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2013年10月

2013年10月31日 (木)

注目の離島奪還演習が実施

沖縄で、注目すべき離島奪還演習が行われます。
陸海空3自衛隊、沖大東島で離島奪還訓練へ」(琉球新報13年10月24日)

防衛省統合幕僚監部は23日、陸海空3自衛隊の隊員約3万4千人が参加する実動演習を11月1~18日の日程で、沖縄や九州を中心に実施すると発表した。上陸作戦や輸送の訓練を実施するとしており、事実上の離島奪還訓練となる。主な訓練場には那覇の南東約408キロの太平洋上にある無人島で、米海軍の射爆撃場となっている沖大東島(北大東村)を使用。


琉球新報では、「訓練」とされていますが、統幕公式発表では「演習」です。
平成25年度自衛隊統合演習(実働演習)について
この違いは、実は非常に重要です。
参考過去記事:「訓練と演習の違い
端的に言えば、演習の目的は能力向上ではなく、作戦計画の検証にあるということです。

この演習で注目なのは、演習場となる沖大東島の、尖閣諸島との地理的な類似性です。
引用記事にもあるとおり、沖大東島は、那覇から408キロの位置にあります。
一方、尖閣諸島魚釣島は、那覇から約410キロです。
これは、決して偶然の一致ではないでしょう。

沖大東島射爆撃場では、離島防衛を主な任務にする陸自西部方面普通科連隊が上陸作戦を模して、海上自衛隊輸送艦に乗り込み、さらに水陸両用のホバークラフト型揚陸艇「LCAC」(エルキャック)で島に近づき、空自戦闘機が実弾射撃したりする予定。
 ただ島の周辺にはサンゴ礁があるため、実際の上陸はしないとしている。


演習の目的は、尖閣諸島を模擬した沖大東島に離島奪還を意図した部隊を機動させ、陸海空統合運用の中で、運用能力の向上を図りつつ、尖閣奪還作戦における作戦計画の検証を行うことでしょう。

この演習で注目なのは、想定が極めて現実環境に近く、絵に描いた餅上での演習ではないため、今回の演習に参加する部隊は、恐らくそのまま尖閣奪還作戦に投入を予定している部隊であろうとの推測ができることです。

特に、海自輸送艦等に乗り込む陸自部隊の編成は注目です。
恐らく、中国軍の情報部も注目しているでしょう。

これが、どこまで公開されるか分かりませんが、自衛隊の尖閣奪還作戦の様相を占うため、今回の訓練ほど適切な訓練はないと思います。
続報が楽しみです。

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2013年10月25日 (金)

陸自は組織防衛ではなく、日本の防衛を

防衛計画大綱変更の方向性については、海空重視が鮮明になるだろうことは、最近の記事でも度々書いてます。
参考過去記事
防衛計画の大綱改定に向けた検討中間報告レビュー
統合運用における陸上自衛隊

特に、二つ目の記事などは、陸自が作った動画の解説ですから、海空重視の方針は陸自も納得ずくだと思ってました。
が、そうではないという報道もあります。
自衛隊で内紛勃発 対中有事めぐり四分五裂 」(産経新聞13年9月16日)

この記事の中で、「統合運用を踏まえた能力評価」が画期的だと評価されてますが、それは前掲過去記事でも指摘したことです。

ですが、「統合運用を踏まえた能力評価」がなぜ画期的なのか、そして、その結果なにが起こるのか、恐らく多くの方はイメージしがたいでしょう。

 至極当然の作業のようでいて、「画期的な転換だ」(海自幹部)と指摘される。

 これまで大綱改定にあたり陸海空はそれぞれバラバラの作戦計画をつくり、それに基づき装備を導入していた。自ずとシナリオは我田引水になり、導入して無駄に終わった装備も少なくない。

 今回はそれを抜本的に改め、制服組として3自衛隊共通の有事シナリオを初めて策定。そこから必要な装備体系と運用指針を導き出すことにした。


一番焦点になるのは、敵による着上陸侵攻です。
今までは、海・空による洋上及びその上空での敵戦力撃破という方針、及び海空における彼我の戦力差とは関係なく、陸自は、着上陸が行われた場合に備えて防衛力整備を行ってきました。

「統合運用を踏まえた能力評価」が行われれば、着上陸侵攻は、中国の能力的にも可能性は低いですし、例え中国が意図したとしても、あくまで洋上で撃滅すべき敵の戦術行動として規定されるでしょう。

結果、着上陸侵攻を本土決戦で迎え撃つための戦力造成はせず、着上陸侵攻に備えるとし、海空戦力(と陸自の地対艦ミサイル)の造成に留まるはずです。
つまり、機甲や特科は削減されざるを得ないという結果になります。

前掲リンク記事は、この事に対して、陸が反発しているとの内容ですが、中国による現実の脅威が増す中、陸自だけが絵空事を前提に戦力造成をすることに拘っているとは思えません。
陸自自身、「統合運用における陸上自衛隊」で紹介したビデオも作っている状況ですから、陸自も転換の必要性は認識しているはずです。

しかし、もしこの記事のように内紛が起きているなら、陸自には組織防衛ではなく、日本の防衛を考えてもらう必要があります。
あと2ヶ月、しっかりと大綱をまとめ上げて欲しいと思います。

なお、この手の記事を書くと、戦車削減=軍備否定などというトンデモ理論を持ち出す方もいらっしゃいますが、私は陸自のトランスフォームは主張しても、削減を主張したことはありません。
普通科については、増強が必要だろうと何度も書いてます。
戦車ファンにとっては、普通科増強も、批判すべき主張なんでしょうか?

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2013年10月20日 (日)

水中弾?の研究

技本が何やら面白い研究を行っています。
水中における弾丸の挙動に関する研究

銃弾は、水中に入ると、極めて急速に速度を失い、効力がなくなります。
それは、前掲リンクを見ても分かるでしょうし、警察が銃弾の線条痕を調べるため、銃弾を水槽の水に向けて撃ち、損傷していない銃弾を回収していることからも想像できると思います。

そのため、水中用の銃器としては、水中銃がありますが、技本の研究は、どうやら小銃等から射撃可能な水中弾?の開発を企図しているようです。

もしこれが実用化できれば、恐らく非常に高いコストパフォーマンスを発揮する、有用な銃弾になるでしょう。

海自の基地は言うに及ばず、空自の基地でも、那覇や築城のように、海岸に隣接した基地がありますし、下地島を自衛隊が使う事になれば、周囲の半分以上は海です。

自衛隊が戦力を維持するためには、これらの基地等に対する、水中からのゲリコマの接近に対処する必要があります。
水中からのゲリコマ接近に対しては、センサーやプラットフォームであるUUVは、各国で開発が進んでますが、安価な攻撃手段はなかなかありません。

この水中弾が開発できれば、センサーで発見したゲリコマに対して、陸上から小銃や機関銃で攻撃が可能になります。
これを用いて警備することになれば、水中からのゲリコマの接敵に対する強力な対抗手段となるでしょう。

どこの発案か興味深いですし、是非モノにして欲しいものだと思います。

もし開発できれば、おそらくコピーされる可能性が高いので、特許を取っておけば、海外に対しても売れるかもしれません。

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2013年10月14日 (月)

戦車に引導を渡す機動戦闘車

このブログで、陸戦関係の記事を書くと、JSF氏やdragoner氏を始めとした、戦車大好き派の方々から多数のご意見を頂ける状態でした。

その主な理由は、私が戦車の削減を主張していたからですが、私が機動戦闘車を推していたからでもあります。
(戦車大好き派の方々は、機動戦闘車が戦車の定数を食うことを懸念している)

が……先日、機動戦闘車の試作車が公開されると、本土決戦大好きで、機動戦闘車なんかじゃ戦えないと機動戦闘車を批判していた方々が、どういう訳か、こぞって機動戦闘車を持ち上げています。
機動戦闘車(MCV:Maneuver Combat Vehicle) 公開」(週刊オブイェクト13年10月9日)
機動戦闘車のファーストインプレッション 」(dragoner.ねっと13年10月10日)

変節の理由は、ハッキリしませんが、公開時の記者会見で、「機動戦闘車は新しいカテゴリに属する装備」発言がされたことで、大綱別表の戦車枠に入らないと理解されているためのように思われます。
機動戦闘車、記者会見等でわかったことまとめ」(dragoner.ねっと13年10月9日)

Q.機動戦闘車は新しいカテゴリに属する装備なのか、あるいは何かの後継なのか?
A.新しいカテゴリの装備と考えている。


しかし、機動戦闘車を大綱別表の戦車枠に入れるか否かを決めるのは技本ではありませんし、先日報道があったとおり、大綱から別表が消える可能性もあるなか、何かの後継車両ではないと解釈するべき発言をもって、戦車枠に入らないと理解するのは早計でしょう。

ただし、年内に発表される新大綱において、別表が維持されるなら、現行大綱の戦車枠が400両なので、現有戦車の状況を考えると、確かに戦車とは別枠とされるか、同一枠とするなら、戦車定数を増やす可能性が高いと予想します。

と言うのは、90式341両、10式53両の合計394両を保有している状況で、まだまだ使用可能な戦車及びそれ用に養成した要員が十分にいる中、わざわざこれを削減するという英断を、防衛省・陸幕が下せる可能性は低いと予想するためです。

しかしながら、新大綱の次の大綱が発表される頃には、90式の退役を見越した装備調達になるはずで、その時には、ロシアが北海道への侵攻の構えでも見せない限り、機動戦闘車は、90式に替わる装備として位置づけられるでしょう。

現在は、まだ試作車が公開されただけの状態で、陸自の中でも、機動戦闘車の評価が出来ている訳ではありませんから、まだまだ紆余曲折はあるはずですが、開発が順調に進めば、機動戦闘車は、戦車に引導を渡す車両となるはずです。
少なくとも、陸自の対装甲車両用の車両としては、中核を占めることになり、コスト的に戦車を国産することには引導を渡す可能性が高いと思われます。

武器マニアの方々は、技本開発官の言葉で舞い上がってますが、日本の防衛を効率的に行うためには、機動戦闘車が戦車に引導を渡してくれることが適切でしょう。

なお、機動戦闘車の仕様については、別に評価記事を書くかもしれません。

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2013年10月 9日 (水)

戦史を学ぶ意義

意外に思うかもしれませんが、自衛隊では戦史を学ぶ機会はあまりありません。
防衛大学や幹部候補生学校、それに幹部学校では、若干戦史関連の授業もありますが、決して多くの時間が割かれてはいません。

そして、その戦史を学ぶ機会にしても、学校で勉強する歴史の授業のように、何年に、誰が誰に対し、どんな戦略・戦術で戦ったと言った事実を学ぶ場ではありません。

では、どんな授業かと言うと、戦史の事例研究です。
事例研究は、ある戦史事例の概要を把握した後、戦いの原則等に照らし合わせて、事例の評価を行い、執るべき別のオプションがあった可能性を研究します。
討論が行われる場合も多いです。

自衛隊における戦史教育が、このような形態なのは、戦争における実務者を育てる事が目的なため、”戦史の応用方法”を身につける必要があるからです。

そのため、自衛官は意外に戦史(何年に何があったというような事実)を知りません。
ただし、これは空自で特に顕著な傾向だろうと思います。

と言うのも、第1次世界大戦で飛行機が戦争に使用され、航空作戦の戦史が始まって以来、まだ100年ほどしか経っていないにもかかわらず、航空機及びレーダーやミサイルと言った関連技術の発達が凄まじく、古い事例はあまり役に立たないからです。

ただし、例えば隊員に対する”指揮”に関しての研究なら、別に陸戦でも海戦でも構わないため、それらを事例として研究することはあります。

とは言え、自衛隊では、戦史が軽視されていると言う訳ではありません。
各種学校での教育は、実務者を育てるための速成栽培なので、上記のような状態ですが、やはり階級的に、上に行かれる方々には戦史に詳しい人も多くなってきます。

もちろん、戦史を多く知っていた方が、応用するネタが多いという事は言えますが、それ以上に、戦史を知っている事の意義と言えるモノは、戦史が言葉になるからだと思っています。

例えば、以前に記事を書いた”独断”について語る際、”日本海海戦における追撃戦で第2戦隊司令長官上村中将が下した独断”と言えば、上級指揮官に十分な情報がなく、自分の方がより正確な情報の元に判断ができると考えられる際に行う独断の事だ、というような共通理解を得ることができます。

階級が高い程、多くの人と正確なコミュニケーションが必要です。
そのためには、戦史に明るいと、適切な”例”を引いて会話することができるという訳です。

自衛官以外のミリタリーファンの方も、軍事について語りたければ、戦史を知っている方が、より深いコミュニケーションができると思います。
(こんな事も知ってるんだぜ~的な自慢話では、なんの役にも立ちません。相手も知っているであろう適切な事例を、的確に提示できてこその戦史知識です)

そんな訳で、こんなモノを紹介致します。
戦史検定
例題も載ってます。
Ws000026
Ws000027

ベストセラーとして有名になっている永遠の0の著者である百田尚樹氏も推薦文を書かれているこの戦史検定ですが、「日本青年遺骨収集団(JYMA)」という大学生中心のNPOが母体となり、慰霊碑の保全費用を確保しながら、戦史を学ぶきっかけとなるようにという主旨で運営されているそうです。

漢検のおかげで、漢字に注目が集まったように、この戦史検定のおかげで、日本人の防衛理解が深まってくれることを願います。

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2013年10月 3日 (木)

H26概算要求-その3_空中機動力の向上と防衛産業の保護

H26概算要求には、「迅速な展開のための輸送力及び機動力の向上」として、好ましい施策がいくつも盛り込まれています。

オスプレイの導入に関しては、今年に引き続き調査費が計上されていますし、中期防改正後のH27予算に取得費を盛り込むとして、導入を前提とした表現が明記されています。

オスプレイの自衛隊への導入に関しては、過去記事でも推奨してきました。
政治的な意義については「オスプレイ配備で一挙三得」で書きましたし、軍事的な意義については「オスプレイは離島防衛に寄与するか?」で書きました。
もう、後は粛々とやって欲しいものです。

オスプレイ以外にも、CH-47やUH-60、それにC-2の取得といった空中機動能力が盛り込まれていますし、先般記事「民間高速輸送艦をPFI方式で有事使用」にした「機動展開における民間輸送力の活用施策に係る検討(統幕) (0.5億円)」も盛り込まれています。

しかし、本来ここに入れられるべきでありながら、入っていない施策があります。
それは
UHXです。

陸自にとってコストパフォーマンスに優れ、必要十分な空中機動能力を確保しながら、国内の防衛産業の保護にも寄与するハズだったUHXは、官製談合疑惑により、完全に葬り去られた格好です。

しかも、相当な費用を要すると思われるオスプレイ導入が規定路線となってしまえば、UHX復活の可能性は相当低いのではないかと思われます。

しかし、UHXを復活させることが難しいのであれば、防衛産業の保護、育成に関しては別の配慮が必要でしょう。

それが何かと問われれば、かなり困難な道ではありますが、目指すべきはオスプレイのライセンス生産です。

過去記事にも書きましたが、ティルトローター技術は、将来金のなる木に化ける可能性のある技術です。
その技術を、文字通り血を流して開発してきたアメリカが、下手をすれば簡単にコピーしてしまいかねない日本に対して、簡単にライセンス生産を許すとは思えません。

ですが、UHXを潰してしまったのが防衛省であることも含め、ここは防衛省に頑張って欲しい部分です。

多くの島嶼を抱える日本にとって、インフラとして巨大な空港を作らなくて済むティルトローター技術は、防衛省だけでなく、国民全体への大きな資産となるはずです。

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