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2014年10月18日 (土)

H27概算要求-その3_リンク運用も実戦対応

このシリーズ記事の前回「SSMへのリンク搭載に見る陸自作戦構想の変化」において、リンク搭載が効果的だと書きました。

リンクの価値は高いモノがあります。
しかし、それに伴う困難は、ミリタリーマニアはもちろん、自衛官にも必ずしも認識されて来ませんでした。

27年度の概算要求では、本当に戦える自衛隊を作るために、やっとリンクを本当に使えるモノにするための施策が盛り込まれました。

・米軍委託教育による人材育成(0.8億円)
リンク機能を運用する隊員を育成するための人材育成費を計上


携帯電話が普及したせいなのか分かりませんが、リンクは、スイッチさえ入れれば必要なデータが入手できる機械だと思っている人が多いと思います。
ですが、実際のリンク運用は、大変な苦労の上に成り立っています。

リンクは、電波を用いたデータ電送ですから、確かに携帯・データ通信網に似ています。
しかし、軍用のリンクが、これらと大きく異なるのは、流動的な戦域においいて、流動的に加入してくる局間での通信をさせる点です。

分かりにくい表現になってしまいましたが、一言で言えば、携帯電話網であれば、高いビルの屋上などに、しっかりとした設備が設けられている基地局設備が、軍用リンクの場合は、動き回る上に、戦域に出たり入ったりする事が大きく異なります。

代表的なデータリンクであるリンク16の場合、F-15やパトリオットは、携帯電話の端末ですが、AWACSやイージス艦は、携帯電話で言えば、基地局に近い存在です。
端末が、網に出たり入ったりすることは、その端末がリンクに入れるかどうかだけなので、大した問題ではありませんが、基地局となると大事です。

リンク16の場合、UHF帯を使用していますから、見通し外通信はできません。
イージス艦は、長期に渡って戦場に留まれますが、地表上のユニットとは、ちょっと距離が離れただけで連接できなくなります。
AWACSの場合、1万m以上の高度を飛行していますから、広範囲のユニットと連接可能ですが、戦域に留まれる時間は限られます。
しかも、各局がそれぞれに通信できる相手局の数にも制限があります。

これは、単に無線がつながるというだけではなく、電送するメッセージの内容にも関係しています。例えば、戦闘機は、自機・友軍機のステータスと敵機の位置情報ぐらいで十分ですが、AWACSの場合は、指揮統制を行うために、もっと細かい情報をリンクでやり取りします。

リンク構成の担当者は、これらを勘案して、何日の何時何分からは、どのユニットを基地局にして、この範囲をカバーし、別のユニットが系に入ったら、元のユニットは系から出ても構わないというような見極めを行い、場合によっては部隊運用に注文を付けなければなりません。例えば、対空監視用ではなく、リンク連接のためにAWACSを滞空させるなどです。

それに、F-15とイージス艦が連接されるのですから、海空自間の調整が必要ですし、SSMもリンクを搭載すれば、陸自との調整も必要です。
また、日本周辺では、米軍も同じ企画のリンクを使用しますから、そちらとの調整も必要です。(米軍は、非常に勝手ですし……)

細部は分からなくても、大変そうだというのは、何となく分かるかと思います。
演習なら、この見極め調整を何日も前から行えますが、実戦ではこれらは極めて流動的になります。
演習対応でも激務な仕事です。
リンク運用に長けた人材を多数育成しておかないと、とても実戦はおぼつかないでしょう。

例として、リンク16を上げましたが、リンクには様々な種類があります。
統一すれば良いだろうと考える方が多いと思いますが、様々なリンクが併存している理由は、導入時期の問題もありますが、リンクの性格(性能とは違う)に依っているので、今後も複数のリンクが在り続けるでしょう。

一般的に言って、高度な情報をやり取りすることが可能なリンクは、運用が困難です。
逆に、やり取りする情報は少ないが、運用が容易で、系を構成することが難しい環境にあるユニットを連接することが可能なリンクもあります。
リンク16は、高度で困難な方です。

現代戦は、これらリンクを使いこなさなければ、勝てません。
以前、何かの記事で、これからは通電職域隊員の地位が上がるだろうと書きましたが、この米軍委託教育を受けた隊員が、将来の自衛隊を支えて行く人材になるはずです。

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コメント

数多先生、前エントリーでのご回答ありがとうございます。

通信に関する分野は秘匿されていることが多いだろうと思っているのと、リンクなんて携帯電話、Wi-Fi、衛星電話の延長程度にしか考えていなかったので、構築が難しいというのは初めて知りました。

ある意味、陸戦で有線引くより大変そうですね。

三自衛隊が連携する為にリンクは必須ですが、リンクを行う為にも三自衛隊の連携は必須なのですね。

現在空海共通の戦術データリンクとしてLINK16が用いられていますが、軍オタのハシクレ的にはその先の交戦データリンクがどうなるのか気になっちまいます。
海自で今後追加、或いは改修されるイージス艦はベースライン9に準ずるソフトを搭載するとされ、どうやらCECを持ちNIFC-CAに対応することになるそうです。このままいけば海自は交戦データリンクとしてCECを選び、NIFC-CAの下で米海軍とより緊密な連携を取ろうとすると思います。
しかし現在空自向けの装備として国産の戦闘機や兵装システム、AEW、SAMなどが研究されている事を考えれば、空自が海自に合わせて米海軍主体のCECを導入するのは難しそうに思えます。
交戦データリンクの導入は防戦一方の自衛隊にとって大変よい事だと思うのですが、空海別々というのでは残念ですし。かと言って空自が国産システムを諦めてCEC対応のアメリカ製システムを導入するのも何だかなあと思うのです。
F-2にもデータリンクが搭載され始めるばかりで、鬼が笑いそうな話ですけど。

「日米のイージス艦がBADGEシステムと繋がると(海自や米海軍のリンクから外れるから)能力を十分に発揮できなかった」みたいな話を見た事があるので
海上自衛隊と航空自衛隊は同じシステムにするべきだったのではないでしょうか?

しやもし 様
有線は体力的に大変だったりしますが、リンク構築は、頭脳・精神的に大変ですね。
つながらなかった時は大事ですから、プレッシャーもスゴイですし。

イダテング 様
空自も、主要リンクはlink16ですから、アメリカ製です。
ただし、空地間のリンクは、概算要求に入っていたものなど、国産リンクもあります。
アメリカと共通にすることは、善し悪しがあるので、使い分けることが重要だと思います。

艦艇に関しては、航空機と異なり、搭載余力が膨大ですから、別に複数のリンクを搭載しても構わないです。
ただし、複数のリンクを通じて、同じ情報が流れる場合、それがちゃんとマッチングされるように調整しないといけないので、システム導入の時にしっかり調整しないと、1機しかいない航跡が、2機として表示されたりしますから要注意ですね。

メリッサ 様
イージスがJADGE、BADGEと連接されても、それで米海軍とのリンクから外れなければならないなんて事はありません。
海自が、米海軍からもらった情報を空自には流さない、なんて方針を採る場合は、システム上で制御できるようにしないと、そういう事もあり得ますが・・・

誤解されているケースが多いですが、JADGEなどはリンクではなく、指揮統制システムです。
リンクは、その指揮統制システムや行動中のユニットにデータ伝送を可能にする、通信系となります。

一部で日本は使用できる周波数帯が狭すぎて無線でのリンク構築が困難で
電子戦にも弱すぎると聞いたことがありますが、そのへんは大丈夫なのでしょうか。

ぽち 様
周波数管理は、しっかり行われていますから、それが故にリンク構築が困難とは言えないと思います。

ただし、電子妨害に対する最も効果的で、最も基本的な手段は、周波数で逃げることですから、使える周波数が少ないと、どうしても電子戦には弱くなります。

数多様

返答有難うございます。
周波数の問題は麻生幾さんの小説とかでも出てて気になってました。
今後周波数割り当ての問題が解消に向かえばと願ってます。

名無し 様
郵政省時代から、総務省の自衛隊に対する電波の割り当ては、辛いですね。
兵器の運用にも支障がある状態ですから、韓国のSLAM-ERの話も笑えません。

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