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2014年12月20日 (土)

ルーブル危機に対処するプーチンの軍事的オプション

ルーブル危機が、プーチン政権にとって致命的なものになりかねない状況のようです。
焦点:ルーブル危機、「プーチン帝国」崩壊への序曲か」(ロイター20141217)

同じような記事は、あちこちに山程あります。
なので、全部をチェックした訳ではありませんが、私が見た限りでは、全て経済記事です。

が、ウクライナ危機に端を発したとも言われる今回のルーブル危機に、KGB出身のプーチン大統領が、経済的なオプションしか考慮していないということはないでしょう。

ルーブル危機は、経済的にはいろいろな要素が絡んでいますが、最も大きな要素は原油価格の下落です。
逆に考えれば、原油価格の上昇は、ルーブル危機を改善する効果があります。

では、どうすれば原油価格が上昇するのか?

需要を増やすか、供給を絞るかになる訳ですが、一般的に軍事的オプションで需給に影響を与えやすいのは、供給を絞る方です。

具体的には、紛争を起こして原油の供給不安を起こさせれば良いということです。

しかし、実際問題として考えると、事はそう簡単ではありません。

10年前なら、もう既に行動を起こしているかもしれませんが、ウクライナ危機でもそうであったとおり、世界中にモバイル機器とインターネットが広がった結果、世界中に監視カメラが、それも動き回る監視カメラが設置されたようなものです。

このような環境で、間接にせよ、秘密工作を行って紛争を発生させ、原油の供給不安を起こさせれば、ウクライナ危機に対する以上の制裁が行われることは間違いなく、ルーブル危機は、かえって悪化しかねません。
そして、それ以上に、ロシア軍による直接の軍事行動などは愚の骨頂です。

つまり、プーチン大統領が、軍事的オプションをもってルーブル危機を脱しようとするなら、絶対にバレない方法をとるしかないということになります。

また、需要を増やす方法も、ないこともありません。
他の石油・ガス以外のエネルギーを絞れば、自ずと石油・ガスの需要は高まります。

と言う訳で、この手の話を描く作家の一人として、実行可能性の大小はおいておくとして、ルーブル危機を脱するために、効果的なシナリオを考えてみました。

ネタ(プラン)としては、いくつも考えられますが、一つだけ例示してみます。

イランにあるブシェーフル原発で暴走事故を発生させることは、なかなか面白いシナリオです。

当然、事故は福島第1のような重篤な事故が望ましいです。
ブシェーフル原発で重篤な事故が発生したとすると、ホルムズ海峡を含む中東域の広範囲で経済活動が停滞し、原油の採掘、(精製)、輸送が滞ります。
Iran_nuclear_power_plants_map
ブシェーフル原発の位置(wikipediaより)

距離が近いクウェートやサウジの積み出し港は、もろに影響を受けますし、風向の影響で、東側の方が影響が出やすいため、UAEなども大きな影響を受けます。
福島の事故があって以降、日本から外国人が逃げ出したように、ホルムズ海峡にゆくこと自体を嫌がる船員も多くなるでしょう。
つまり、ペルシャ湾を経由する原油供給が、かなり細る結果になります。

また、福島の事故以降に起きた原発削減の動きが、日本だけに留まらなかったように、ブシェーブルでも事故が起きれば、この動きは尚更強まります。
結果、発電を火力に頼る比率が高まり、石油の需要が伸びます。

と、言う訳で、ブシェーフル原発の暴走事故は、原油価格を押し上げる効果はあるはずです。

問題は、可能なのか、それもロシアの仕業だとバレずに行う事が可能なのかです。

ブシェーフル原発の原子炉は、ロシアの国営原子力企業ロスアトムの協力により作られています。基幹システムは、事実上ロシア製でしょう。
となれば、ロシアはセキュリティホールの存在を知っているかもしれません。
もっと穿った見方をすれば、意図的にセキュリティホールを見逃している、あるいは残している可能性があります。
このセキュリティホールを使ってハッキングを行えば、システムを意図的に暴走させることもできるかもしれません。

また、システムがスタンドアローンだったとしても、弱点は承知しているはずで、アメリカとイスラエルが、同じイランのナタンズにあったウラン精製設備を、スタンドアローン用のサイバー攻撃によって、ダメージを与えたような方法を取りやすいはずです。

その上、イランの核施設は、ロシア以上にアメリカとイスラエルが厄介視していますから、ハッキングなどを西側国に送り込んだ工作員に行わせることで、犯人をアメリカやイスラエルだと、イメージ操作することができます。

と言う訳で、簡単な思考実験をしてみました。
他にもネタ(プラン)は、いくつも考えられます。

恐らく長期化するであろうルーブル危機は、プーチンの政権基盤を破壊する可能性が高い以上、プーチン大統領が、何らかの軍事的オプションを採る可能性は、少なくありません。

原油価格を上昇させるような焦臭い事件が起こったら、その背後にロシアの影が見えないか注視すべきです。
DIAやCIAは、もう動いているかもしれません。

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国際情勢」カテゴリの記事

コメント

おぉ~、、さすが、、元自衛官殿、敬服でございます。

国家が有事に備えることの一つとして、日々の国際情勢を鑑み幾つかのシナリオを
作り蓋然性に応じて、その優先度を決めることだと思っています。
今の防衛省に、このようなことを考え対応策を練る部署はあるのでしょうか?

エネルギーの安定供給や防衛上の視点から原子力関係者は一定以上必要であり、
「原発反対」とかを嘯く政治家は特亜の走狗としか思えません。
汚沢とか、民主党とかに、ここまでの支持者が居るのは特亜の洗脳としか思えず
憂欝にさせられます。

いやいや、単なるルーブル安だけではそうはならないでしょう。

何と言っても、ソ連から数えてルーブル危機は何度もありましたから、いい加減国民も慣れているでしょう。
ソ連崩壊時にはゴルバチョフ。ロシアになってからはエリツィンという経済音痴が続きましたからねぇ。

それよりは(北方領土を餌にして)日本にすり寄ってくる方の可能性の方が高いんじゃありませんか?

ロシアが攻撃するよりイスラエル等が攻撃する可能性の方が高いと思います。
しかし現時点では最大の問題はイスラム国でしょうから、まず無いのではないでしょうか。
確かにサイバー攻撃は有りですが、イランが公表するかは疑問ですね。

末田 様
シナリオを読み、対策を立てるという点では、”情報”と、防衛及び警備計画の作成をやっている、いわゆる”防衛”という部署がそれにあたります。

国家戦略規模の大きなものは、ほとんど省(内局)と各幕僚監部ですが。

みやとん 様
ルーブルが下落するという危機が、過去にもあったから、今回が大丈夫とは言い切れないと思います。

というのも、ロシアは、以前とは比べものにならないくらい西側との経済的結びつきが強くなっています。
ルーブルの下落率が同じだったとしても、ロシア経済に与える影響度は、以前より確実に大きくなりました。

北方領土については、日本としては、交渉を進めるチャンスかもしれません。

可能性が薄いがありそうな選択は、日本との電撃和解と石油の日本への輸出ですね。
米国主導で結ばれたポツダム宣言受諾による終戦では、クリル諸島の放棄がうたわれていました。
しかし、日露のローカルルールでは、北方四島は北海道の付属の島という認識でありました。
日本は北方領土は全部返還されなくていい。
ロシアは、米国の無知によるルール違反を問われなくていいと腹を決めれば、クリル諸島のローカルルールをきちんと米国に説明しなかった日本の過失を理由に択捉島を除いた三島位で話を妥結することも出来ない話ではないと思います。
放棄はしましたが、沖縄県等は審査の結果、侵略と関係無いとされ返されましたので、クリル諸島の帰属もそれを援用されたら、ロシアには嫌な話でもあります。(サハリンの支配権と交換して日本の物になったから)
そこら辺を言わないからまあ、どうだろう?
とすれば、三つはいけない話ではないかとも思います。
それさえなれば、石油を売り込む話も上手くいき、ルーブル危機も浅くなると思えば、ロシアも乗る気になるかもしれません。

仰るとおり、ルーブル危機は、北方領土問題の決着を促進する材料にはなると思います。

ですが、実際に結実するかは、今回のルーブル危機の原因が、原油安であるため、微妙な気がします。

日本へパイプラインを敷く話は頓挫したままですし、政治的理由などでの供給不安があるロシアから、高い費用をかけてパイプラインを引くことは、現在の原油安が続く限り、あまりメリットがないでしょう。

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