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2014年9月23日 (火)

H27概算要求-その2_SSMへのリンク搭載に見る陸自作戦構想の変化

来年度の防衛省概算要求で目立っていた事の一つに、地味で分かりにくい内容ながら、陸海空3自衛隊の統合を進めるための要求が多かった事があります。
しかも、その内容を見て行くと、陸自の作戦構想の変化が見て取れるものが、多く要求されていました。

その中で、最も象徴的な要求が、12式・88式地対艦誘導弾に対するリンク機能導入です。

・陸上自衛隊へのリンク機能導入に係る調査・研究(0.4億円)
陸・海・空自衛隊のリアルタイムによる目標情報等の共有を実現するため、主に陸上自衛隊地対艦誘導弾システムへのリンク機能導入に係る調査・研究費を計上

Photo
我が国の防衛と予算-平成27年度概算要求の概要-より

この要求は、地対艦ミサイルの”実質的”射程を、大幅に延伸するものです。
12式・88式地対艦誘導弾の射程は200km弱と言われていますが、現状では、目標情報は捜索・標定レーダー装置によっています。

このレーダー装置を沿岸に置き、目標を捜索する訳ですが、石垣島の於茂登岳に置いたとしても、標高500mしかありませんので、目標艦の高さが30mとしても、100km先の目標しか発見できません。
西表島なら450mとして95km、与那国島なら200mとして70km、宮古島では100m程しかありませんから55km先までしか発見できず、当然攻撃もそこまでしかできません。
実際には、山頂付近までレーダー装置を持って行くことはできませんから、射程は更に短くなります。
Photo_2

リンクを搭載すれば、この射程が、ほぼスペック通りの数値になります。
実際の運用では、単に到達させるだけでなく、ミサイルを命中させるために工夫も必要になりますが、リンクを搭載すれば、海空自と同時弾着を狙う協力も可能になりますから、この意味でも意義があります。

これだけ効果のありそうなリンク導入が、”なぜ今まで導入どころか、検討さえされてこなかったのか”という理由にこそ、陸自の作戦構想の変化を見る事ができます。

この要求が、陸自作戦構想変化の一端である図式は、海及び空自は、以前から同じ戦場で戦う事を想定していながら、陸自だけが、同じ敵を想定していても、同じ戦場を想定していなかった事にあります。
ここで言う戦場は、具体的には、場所もさることながら、時間軸です。

端的に言えば、海空が敵の侵攻を洋上で撃破するつもりだったのに対して、陸自は、海空自が壊滅した後に、敵が行う着上陸侵攻を、沿岸及び内陸で迎え撃つ事が作戦構想だったと言うことです。

88式地対艦誘導弾のwikiには、次のような記述があります。

江畑謙介は、水平線の向こうを捜索できないレーダーの特性上、JTPS-P15に捜索標定を依存する陸上自衛隊の運用法では、十分な運用ができないとして批判。これからは捜索標定に無人航空機(UAV)などを活用すべきであると主張した。
中略
同ミサイルの運用は沿岸に接近した敵艦を内陸深くから発射地点を隠して攻撃するものであり、沖合の艦隊を攻撃するために長射程を有している訳ではない。


つまり、12式・88式地対艦誘導弾の長射程は、陸から遠く離れた目標を攻撃するためのモノではなく、捜索レーダー以外のシステムを内陸に隠すことで、ミサイルの生残性を高めるためのものでした。
射程だけでなく、威力も桁違いのため、狙う目標は大型艦ですが、地対艦ミサイルの陸自の運用構想は、対舟艇ミサイルと大差なかった訳です。

この事は、防衛省の資料にも書かれています。
Photo_3
防衛省HP「わが国防衛の現状と課題

このような運用構想だった地対艦ミサイルにリンクを搭載すると、彼我双方にとって存在意義が変わります。
150km
射程150kmとし、主要島嶼に配置した場合の射程

尖閣諸島周辺で紛争が発生した場合、中国海軍は尖閣周辺の海上優勢確保を狙うでしょうが、リンクなしであれば、地対艦ミサイルは、無視はできなくとも留意しておくだけで、特に対処せずに放置しても構いません。
しかし、リンクが装備されれば、海上優性確保のためには、必ず事前に潰しておかなければならない存在になります。

従来の陸自の作戦構想では、敵による着上陸作戦備えるため、着上陸部隊が接近するまで、戦力は温存されていなければなりませんでした。
そのため、沿岸から遠く離れた目標を攻撃するためのリンクは、不必要であるどころか、それを装備することで、早期に敵の攻撃目標とされるため、ある意味邪魔でさえあった訳です。

また、着上陸侵攻が行われる状況が生起するとしたら、それ以前に海・空自は、ほぼ壊滅していますから、リンクを装備したところで、目標情報を送ってくれる航空機も艦船もないハズでした。

こうした理由から、効果的であるはずでありながら、リンクは検討さえされてきませんでした。

この図式は、陸自の高射特科の使い方や空自の近接航空支援にも見られます。
参考過去記事
これが陸自の生きる道
陸自高射特科の全般防空使用は試金石

陸自は、島嶼戦を戦うため、従来の敵による着上力作戦が行われるまでは、戦力を温存するという作戦構想から、早期に攻撃目標とされても、海空自とともに統合作戦を戦う方向に作戦構想を変えて来ています。

概算要求には、この他にも多数の統合関係、陸自の作戦構想に関わる要求がありましたが、地対艦ミサイルネタだけで長くなってしまったので、それらについては、このシリーズの次回に回したいと思います。

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防衛予算」カテゴリの記事

コメント

これ、H26予算要求に既にあったような

日本は、15回と言われる海外からの侵攻も、水の砦で守り、追い払うことが出来た。特にモンゴルや刀伊は苦戦したがどうにか守り切った。
海を守る事が最重要である事は今も変わらない。海空の制海が基本ではあるが、都合良く艦艇、航空機がその場に居るかわからない。12/88対艦ミサイルの存在意義はここにある。与那国、石垣、宮古、沖縄、奄美、屋久、鹿児島、壹岐、対馬でSSMのバリアを築き、「いずも」艦隊でバシ-海峡を封鎖すれば、日の沈む国は、暴れる事は出来ないでしょう。もちろん、SSMの回りは、03中/11短/93近 SAMで3重に防御します。
ナポレオンもヒットラ-イギリスに攻め込む事はできませんでした。

あいし 様
忘れてましたが、確かにありました。
継続研究みたいですね。

名無し 様
そのとおりなんですが、陸自の中では、結構冷遇されてました。

空自海自が壊滅した後の最後の砦としての陸自から
空自海自が壊滅しないようにするための陸自へのトランスフォーム
といったところですかね

US-2ラブ 様
まさに、そう言う方向だと思います。

なので、空海の基地を陸自が警備するという話になっています。

数多様

12 & 88 SSMのリンク接続は、非常に価値のあることと思います。

>敵による着上力作戦が行われるまでは、戦力を温存するという作戦構想から、早期に攻撃目標とされても、海空自とともに統合作戦を戦う方向に作戦構想を変えて来ています。

これは重要でしょうね。冷戦時のソ連軍を相手にしたときに、「緒戦で空海は頑張るものの数日で壊滅した後は、敵の着上陸に対応して陸自が遅延作戦を実施して、米軍の来援を待つ」という発想は、それはそれで合っていたと思います。当時はネットワーク技術も低く、CECなど夢のまた夢だったので、これしかありませんでした。

しかし現代では、CECが実現可能であり、そうすれば地上のSSM部隊は、自前のレーダーを一台も持たずとも、遠方からのP-3/1やAWACS、衛星の情報をもとに、座標だけ打ち込んで、射撃すれば良い訳です。

湾岸戦争のスカッド狩りではありませんが、敵のレーダーを沈黙させることはなんとかできても、ランチャーをしらみつぶしに無力化するのは多くの労力を必要とします。近隣150-200km以内の島嶼のSSMランチャーの大半を無力化しないと、目標とする島に艦艇を接近させられないという状況が作れれば、敵に時間をかけさせることになります。時間は極めて重要です。

次は、(空自も陸自も)SAM部隊をCEC統合し、アクティブレーダーホーミングの長射程ミサイルを(少数で良いので)配備してはどうでしょう?南西諸島の森の中から、東シナ海上空の敵AWACSを狙撃するためです。射程400kmのSAM(例えばSM6)のランチャーを、パトリオットや中SAMのシステムに統合して、南西諸島に分散して配備しておき、CECでの運用を実現すれば、これはもう敵にとってなんとも嫌で仕方のない装備になるでしょう。400kmはAWACSの視程に等しいので、このSAMを駆逐しないと、敵AWACSは第1列島線に近づけず、そこより東側を我が方の空に出来るようになるかと。

しかしこうなるとSSMが陸自の所管である意味ってあるんでしょうか?
今までは着上陸対処の一環というか第一段として運用されるからこそ、陸自が持つ意味があった。
普特機と切り離され、海自空自とタッグを組んで超水平線上200キロ先の敵艦隊を狙うとなると、
海の戦いだから海自の所管にしろという意見も海自側から出てくるんじゃないですか。
もちろん陸自の所管のままでも構わないけど、そのあたり役所の縄張り争いでどうなるか知れたもんじゃない。
昔もナイキとホークを空と陸のどちらの所管にするかで揉めに揉めた結果、
長射程のナイキを空自、中射程のホークを陸自で痛み分けにした、よくわからん過去があるわけだし。

きらきら星さま

>しかしこうなるとSSMが陸自の所管である意味ってあるんでしょうか?

私は逆に考えています。人員削減で、空海とも充足率は91-92%、人員が足りません。100%にするには、7300人、97%にするにも4500人も不足。

ところが、陸自がSSM部隊を増強し、CEC接続し、かつランチャーを南西諸島に前方展開すると、海自の沿岸防衛(要はミサイル艇や艦艇搭載のSSM)と、海自、空自のASM部隊の労力が緩和されます。実際には現在これらは増強すべきなので、空海の内部でリソースをやりくりするのではなく、必要な増強分を陸自に任せる。CEC接続されているので、戦術的には空海地一体の部隊となる訳です。

SAMでも本来は同じ事が出来るはずで、友軍撃墜のリスクや、戦闘機とSAMのエリア分けを考えれば、これも当然CEC接続し、戦術的な指揮系統も統一すべきです。

これを担当する陸自ですが、

・陸自の充足率も93%ですが、私は野戦軍の削減はまだまだ可能という立場。(というか定員をもっと減らしてよいと考えている)
・陸士の集中的削減(2士だと充足率50%でしたっけ?)で、陸自の「高齢化」が激しいこと。幹部や曹ばかりの軍隊には、野戦軍よりも、SAMやSSMこそがふさわしい。
・SSM部隊が敵船を1隻沈めれば、兵員輸送船なら2000-3000人の戦死(0.5-1個旅団相当)、貨物/油送船なら1-2万tの物資のなので、(打撃力だけ)ですが1個SSM連隊は1個歩兵旅団にも匹敵する、と「言えなくもない」。(1個歩兵旅団が、敵2-3個旅団を3割損耗-->撤退に追い込む労力は、凄まじく大きいでしょうから。ただし、SSM連隊は打撃力以外は野戦への寄与能力ほぼゼロですが)

ということで、まあ、問題ないかと。

SAM部隊は別の話ですが、低性能かつ大人員の改良hawkを、PAC3MSE (または同じI/Fを持つ国産弾を使ったSAM)に更新すれば良いでしょう(03式SAMは優秀なようですが、高価な上に専用弾なので、すぐに弾丸切れになりそうで、飾りとしては優秀でも、航空機や巡航ミサイル相手にばんばん射撃する主戦力にはなり得ない、と考えています)。

また増強するSSM部隊を陸自に持たせる/維持させるもう一つの利点は、災害救助において、その方が活躍できるだろうからです。陸自の基本訓練は歩兵ですから、SSM/SAM部隊の隊員といえども、最低限の歩兵訓練を受けている(野外展開、野営など)。しかし、空海では異なるようです。

最後に身も蓋もない理由ですが、陸自が人員/予算を今後も維持したい(陸士は見捨てても、幹部と曹の地位だけは保持したい)と思う気持ちも(共感は出来ないが)理解は出来るので、人員を空海に移転する(膨大な政治的労力を要する)よりも、任務を移転する方が楽だろうからです(空海基地の警備なども同じ)。

ドナルド 様
リンクを利用した長射程SAMの構想は、かなり以前からあります。
しかし、それが各国で出てこないのは、目標となる航空機の速度が、艦船と比べて著しく速く、RCSも著しく小さく、ミサイルの長射程化と高機動維持の両立が困難であるため、作ったところで、対策が容易だからです。

SSMについてはリンク化が進むでしょうが、SAMはリンクは付属しても、射程はそれほど伸びないと思われます。

きらきら星 様
そう言った議論は、当然出てきます。
ですが、陸上の移動部隊について、管理面を考えた場合には、海は知見も乏しければ、バックアップ能力も貧弱です。
戦闘さえ統合で行えば良いので、陸が持っていた方が、効率的だろうと思います。

数多様

お返事ありがとうございます。

>目標となる航空機の速度が、艦船と比べて著しく速く、RCSも著しく小さく、ミサイルの長射程化と高機動維持の両立が困難であるため、作ったところで、対策が容易だからです。

米軍が、射程370 km のSM-6を(AEWからの)CECで射撃する戦術を実現しています(試射にも成功したハズ)。具体的にこれで、AWACSの狙撃をメインターゲットとします。

・射程370 kmは、「地上から高度 10 kmのAWACSを見る視程」に一致しています。南西諸島の場合では、SM6の狙撃を避けるには、敵AWACSは、列島から370km以上退避する必要があり、列島の東側の低空には、「中国のAWCSには見えない空域」が発生します。言い換えると、列島線より東方に、中国は制空権を維持できない、ということです。

・SM6はブースターは別にして、ダートの部分はSM-2の弾体にAMRAAMのレーダーをつけたものなので、機動力は同じです。最大射程では機動力は落ちるでしょうが、旅客機レベルのAWACS相手ならレーダー断面積も機動力も、「的として」問題ないのでは?

・さらに言えば、ブースターさえ強化すれば、射程と機動力の問題は解決します。最短射程がかなり長くなってしまうでしょうが、そこは海軍ならESSM、陸上ならPAC2があるので、役割分担ではないでしょうか。最後に残るのは、400kmより遠方から敵を検知する技術ですが、実はAWACS相手であれば、強力な電波を放射するターゲットですので、(途中まで)パッシブホーミングすれば良いかと。

もちろん、超遠距離から、敵の戦闘機や、巡航ミサイルを狙撃するような任務には、おっしゃる理由から、使えないであろうことは同意です。200 kmくらいの戦闘機や巡航ミサイルと、400kmまでのAWACSを落とせるミサイル。有効ではないのでしょうか?(というかSM-6が既に実現しているので、これを輸入すれば良いかと。AWACS狙撃専用と割り切れば、ミサイルを80発、ランチャーを40発分(4連装を10台とか?)も導入すれば、十分戦力になるかと。。。

88式の開発していた頃は、海空が壊滅する状況を想定していたのではなく、
海空が米軍との共同作戦を準備する間、時間を稼ぐことが目的だったと思います。
(実際に陸自は北海道での戦闘を想定しておりますし。)

なお、対空戦闘指揮統制システムというリンクシステム既に存在していますし、
現実に長射程の先進SAM研究試作に着手しておりますね。

なんと言うか、データリンクの発達史を無視してこのへんのことを批判する人が多いんだよね

ドナルド 様
370km飛翔できるミサイルを作れると言うことと、それが実運用で役に立つかというと、違いが出てきてしまいます。
AWACSレベルの大型機ですと、エンジンやAPUの出力が大きく、電力容量も大きいので、電子妨害能力を高くできます。
AMRAAMのシーカー程度でしたら、電子妨害で無力化が可能だろうと思えます。むしろ、週末誘導は、赤外線か画像の方がいいかもしれません。

また、ブースター付加による長射程化は、ミサイル内部のバッテリー作動時間延長策が必要など、実際には改造すべき部分が多数でてきます。
長射程化に伴う空力加熱の時間延長による熱影響を排除することなどは、対策の難しい部分です。
それに、大型のブースターを付けると、可搬性などに影響しますから、運用面でも困難が出ます。

射程を伸ばすだけでも、なかなか大変です。

あいし 様
北海道つまり、対ソ連でも、海空が目標である着上陸部隊を攻撃するのは、沿岸よりもかなり先です。
ですので、陸が海空のための時間稼ぎができることはなかったでしょう。

DADSなどの対空戦闘指揮統制システムは、リンク機能を利用したシステムですが、リンクではありません。
JADGEをリンクと呼ばないのと同じです。

長射程の先進SAMですが、前のコメントにも書いたとおり、以前から構想があるとおり、作ろうと思えば作れるのです。
ですが、それを作ることが効率的かというと問題があるわけで……私は頓挫するだろうと思っています。

シュピーゲル 様
コメントの主旨が良く分かりませんが、このシリーズ記事の続きで、リンク関係の記事も書こうと思っております。

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