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2014年2月19日 (水)

雪害、自治体・自衛隊が災害派遣を躊躇ったワケ

歴史的な大雪による災害に関連して、自衛隊の災害派遣について、自衛隊自身や派遣要請をする自治体の対応について、批判が起こっています。
大雪:埼玉県が自衛隊派遣断る 秩父市が要請」(毎日新聞14年2月18日)

この雪害に関して、世論の大勢は、積極的に自衛隊を投入すべきだという考えのようです。
冒頭リンクの記事などは、毎日新聞なのに、災害派遣を躊躇った埼玉県を悪者扱いしているくらいです。
また、適当なニュースが見つかりませんでしたが、山梨の被災でも、同様の批判が起こっています。

世論の怒りは、サッサと派遣を要請しない県は、天ぷらを食べている安倍総理と同じでケシカラン、とでも言いたい様子ですが、自治体の防災担当者が派遣要請を躊躇した事には、それなりの理由があります。

山梨などは、民主党の輿石元幹事長を国会に送り込んでいる土地であるため、日教組などからの吊し上げを恐れ、派遣要請を躊躇したという側面も、確かにあるでしょう。

しかし、そう言った考えが、過去の日本では主流であったため、自衛隊が災害派遣を行うに当たっては、災害派遣の3要件を満たしている必要があるとされています。
その3要件とは、「公共性」「非代替性」「緊急性」です。
関連過去記事:「ハエ駆除における、災害派遣3要件の適用」「自衛隊による防疫活動

佐藤議員は、今回の雪害が3要件を満たしていると言っています。
Ws000016
自治体、それに自衛隊も、実際に派遣で出ている訳ですから、最終的には、満たしていると判断したはずです。

ですが、私から見ても、3要件を満たすか否かは、かなり怪しい感じがします。
死者も出ている状況ですから、「緊急性」は、さほど問題ありません。除雪を行うのが公道であれば、「公共性」も問題ないでしょう。
しかし、「非代替性」は、大いに問題があります。

「非代替性」とは、過去の記事でも書いたとおり、他の組織等の能力では十分な効果が得られない、という条件です。
その根幹には、災害派遣によって”民業を圧迫”してはならないという、公務全般の原則が関わっています。

この「非代替性」が怪しいというのは、もっと大量の降雪がある雪国を見れば明らかです。
東北や北陸自動車道などは、大雪になると頻繁に通行止めになります。今回の大雪を遙かに上回る降雪が頻繁に発生している訳ですが、災害派遣が要請されることはありません。自治体が、土建業者に発注して除雪を行っているからです。
埼玉でも山梨でも、災害派遣を要請するのではなく、こうした業者に発注することが、本来のスジなわけです。また、そうしないと降雪地の住民は除雪のために税金を払うものの、埼玉や山梨では国民全体が税金を払っている自衛隊にやらせるという不公平が生じることにもなります。

今回、この「非代替性」要件を満たしていると判断された理由は、埼玉や山梨では、急遽業者に発注しようにも、受注できる業者が不足していたため、”代替困難”だったためでしょう。
ですが、要件を満たすか否か、怪しい状況だった事は間違いありません。

しかし、近年の災害派遣では、この3要件を満たすか否か怪しい状況でありながら、派遣が実施されるケースが増えています。
過去記事で書いたハエ駆除もそうですし、新潟地震の際の被害後家屋の除雪作業などは、公共の利益ではなく、個人の利益のために行った訳ですので、「非代替性」だけでなく、「公共性」さえも怪しい派遣でした。
また、離島ではあたりまえの公共サービスの一つにもなってしまっている急患空輸などは、かなり以前から疑問視されています。(何せドクターヘリを持っている自治体であれば、当然そちらが行うべき業務です)

これを、間違っているなどと言うつもりはありません。
自衛隊をどう使うかは、主権者である国民が決めれば良いことですから、世論が派遣を支持するなら問題ありません。
そもそも、この3要件を必要とすること自体も、以前は朝日や毎日と言った左派系マスコミが、自衛隊の災害派遣を国民の目を慣らさせるための手段だと言って糾弾していたからです。
その批判を逃れるために、言うなれば、仕方なく派遣したというイイワケとするために作られたのが3要件だとも言えます。

今回の災害で、世論は明確に派遣を支持していました。
今後は、この3要件が怪しいケースでも、更に災害派遣が行われるケースが増えるでしょう。

自衛隊とすれば、例え3要件が怪しくても、要請がさえあれば、要請があったから派遣したと言い訳ができます。
それだけに、自治体の防災担当者は、更に勉強をして、左派系マスコミや自治労にも的確に反論できる体制を整える必要があるでしょう。

また、そのためにも、自治体の防災担当部局への退職自衛官の採用をもっと積極的に進めるべきだと思います。
今回問題になった埼玉と山梨は、共に県庁に1名の退職自衛官を採用していますが、迅速な派遣を行うためには力不足でした。
退職自衛官の地方公共団体防災関係部局における在職状況

しかし、その一方で、やはり「非代替性」については、留意されることが重要だと思います。
今回のケースでは土建業者、またハエ駆除であれば害虫駆除会社などは、「なんで発注してくれないんだ!」と思っていたかもしれません。
また、ゲスな勘ぐりをすれば、今回要請に積極的だった自治体は、あと1ヶ月ちょっと分しか残っていない今年度予算が惜しいため、自衛隊をタダで使おうと思った可能性もあります。

ここからは蛇足です。
ここで言及した災害派遣の3要件の出典、正直に言って記憶があいまいです。
自衛隊の内部文書であり、災害派遣の虎の巻と呼ばれる「災害派遣の参考」には、これでもかという程書かれていたことは覚えているのですが、大元を改めて調べて見ましたが見つかりません。
多分、国会答弁か何かだと思うのですが……
なお、「災害派遣の参考」は、確か表紙が青かったため青本と呼んでました。しかし、こちらのサイトに出ている公開された資料では、表紙が青くないです。(変わったのか?)

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災害派遣」カテゴリの記事

コメント

人命がかかっている一刻を争う非常事態で、のんびりと除雪すれば良い状況ではないのである。
一刻を争う危機的状況においては、自衛隊の「迅速性」に勝るものはないだろう。

離島の急患空輸は何十年経っても自治体はずっと自衛隊任せなんですよね。
毎年毎年あれほど急患が発生し、これからも発生し続けるであろうことが容易に想像できるにも関わらずです。
15飛行隊なんか、完全に救急車扱いでしょう。これじゃ隊員達も自分らの本業が戦争だってこと忘れてしまいますよ。

>災害派遣の3要件の出典

法令等の根拠はなく、単なる慣例みたいなものでは。


>「非代替性」

これについては、「緊急性」が必ずしもないとしても、時間がいくらかかってもよいという状況でなければ、自衛隊という組織以外では代替不能というのはあるでしょう。
今回は、非降雪地帯としては極めて異例な降雪量が広範囲にみられたわけです。火災や急病人が発生しても、消防車も救急車も出動不能であると防災無線で明言する自治体すらありました。
時間さえかければ、警察・消防や民間業者で何とかできたのは事実でしょうけど、今回の状況ではそうはいかなかったので、「非代替性」の要件にも適合すると思います。

2月18日 埼玉新聞電子版によれば
(引用開始)
 県によると、15日朝から断続的に県警、自衛隊と出動の必要性があるかどうか協議してきた。同日夕に同市からの派遣要請を受けた県は、自衛隊に打診したものの、「除雪目的での派遣はできない」と回答があった。
(引用終了)

埼玉県庁は、「左派系マスコミや自治労に遠慮して派遣要請を躊躇した」どころか、自衛隊に災害派遣を打診したら、「除雪目的での派遣はできない」と回答があったと責任逃れを言い出してますよ。

過去の各県の対応がどうだったのかはよく知りませんが、今後、自衛隊が県からの派遣要請に消極的な対応をすれば、せっかく築き上げてきた国民の自衛隊への信頼を傷つけかねません。

つまり、過去とは全く違う状況が生じているのではないですか。

話は違いますが札幌雪まつりの雪像は自衛隊が作っているようです。
札幌市が市費で行うべき事柄でしょう。国民全員で札幌市に寄付をしているようなものですね。
同じ雪が相手の出動でも100年に一回と言う大雪への出動はけだしやむなしです。

管理人様、こんにちは。

今回、自衛隊を始め警察、消防、防災などのヘリが投入されていますが、地上部隊を持たない自衛隊以外は積雪地区にヘリポート設置ができず、ホバリングして病人をつり上げるのが精一杯でした。

また、警察、消防、防災(含むドクターヘリ)は通常、積雪地帯への着陸訓練などは行っていないはずです(民間ナンバーのヘリは許可がでないそうです)。そうなると、空輸、一つとっても自衛隊と民間では、圧倒的に力の差が出ます。その点を考慮する必要もあるでしょう。

また、埼玉や山梨の場合、降雪地帯でありませんから、除雪車はほとんど配置されていないようです。ホイールローダーに代表される重機も、最近では建設工事の減少にともなって減っているようです。

後々、検証を行い、次に生かすことは大切ですが(これがないのが、日本の良くないところ)、今回、初動では自衛隊の投入は迅速に行った方がよかったと思いっています。

自衛隊にすがることが悪いとは思わないし、マスコミも世論も自衛隊を認める方向に、少しずつ変化してるんだと思いたいです。

ただし、自衛隊への予算配分や待遇をそのままにして仕事だけ増やすのは、図々しいというか随分なめ腐ってる気がします。調子のいい国民全体がね。
今回役立たずぶりを露呈した自治体や他省庁に無駄な税金を振り分けるより、その分を自衛隊にくれてやるほうが余程有意義。

まあ阪神や今回の件から分かるように、自治体が判断を足踏みして事態が手遅れになるケースもあるし、自衛隊にすがる判断は早めにしたほうがいいのかも知れません。
いざというとき泣きつく相手に予算をケチり、平時はとことん苛めぬくこの国は狂ってるんじゃないかと思いますけどね。

おはようございます

彼方兄、実際に狂ってると思いますよ。吉田茂が「君達が日陰者である方が、国民にとって幸せなんだ」なんてホザいて、それが延々と続いてますからね。
そして村山なんぞを担ぎ上げた揚げ句が、阪神淡路の惨劇でやんすからねぇ。
遂に、自民党に灸を据えるとか言って、拉致問題に対して冷淡な民主・社民の政権を国会に送り込みましたからね。まして菅直人なんぞ、工作員の除名嘆願書に署名した間抜けですから、そんな奴を首相にしたって事は、国際社会に対して「拉致問題なんかどうだていい」というメッセージを送ったにも等しいですから。
で、村山と菅に共通しているのが反自衛隊で、大震災の対応は推して知るべしですね。

外国並に、共産主義活動を非合法化出来んモンでやんすかねぇ…

真の愛国者 ゆりか 様
「迅速性」の要求される状況とは、つまり「緊急性」のある事態ということですが、3要件は、3つの内どれかを満たしていれば良いのではなく、必ず3要件全てを満たしていることが求められます。

埼玉新聞の報道は、私も見た上でこの記事を書いています。
ですので、躊躇ったのは自治体だけではなく、自衛隊側でもあると書いています。
世論、と言うよりマスコミが変わりつつあるのは確かですね。
以前は、直ぐに「安易な派遣を戒める」ような論調の報道が出てましたから。
まあ、マスコミが世論から叩かれるため、そう言う論調を書かなくなって来ているだけですが。

きらきら星 様
急患空輸が求められることは、悪いことだとは思いませんが、あれだけの実績があることを考えれば、沖縄県はドクターヘリを導入するべきだろうとは思いますね。
東京都も、急患空輸が多いですが、あちらは特殊な航空機がないと対処できないので、ドクターヘリのように簡単にはいきませんが。

myu5 様
恐らく、最終的にそのような判断になったため、要請・出動になったのだと思います。

はるばる 様
あれは、災害派遣とは別の名目で行っています。
以前は、駐屯地の中に会場があったくらいですから、自衛隊なくしてはできないイベントですね。

ブリンデン 様
雪害でも、大規模ならマスコミも批判せず、世論の支持があるということは、今回の件ではっきりしましたから、今後は、もっと早期に要請・派遣決定されることになるでしょうね。

彼方 様
昨年末の新大綱等で、戦車や火砲が削減される方向になりましたので、陸自の個人装具や災害派遣関連資材も、少しはマシになるかもしれません。

地方自治体の状況を、中央が迅速に把握できていないという実態が暴露された結果になりましたね。
今回は「たかが雪」だったので、特段重大なことになりませんでしたが、将来的にゲリラやテロリストが浸透して、あえて中央を避けて中央の周辺県で何かやらかしたら、対応がかなり後手になる可能性をあぶりだしたと言えるかも知れませんね。

myu5 様
今回の事態は、あまり叩いている方がいませんが、その自治体自体、また雪に慣れていない人が、「たかが雪」と甘く見ていた事による被害が大きかったように思います。
建物の構造の違いなどは、どうしようもありませんが、降雪が頻繁な地域では、大雪の予報が出れば、除雪の追いつかない道路は事前に交通止めにして、除雪を行いやすいようにして、結果的に早く復旧させますが、埼玉にしても山梨にしても、そう言った対応は出来ていませんでした。

また、雪の怖さを知らなかった反動だと思いますが、パニックになって騒がれたという側面もあります。
期間や範囲の違いはありますが、平成18年豪雪などでは、今回よりも遥かに酷い人的被害等が発生してます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B3%E6%88%9018%E5%B9%B4%E8%B1%AA%E9%9B%AA

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