2ヶ月ほど前にも、洋上監視型Y-8が、沖縄を越えて太平洋に進出し、その意味を記事にしていますが、今度はもっと意味の分かりやすいH-6が、同じような経路を通って太平洋に進出しています。
参考過去記事:Y-8による第1列島線突破飛行の軍事・政治的意味
統幕発表:中国機の東シナ海における飛行について
今回確認されたH-6
統幕発表資料より
飛行経路
統幕発表資料より
H-6は、基本的には爆撃機ですが、海軍が保有する対艦攻撃を主任務とする機体もあります。
統幕発表資料では空軍機なのか海軍機なのか発表されませんでしたが、飛行経路からすると、海軍機であることが強く疑われました。
そして、この件については、日本国内で大きく騒がれた訳ではなかったものの、むしろ中国がアピールする形で、海軍機だったことが中国政府によって発表されています。
「中国軍爆撃機の南西諸島通過に中国「訓練、特定国に向けたものでない」」(産経新聞13年9月9日)
中国国防省は9日、「海軍の航空機が西太平洋で訓練をした」とした上で「特定の国や目標に向けられたものでもない」とする談話を発表した。
空自は、H-6がどこまで進出したのか、追いかけて調べなかった(恐らく航続距離の関係で追い切れなかったものと思われます)ようですが、この対艦攻撃型H-6(D型orG型)が太平洋まで進出した軍事的な意義は明確です。
Y-8についての前掲過去記事と同様に、中国が接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を推し進め、沖縄を越えて、太平洋上において米空母機動部隊の接近阻止を図るつもりだと言うことです。
その上で、中国がわざわざ発表したことを考えると、今回のH-6の飛行は、Y-8以上に政治的な意味も見て取ることができます。
H-6は、原型機体が旧ソ連のTu-16であり、中身はモダナイズされてはいるものの、基本的な飛行性能は、1950年代に開発された旧式機です。
沖縄本島から迎撃機が上がれる状況では、太平洋上まで進出して対艦攻撃を行う事は、100%不可能です。
つまり、中国海軍がH-6により太平洋上で接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略を行うためには、嘉手納の米空軍、そして”日本が集団的自衛権を行使するならば”那覇の空自戦力を叩いた後でなければ実施できないということです。
この事実を踏まえると、H-6の、そしてY-8の太平洋進出飛行は、安倍政権が推し進める集団的自衛権行使に関する解釈変更に対して、那覇を叩くと言う恫喝(ブラフ)であるとも言えます。
中国が那覇を攻撃する具体的手段としては恐らく弾道ミサイルがメインになるでしょう。
また、J-20の開発が順調に進めば、J-20も投入されるでしょうし、J-11やJ-10、そして無人攻撃機による航空攻撃もありえます。
いずれにせよ、7月のY-8、9月のH-6と、我が国の集団的自衛権行使問題の進展に合わせた飛行は、中国国防省が、わざわざ「特定の国や目標に向けられたものでもない」と白々しい談話の発表を行ったことからしても、その裏には政治的な意味があると見るべきでしょう。
コレが、集団的自衛権行使の解釈変更に対する恫喝であることを報じるマスコミが皆無なことは、中国としたら当てが外れたと思っているかもしれませんが……
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