田母神氏健闘の影響_都知事選
都知事選は、予想通り桝添氏が当選しましたが、「田母神氏の得票は抑止力になる」を書いたように、当ブログが注目していたのは田母神氏でしたので、田母神氏への支持状況に注目して、都知事選を振り返ってみたいと思います。
まず、得票状況ですが、次の通りでした。
得票率にして、12.5%。
投票率が低く、その中でも若年層の投票率が低いことが予想されるため、ネットでの支持が強かった田母神氏の場合、あの雪がなければもっと得票率が伸びたかもしれないという分析もされていますが、支持者は熱心な方が多いため、私は、投票率が高ければ、むしろ得票率は下がった(浮動票が他に流入した)可能性もあると思っています。
しかし、例えそうだとしても、12.5%もの票を集めたことは、正直驚きでした。
10%に届くことは難しいだろうと予想していたためです。
これによって、今後3つの影響がでると思われます。
一つは、前掲記事にも書いたとおり、中国に対して抑止力として機能するという点。
しかも、詳細は後で書きますが、将来においては、田母神氏言うところの”日本派”あるいはマスコミが言うところの極右傾向がさらに強まるだろうと思われるため、中国としては、この選挙結果に大いに警戒感を抱いただろうと思われます。
もう一つ、非常に大きな影響は、マスコミが”報道しない自由”を行使し、田母神氏の行動を封殺することができなくなるだろうと言う点です。
尖閣騒動の後の渋谷デモやお台場デモは、海外メディアは報じても、国内の新聞テレビはほぼ封殺していました。
今回の選挙でも、泡沫扱いすることで、極力触れない方針だったようですが、予想外の支持を集めたため、途中から4強の一角として報じざるを得なくなりました。
今後、会見で言っていた通り、田母神氏が政党を立ち上げるのかどうか分かりませんが、マスコミとしても、彼の動きを報じざるを得ないでしょう。
最後は、自民を含む既存保守政党も、田母神氏やその支持者を無視できないという点です。
今回の都知事選では、自民も、田母神氏の動きを歯牙にもかけていませんでしたが、今後は取り込むのか、あるいは切り崩すのか、対策を立てる必要が出てきました。
さて次に、実際の得票では、総数しか分かりませんので、出口調査の結果を見てみたいと思います。各所で出口調査が行われていましたが、朝日のデータが一番簡潔です。
「舛添氏、高齢層から圧倒的な支持 都知事選出口調査分析」(朝日新聞14年2月9日)より
朝日は、このデータをもって「戦争を知らない世代に浸透したのは、ネットを上手に活用したことが要因だろう。」と評しています。(若年層を、戦争を知らない世代と言い換えるところは、さすがに朝日です)
田母神氏が若年層に強く、高齢層に弱かった事は、このグラフを見れば一目瞭然です。
しかし、私は朝日の分析には異論があります。
田母神氏がネットで強い支持を集めていたことは、かなり冗談めかした記事ながら、次の記事があったことからも明かです。
「田母神氏、断トツ本命!? 都知事選アンケートで異変 8割以上の票集め…」(zakzak14年1月18日)
しかし、朝日の分析は、(恐らく意図的に)原因と結果を逆転させています。
田母神氏が若年層の支持を集めたのは、田母神陣営がネットを巧く使ったからではなく、ネットを使う世代が、ネットの情報によって田母神氏を支持したからです。
田母神氏のネット活用度は、決して高くありませんでした。
「都知事選のネット選挙は? ~分析データから考察~」(勝つ政治家!.com)より、各候補のツイッター利用度
ツイッターアカウントでの意見表明数は3位で、4位の細川氏とほぼ同数ですが、リツイートやメンションの数を含めたツイッター活用度では4位で、ネットを使わずに組織で戦ったと言われる桝添氏と大差ありません。
この記事の本題とは外れますが、これは既に世論はマスコミだけが作るものではなく、ネットに触れる世代では、ネットが世論を作り始めている証左とも言えます。
朝日としては、新聞の影響力が低下していることを認めたくないのでしょう。
冒頭に上げた関連記事にも追記しましたが、石原氏が「あえて可能性の少ない戦いに挑む。ある意味で特攻隊ですよ」と発言しているとおり、やはり陣営としては、目標を当選に置いていた訳では無く、田母神氏という一個人の(ネットでの)知名度を生かし、東京都知事選という注目を浴びる選挙において一定の支持を集めることで、世論に一石を投じようとしていたのでしょう。
その目論見は、見事に達成されたと思います。
長期的に見れば、今後の政治に大きな影響を与える選挙だったと思います。
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1980年参議院選挙東京選挙区に立候補した栗栖弘臣元統幕議長が69万で落選でしたが、その当時とあまり変わっていないような?
しかしまあ、彼の、あまりに自分に都合のいい発言というか暴言は、どうにかならんもんですかなぁ。
投稿: しやもじ | 2014年2月10日 (月) 21時26分
元祖ルーピーこと細川にすら勝てなかったのは少々残念ですが、
大政党や大マスコミの支持が一切無い状況での61万票というのは、
数多さまの仰る通り大健闘したと思います。
投稿: 名無しX | 2014年2月10日 (月) 21時44分
こんにちは
私も都民だったら票を投じたかったんですが…
石原慎太郎が個人的に推した以外は、これと言った後ろ楯が無い中を頑張ったかと。
朝日のシカトする戦法も、ここまで票が入ると数多兄の言う通り出来ないですなぁ。ザマミロですねぇ♪
志方センセはキツイでしょうが、潮センセ辺りが続いて欲しいかな?
投稿: 土方 | 2014年2月11日 (火) 16時12分
追記
しかしマック赤坂が一万五千も入ったのには腰が抜けました!Σ( ̄□ ̄;)
投稿: | 2014年2月11日 (火) 16時15分
しやもじ 様
数としては、栗栖さんと大差ないですね。
ただし、当時の参議院選結果を改めて見ましたが、投票率がかなり違いますし、なにより4人当選で次点となった結果と、1人しか当選しない知事選では、有権者の投票行動はかなり違うと思います。
名無しX 様
細川氏は、何と言っても首相経験者ですし、小泉氏まで付いてましたから、何より知名度が有効といわれる都知事選で勝ってしまったら、それこそ一大事かと。
土方 様
今回、田母神氏だけではなく、多くの候補にかなりの数のボランティアがいたようです。
これ自体は、政治が成熟してきた良い傾向なのかなと思っています。
名無し 様
国政との同日選挙ならまだ理解できますが、わざわざそのために投票所まで行ってマック赤坂氏に入れた方は、何を望んでいたのか……
私も分かりません。
投稿: 数多久遠 | 2014年2月12日 (水) 23時13分
はじめまして
私もこの得票が都知事選であることに意味があると思います。
自身は都民ではありませんが、都知事に政治経験のない田母神さんに投票したかと言われると自信がありません、朝日の出口によると同世代は7%しか投票していませんが、同じ様な投票行動を取ったか天候も考慮して棄権していた可能性が高いですね。国政選挙であれば間違いなく田母神さんですが、私たちの世代では同じ様に考える人が多かったのではないかと思われます。
ネットの影響に関しては、先生のおっしゃる通りだと思います。ネット無き時代ではマスコミの自虐主義に疑問をもっていても、声を上げることが出来ませんでしたからね。
ただ、ラジオNIKKEIのアンケートは生放送中では田母神さん40%舛添35%くらいでした、その時は細川の上を行くのではなどと期待したものですが、ネットでは8割支持になっていて逆に失望した記憶があります、ネットの功罪でしょうね。
長文失礼いたしました。
投稿: 霧島 | 2014年2月14日 (金) 19時56分
宇都宮氏と細川氏が食い合い? 田母神氏が強い地域は...... 地図でみる都知事選 http://huff.to/1geogpK
田母神候補は都心で強かった模様です
投稿: アシナガバチ | 2014年2月15日 (土) 10時02分
霧島 様
桝添氏は、厚労相をされていることなどで、福祉に強いというイメージを作ったのが、巧かったと思います。
まあ、結果自体は予想通りです。
ネットは、良くも悪くも極端ですね。
ネット世論なんて言葉もあるように、全体とは異なっているケースが多い事は、共通理解化していると思います。
アシナガバチ 様
その記事は、私も見てました。
田母神氏は、遊説先も都心のみの戦略で、西部には、ほとんど足を運ばなかったそうです。
私には、その戦略は、必ずしも良いとは思えなかったです。
西部にも足を伸ばしていれば、もう少しは、若年層以外にも支持を広げられたと思います。
投稿: 数多久遠 | 2014年2月15日 (土) 17時24分