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2014年4月26日 (土)

11式地対空ミサイルの問題

以前にも、関連する記事を書いているので、改めて触れないでいたのですが、隅田金属日誌の文谷氏が、「結局、高価すぎで揃えられない」を書いたので、簡単に書きます。

以下引用は、上記リンク先より。

 新しい短SAMなのだが、高すぎて揃えられないらしい。11式地対空ミサイルだが、いまのところ1セット50億円する。装備調達本部の希望的観測でも、20年で45セット買っても、平均20億程度は掛かるとしている。実際には、高すぎるので45セットも買えないだろう。


今年度の予算での調達は、次の通りで、陸自が1セット買うだけで、空自は調達できていません。
Ws000023

こういう事態になることは、予想ができました。
だからこそ、対処能力は劣るかもしれないが、価格が安く、地上目標への対処にも使用可能な、GUNにすべきというのが、GUN派の意見でした。

ですが、実際には、陸自の思惑に引きずられる形で、空自も基地防空火器への採用を前提に開発に協力していました。
関連過去記事「GUN派が息を吹き返すか?

 そもそも、陸上用短SAMとして高価すぎるように見える。11式の射撃用レーダは、やや高級めのアクティブ式フェーズド・アレイ・レーダであり、ミサイル本体は無駄に高級なアクティブ・レーダ・ホーミングである。


アクティブ式フェーズド・アレイ・レーダは、必要な出力が確保できさえすれば、システムを簡略化できるため、主に整備など後方上も有利ですし、価格も必ずしも高くなりません。
アクティブ・レーダ・ホーミングは、11式が開発の際に目指した巡航ミサイル対処を行う上で、同時他目標対処を行うための打ちっ放し性確保にために採用した誘導方式ですが、これが調達価格を押し上げた事は確かです。
巡航ミサイルという低RCS目標に対して、オンボードで送信系とそのための高出力電池、及び高度な処理装置を積まなければならないためです。

だが、使い方は81式と変わらない。基本は飛行場や橋や補給拠点といったポイントを守る程度のものに過ぎない。それなら、従前程度の性能を多少改善すれば済む話である。


この点は異論があります。
防護目標は変わりませんが、航空機搭載兵器がスタンドオフ化し、81式の射程内に、81式が対処可能な固定翼航空機自体が侵入してくる可能性がほとんど無くなっているからです。ただし、逆説的ですが短SAMが無い場合は、無誘導の通常爆弾でいいように攻撃されてしまうため、保有は必要です。
以前と異なり、艦載SAMと同様に、ミサイルの迎撃ができる必要があります。

 本来なら、81式のミサイルのみの改修でよかったのではないか? 短SAMのキモはミサイルであり、FCSではない。性能向上についても、ミサイルだけを改良更新すればよかったのではないだろうか。


この点は、傾聴すべき意見だと思います。
ですが、既に配備されている81式は、FCS全般も老朽化していましたから、更新で整備性が大幅に向上するアクティブ式フェーズド・アレイ・レーダ化したことは、必ずしも間違ってはいなかったと思います。

 そのミサイルもわざわざ国産開発する必要もない。もともと短SAMは、陸海問わず空中発射用のミサイルの転用である。今の空体空ミサイルをそのまま使ってもよい。型落ちした空自のサイドワインダーの-Lや90式誘導弾でもよいし、新型の4式誘導弾を使っても良い。別に海外からサイドワインダーの-Xを買っても良かっただろう。

この点にも異論があります。
対処すべき目標が、航空機から、巡航ミサイルや空対地ミサイルに移行しているため、上げられている様な短距離空対空ミサイルでは対処不可能です。(また、空対空ミサイルの地対空ミサイル化は、地上にあるため位置エネルギーが0の上、初速も0のため、推進薬や全体のバランスなど多くを見直さざるを得ない上、射程は大幅に減少します)
ですので、AMRAAMを地対空ミサイル化したNASAMSのように、元のミサイルがそれなりに高性能でないと、使えるモノになりません。

NASAMSを買っても良かったかもしれませんが、それであれば、過去記事で書いたとおり、短SAMだけでなく、VADS(陸自の場合87-AWやL-90)の後継も含めて、前掲過去記事に書いた通りGUNシステムにすべきだったというのが私の意見です。

防衛産業に対する配慮も必要ですが、11式短SAMの開発は、私も失敗だったと思っています。

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防衛政策」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しく読ませてもらっています。

一つ疑問に思ったのですが、昨今の時代の流れをみると、陸自も大規模着上陸の蓋然性を極めて低いものだと考え、ゲリコマや島嶼部防衛にその戦力をシフトしつつあるように感じます。
その中で数多氏も取り上げられているように戦車定数の削減などが行われているようですが、なぜこのタイミングで短SAMの更新が進められるのでしょうか。
短SAMが活躍できる状況はこの記事でも触れられていますが、その段階に行き着くまでには空自のAIやパトリオット、中SAMなどの迎撃と幾重にも防空網が張り巡らされているはずです。
もちろん冷戦時代なら大規模着上陸によって空自や海自がその機能を失い、陸自が自らの力のみで防空を行わなければならない状況に陥ったかもしれませんが、現在は自衛隊自身がその可能性を(ほぼ)否定しています。
もちろん島嶼部防衛などで必要な一定数を確保すべきだとは思いますが、もはや空自や海自の壊滅が夢物語のような時代で全師団・旅団に短SAMのような極地防空用兵器の配備が必要なのでしょうか。

素人考えですが、ぜひご教授ください。

「かば | 2014年4月27日」 様のご質問に深く肯きました。

「山猫旅団」などには必要でしょうが、全国的な配備は疑問を感じます。

東南アジアに「短SAM]供与のための布石なら解りますが・・・

かば 様
末田 俊紀 様
更新が検討された理由は、単純に81式が旧式化かつ陳腐化(本文中にも書いた航空攻撃の態様の変化による存在価値自体の変化)し、従来の81式をそのまま維持しても、意義が薄いからです。

この時点で、後継を廃止するというオプションから、私が主張するような廉価なGUNシステム化するオプションや文谷氏が主張するような廉価版短SAMにするオプション、そして最も豪華なオプションとして11式があった訳です。

ご指摘のような脅威認識の中、このオプションの中から、なぜ11式になったのかはハッキリとは分かりませんが、技術サイド及び防衛産業への配慮の影響を受けた事は間違いないと思います。
ただし、技術サイドと防衛産業を責めるのも間違いだと思います。

陸幕内の事は推測になりますが、一番の問題は、全般防空と個別防空の在り方を、きちんと検討せずに、単に運用サイドの後継が必要だという意見に押されてしまったのではないかと思っています。

数多久様

4月29日、下志津駐屯地にある陸自高射学校の「つつじ祭」で話題になっている11式地対空誘導弾が一般にも公開されました。

場内では、「巡航ミサイルへの対処能力がある」という説明を強調していました。

文谷さんは基本的にはアバウトに方針出すだけだから、
価格に対してもじゃあそれで良いんじゃ?ってなるだけな気がする。
まあでもファミリー化位はするべきだったんじゃないかねぇとは思いますね。
ブースター後付したりとか。

数多様

ご無沙汰しております。自衛隊の防空ミサイルですが、多層にすぎると私は感じています。

1:パトリオットPAC3 or MSE:対弾道弾+中射程(40 or 60 km)対空/対巡航M
2:パトリオットPAC2:長射程(100 km 超)対空/対巡航M
3:03式中SAM: "中"射程(100 km 超)対空/対巡航M
4:11式短SAM: 短射程(20 km ?)対空/対巡航M
5: MANPADS

このうち1,2は、戦闘機と並んで防空の主力であり、敵の飽和攻撃や、「射耗狙いの継続攻撃」が容易に想定されるため、米軍と共通弾薬として、いざとなれば緊急輸入できることが実戦を考えると極めて大事と思います(つまり純国産の弾薬を使ってはいけない装備)。

個人的に必要性が分からないのが、3です。「改良ホーク+81式」の時代なら、中射程SAMとしてのホークの意義は分かるのですが、パトリオットがPAC3やMSEの導入で(主目的は弾道弾対応)、中SAMを兼ねた射程などの特性(クアッドパックですし)を兼ね備えつつあり、11式短SAMが高性能/高価であるときに、03式中SAMは廃止できるのではないかと、考えます。

11式短SAMの弾体重量は90kg。フランスのMICA (112kg)や、イギリスのCAMM (99kg)と同等サイズです。この2種の対空ミサイルは、射程25km程の地(or艦)対空ミサイルとしても開発されており、個艦防空/旅団防空に使う狙いがあります。もちろん巡航ミサイルに対処できます。

実は中SAMだと思うと、11式の価格も不合理ではありません。短SAMとして開発された故に、中SAMとしては機能が不足の点はあるのでしょうが、同規模の弾体を使うCAMMやMICAをみる限り、少し改良すれば何とでもなるかと。高価な03式中SAMの調達をやめ(改良型もやめ)、半数はパトリオットの増強(ランチャーの増強など)で代替し、残る半数は11式「改」とでも言うべき、新たな中/短SAMで統合的に置き換える、というのはどうでしょう?(弾体が現有の11式と似て非なるものであってもOK)。

また、少し異なる視点ですが、11式「改」に加えて、フランスのMISTRALのように、(ちょっと高級な)MANPADSを、有機的な防空システムに仕立てれば、巡航ミサイル対応も可能にならないでしょうか?ここは私も自信はないですが、MISTRALはフランス海軍では(一応)対艦巡航ミサイル対策に使っているし、スティンガーや日本の携SAMも、一応、巡航ミサイルに対応できると謳っております。人手での照準では無理ですが、防空システムに取り込めば、シーカーの能力、弾体の加速力なども含めて、(少なくとも亜音速の)巡航ミサイルには対応できるようにならないかな、と。要は、93式近SAM「改」です。

長文失礼しました。。。

ブリンデン 様
巡航ミサイル対処能力は、ウリの部分ですし、それを理由として開発予算を付けていますから、当然そこをアピールするでしょうね。
GUNでも可能ですが……

Trident 様
上の方のレスでも書いた通り、11式の開発予算確保の名目は、巡航ミサイル対処でした。
巡航ミサイル対処が可能なミサイルでファミリー化するとなると、99式空対空誘導弾の転用になり、開発中止になったXRIM-4になってしまいますので、逆に11式以上に高額になったと思われます。

ドナルド 様
PAC-3でPAC-2弾が撃てますので、2は1に換装途中と見るべきだと思います。

中SAMの存在意義については、疑問は妥当だと思います。
ホークでしたら、米海兵隊がまだホークを改良して使っているように、パトリオットや中SAMを展開させられない狭小地などに展開させられるというメリットと性格の差があるのですが、中SAMは、パトリオットとまるかぶりな性格ですから……

地上発射のVLMICAは、射程12kmで、能力的には11式と同程度です。
XRIM-4と同様のミサイルと言えます。

MISTRALは存在するにせよ、MANPADSによる巡航ミサイル対処は、あまり現実的とは思えません。
近接信管を搭載しないと、命中確率が低いでしょうし、ノイズの多い陸上では、ロックオンする時点で難しすぎると思います。
実際、艦上でもCIWSの方が高い能力がある状況で、CIWSよりも安いから載せているだけではないでしょうか。

数多様

レスありがとうございます。1点だけ。

>地上発射のVLMICAは、射程12kmで、能力的には11式と同程度です。

はい。射程はそうなのですが、MICAのシーカーは、中/長射程SAMであるASTAR、果てはAAMミーティアにも使われている(アンテナの口径は変えていると理解)優れもののARHシーカーです。11式のシーカーはどうなのでしょう?

対空ミサイルの鍵は優れたARHシーカーであり、最もコストのかかるところでもあります。それをいろいろ改良しながら各種対空ミサイルファミリーを構築しているのが、世界の潮流だと思います。11式のシーカーヘッドがXRIM4相当=AAM4相当の優れものなら、(CAMMを見習って)、陸自は全面的に(ブースターを延長し110kg級に増強した)11式改をベースにした、中/短統合型SAMへの移行を、「本気で」検討すべきではないでしょうか?複数任務を共通システムで、(すくなくとも、共通弾体で)まかなえれば、生産ラインの多重化(空爆/ゲリコマ対策)や、生産コストの低減(平時備蓄の増大)などが実現し、初めて「国産の現実的な防空システム」の実現が、見えてくるかと。。。(現状では備蓄弾が少なく、緒戦でこれを打ち尽くしたら後は、ただの飾りになると理解)

PS XRIM-4の射程は、ESSMとの類似から、30kmは行くと理解しているのですが、間違いでしょうか?

ドナルド 様
AAM-4と11式では、10年以上の開きがあるとは言え、AAM-4では打ち下ろしでも使われるなど、誘導能力は高いモノが要求されているはずです。
また、経はAAM-4の方が一回り以上大きいですし、射程の開きがある=バッテリーの作動時間=バッテリーサイズに差異がある等の問題があり、11式を空対空を含めたファミリー化するのは相当の無理があると思います。

またXRIM-4の射程ですが、開発中止なったので、推測するしかありませんが、ESSMよりもサイズが小さいですし、MICAでも地上発射化で1/5程度になっている上、AAM-4の最大射程とされているものは対巡航ミサイル等の低機動目標時のものでしょうから、良くても20キロ程度ではないかと想像します。

たびたびすみません。

>11式を空対空を含めたファミリー化するのは相当の無理があると思います。

アメリカやフランスは、シーカーヘッドのサイズを、アプリケーションに応じて自由に変えているようです(例えばSM6のシーカーヘッドは、AMRAAMのそれを 7inchから13.5inchに大口径化したものと理解)。日本だけ、それが出来ない理由はないかと思います。バッテリーも大きめものをつければ良いだけです。誘導制御の基本技術、レーダー送受信装置のスペックが圧倒的に劣るなら、ほぼ開発し直しになってしまいますが、Hard Ware サイズだけの問題であれば、比較的容易に解決できると理解しています。

#なお、AAMまでファミリー化する必要はないと思います。F-35Aの関係でAMRAAMの採用は不可避ですから(単に、是非採用してほしいという私の希望にすぎませんが:笑)、これ以上弾種を増やすのはさけたい。

>XRIM-4...ESSMよりもサイズが小さい

XRIM4はAAM4と異なる形状で、ESSMと同サイズと理解しているのですが、、、。

記事を読ませていただきました。

対空ミサイルの種類が多いとのコメントがありますが、
確かに中SAM以下のサイズについては最もだと思いますが、
それより大きいサイズ、の超長射程SAMを導入すべきと考えます。

また、調達コストも、仕様構成品の共通化、
(一番カネのかかる)地上装置システムの統一等を図り、
低減させる必要もあると考えます。

文中にも"防衛産業への配慮"と記述されておりますが、
欧米のように、防衛産業の統合等も考える必要が最優先なのかもしれませんね。

ドナルド 様
一つの事例があるからという理由で、他でもそれが妥当だと考えるのは不適切だと思います。
それぞれ、いろいろな事情があってのことですから。

あいし 様
超長射程SAMにはセンサーの問題があります。
対艦ミサイルのように、前方に出ている航空機からのデータリンクで誘導できるようにでもしないと、高高度目標以外は、SAMとセットのレーダーでは水平線下になってしまい誘導できません。
航空機からデータリンクするくらいなら、航空機から発射した方が効率が良いという話しになってしまいます。

防衛産業の統合は、私も必要だと思います。

数多様

>一つの事例があるからという理由で、他でもそれが妥当だと考えるのは不適切だと思います。
>それぞれ、いろいろな事情があってのことですから。

ありがとうございます。先に記した通り、シーカーの発展的応用は、少なくとも2つの事例(AMRAAAMシーカーとMICA/ASTARシーカー)が確認できます。そもそも西欧諸国のアクティブシーカーは、あとPAC3しかない(イギリスのCAMMがどのシーカーを使うのか未確認)。ただし、MICA/ASTER用の4Aシーカーが、METEORに搭載されるにあたってどれだけ改造されるかによっては、新シーカーと考えるべきなのかもしれません。

一方で、個人的には、数多さんが中SAM任務への拡大に否定的であるという事実そのものから、11式のシーカーの性能の限界(要求性能で決まるはず)がある程度示されているのかなぁ、と、勝手に解釈しています。(笑)

ありがとうございました。

ドナルド 様
アクティブは、事例が少ないことからも、それだけ難しい技術だということです。
なのに、運用上アクティブにする必要性が薄い短射程SAMでアクティブにしたのは、メーカー・技術サイドにしっかりとした注文を出せなかった結果だろうと思っています。

ちなみに、PAC-3もパッシブです。

仰るとおり、11式の性能は、要求性能である程度分かりますが、問題の一つに、まともな要求を出せたか疑問というのもあります。
これだけ調達が絞られているのは、予算や陸自の役割の変質だけでなく、実射の成績が芳しくない可能性もあります。


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