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2013年2月13日 (水)

レーダー照射に対する反撃は違法行為

北朝鮮の核実験がありましたが、驚きのニュースではないので、引き続きレーダー照射関連の記事です。

保守派に弓引くようにもなってしまい、記事を書くことに抵抗もあるのですが、実情を訴えて行く必要があると思うので、今回は、片山さつき議員のブログを取り上げて、自衛隊の行動権限について書きます。

防衛出動がかかっていないからといって、何もできないわけではない!そしてまともな近代「軍」なら挑発としても非合理な面がありすぎる。」(片山さつきオフィシャルブログ13年2月7日)

 2007年の石破防衛大臣の「レーダー波を照射されたら自衛措置をとっていいのが国際法上の常識」という答弁以外にも、自衛隊法95条で「自衛隊の武器等の防御のための武器の使用」は、許されており、護衛官もsHー60のヘリも、勿論防御対象のはずですから、この条文の諸条件がクリアされていれば、こちらも武器使用は可能です。


よく勉強されていると思います。
今回のレーダー照射に対して、”国際法上”自衛措置として攻撃できる事に言及している方、及び”国内法上”は「正当防衛として反撃できる」と言う方は多い(政治家にさえ存在する)ですが、片山議員のように95条に言及している方は、私がネットサーフする中では見当たりませんでした。「レーダー 95条」でググッてもヒットしません。

しかし、残念ながら「正当防衛による反撃」だけでなく、95条の適用も間違ってます。

まずは、”論外”である正当防衛による反撃から書きます。
正当防衛は、刑法36条で規定されています。

(正当防衛)
第三十六条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
後略

これは、日本国民の全ての個人に対して、その生存権を保障し、自己防衛することを認めた条文です。
しかし、自衛隊の部隊が、国権の発露として武器を使用することを認めている訳ではありません。
そんな事を認めたら、それこそ自衛隊が存在し、他国の艦船や航空機から脅威を受けることに反撃することによって、自動的に戦闘が始まってしまうことを認めることになります。

正当防衛とほぼセットで語られる37条の緊急避難でも同じです。
自衛隊の行動に関しては、刑法では、むしろ35条の正当行為の方が、関連が深い条文です。

(正当行為)
第三十五条  法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

しかし、これも法令又は正当な業務となっている通り、自衛隊が行動するにあたっては、自衛隊法などの関連法規の存在が必要とされています。

そもそも、防衛省・自衛隊を始めとした官庁は、行政法で規定された権限の中でだけで行動できることになっており、禁止されていないことなら何でも行なってOKな民間とは違います。
自衛隊の場合、自衛隊法等で認められた権限のみが行使できます。

そうなると、今度は「自衛隊法に正当防衛が規定されているだろ」と思う方がいると思いますが、それらは危害許容要件として刑法36条の要件が借りられているだけです。

ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

ただし書きとして、人に危害を加えて良いのは、正当防衛や緊急避難の場合のみであると、むしろ権限を限定しているに過ぎません。

以上のように、国内法上は、正当防衛であれば(正当防衛を根拠として)、護衛艦が反撃できたというのは、完全に誤りです。
(国際法上は別です)

では、自衛隊には何の権限もないのかと言えば、そうではありません。片山議員が指摘した95条の武器等防護の規程があります。

(武器等の防護のための武器の使用)
第九十五条  自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料を職務上警護するに当たり、人又は武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備若しくは液体燃料を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。


95条は、なんら行動任務(防衛出動や治安出動等)が発令されていない場合においても武器を用いる事が規定されている唯一(対領侵を除く)の条文です。
つまり、95条は、平時であっても常に適用されている条文なのです。
片山議員は、この点を認識して書かれていると思います。

だがしかし……
一つ問題があります。
片山議員が「護衛官(護衛艦の誤字)もsHー60のヘリも、勿論防御対象のはず」と書いているように、この95条の武器等防護の規程は、実際の運用は、かなり制限をされています。
詳細は、「武器等の防護に関する達」に規程されていますが、これは公開されていません。
参考答申書

警護物件の区分等警護任務に関する部分及び武器使用の命令等武器の使用に関する部分については,自衛隊法95条に規定する武器等の防護を実施する際の武器使用の手順や考え方等が含まれており,これを公にした場合,我が方の手の内を明かすことになり,相手方がこれを踏まえた行動を採ることが可能となる……後略


公開されている情報としては、防衛省のサイトで説明されている武器使用規程のページがあります。
武器使用規程

2 武器などの防護のための武器の使用

 武器などの警護を命ぜられた自衛官は、武器などやこれらを操作している人などを防護するため必要な場合に、通常時から武器を使用することが認められています(自衛隊法第95条)。この武器使用は、次のような性格を持っています。

(1) 武器を使用できるのは、職務上武器などの警護に当たる自衛官に限られること。

(2) 武器などの退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器を使用できないこと。

(3) 武器の使用は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度に限られていること。

(4) 防護対象の武器などが破壊された場合や、相手方が襲撃を中止し、又は逃走した場合には、武器の使用ができなくなること。

(5) 正当防衛又は緊急避難の要件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならないこと。


分かりにくい文章ですが、解説すると今回の反撃は、絶望的であると分かります。

まず、護衛艦の艦長や火器管制を行なう隊員が警護に当たる自衛官に指定されていなければなりませんでした。
実際に指定されていたかどうかは、情報がありませんし、通常どうだという事も書く訳にはいかないので伏せます。
しかし、本来、この条文は、不法分子が基地等に侵入して、武器の破壊や、特に”強奪されることを防止”することを念頭に制定された条文なので、警護に当たる自衛官は限定されるものだという事実があります。
そして何より、次のようなニュースの存在が、この警護に当たる自衛官が限定されていることを示しています。
北ミサイル対応、F15がイージス艦を警護へ」(読売新聞12年3月30日)

防衛省は(中略)、東シナ海などに展開するイージス艦にF15戦闘機の警護をつける方針を固めた。

 ロシアや中国の情報収集機が飛来し異常接近する恐れがあるためで、自衛隊法95条の「武器等防護のための武器使用」規定を初めて適用する形で配備する。

普段は、護衛艦が攻撃を受けても、航空自衛隊機がこれを防護するために武器を使用することは許可されていないのです。

また、「武器などの退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器を使用できない」と書かれている通り、今回の照射事案でも、まず第一に退避し、退避が困難で、逃げ切れない、あるいは拿捕されそうであるなどの状態で無ければ、武器を使用できませんでした。

さらに、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度に限」られる上、「正当防衛又は緊急避難の要件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならない」以上、火器管制レーダーの照射に対して、砲やミサイルを発射して反撃すれば、完全にやり過ぎであり、違法でした。

つまり、片山議員が指摘した95条を根拠にした反撃も、完全にムリだったのです。

私(空)や中村秀樹氏(海)、それに柳井たくみ氏(陸)等、自衛隊OBが、こぞって創作モノで国内法制上の縛りによって、自衛隊の絶望的な状況を描くのは、何も話をドラマチックにしたいからだけ(もちろんそれもあるけど)ではありません。



では、どうすべきかという論は、また別の機会に書きたいと思います。

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火器管制レーダー照射事件」カテゴリの記事

コメント

自衛隊の行動に関する命令が出ていない平時で
護衛艦や戦闘機の乗員が"武器などの警護を命じられた自衛官"でない場合は、
たとえ攻撃されたとしても、武器を使用する事は出来ない
という事になるのでしょうか?

対領空侵犯措置にあたる戦闘機乗員も"武器などの警護を命じられた自衛官"でない場合は、
攻撃されたとしても反撃することは出来ないという事でしょうか?

うわあ、状況は思ったより酷い。久遠氏の所為ではないにせよ、感想を書かせて頂きます。

>まずは、”論外”である正当防衛による反撃から書きます。

誰だ!最初にこんな見解を示した人間の首を出せ!(怒)

はあ。お偉いさんはこの見解を公式にしたなら、自衛隊はこれで行くしかないだろうけど、論理性を欠けるとしか評価できません。

>これは、日本国民の全ての個人に対して、その生存権を保障し、自己防衛することを認めた条文です。

自衛官も「日本国民」で有り、この生存権を保障される位は当然ではないでしょうが?そして「他人」及び「生存権以外の権利」の部分は完全に脱落しましたね。

そして、第36-37条は、「自己防衛することを認めた」より、政府の公権力の限界を認める条文ではないでしょうが?現代道徳の見地から見れば、元々人間は自分の正当の権利を保護する事は当然です。だが、共同の福祉を考慮し、この権限の殆どを政府や警察に任し、これで生存権を初め色々な権利を守るとする。だが、所詮警察は物理的限界が有り、侵害が起こしたから干渉出来るまで時間が掛かる。勿論、干渉出来るでも力が及ばず場合も稀ながら有る。

この時、警察が守ると言う前提が崩れた以上、制約だけを機能させるわけも行かない。公権力が届かない時、権限の一部は私人に戻す。これを表すのは第36-37条です。逆に言えば、もし事故は瞬間に警察に届く事が出来、そして警察は瞬間移動能力が得ればこの二条は消えるのです。

こう言う意味で本来政府の公権力が届き難い分自衛官の正当防衛、緊急避難権限は(外敵に対し)普段より高いの筈。逆にこれを無くすとはどうする?

>そんな事を認めたら、それこそ自衛隊が存在し、他国の艦船や航空機から脅威を受けることに反撃することによって、自動的に戦闘が始まってしまうことを認めることになります。

国内法で処理すれば、武器で攻撃すれば普段殺人に該当します(他は銃刀法等も在るけど、殺人に比べたら些細なので割愛)。ここは正当防衛の「相当性」要件で縛れば足りるだろう!「殺気」を感じただけ致命的な攻撃で返すのは相当ではない、だからやはり有罪とし、軽減もしない。これでいいだろう。

実際の攻撃されたなら、この時最低限の戦闘を認めても、国際上支障が出ない筈。寧ろそうしないと以後国際上かなりの支障が出ます。

>正当防衛とほぼセットで語られる37条の緊急避難でも同じです。

私今まで聞いたのは自衛官の緊急避難「権」中の「逃げる」の部分が自衛隊法第56条により制約されるだけです。まあ、確かに自衛官は危険と対面する時「緊急避難」として逃げるならやってられませんので共同の福祉の為に制約するも合理的で有り、違憲とは想いません。

だが、もし戦闘の権利すら否定すれば、人権に対する制約は普通の軍よりも厳しいに成ります。

自衛隊は抗命等への刑罰が普通の軍より軽い。これに対しの答弁に、政府は自衛官は軍人ではなく飽くまで公務員なので、普通の公務員待遇との差は大きいすぎるとは行けないの見解を示したと理解してます。

つまり、公務員は共同の福祉の為に民間人には無いの制約を受けなければなりません。そして、自衛官は特別公務員で、仕事の特殊性上、さらなる制約を受けなければ成りません。だが、飽くまで必要最小限とするの見解です。

なら、ここで軍よりも厳しいの制約を出してどうする?名目はシビリアンコントロールとしても、共同の福祉としても行けない、違憲な解釈としか評価できません。
=====
>しかし、これも法令又は正当な業務となっている通り、自衛隊が行動するにあたっては、自衛隊法などの関連法規の存在が必要とされています。

うわ、これで「正当な業務」の部分は密かに脱落されました。

>まず、護衛艦の艦長や火器管制を行なう隊員が警護に当たる自衛官に指定されていなければなりませんでした。

ここは、清谷氏の意見は思い出す:政府は憲法を変える前に、何故先ず憲法内で出来る事をしないでしょう?

民間人として、「つまり、誰がか責任を取って指定すればいいわけだな。なら、指定しまえ!」と思っています。

で言うか、何故最初から全自衛官に↓の様な物を出せないでしょう?
『防衛大臣からの一般命令:
1.自衛隊法第95条に基づき、全自衛官に陸、海、空自衛隊のあらゆるの武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料(以下、「武器」とする)を護衛する任に命ずる。
2.自衛隊法第95条の2に基づき、全自衛官に陸、海、空自衛隊の施設(本邦外が除く)を護衛する任に命ずる。
3.護衛する際、優先順位は現場の先任自衛官で決める。やも得ないの場合、先任自衛官の決定により、一部の武器や施設を守らない事が出来る。
4.細部は各幕僚監部で定める。』

日本語は不自由でも、10分も掛からない、命令一発で万年な平和。例え左翼にバレても内容は批判し難いし、精々一回の「砲火」しか受けない。毎回も渋々特定対象を明示、この都度左翼の下らない批判を受けるより全然マシではないでしょう。

だが、そこまで行ってないにせよ、必ずしも此れほど絶望ではない。「北ミサイル対応、F15がイージス艦を警護へ」を読むと、飽くまで戦闘機を警護隊列に加える為適用させた事。自衛艦の自己防衛、僚艦防衛の基準は既に第95条の元書いたので新たに定めるまでも無いに読めます。
=====
>今回の照射事案でも、まず第一に退避し、退避が困難で、逃げ切れない、あるいは拿捕されそうであるなどの状態で無ければ、武器を使用できませんでした。

以後の物は未だ変な解釈されなければ、保守で有りながら少なく平時であればStarting Stanceとして国際間でも常識的と認識してます。

>つまり、片山議員が指摘した95条を根拠にした反撃も、完全にムリだったのです。

逆に言えば、議員すらこの文句を読んで全く政府の解釈と異なる理解が得られたとも言えます。今の解釈は法を書いた議員達を意思ですが?
=
>私(空)や中村秀樹氏(海)、それに柳井たくみ氏(陸)等、自衛隊OBが、こぞって創作モノで国内法制上の縛りによって、自衛隊の絶望的な状況を描くのは、何も話をドラマチックにしたいからだけ(もちろんそれもあるけど)ではありません。

柳井たくみは読んでないが、中村氏ですら一応私人的な正当防衛まで否定してない(自衛隊は世界一番弱い38の理由)。新たな絶望の谷を拝見しました…

同士を集めて、この状況をHuman Rights Watch辺に書けばどうですが?勿論、安全保障の見地ではなく、人権の見地で。政府に正式答弁を強いる事ができるかもしれません。そして、HRW向けの答弁中、↑の見解は国の恥に成る為出せる訳が無いと想います。

間違えました。
対領空侵犯措置での正当防衛武器使用は、
"これを着陸させ〜必要な措置"
に含まれるのですね。

有事法ができるまで自衛隊はたこつぼを掘ることも、野戦病院を開設することもできませんでした。いまも同様な規制は多々あります。つまり軍隊として機能するための法的なインフラが整備されているとは言い難い。

その拘束を一番受けるのが陸自です。
軍隊として活動すれば「犯罪集団」になります。ですから陸自の想定や装備調達は空理空想に走りがちです。
他国の軍隊見ればトンデモなことを平気でやっている。

自衛隊は法令という根っこを持っていないあだ花ともいえるでしょう。
法的根拠がないから怪しげな装備を調達したりします。

ところが一部の軍オタは防衛省・自衛隊は常に正しい、間違わない。
疑うなと主張します。

兵器のスペックとか口泡とばして議論する前に、この法環境でまともな
装備調達、運用が可能かを考えるべきです。


>正当防衛

刑法36条の規定は、要件を満たせば犯罪が成立しないという規定であり、特に権限を付与する規定ではないですから、正当防衛により自衛隊は反撃できる、ということはないです。

しかし、同条は自己保存本能により認められた規定で自己保存本能は法の成立以前に認められるものですし、また緊急避難の37条2項の規定のような規定がないことから、正当防衛の規定は任務中の自衛官にも適用されます。

なので、要件を満たせば、自衛官の正当防衛として認められる余地はあります。

ですから、正当防衛による反撃行為は、滑稽な話という意味で「論外」ということはないと思います。

ただ、今回は結果として「急迫不正の侵害」はなかったですから、正当防衛として犯罪の成立が阻却されることはないです(ただ、誤想防衛の成立の余地はあると思われます)。

なお、自衛隊法95条やその2の規定の但し書きについては、その前の合理的に認められた武器の使用という権限を制限する規定であって、自衛官に刑法36条の規定を適用しないというものではありません。

>自衛隊法95条やその2の規定の但し書きについては、その前の合理的に認められた武器の使用という権限を制限する規定

95条に基づいて行われた行為は刑法上は正当行為になると思うのですが、
正当防衛の要件を結果的に満たしていなかったにも関わらず、人に危害を与えてしまった場合は罪になるのでしょうか?

SUS 様
警護を命じられた自衛官ではない隊員が、平時に攻撃された場合、撃たれても反撃できないというのは、パイロットの場合95条根拠ではムリですが、対領侵を根拠にはできるというのが、現行政府解釈です。
護衛艦の場合、艦長が警護を命じる事ができる場合(この権限があるかどうかは公開されていないため、あくまで仮定として書きます)その時点で口頭命令を発して95条を使用することができます。艦長に命じる権限が無い場合は、当然ムリです。
ただし、艦長というのは、かなりの権限を与えられた役職です。

香港からの客人 様
刑法の正当防衛・緊急避難根拠について、自衛官であっても、日本国民ですから、その権利が制限されている訳ではありません。
ただし、それは自衛官としてではなく、一個人、法的には私人としての権利です。
つまり、刑法の正当防衛が根拠の場合、自衛官としても命令は法的には関係なく、最終的に引き金を引いた個人ただ一人だけが、私人として過剰防衛による殺人の被告人となることになります。
特に、今回のケースのように、レーダー照射に対して、ミサイルなり砲なりを撃って、中国艦乗員を死傷させたのなら、完璧に過剰防衛です。
また、自衛隊の装備を私的に使用したことにもなります。

国際法については、今回触れていませんが、当然、現行国内法規が許す以上のことが可能ですので、国内法を国際法並にすることは可能です……が、いままで自民党政権さえも放置してきた現状があります。

自衛官全員に対する95条の適用……懐かしいです。
その昔(現役自衛官時代)に、私も同じ事を言ってました。
同じ事を考える人間は多いです……が、現状はF-15の例を挙げたとおりです。
障害は、内閣法制局と政治家の不勉強ですね。

「自衛隊は世界一番弱い38の理由」は未読ですが、「尖閣諸島沖海戦」における正当防衛に言及した部分は、SUS様へのレスで書いた口頭命令のことだろうと理解しています。
私人としての正当防衛は問題がありすぎます。

人権ですか。ああ言った方々にはちょっと……

ハイジ 様
有事法制が出来て、大分マシにはなったのですが、この件を含めて、手当されてない部分は多いですね。

丸坊主 様
上の方で、香港からの客人様へのレスとして書いた通り、私人としての正当防衛は権利としてありますが、あくまで自衛官である”私人”としての権利です。
私人として責任を取ることになります。

なので、お書きになっているとおり、あくまで任務中の”自衛官”の正当防衛であって、自衛隊部隊の正当防衛は成立しません。
自衛隊法内には、危害許容要件として借りられているものはありますが、正当防衛を根拠として行動をオーソライズする条項はありません。

急迫不正かという点は、勿論です。

なお、この件については、転載されたBLOGOSやツイッターでも反響があり、「ホントか?」というような感想もあるので、補足記事を書く事を考えています。
かなりめんどいので、しばらく時間を頂くことになると思いますし、かな~り人のふんどしを借りることになりそうですが……。

警察官が職務を執行するとき、一人一人の個々の警官であっても、警察全体を代表してその職務を執行します。
それと違って、軍・自衛隊は、個々の兵員・隊員が組織全体の代表として職務を執行することはありません。
(あくまでも、「組織全体の一部」としての行動・行為しかありえない)

従って、個人(自然人)を対象とした刑法を自衛隊や個々の隊員の職務行為に適用・応用しようという発想自体が間違い。
国からしてこれが判っていない。

自衛隊は軍隊ではないというタテマエから、組織の淵源も発想も警察延長になっています。

これを矯正しない限り、自衛隊は期待された職務を遂行できない場面が今後益々表面化してくるでしょうね。

いつも大変勉強になります。
現在の、自衛隊、防衛省(というか内閣)の法律解釈はそうなのでしょうが、そもそも、憲法にせよ、法律にせよ、国家という存在があって初めて、機能するものだということは、実に自明すぎて、いまさら確認さえする必要のないことです。
そうであるいじょう、国家という存在を脅かす脅威が、仮にある場合はそれを排除することは、そもそも、法律が存在している以上、前提として、ことさら条文に書かなければならないことでさえないはずです。
つまり、ここの条文がどのように解釈可能であろうと、そもそも法律というものがなぜ存在することができるのかという前提に立ち返れば、国家の存在に対する脅威を排除することは、法律の適用によって制約されるどころか、法律の適用の前提であるはずです。
ちなみに、こういう考え方は、たとえば民主主義の元祖みたいに理解されている、フランスなどでもかなり有力な考え方です。そういう意味で、民主主義者としては(!)、今回のような議論はほんとうに、???です。

補足します。
確かに、軍隊の行動に法的制約、そして民主主義的なコントロールは、不可欠です。ただし、それは、本来軍隊が守るべき、国民と、国家の理念や理想、原則といったものに由来する制約であって、いわば国家の外部から、国家の存在を脅かしているものに対する対抗手段を、国際法の規定する水準を超えて、縛るというのは、まったく本末転倒です。
まあ、この意味では、国家の自衛権の発動を、国際法による規制を超えて、縛ろうとする日本国憲法は、まさに憲法としての自己矛盾をきたしているわけですが、ただ具体的な条文を改正しなくても、国家の自衛権は、国際法と国民の基本的人権とのかかわりで生じる合理的制約以上の制約を受けないという、立場から解釈するだけで、現在問題になっているさまざまな愚かしい事態は、ただちに、雲散霧消すると思います。
というか、そういう前提でみなさん、大いに議論したらよいのではないでしょうか。

問題無く出来るのは、飛んできた物体(ミサイルなど)の破壊くらいですかね。
後は射撃管制レーダーを使われたら、飛来するミサイルから防御するという名目で射撃管制レーダーを使うくらいです。
そうなると、相手のミサイルにやられないために、警備には汎用DDでなく、DDGまたは、どこまでもDDGよりのDDを使うのが正しい選択になりますね。

SUS 様
私へのコメントではないかもしれませんが、レスしておきます。

違法となります。
ただし、殺人罪や傷害罪ではありません。正当行為であるため、これらの適用は受けません。

95条を根拠として、正当防衛あるいは緊急避難に該当しない状況で、人に危害を加えた場合は、刑法194条の特別公務員職権乱用罪、死亡させたケースで特に酷いケースの場合は、196条の職権乱用致死罪に問われます。
これは警察官が、警職法7条を根拠とした場合と全く同じです。

myu5 様
軍隊では無いとの建前、及び警察予備隊であったという歴史からくると思われる警職法7条の準用の多用等、内閣法制局に対して、政治がイニシアティブを取って動かないと難しいと思われます。

実は護憲派かも 様
日本の法制度は、非常に教条的ですね。

国内法上の権限を、国際法並にすべきとの意見は、全くもってその通りだと思いますが、集団的自衛権さえ行使できないというのが、現在の政府見解ですから……

この問題が、さらに注目されるためにも、中国がもっと反発してくれたらよかったのですが……黙っていた方が得だと判断したようです。

Suica割 様
おっしゃるとおり、出来るのはミサイル迎撃程度でしょう。
あの距離ですと、ミサイルでのミサイル迎撃はキツイですから、DDGに限るよりも、対空射撃能力の高い砲装備の艦艇がいいように思います。あたご型なんかはDDGと言えど、砲の対空射撃能力は高くないので。

@Suica割氏
>問題無く出来るのは、飛んできた物体(ミサイルなど)の破壊くらいですかね。
>そうなると、相手のミサイルにやられないために、警備には汎用DDでなく、DDGまたは、どこまでもDDGよりのDDを使うのが正しい選択になりますね。

私は、これだからあえて対空戦闘力低いの船を選んだと想います。

確かに、ミサイルだけ破壊すれば一番議論を起こさせない方法です。だが、例えイージス艦でも、近距離の8枚を受けば迎撃する確証が無い。なら下らない議論を起こしても反撃しなければ成らない。

そして、例え防御だけで何とかやり過ごしたとしても、明白な攻撃を受けたのに反撃しないなら、以後日本の抑止力に酷いダメージが受けるでしょう。内閣法制局は理解しなくでも、政治的に考えれば反撃する方が有利です。

第95条適用しても、実際SSM等で反撃できるが、この否がやはり正当防衛と緊急避難に成ったので、ここは必要性と相当性が考慮しなければ成らない。

相当性は攻撃された時点で大分成立している。だが、正当防衛は主に相当性が見ると言われてますが、やはり必要性は無さ過ぎると通せないでしょう。

必要性は相手の攻撃力、攻撃するの蓋然性と防衛力に寄ります。日本の様な平和ボケ社会の視点なら、確かに実際攻撃されなければ、攻撃蓋然性が高かったの主張は受けないだろうから、取り敢えず、相手に先手を許す。

攻撃された後、攻撃するの蓋然性は高いのは例え日本人でも認めざるを得ません。なら、相手の残存攻撃力(ミサイル数)と自分の防御力に寄ります。最大の必要性は勿論、相手の残存攻撃力が高いと自分の防御力が低いの場合で一番成立できる。逆に言えば、もし相手は半分以上の攻撃力を消耗した場合、これ以上の攻撃は来れないので、何故防御だけでやり過ごせないの疑問が自然に来る。

Q:自衛隊は「緊張が走った」というのは、応戦の準備まで始めたということでよろしいのでしょうか。

A:いえ、そういうことではありません。あくまでも、やはり特異的な状況だということで、そこは緊張する状況なのだと思います。

防衛省ホームページからとってきた物です


それで質問なんですがこの「応戦の準備」ってどのラインまでのことをいうのでしょうか?

1ミサイル等が飛んできて迎撃できる部分まで
2ミサイル等を迎撃、その後攻撃できる部分まで

自分的にはこの辺りだと思うのですがどうなんでしょうか?
まぁ距離3㌔だったら「あ、撃って来た」って言ってる間に着弾してしまう気がしますが・・・

皆さんのコメントを含めて大変興味深い内容で、予習・復習を余儀なくさせられてしまいましたが、深過ぎて一夜漬けでは勉強し切れませんでした。

まず最初に非常に違和感を覚えたのが、軍隊の行動に対して刑法(正当防衛・緊急避難)が論議されているところでした。
やはり本来であれば、刑法の『正当行為』の適用として、軍隊が合法的に認められた行為(その他の法規・条令)が論議されるのが通常だと思うのです。

myu5さんの、警察官と軍人は『組織を代表して行動するか、組織の一部として行動するか』の視点は興味深いですが、別な視点として
(アメリカの場合)全ての警察官はCommissioned officer(権利委譲された官:エージェントやデピュティ:代理人と同義)であり、軍の場合は士官のみがCommissioned officerになります。

合衆国の全軍最高司令官は大統領で、この最高司令官から法に則って権利委譲された者がCommissioned Officer(士官:基本的に少尉以上の全士官)。
警察官は、市長(市警であれば)から法の規定により権利委譲された者がCommissioned peace officer(Sworn officerという言い方が一般的ですが)。

つまり、法的に最高司令官の権限が明確になっていない限り、その権利委譲された部下の権限も明確にならないわけですよね。
明確な法整備がなされずに軍備を持つ事は、張子の虎になるだけではなく、解釈の相違によってどうにも取れる非常に危険な団体になる可能性も秘めていると思います。

警察の武器使用では、個々の対応としての正当防衛が審議される場合も多いですが、正当防衛ではなく警察官の『正当行為』として合法かどうかの審議の方が多いです。
(刑法上に警察官の武器使用権限が明記されています)

対して、軍の武器使用において個々の軍人の正当防衛を論議する事は皆無で(軍人同士のケンカなどは除いて)、命令を下した士官(Commanding権限のCommissioned officer)の判断が『正当行為』に当るかどうかが論議の争点になります。
『銃口が向けられた』とか『発砲を受けた』などの場合の判断も、刑法上の正当防衛に合致するかどうかではなく、UCMJ(連邦法:Uniform code of Military Justice)に合致しているかどうかが、争点になります。

刑法上の正当防衛で言えば、昔は相手の銃口が向いた時点での反撃が正当防衛でしたが、最近は(特に警察官)対象者が腰付近に手を当てただけで発砲(反撃)が合法になっているようです。
(銃口がこちらに向いてからの反撃では明らかに遅い)
これから考えると、レーダー照射(拳銃や小銃で言えばレーザーサイトの赤線)を当てられた時点での反撃は(アメリカでは)正当防衛に当ると思います。(ただし、軍の行動に刑法の正当防衛が論点とされる事はありませんが)

なお、刑法(&民法)上の緊急避難は、やむを得ない行為の結果として『第三者に』被害を与えた場合ですから、もし軍の行動で『緊急避難』が論議されるとすれば、やむを得ない危険回避行動の結果『針路変更をして漁船の網を引き裂いた』とか、『旅客機の進路を妨害した』『破壊した相手の船舶から油が流れ出して漁場やさんご礁に被害が生じた』『歩兵部隊が畑の中を突っ切った』『戦車が駐車車両に傷付けた』ような場合に当るかと思います。

なかさん 様
ミサイル迎撃の準備は、接近する以上しているでしょうから、「応戦の準備」が意味するところは、反撃を行なう部分ではないでしょうか。
3キロでも、ミサイルなら迎撃可能な距離でしょう。
主役はCIWSで、主砲が間に合うかどうかというところだと思いますが。

純@LA 様
アメリカが普通で、自衛隊が異常なんだと思います。
歴史的に、自衛隊の前身が警察予備隊であったこともあり、平時の武器使用権限関係は、警察官職務執行法の準用を受ける部分が多数あります。

本質的に、立法関係者が「軍隊」を理解していないでしょう。

数多久遠様
レスありがとうございます。

特別公務員は"裁判、検察若しくは警察の職務を行う者又はこれらの職務を補助する者"とされていますが
自衛官も該当するという解釈がされているのでしょうか?

SUS 様
すいません。
前のコメントは私の間違いでした。

自衛官は特別職国家公務員であっても、特別公務員ではないので、やはり殺人罪等になってしまいます。
確認したつもりでしたが、確認ミスです。

数多久遠様
公務員職権乱用罪で済むかと思いましたが、殺人罪等に問われるのですか
そうなると95条等の平時の武器の危害使用は、極めて抑制的にするしかありませんね
ありがとうございました

SUS 様
残念ながら、自衛官の法的権利は、警察官異常に保護されていません。
詳しくは、最新記事で紹介したHPを見て頂けたらと思います。

なぜかリンク先が消えてるので、メモ帳に保存しておいたやつを貼ります。
こっちの話だとなんか気楽に対処できそうに思えてしまうので、混乱してきました。
古い記事に書き込んで申し訳ありませんが、気になったので

絹笠泰男の防衛・軍事法学論集
http://gunjihougaku.la.coocan.jp
法令による行為(刑法35条)と正当防衛(刑法36条)及び緊急避難(刑法37条)との異同 
http://gunjihougaku.la.coocan.jp/newpage17.html
>これは、イコール刑法で言う正当防衛や緊急避難ではないのです。
>この隊法95条の武器使用権限を行使して人を殺傷する場合には、刑法36条又は同37条の法文に定めた制約条件、例えば37条を例にしますと
>「1自己又は他人の生命、身体、自由又は財産に対する現在の危難を避けるため止むを得ずした武器使用であること 
>2武器使用によって守ろうとした利益と武器使用によって侵害する被害者の不利益とを比べた場合にバランスが保たれていること。」等を隊員自らが
>職権判断をして武器を使用しなさい。ということなのです。

>言い換えますと規定がより複雑化しないように、刑法の正当防衛要件や緊急避難要件を本条の武器使用条件に転用するという立法技術なのです。

>ですから、警護隊員が武器使用に際して刑法36条の成立要件の一である「急迫不正の侵害」がないのに、あると誤信して人を射殺した場合でも、
>一般の正当防衛や緊急避難に当たる場合とは違い、それによって直ちに犯罪として捜査を受けるとか(事情を尋ねられる場合はあります。)、
>起訴されたりすることはありません。

>また原則として裁判にかけられるとはいうこともありません。そうだからと言って軽く考えられては困るのですが、その行為が、
>例えば「この機会を利用して奴を殺してやろう。」というような職権を乱用する悪意がない限り刑法第196条(職権乱用致死傷罪)とはなりませんから、
>刑事上では問題とはならないのです。

>勿論、殺人罪とか傷害罪とかは問題にはならず、従って刑法上の正当防衛とか緊急避難も関係ありません。
>刑法35条の「法令による行為」に該当する行為であるからです。

ホルスタイン 様

絹笠先生のHPは、消えていたのですね。

別の記事でも書きましたが、絹笠先生は、私にとっても防衛法学の先生であり、私が知る限り、過去も現在も、絹笠先生を上回る方はいらっしゃいません。
ちなみに、私も全ページ保存してあります。

さて、問題の隊法95条の武器等防護ですが、引用されている部分は、この武器等防護を命じた場合の隊員個人に対する刑事罰が成されるかを論じた部分かと思います。

つまり、警護任務を課されていた隊員が、警護を行った結果、誰かが死亡したようなケースにおいて、殺人罪に問われるか、ということを論じた部分です。

これは、警察官が犯罪者に対して、拳銃を使用したケースと同様です。

対して、この記事が論じていたのは、警察官が拳銃を使用できるケースは、どのような場合であるかというような内容について、隊法95条の武器等防護を解説したものです。

もし、ある程度法学を勉強したことがあるのでしたら、自衛隊法も行政法の一種として、行うべきこと、その際にどのように行うべきか規定された法律であり、行政法以外の民間を規制する法律のように、行ってはならないことを規定した法律ではない、という点に注目して頂ければ、分かりやすいかと思います。

なお、この記事より後になって、同様の行為が米軍に対して行えるように法改正され、実際米軍艦艇や米軍機に対して警護を行ったというアナウンスが防衛省から成されています。

そうしたことも含め、この記事が書かれた当時と比べ、恐らくかなり広範な行動の際に、この95条が使用できるように命令が発せられていると思います。
しかし、要件は緩和されたわけではありませんので、この記事当時と比べ、今でも状況としては、大きく変わっておりません。

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