H26概算要求-その1_総評
例年のとおり、防衛省の概算要求を見て行きますが、まずは全体の総評から軽く触れます。
我が国の防衛と予算-平成26年度概算要求の概要-
海兵隊機能だとかグロホだとか、事前報道では結構な変化が予想される情報が出ていましたが、全体とすると、昨年までの概算要求と比べて、思ったほどの変化はありません。
それもそのはず、防衛省の事業要求は、防衛計画の大綱をベース(ドクトリン)として、その実現のために、5年間を対象とした中期防衛力整備計画をたて、各年毎の事業要求は、この中期防に沿って行われることが基本だからです。
現在、大綱と中期防は、自民党への政権移行に伴って廃止され、言わば空白状態であるため、防衛省としても、大きな変革が出来にくい環境にあります。
その意味では、本年末に策定される大綱と中期防を受け、今回の概算要求は、多少手直しされる可能性のあるものだと思っておいた方が良いかと思います。
手直しされるだろうという予想は、別の点からも予想されます。
防衛費の総額4兆8000億円は、平成17年度の防衛費にも迫る額で、いくら中国の脅威が切迫しているとは言え、同じく切迫している国家財政を考えれば、とてもではないですが、このまま認められる額ではないでしょう。
その上、今回の増額要求は、為替の悪化と中国の活動に対処するための活動経費の上昇という、不可避的な要因が大きいです。
特に、為替の悪化による歳出化経費の上昇は痛いでしょう。何せ、買った物の値段が、ローンの支払い途中で値上がりしたようなモノですから。
この事を考えると、今回の概算要求は、今後の財務との折衝過程で、ここから相当削られるモノとなるはずです。
この概算要求は、例年以上に、実際に予算化されるものとの乖離が大きいでしょう。
実際の予算で今年度と同等程度の増額要求が認められたと仮定しても、この概算要求から1000億も削らなければなりません。
これは、たとえ護衛艦の新造を削ったとしても、まだ足りない額です。それを恐らく3幕で分ける形になります。
例年以上に、折衝の状況が気になる概算要求です。
« 特定秘密保全法とリーク情報の変化 | トップページ | H26概算要求-その2_先島防衛の考え方 »
「防衛予算」カテゴリの記事
- H28概算要求-その5_10式戦車調達は3両のみ!_自己変革能力を伸ばした防衛省(2015.11.08)
- H28概算要求-その4_本格的空母の必要性(2015.10.20)
- H28概算要求-その3_鮮明な対中国路線(2015.10.10)
- H28概算要求-その2_沖縄のための陸自の海兵隊化(2015.09.17)
- H28概算要求-その1_総評(2015.09.07)
数多様
本予算の段階で削られるとのこと、私も同感です。
一方で、今回の増額のうち、1000億円ほどは、震災対応の公務員人件費の臨時削減が終ったことに起因しているかと思います。つまり、「実質増額ゼロ」で、「額面1000億円増」。
今年度と同様の350億円増になった場合、実質650億円減となると思います。しかもこの時点で、円高分が増えていません。
第1に予算を増やすことですが、一方でプライマリバランスの達成も極めて重要なので、大幅な増額は望めないと私も思います。そこで、第2の手段として、そろそろ装備定数や実員の削減に本気で取り組まないと行けないと考えます。装備は古めかしく、訓練もせず、戦術も時代遅れで、燃料も弾薬の備蓄もなく、士気も下がった軍隊に成り下がれば、装備定数や実員を削減して、代わりに訓練費、弾薬比などを維持/増額した軍隊よりも、弱いかと。
実は、唯一、人件費削減の継続、という裏技があります。これは「2年だけ」と言われた飲み込んだ臨時減を、(実質的に)恒久化することを意味し、有能な人材が、今後来なくなるリスクを抱えることになります。また、公務員の給与が下がるということは、中期的には、ほぼ比例して民間の給与も下がることになるでしょう(比較の問題だから)。したがって、これはまさに「ジョーカー」です。あるいは、「自衛隊は、人件費削減を半年遅らせたので、半年伸ばすことで、H26年度だけ人件費増を500億円に押さえる」など、アイデアは出て来ますが、さて、現実的かどうか。。。
投稿: ドナルド | 2013年9月 8日 (日) 01時42分
久遠様
先日、間違った所にコメントをした事について、謝ります。ご迷惑掛けしました…
@ドナルド氏
>人件費削減の継続
自衛隊の事ですから、恐らく国会にでも認められるでしょうけど、これで悪く言えば政府の失信ではないでしょうが?後は痛いかもしれません。
>装備定数や実員の削減
自衛隊は兵站は勿論、所謂正面装備の質も量もかなり不足な状態に成りつづなので、装備定数の更なる削減は難しいでしょう。だからと言って、正面部隊実員の余裕も不十分と言われて。基本的にソ連のCategory B相当ではないでしょうが?兵站部隊も薄っぽいので、コンパクト化と言っても、これを削れない…
なら、実員の削減は主に陸自、しかも普通科で行うしか有りません。だが、これだと確かに対コマンド対処能力の低下に繋がる恐れは有る…
それに、実員等で譲歩したら、財務省にカットの口実を与える事に成るかもしれません。
結局問題は早期に借金制限をしなかった財務省と防衛軽視の政府の所為しか有りません。Primary Balanceも重要ですが、防衛費は総予算の本の一部に過ぎません。そして、費用対効果では自衛隊の予算を10%アップにより齎せるの得は大きく(実際、自衛隊はちょっと余裕から今の場面に成ったも、予算を10%カットされたからと言っても良いです)、必要性も有るから、寧ろ増やすべきと思っています。減るなら他の所に…
政府のゴリ押しに希望を寄せる事にします…
投稿: 香港からの客人 | 2013年9月 8日 (日) 21時37分
いやー私は軍事予算は増えても多少だと考えてきましたが、まさにその通りでした・・・
まあ各幕、概算要求から減らす前提で幾つか目立つ物を出している可能性もありますね。海の多目的救難艦なんか、その典型かと、護衛艦が延命運用している中では別に慌てて更新しなきゃならない物でのないし、病院船を謳いながら些細なレベルの医療能力しかない。
まあ各幕で分けあって予算を縮減するのはどうかと思いますので。優先順位の低い陸の重装備を中心に減らして欲しいですね。
投稿: 曹士 | 2013年9月 9日 (月) 23時38分
ドナルド 様
自民党としては、防衛費は増やすと言ってきた手前、実質的な大幅削減は必要にない金額にはなると思いますが、額面としては、ここからかなり減ると思います。
私は、人件費や実員を減らす(陸自普通科を含め)事には反対なので、削れるのはやはり機甲と特科にならざるを得ないと思っています。
ただし、全体的に、異様なほどのメンテナンスは改めてしかるべきだと思います。
車両も、艦船も、航空機も、自衛隊の装備は異様にピカピカです。
あれを改めれば、相当の費用が出てくると思うのですが・・・
香港からの客人 様
内容的に、大体分かりましたので大丈夫です。
ドナルドさんへのコメントでも書きましたが、装備のピカピカ化を止めれば、大分予算は出てくると思います。
曹士 様
あの多目的救難艦は、どんな力学で出てきたのか、私も疑問です。
潜水艦が増強されているとは言え、確かに必要性に疑問が付く装備ですね。
投稿: 数多久遠 | 2013年9月12日 (木) 21時32分