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2013年3月28日 (木)

レーダーのビーム幅とオシント

ちょっと気になって技術的な話題を。
(この記事では、フェイズドアレイレーダーを前提として書きます。)
ミサイルディフェンスに関連して、誤解されている情報の一つに、「弾道ミサイル探知の為には、レーダービームの幅を絞る」とされる情報があります。

この手の話は時々耳にするので、どこかに有力なソースがあったのだと思いますが、それは分かりません。

ただ、これが誤解であることは、高校の物理を学んだ人なら、考えれば分かることです。

フェイズドアレイレーダーは、平面状に並べた素子が、それぞれに位相を調整された電波の発信を行なうことで、レーダービームの発信方向を調節します。
詳しい理論は、めんどいので省きます。
勉強したい方は、フェイズドアレイレーダーやホイヘンス=フレネルの原理でもググッて下さい。

結論だけ書くと、レーダーのビーム幅は、使用する周波数と、使用されている素子の間隔によって決まります。
なので、例えばこんな写真を見れば、そのレーダーのビーム幅はだいたい分かってしまうのです。(車体サイズ等から素子間隔等を推測する)
Pac3
PAC-3用レーダーのアレイ(素子)面拡大写真

SPY-1レーダーなどは、表面にカバーがあるため、写真だけでは素子数が分かりません。

しかし、レーダー面の大きさは写真から分かってしまいます。
それに加えて、素子の大きさは、周波数とも関係するため、使用する電波の周波数が分かれば、素子の大きさは自ずとある程度分かります。
素子とレーダー面の大きさが分かれば、個数も自ずと分かってしまいます。

そのため、写真や周波数帯など、簡単に分かってしまう情報は必ずしも秘匿されません。
そして、そこから推定されるビーム幅も、理論的に判明してしまうため、必ずしも秘匿されません。

wikipediaのSPY-1レーダーの項目には、多田智彦氏と野木恵一氏が世界の艦船氏に書いた記事の情報が転載されていますが、周波数帯、素子数、レーダーのサイズ、ビーム幅等が乗っています。
そこでは、SPY-1のビーム幅は幅1.7度のペンシル・ビームとされています。

これは、レーダーの原理上の限界であり、弾道ミサイル探知だからと言ってビームを絞ることができる訳ではありません。

そして、これらは、レーダーの写真と周波数が分かれば、オシントの手法により判明してしまう事実なのです。

さらに、軍事情報の現場においては、これにシギントの情報が加わります。
SPY-1レーダーがSバンドとは言っても、そのバンド帯の中でどの辺りが使われているのか、そうなれば素子の大きさやビーム幅の詳細がどの程度なのか等、米軍が公開している以上の情報が分かるのです。

ちなみに、弾道ミサイル探知の為に絞る必要性があるのは、ビーム幅ではなく捜索範囲です。(この辺りは、また気が向いたら書きます)

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