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2014年8月24日 (日)

防衛情報を公開する意義

先日の記事「米海軍が注目した自衛隊無人潜水艦の正体」に対して、防衛省がこう言った情報を公開することは不適切ではないかというご意見を頂きました。

「秘密の新兵器にしておいた方が効果的だろう」という訳です。
世界初の実用的ステルス機として開発されたF-117などは、50機以上が配備されるまで、その存在が秘密にされていましたし、至極当然な考え方です。

しかし、日本の場合、予算取得を行う上で、完全に秘匿することが難しいという側面もありますが、新兵器開発の軍事情報を公開することにも、それなりの理由があります。

大雑把に分けると、理由は二つです。

一つは、抑止力として機能させるためです。
当然ながら、敵を抑止するためには、その兵器が敵にとって脅威だと認識されないといけません。
その性能が、ある程度敵に理解され、敵に恐怖を与えて初めて抑止力となりますから、こうした目的の場合、性能が類推できる程度のスペックや特徴、それらが推測可能な外観等が公開されます。

ただし、抑止目的の場合、今回のようにこれから開発する兵器では、用を成しません。
基本的に、実運用が近くなった、もしくは実戦配備された兵器です。

これから開発する兵器の場合、その情報を公開する軍事的な目的は、敵に対する対抗策の強要、あるいは非効率な軍拡競争への引きずり込みとも言えます。

今回の無人潜水艦であれば、中国は、騒音が酷いと言われる原潜はもとより、静粛性が高いと言われる一部のキロ級通常型潜水艦も含めて、静粛性を高める努力をしなければならなくなるでしょう。
もちろん、数の問題もありますが、この情報を得た事だけでも、無人潜水艦開発の成否に係わらず、こうした努力(つまりお金)が必要になります。そして、それは無人潜水艦を開発するコストよりも、恐らく高いモノになるでしょう。

また、同種の兵器を開発させることにもなりますが、我が国に技術的アドバンテージがある現状では、同じ性能のモノを開発するコストは、中国の方が高く付きます。
今回の様に、燃料電池による無人潜水艦なんて誰でも考えつくものですし、浮力調整による水中グライダーも、原理は単純過ぎるほど単純ですから、性能を問わなければ、作ろうと思えば誰でも作れる代物です。だからこそ、隠そうとしても無理がありますし、広範な技術力が高い方が良いモノを作るには有利であり、自分が流す血(お金)よりも多くの血(お金)を敵に流させることができます。

この効果を狙った情報公開の事例として、もっとも有名なモノはレーガン大統領によるSDI演説でしょう。
SDI演説自体は、情報公開というより決意表明に近いものでしたが、当時既にレーザー兵器等は研究が始まっており、SDI演説により、これらを加速することが決定されたため、当時のソ連は対策を講じざるを得なくなりました。

(ソ連ファンが多かった)日本の報道では、当時も、そんなモノを作っても、核兵器とその運搬手段である弾道ミサイル等を増やせばいいだけ、あるいは回避機動を取るなど対抗手段を講じる事は簡単だというようなディスが多くなされましたが、結局、ソ連はその軍拡に応じることができず、政治的に核軍縮に向かう結果となっただけでなく、SDIは、ソ連を崩壊させ、冷戦を終結させるためのトドメともなったとも言われます。

具体的には、エネルギアやブラン等の金のかかる宇宙開発に多額の費用をかけなければなりませんでしたし、情報が出てこなかったものの、弾道ミサイルの宇宙空間における軌道変更や赤外放射低減のための研究はせざるを得なくなったはずです。

とは言え、防衛省の情報公開は、こう言った戦略的発想よりも、なんとか予算を付けてもらおうと言う意図の方が大きいとは思いますが、それでも各国の軍関係者は、上記のような要素を勘案し、政治的・経済的要素も勘案して、(自らに都合の良い範囲で)情報を公開します。

と言う訳で、防衛情報を公開する意義は、それなりにあるのです。

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コメント

その記事ですが、どういう風の吹き回しか、隅田金属日誌でも取り上げていますね。

残念だが国産技術ではない
http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1157.html

(タイトルこそアレですが、数多先生やコメト欄の方を批判、攻撃する内容ではありません)

核兵器に例えると分かりやすいですよね。
核武装していても敵がそれを知らなければ抑止力は発生しませんから。
もちろん具体的な性能などの機密は守る必要はありましょうが、
平和国家の日本が兵器の存在自体を隠す意味は無いと思います。
そういう事をするのは相手を油断させ奇襲侵略を成功させたい国々だけでしょう。

更新ごくろうさまです。

「兵は詐なり」と孫子の昔から云われていて、 防衛を安価で効果的にするためには、
情報の公開・秘匿・虚偽の3つを、ない交ぜる必要があると思っています。
日本は昔から「情報戦争」が苦手で虚実をない交ぜることがヘタのようです。

大東亜戦争で戦艦ヤマトを進水時に公開していれば、米は46cm砲以上の戦艦を作るか
又は複数艦での「サッチ&ウエーブ戦法」に目途がつくまで開戦の決断ができず、ABCD
包囲の経済封鎖(実質的宣戦布告)は半年以上遅れたであろうと仄聞しています。

開戦がもう少し遅れていれば欧州戦の趨勢は解り大東亜戦争の帰趨も大きく変化していたかも
・・・・と考えさせられます。

過去の大戦の教訓-情報戦に弱いこと-が防衛省に生かされていることを願っています。 
防衛情報の公開、非公開を決める部署は背広組なのでしょうか? 

数多様

まず、原則として、民主国家の軍隊なのですから、情報は「出来る限り公開」が原則だと思います。日本の自衛隊の情報は、諸外国では普通に公開されているものが公開されておらず、その点は不満に感じています。一方で、軍事に関わる以上、秘密な情報はある訳で、そこの切り分けが難しいのでしょうね。

#英軍の場合は、国会議員が質問し、政府からの答弁という形で、色々な情報が出てきます。例えば、艦艇の平均年間運行経費とか、兵士の辞職率とか。

一方で今回のような開発の情報による駆け引きの点から言えば、当然ですが、「自分が公開したいこと」ではなく、相手が何を気にしているか、何を弱みに思っていて、何をはったりをかけているのかを、十分に分析することが大事です。従ってそうした情報収集をもっと進めるべきです。それこそ、スパイまがいのこともありますが、単純には、海外の兵器ショーで、中国の軍事企業や軍人が、「何を気にしているか」の流れを見てくることです。さらに中国軍首脳部の講演の内容を、一つ一つ分析してゆくことです。

その手の情報が、どうも少ないような気がします。

しやもし 様
その記事は見てました。
私も技本に対して批判的な記事を書くこともありますが……、はなからけなしてかからなくても……とは思いました。

名無しX 様
核抑止論の議論では、良く語られる話ですね。

末田 様
戦艦の1隻で、開戦の判断を覆せたとは思いませんが、脅威認識させることで、艦船の開発・生産には影響をあたえた可能性は高いと思います。

ドナルド 様
おっしゃるとおり、必要以上に秘匿されているものが多いですね。
その割に、脇も甘いのですが……

相手国の分析は、結構行われています。
問題は、分析した結果の配布が行われるか否かでして……
その点は……

数多先生
90年代の早稲田大学で6年間過ごしていれば、はなからけなす芸風になってしまうのも仕方がないと思います。
野村旗守「Zの研究」や講談社ノンフィクション賞を取った西岡研介「マングローブ」を読めば分かるかと。

しやもし 様
しかし、大学生ならともかく、ある程度人格の形成された大人が、大学の影響だけで変わる訳ではないと思います。

早稲田がからんでいるとしたら、自衛官が官費で大学院に行く場合、基本的に希望者を募って、行っているため、そもそも早稲田風なので早稲田に行ったという図式ではないでしょうか。

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