イスラム原理主義と民主主義が、尖閣危機を招く
風が吹けば桶屋が儲かるではないですが、イスラム原理主義と民主主義が、尖閣危機を招くという図式ができつつあります。
産経以外(というか、石平氏以外)は、報じていませんが、朝日新聞などの左派系メディアが金科玉条としている”文民統制”が、中国では怪しくなってきています。
中国の場合、軍組織が国軍ではなく、共産党という党の軍隊なので、そもそも文民統制という言葉を使うことが不適切であるという、技術的問題は無視して書きますが、本来は、中国共産党という文民による組織が、軍を指揮しています。
ところが、最近になって、軍人が中国共産党の意向に沿わない発言・活動をすることが多くなってきました。
「「掘削は続ける」政府方針まで宣言、習政権乗っ取る強硬派軍人」(産経新聞140626)
訪米中の房峰輝氏は、米軍関係者との共同記者会見でベトナムとの紛争に言及した。彼は「中国の管轄海域での掘削探査は完全に正当な行為だ」とした上で、「外からどんな妨害があっても、われわれは必ずや掘削作業を完成させる」と宣した。
ベトナムとの争いが始まって以来、中国側高官が内外に「掘削の継続」を宣言したのは初めてのことだが、宣言が中国外務省でもなければ掘削を実行している中国海洋石油総公司の管轄部門でもなく、解放軍の総参謀長から発せられたことは実に意外である。
「習近平氏もヒヤリ…目に余る中国軍の「外交権干犯」」(産経新聞141002)
習主席がインド入りした当日の17日、中国との国境に接するインド北西部ラダック地方で、約1千人の中国軍部隊が突如インド側に越境してきて、それから数日間、中国軍とインド軍とのにらみ合いが続いたという。
中略
アメリカ海軍大学校で開催中の国際シンポジウムに参加した中国海軍司令官の呉勝利司令官が香港フェニックステレビのインタビューに応じ、米中関係のあり方について「米中間では原則面での意見の相違があり、その解消はまず不可能だ」と語った。それは明らかに、習主席や中央指導部の示す対米関係の認識とは大きく異なっている。
軍人が、このような専横な態度を示せるようになってきた理由は明確ではありませんが、当然、軍と共産党の力関係において、共産党が軍を頼らざるを得ない構図が出来ていると思われます。
そして、それは恐らく、イスラム国を生んだイスラム原理主義と、香港でデモを起こさせている民主主義です。
香港のデモは、第2の天安門事件化する懸念があるとおり、現在のところ警察組織で対応できていますが、状況次第では、軍を投入して弾圧せざるを得ない可能性があります。
イスラム国は、ウイグル問題などで、中国が国内のイスラム教徒を弾圧していることから、中国を敵視しており、中国政府は、イスラム過激派の流入を懸念しています。
「「イスラム国」敵にまわした中国 懸命の親イスラム路線もウイグル弾圧で迫害国家に」(産経新聞140905)
「イスラム国」のリーダーは7月、中国をイスラムの敵だと名指しして非難したうえ、イスラムの「兄弟」たるウイグル人を解放するために新疆を占拠すると公言した。
中略
中国にとって深刻なのは、ただでさえ手を焼いているウイグル族の散発的反乱が今後、「イスラム国」のこの「宣戦布告」で勢いづき、中東・中央アジアからのイスラム過激派の支援や戦闘員の流入が急増しそうなことである。これではますます「中国対イスラムの戦争」という何としても避けたかった様相を呈してしまう。
「中国、有志国連合参加に前向き 対イスラム国、ウイグル族が戦闘員参加の可能性」(産経新聞140910)
中国側は最近、少数民族のウイグル族のイスラム教徒がイスラム国の外国人戦闘員として加わった可能性があると指摘している。
米高官は同紙に「中国は国内外でのテロへの懸念を強めている。米国の国益や価値観と一致するような方法による(中国参加の)機会がないか検討している」と述べた。
つまり、中国国内において、共産党による一党独裁体制を危うくしかねないのが、イスラムと民主主義となっており、それを抑えるためには、共産党が軍を頼らざるを得ない状況が生起しているといことです。
そのため、習近平を始め共産党中央は、勝手な言動を行う軍人を、抑えられなくなっていると思われます。
日本であれば、政府方針どころか、過去の歴史認識でも政府見解と異なれば首が飛びますが、中国では、発言は言うに及ばず、中印国境で軍を勝手に越境させても、軍司令官を首にできない状況です。
ここまでの状況になっていますから、尖閣に対する日米のコミットメントが低下すれば、中国軍は、いつ尖閣で事を起こしてもおかしくありません。
南シナ海で起きているASEAN諸国との紛争も、軍が、共産党中央の意向を無視して動いている可能性も否定できないでしょう。
軍事組織は暴走するという信念に基づき、自衛隊の文民統制には、過剰なまでの反応を見せるマスコミが、こうした状況にも、ほとんど沈黙しているのは、どういう訳なのか、不思議でなりません。
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今日、中共影響下の鳳凰ウェブに「米国防総省、領土紛争の際には日本を防衛すると明言」という記事が(いまさらですが)大きく載ってましたが、アメリカが事態を見て牽制したのでしょうか。中共文民指導部と軍の間に隙間風が吹いているとして、習近平が新疆と香港のトラブルから国民の目を逸らしたいと考えて軍に「尖閣で日本にちょっかいを出してくれ」と頼んだ場合、軍の選択肢として(1)協力しないで文民指導部が苦境に陥るのを高みの見物(2)協力する(3)協力するふりをしてわざとやりすぎる、といった選択肢があると思いますが、今の状況だとやはり(3)でしょうか。これはなるほど危ないですね。当地香港では大変な騒ぎです。香港には人民解放軍の駐屯地が、目立つものだけでも3箇所はありますが、中共はいざという場合それを使うよりは高速道路を使って広東省からパラミリタリーの人民武装警察を大量に導入するのではないか、という話も聞きます。
投稿: 友引高校校長 | 2014年10月 5日 (日) 02時38分
更新ごくろうさまです。
支那軍が「文民統制」無視のかってな行為に走る理由は複雑なものだと思います。
それはともかく、軍の動きや軍幹部の妄言としか言えぬ嘯きすら報じようとしない
日本のカスゴミは特亜通信日本支社であり呆れ果てます。
支那軍の勝手な動きの理由を考えてみれば、
1.自軍区の勢力拡大の為の威示行為。
2.国内の矛盾(暴動)から国民の目を逸らすため他国との紛争を装う。
3.軍自体の利権確保のため南沙での油田掘削や国境での通行税稼ぎの横暴。
4.政界の三勢力(太子党、官僚党、財閥党)が他を牽制するため裏で軍を操る。
(キンペーの牽制として日中会談の阻止のため日本領海を侵犯させる等)
5.米国が兵器セールスとして裏で支那軍を利用。
(支那ステルス戦闘機(賤20?)とかの「脅威」に田母神閣下は米の情報戦を
強く疑うと呆れておられました)
これらが複雑に絡むのでしょうから、支那領海と国境付近の、何処で、何時、如何
ほどの武力衝突が起こるのか予測は困難と思われます。 日本が考えるべき殊は
尖閣周辺(南西諸島南部)の領海侵犯と同時に起こる確率が高い、日本国内での
シナ人ゲリラの武装蜂起なのか? と思います。
個人的な願望ですが、シナと武力衝突が起きるなら安倍総理の時に起きて欲しい、
と思っています。 今なら空と海が圧倒的に制空海優勢なのですから、瞬時にして
敵機と敵艦を撃滅しシナを括目させられるでしょう。
対ゲリラ・市街戦用の自走砲(特殊戦闘車)の配備も終わりつつあるとのこと。
戦後、今ほど強い首相と、その軍事的補佐(田母神?)が揃ったことは無かった
のではないでしょうか?
投稿: 末田 | 2014年10月 5日 (日) 20時31分
最大の理由は金に尽きると思います。
末田氏も述べている通り軍区の勢力拡大もある、と思います。
しかし、現在の『軍人が中国共産党の意向に沿わない発言・活動』はキンペーの『従わなければシャドウバンキングに金は出さない』に対する抗議・抵抗の方が理由としては大きいのではないでしょうか。
人民解放軍は自前(というか軍人の副業)で工場やホテルまでもっています。そして金貸しまでやっているのです。
当然のことですが、成長が減速し金まわりが悪くなってくると影響も強く受けます。
シャドウバンキングが潰れると一番困るのがそれらの軍人です。
キンペーは自分に従えば支援する。しかし、従わなければ潰すという姿勢を見せています。
私見ですが、これによって最悪のハードランディングは避けられると見ています。
またワイロを受け取っている高官に対しての逮捕等も自分に従うかどうかで決めているようですから、抵抗が起きるのはむしろ当然でしょう。
瀋陽軍区のように金まわりの良い(というか予算の割り当てが大きい)軍区なら従うしか方法はないえしょう。
尖閣にしても海軍(当然金喰い虫です)は金を握られていますから、威勢のいい言葉だけで実際の行動はともなわないでしょう。
しかし、逆に中央からの予算が少なかった地域に関してはキンペーへの抵抗が大きくなるものと考えられます。特に『毛沢東復古主義』の強い地域では反抗が大きくなると考えられます。
またウィグル等のイスラム教の地域は資源(石油・ガス等)も豊富です。地元の人間に利益を与えないでぼったくるだけですから、命がけの抵抗も起きようってものです。
しかし外敵に対してはたとえ「中国対イスラムの戦争」になっても耐えていけると考えています。
問題は軍を辞めた兵士達の年金(施設等の利用含む)だと思います。
それらの元兵士達への対応次第では内乱が生じかねないとさえ思っています。
現時点ではまだ数が少ないですが、加速度的に増えていきますから注意が必要だと思います。
共産党はかろうじて軍を抑えられるでしょう。
しかし、軍が軍自体及び元兵士達を抑えられるかどうかは極めて疑問です。
投稿: みやとん | 2014年10月 6日 (月) 03時17分
友引高校校長 様
アメリカは、軍をそう言う(実際には動かさず言葉だけで)使い方をよくしますね。
CIAやDIAは、香港の事態も注視していると思います。
末田 様
安倍総理の間は、衝突はおきないはずです。
起こるとしたら、民主党政権など、毅然とした対応ができない指導者がトップにいる時です。
みやとん 様
中国軍は、確かに営利活動をしていますが、それは事実上ただである労働力を使って営利活動をすれば、容易に利益を上げることができ、軍の地位を向上させることで、軍事力も増強できるからでしょう。
お金が最終目的ではないと思います。
投稿: 数多久遠 | 2014年10月 9日 (木) 23時56分