中国機の自衛隊機への威嚇接近は通常営業
中国機による自衛隊機への接近が、妙に話題になってます。
防衛省提供
「中国機が自衛隊機に異常接近 東シナ海、30~50メートルまで」(産経新聞14年5月25日)
「中国軍機、自衛隊機に異常接近…東シナ海で」(読売新聞14年5月25日)
「自衛隊機に中国機が異常接近 防空識別圏重なる区域で」(朝日新聞14年5月25日)
「中国機が自衛隊機に異常接近 防衛相「危険な行為」 」(日経新聞14年5月25日)
「中国軍戦闘機が自衛隊機に異常接近」(NHK14年5月25日)
ですが、基本的に、そんなに騒ぐほどのニュースではありません。
中国機は、過去には米海軍のEP-3にぶつけるという海南島事件も起こしていますから、至近距離まで接近されたOP-3とYS-11EBの乗員は緊張したでしょうが、自衛隊機は中露の演習を監視に行っていたのですから、中国によるリアクションは織り込み済みだったはずです。
4年前には、自衛隊が行っていた演習に対して、ロシア機が同じように監視フライトを行い、自衛隊機がリアクションで上がるという、今回とは逆の状況が発生しています。
過去記事「ロシア軍機が日米共同統合演習を偵察 「客が来た!」」
つまりは、お互い様な活動なので、注目すべき点は距離が近かったというだけです。
しかも、そこまで接近するということは、撃つつもりはなく、姿を見せて威嚇したかっただけです。
こう言った事例は、最近になって公表されるようになりましたが、空では自衛隊創設当時から続けられてきたことです。
しかし、自衛隊がそこまでの事を行っていると言うことが、国民に知られるのは良いことだと思います。
特に、対領侵措置でスクランブルする戦闘機パイロットの危険は、多くの人に認識されていましたが、今回接近されたOP-3やYS-11EBといった武装もなく速度も遅い機体であっても、相手が引き金を引きさえすれば命を失う危険な任務を行っているということが知られることは良い事ことですね。
ちなみに、報道に出ることは少ない画像・電波偵察機ですが、小説『黎明の笛』でも活躍しているので、チェックして頂けると有り難いです。
なお、各社の報道の内、NHKの報道では、小野寺防衛相が「日中の防衛当局間で、海上での安全確保について話し合うことは重要で、不測の事態を回避するためにも、海上連絡メカニズムの早期の運用開始を目指して、中国側に働きかけていく」とコメントした事を受け、「先月、海上自衛隊と中国海軍など太平洋地域の各国海軍は、相手の艦艇に射撃管制レーダーを照射するといった行為を避けるなどとした、不測の事態を回避するための行動基準を定め、合意していました」と報じ、偶発衝突防止の重要性をアピールしています。
が、皮肉?なことに、今回の事案は空の話なので、直接には関係しません。
空では偶発衝突防止策は不要なのか?という話があっても良いとは思いますが、海上に比べると空ではこうした話はあまり出てきません。
無線については国際緊急周波数があるので、昔から通話は可能だというような事情がありますが、その他にも”上がったら一人”、”恃むのは己のみ”というパイロットの気質が関係しているようにも思います。
こうした点では、空は未だにアナクロというか、侍の世界と言えるかもしれません。
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そりゃあ確かに通常かもしれませんが、少々近づき過ぎじゃないでしょうか?
錬度が高いから近づいてきたのか、自分でも解らず近づき過ぎたのか、それが問題だと思います。
曲技飛行じゃないのですから30メートルは近づき過ぎだと思うのですが・・・。
それに今回の事は中国が防空識別圏を言いだしてからの事ですから余計に気になります。
投稿: みやとん | 2014年5月26日 (月) 11時49分
おはようございます
2001年でしたっけ? 確か米の飛行機と接触だか衝突だかして落っこちてますよね(-.-)
無通告で背後から急接近ですから、国際上どんなモンやら…まぁ、彼の国の辞書には「法令遵守」の文字は存在しないのだから、何を言っても無意味。ついでに「懲りる」という文字も存在しないでやんす。
支那事変の戦線拡大も、彼等の協定違反が原因でやんすからねぇ。
紅衛兵の世代はアタマがイカレとりやすから、下手な自信をつけたモンだから、存外戦争をしたがってる? あんな狂人国家に囲まれとる我が国としては、何かガツンとした方法で黙らせるのが一番でやんす。で、問題はその「ガツン」の方法ですねぇ( ̄^ ̄)
投稿: 土方 | 2014年5月27日 (火) 07時29分
みやとん 様
フォーメーションで飛ぶ時はもっと近づくこともあるので、距離としては、それほど危険な状態ではなかったと思います。
不意に現れたら危険ですが、おそらくレーダーモニターしていたでしょうし。
土方 様
海南島事件で落ちたのは、中国機の方だけでした。
公海上での接近ですし、無線通告は、国際慣習法になっているとは言いがたいと思います。
危険回避のためには当然すべきですが。
日本もベトナム並みにガツンとやって欲しいですね。
投稿: 数多久遠 | 2014年5月27日 (火) 21時17分
フォーメイション時は確か同じ種類の機体ではなかったでしょうか。
プロペラ機と混じったりすると危険度は増すと思いますが・・。
投稿: みやとん | 2014年5月28日 (水) 12時35分
アメリカ政府の今回の事件に対する反応が、中国側を責めるでもなく「問題解決は両国の話し合いで(国務省サキ報道官)」という調子で、ずいぶんあっさりしてるなあと思っていたのですが、この記事で納得がいきました。空の世界では通常営業だからなのですね。大変勉強になりました。
投稿: 友引高校校長 | 2014年5月28日 (水) 16時38分
みやとん 様
もちろん、一般論では異なった機種で接近すれば、やりにくくはなります。
ですが、航空観閲式や写真撮影では、他機種のフォーメーションはよくやりますね。
友引高校校長 様
アメリカがこれを非難したら、アメリカが世界中でやっている航空活動が世界中で非難されます。
アメリカとしては、政治的には非難したくてもできなかったという面があると思います。
投稿: 数多久遠 | 2014年6月 1日 (日) 00時25分
まあ、アメリカとしたら、中国は戦闘機で機動性が上なので、ミスでカマ掘らないようにもう少し離れとけくらいしか中国に言う事は無いでしょうね。
投稿: Suica割 | 2014年6月 4日 (水) 20時07分
Suica割 様
数日前に、RC-135Uにロシア機が接近したという報道もありましたが、よくある話ですからね。
投稿: 数多久遠 | 2014年6月 7日 (土) 13時25分