書評「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」
先日も、「黎明の笛」同じ、個人出版からの書籍化事例としてご紹介した「ゴースト≠ノイズ(リダクション)」を読みましたので、書評を書かせて頂きます。
レビューを見ると、ミステリ風の青春小説とする評が多いですが、私はミステリ要素のある純文学だと思いました。
純文学だなんて書くと、堅苦しくて面白く無さそうだと思ってしまうかもしれませんが、決してそんな事はなく、最近は珍しくなくなっているライト調ミステリ風純文学という感じです。
でも、もしかするとファンタジーとも言えるかもしれない。何とも評しにくい作品であることは確かです。
純文学と言ってもピンとこない人のために、他の方法でイメージを伝えるとしたら、読んでいる最中に感じた印象が、宮部みゆき氏の作品を読んでいる時のそれに近いと言うところでしょうか。
宮部みゆき氏は、純文学ではなく、歴としたミステリ作家ですが、複雑な謎解きやどんでん返しが評判という訳ではなく、深い人物描写が特徴で、純文学を書いたら良さそうと思える方です。
しかし、かと言って、作風が似ているワケではないので、こちらも何とも言いがたいのですが、読後感が似ていると言えばいいかもしれません。
ちょっとだけ温かい、救いようのない世の中でも消えない小さな救いを示したような、独特の読後感が似ている感じです。
比喩の使い方なんかも、何となく似ている印象が何カ所かありました。単に事物の形象を伝える比喩だけではなく、全く違う事象を表現しながら、感情の動きを的確に表現する比喩が使われています。
ミステリとして見てみると、ミステリの中でよく使われるトリックの変形が使われていることが、最後まで読むと分かります。
私は、そのトリックは好きではないのですが、この作品ではいい感じでした。
ネタばれになってしまうので詳しく書けませんが、最近の話題とリンクする部分があるので、この作品もつられて話題になるかもしれません。
プロモーションを考える方としては、扱い方が難しいでしょうけど。
この本を書評で取り上げた理由も、実はこの点にあったりします。
ミリタリーとは縁遠い話題ですが、個人的に興味もあり、小説のネタにしようと思った事もあるくらいです。
いよいよ、書籍版も販売開始されました。
手に取ってみては如何でしょうか。
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