挙の争点が不明瞭で、投票行動に結びつきにくかったことが影響したとみられる。

 また、県内では知事選のほか、市長選や統一地方選など選挙の当たり年となり、有権者に選挙疲れが出たとの見方もある。


「沖縄の総意」を政府に突き付けるための選挙だと息巻いていた沖縄メディアとしては、こう書かなければならなかったのでしょう。

普天間移設が争点となった選挙は何度もありますが、仲井眞前知事がゴーサインを出し、それをひっくり返しかねない翁長新知事が就任した直後の国政選挙として、今回の選挙は非常に大切な選挙でした。
普天間の辺野古への移設拒否が県民の総意であるなら、死票が多くなる小選挙区で単に勝利するだけでなく、大勝を示したかったはずです。

しかし、結果を見ると、歴史的に左派が強い2区、辺野古を抱える3区は、移転反対派が有権者数の10%程度上回ったものの、宮古・石垣などの八重山と本島南部の4区は、辛うじて反対派が勝利した形ですし、那覇の1区に至っては、最終的には賛成に回るだろう維新の下地氏の票を、自民の国場氏と共に容認派にカウントすれば、容認派の方が有権者数の10%程度多かった結果となっています。

つまり、得票数で考えれば、結構接戦と言える状況でしたし、投票率が低く、投票をしなかった人は、単に無関心だった可能性もありますが、恐らく複雑な心境だったのでしょう。

知事選に立ち返っても、仲井眞氏は翁長氏に10万票の大差を付けられましたが、ここにも出ていた下地氏が7万票あまりを得ており、仲井眞氏+下地氏(容認)vs翁長氏+喜納氏(反対)では、それほど大きな差はありませんでした。
しかも、投票率も64%あまりで、決して高くありません。

つまり、キャスティングボートを握る悩んでいる層が、「投票しない」という投票行動を選んだ結果が、知事選・衆院選の結果です。

政府・与党は、この点を読んでいます。

そのため、早速、沖縄振興予算の減額というムチを振るう構えです。
沖縄振興予算、概算要求から減額 政府方針」(沖縄タイムス141226)

この他にも、アメとムチを使い分け、上記の悩んでいる層にアピールしてゆくつもりなのでしょう。
今後の沖縄世論に注目です。

なお、余談ですが、政府のこの動きに対して、沖縄タイムスは、こんなセンセーショナルな紙面を作っています。
(政府一転 沖縄を冷遇)
Photo

沖縄を冷遇と書き、沖縄差別を色濃く出そうとしていますが、特段の厚遇から、相当の厚遇に落としただけです。

沖縄同様に、北海道開発庁があった北海道などは、次のリンクのような状態ですし、北海道・沖縄に限らず、今は地方は非常に苦しい状態です。
「燃えるゴミ」が燃やせない町・夕張に、暗い日本の未来をみた

歴史的経緯はあるにせよ、このような書き方を止めないと、冷たくなりつつある本土の沖縄への視線が、更に悪化するような気がします。
昔と違い、沖タイ、琉新を目にする本土民の数は、2ケタも3ケタも違います。

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