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« 対領侵マニュアルは、有効な指針か、それとも害悪か? | トップページ | 「黎明の笛」発売から2週間 »

2014年3月21日 (金)

困難が伴う低速機対処(対領空侵犯措置)

前回の記事で、もう1本対領侵「マニュアル」関係の記事を書くと宣言しましたが、今回はそれです。

尖閣領空侵犯に「マニュアル」 空自着手、中国機念頭に強制着陸手順」(産経新聞14年1月29日)

意外に思うかもしれませんが、空自の戦闘機では、低速機への対処には困難が伴います。

 J10とともに領空に接近してきている中国情報収集機Y8は速度が遅い。空自のF15戦闘機が横並びでY8と長時間飛行することは難しく、多数のF15でY8を追い越しては後方に戻ることを繰り返すような誘導計画を作成。


Y-8は巡航速度で550km/hですが、尖閣上空を領空侵犯したY-12などは巡航速度でも300km/h以下です。
戦闘機の着陸速度は、250km/h程なので、これは着陸速度と大差ない速度です。
もしY-12が巡航速度以下でゆっくりと飛ぼうものなら、F-15が単純に速度を合せれば失速します。

無理しても横並びをするなら、いわゆるハイアルファと呼ばれる状態で飛行すれば飛べない事はありません。

冒頭にハイアルファパス、機首を上に上げてゆっくりと飛ぶ状態

しかし、これでは燃費が最悪で、長時間の追随は不可能ですし、この状態からは機敏な機動も不可能です。Y-8やY-12が機銃で撃ってくることでもあれば、落とされるのは空自機の方になりかねません。

そのため、マニュアルとして検討されているような、周辺で旋回を繰り返しつつ監視をする方法が適切となってきます。

対領侵の現場では、低速機対処が難しい事は以前から分かっていることで、私が現役自衛官だった当時も、冗談交じりに教育集団のT-3(当時、今ならT-7)を借りてきて使おうかなんて話をしていました。
T7
T-7(wikiより)

これは、冗談まじりではありましたが、結構本気でした。
後席搭乗員に機関銃を持たせ、射撃の必要があれば、キャノピーを明けて撃てば良いので、機体改造なしでも使えるななんて話をしていたのです。
ただし、曳光弾を使って警告するとなれば、50口径機関銃であるM2あたりを載せなくてはならず、とても手で持って射撃できるような代物ではないため、大がかりなマウントを作る必要がありますが、それにしても大した改造ではなく、部隊での工作で可能です。

当時は、必要性がそれほどなく、結果として「冗談交じり」で終わっているのですが、中国による低速機が多数接近してきている現在では、冗談抜きで検討すべき事項です。

これと同様の主張をする方は、他にもいらっしゃいます。
COIN機を中国UAV対策に。」(清谷信一公式ブログ)

ただし、この軍事評論家清谷氏の主張は、低速機対処にF-15では困難が伴うからではなく、燃料代や機体寿命の点でコスト面を考慮した主張です。

実際に、こうした低速機による領空侵犯に対し、低速飛行が可能な機体で行うとしたら、尖閣が那覇からかなり遠いため、T-7では航続距離と飛行可能時間の点で問題があります。(下地島や宮古・石垣が使えれば、T-7でもそれなりには使えますが)
そのための機体を空自が買うとしたら、清谷氏が主張するようなCOIN機を買うことになるでしょう。

しかし、そんな余計な金を使わずとも、やる方法はあります。
今は統合の時代、なにも対領侵だからと言って、空自にこだわる必要はありません。
陸自のLR-2、海自のP-3を使えば良いのです。
800pxlr2
LR-2(wikiより)
300pxkawasaki_p3c_orion_japan__navy
P-3(wikiより)

陸自や海自に対領侵をやらせるとなれば、規則類の整備だけでなく、訓練も必要になりますが、それさえも、簡単に済ませる方法もあります。
なにも、陸や海に全面的にやってもらう必要はなく、空自のパイロットが乗り込み、機体の操縦以外を彼等がやれば良いのです。
DCとの通信とパイロットへの指示に1人、警告射撃等を行うガンナーとして1人の計2名をLR-2やP-3に乗り込ませれば、簡単な訓練だけで対処を行なう事が可能になるでしょう。(クルーコーディネーションの訓練は、それなりに必要ですが)
LR-2もP-3も、機体サイズが大きく、M2を設置することも可能でしょうし、航続距離も十分です。
どちらも、那覇基地内にあり、必要な際に空自のパイロットが足で走ったとしても、数分もかからず機体に乗り込めます。

那覇から尖閣までが遠く、進出には時間がかかるので、初動はF-15で行い、途中からこれらの機体が引き継ぐ事になりますが、F-15だけで行うよりも、相手機に与えるプレッシャーは遥かに高くなります。

そのためのコストもほとんどかかりません。
マニュアルを作るだけではなく、対領侵措置への陸海自衛隊の投入も真面目に検討すべきだと思います。

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領域警備」カテゴリの記事

コメント

いやいや、いっそゼロ戦をつくって警戒させた方が(笑)

ま、半分は冗談ですが、国民(と海外)への宣伝費と考えればおつりもきますよ。

とはいえ、低速機への警戒は是非とも必要です。それも一刻も早い方が良いですね。

AC130ガンシップの出番ヽ( ̄▽ ̄)ノ

>陸自のLR-2、海自のP-3を使えば良いのです。

これも清谷氏のブログに書かれていますよね。

>洋上を長時間監視するのであればキングエア350型をベースにした「双発戦闘機」なんぞもいいでしょう。機首に12.7ミリ機銃を搭載するとかし、主翼下には4~6箇所ぐらいハードポイントをつけて、増槽やAAMでも搭載させれば宜しい。既存機の改造ですから割安です。
 キングエア350は陸自がLR-2として採用していますから、整備の面でも有利です。


http://kiyotani.at.webry.info/201312/article_9.html

みやとん 様
零戦ですか。
エンジンをどうするかですが、完全レプリカではなく、外観だけ似せて、内部は適当なものを流用するとかすれば、結構使えるかもしれませんね。

名無し① 様
機体はC-130でも、いいのですが、那覇にいない機体を持ってくると、結局コストになってしまいますね。
AC-130は私も好きですが。
なお、当ブログでは、ハンドルの使用をお願いしております。

名無し② 様
リンクを本文中にも書いているくらいなので、当然読んでます。
ですが、清谷氏の考えは、現有機の活用ではなく、特殊改造機を作るとのものですし、部隊運用は考慮せずに機体性能だけでのお話なので、私の主張とは大分異なりますね。
なお、当ブログでは、ハンドルの使用をお願いしております。

やはりP-3Cが良いでしょうね。海自の哨戒機は普段から件の海域にはオンステージしているハズです。P-3にはオプションで20mm機関砲を下部に装備できますし、またその気なれば旧式のサイドワインダーも装備できますので。

哨戒機の普段から行う任務を考えれば、チームとして活動するP-3の乗員の方が該当任務に適応できると考えます。P-3の戦術航法士と空自のパイロットを組ませれば良いでしょう。

300kmで飛ぶ飛行機に同じ低速機をスクランブルさせても領空侵犯を防げるか、侵入前に間に合うのか微妙な気がしますね
確かに哨戒中のP-3Cなどなら間に合うかも知れませんが
あと、レーダーで不審機の機体が何であるか分かるものでしょうか?
目視確認したらわざと低速で飛んでた戦闘機、なんてことになったら笑えません

海燕 様
P-3が20mmを積めるというのは初耳ですが、海自機も積めるのでしょうか?
もちろん、機体サイズを考えれば、改造すれのであれば積めて当然ではありますが。
それに、機体性能だけでなく、那覇常駐機数を考えても、P-3の方がより適切だろうとは思います。

クルーに関しては、海自の要員にそのままさせるとしたら、かなりの訓練が必要になるでしょう。

シュピーゲル 様
本文中にも書いた通り、微妙ではなく、間に合いません。
また、こちら側の対応に対して、リアクションが出てくる可能性もあります。
なので、初動はF-15で対処し、P-3やLR-2現着後は、F-15がバックアップで上空待機ということになるでしょうね。

オスプレイにやらせるのはあきまへんの?

名無し 様
オスプレイでも可能な任務ですが、普通の固定翼機の方が、低いコストで実施できますから、オスプレイではコストパフォーマンスが悪いです。

こんにちは

あれまぁ、私もオスプレイは中々適任かと思ったのですが…維持管理の問題ですか。
みやとん兄の零戦では防弾や機体強度に問題があるので、四式戦闘機を推しますねぇ♪
冗談はさておき、練習機の翼下に機銃を懸架(紫電みたく)するとか…昔のF-1支援戦闘機だって、ベースは練習機でしたからねぇ…無理ですかい?

土方 様
本文中に書いたT-7の使用を含め、練習機の転用は、可能だと思います。
ですが、使用する頻度はそれほど高くないため、専用機を準備する必要性とコストパフォーマンスが悪いので、そこまでしなくても現有機の活用で十分だろうと思っています。

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