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2013年2月

2013年2月27日 (水)

POMCUS方式による離島防衛

防衛省の予算や訓練の内容を見ていると、防衛省は離島防衛に戦車などの装軌車両を投入することは、あまり意図していないようです。

それは、中国が、南西諸島に対して、大規模な着上陸作戦を行なう可能性は低いと見ているからでしょうし、日本の対応としても、戦車や自走砲を戦略機動させることの負担が大きいからでしょう。

しかし、多額の予算を注ぎ込んだ大量の戦車や火砲を北海道に置いたまま、蓋然性の高い対中国の事案に対して備えないことはもったいないことでもあります。

そのため、沖縄へも戦車等を配備すべきだとする意見も少なくありません。
しかし、沖縄(特に沖縄本島)の世論、訓練用地が確保困難であることや赤土の流出による公害の問題を考えると、戦車等を配備することは現実的ではないでしょう。

そこで、こんなプランはどうでしょうか。
それは、POMCUS方式による、機甲戦力の離島配備です。

POMCUS(ポムカスorポンカス:Prepositioning Of Materiel Configured in Unit Sets)は、冷戦期において、アメリカ陸軍が大量のソ連機甲戦力による電撃的侵攻に備えるため行なっていた方式です。

ソ連の侵攻に対し、大量の部隊を配備しておく事は、アメリカにとっても非常な負担でした。しかし、大量の戦力を海上輸送してヨーロッパに送り込むことも、同じように困難でした。
しかし、人員だけなら、民間航空機を使用して、大量に送り込むことはできます。
そこで考えられたのが、整備された装備・弾薬を事前集積するPOMCUS方式です。

これと同じ事を、先島の離島において行なうのです。
具体的には、機動の困難な90式戦車を、拠点となり得る大きな有人島(宮古島、下地・伊良部島、石垣島)に各1個戦車中隊規模、中規模の有人島(西表、与那国)に各1個戦車小隊規模の装備を事前集積します。
必要な戦車の数は50~60両、現在360両ある90式の1/6程度です。

この程度の数であっても、中国が先島に手を出すつもりであれば、相当な障害となります。

それに、このPOMCUS方式には、副次的な効果もあります。
それは、運用に関わる要員を減らせることです。
試算として、戦車を考えてみます。
90式50両とすれば、乗員だけで150人にもなります。25年度に増員される陸自人員数の1.5倍にもなります。
これだけの数
、機甲部隊の維持に必要なくなる訳ですから、この分を普通科等に振り返られることになります。

また、普段の整備は、整備するだけなので、技術さえあれば、体力などは無くても構いません。
自衛官として定年になった方を、専門の会社を作らせた上で雇い入れる形で、事実上再任用することもできます。(この方式は、最近広まっています)

沖縄世論の反感が出にくい形で、離島の防衛力を高めると共に、機甲戦力の維持に関わる負担を事実上軽減できるのです。
25年度の予算に、南西諸島における陸自の態勢の充実に係る検討が入っていますが、普通科だけでなく、POMCUSによる機甲・特科戦力の活用も検討してみたらどうでしょうか。

ただし、POMCUS集積資機材を敵に奪われると極めてやっかいな事態になります。POMCUSを行なうとしたら、
ゲリコマに奪われないよう、普通科部隊の駐屯は必須です。

なお、同じような発想として、洋上に事前集積船を置いておくプランもありますが、これはこれで負担も大きいですし、作戦正面が明確な南西諸島においては、POMCUS方式の方が適当だと思われます。

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2013年2月25日 (月)

ダブルスタンダードな仲井真知事

沖縄県の仲井真知事が、移設問題に関して、矛盾に満ちた発言をしています。

当初決めた方向に進める方が現実的ではないか。路線を変えるのは簡単ではない

普通は15年たてば計画がおかしいと考えるが、15年も動かない計画が正しいのだという不思議さ。頭脳明晰(めいせき)な人たちが国防関係にいる割には何でこういうことに固執するのか

共に、後述リンクより。

前半のコメントは那覇軍港の移設について、後半のコメントは普天間基地の移設についての発言です。

那覇軍港 知事「移設が現実的」」(琉球新報13
年2月15日

ダブルスタンダードも極まれりですが、これを際立たせるように書いてしまう琉球新報の意図も掴みきれません。
これを当然だと考えているなら、おかしいのは
記者の頭な気がするのだが……

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2013年2月23日 (土)

突っ込み甘い産経新聞

産経新聞が、今更ながらに野田内閣のダメダメぶりを報じています。
尖閣侵犯、野田内閣“弱腰”で中国エスカレート 「関係悪くなる」岡田氏主導、曳光弾封印」(産経新聞13年2月4日)

自民党政権発足後、野田内閣のダメダメぶり情報がボロボロと出てきますが、これもその一つです。
対領空侵犯措置における警告射撃は、世界中で当然の権利として行なわれている事ですが、それを規制するなんて、岡田氏及びそれを了承した野田総理の不見識は、想像を絶します。

が、この事は産経が十分に報じているので、これ以上は突っ込みません。

本題は、この記事中でサラッと書かれた注目すべき事象の重要性について、産経記者が全く気が付いていない事です。

野田前首相が退陣する直前の12月25日頃、尖閣諸島周辺海域に展開した中国の海洋監視船「海監50」が格納庫を開閉する動きをみせた。海監50はZ9A型ヘリコプターを搭載可能で、格納庫から出たヘリコプターが尖閣諸島に急襲上陸する可能性も考えられた。これを受け、野田氏も海監50からヘリコプターが飛び立った場合は、曳光弾による警告をスクランブルの手続きに含めることをようやく了承したという。


尖閣周辺、特にその領海内において、中国公船の活動を苦々しく思いながらも、日本側が強制的な措置が執れない理由は、公船であることもありますが、国連海洋法条約によって、中国船にも無害通行権を認めざるを得ないためです。

産経記事にあった「海監50」の格納庫の開閉が、領海内であったのか、接続水域だったのか不明です。
しかし、仮に格納庫開閉の次にくる搭載ヘリの発艦・着艦が、領海内で行なわれれば、無害通行の要件を満たさず、わが国の平和、秩序又は安全を脅かしていると認定され、日本が自衛権を行使、つまり攻撃することも国際法上は可能でした。

第19条  無害通航の意味
1略
2 外国船舶の通航は、当該外国船舶が領海において次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされる。
中略
e 航空機の発着又は積込み


つまり、中国艦は、無害でない行為、日本の主権を脅かす行為をする一歩手前だったことになります。

また当然に、領海内で発・着艦する艦載ヘリは、領空侵犯していることになります。

防衛省は、この可能性を考慮しているが故に、野田元総理に警告射撃の実施も迫ったのでしょう。
産経(の記者)は、新聞なのですから、このくらい気が付いて欲しいものです。
まあ、他はろくに報じてない訳ですが……

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2013年2月21日 (木)

自衛官OBブログリンク集

自衛官OBのブログ&HPリンク集です。
掲載ルール、情報募集要項は記事末に記載しています。


国会議員
・宇都隆史参議院議員
参議院議員宇都隆史オフィシャルブログ
元空自要撃管制官の宇都隆史議員のブログ。
@TakashiUto

・佐藤正久参議院議員
佐藤正久オフィシャルブログ ”守るべき人がいる”
言わずと知れたヒゲの隊長こと佐藤正久議員のブログ。
@SatoMasahisa

その他政治家
・岡本かずのり京都府府議会議員
岡本かずのりのブログ
ほぼ活動報告なので、自衛隊話題は少ない。
@kazunoriokamoto


陸自
・廣川ヒロト氏
夢は物語の中に~書評・感想文ブログ
施設科で4年間勤務された廣川ヒロト氏のブログ。私同様に、アマゾンで電子書籍も販売されてます。

・福島和可菜
福島和可菜オフィシャルブログ「敬礼!直れ!ありがとう。」
自衛官OBタレントとして活躍中の福島和可菜氏のブログ。


海自
・文谷数重
隅田金属日誌(墨田金属日誌)
所属するサークルの宣伝用ブログのようですが、書かれているのは文谷氏一人のようです。揚陸関係のディープな話題が多い。

・やっさん
やっさんのぶろぐ(映画、趣味、アメリカ研究、日記など)
記事がカテゴリー分けされていないので、過去記事を読むことはつらい。


空自
・1pen1kyusho3
古志山人閑話
日記でも書いてらっしゃったのかと思うくらい、昔話が詳しいです。

・絹笠泰男
絹笠泰男の防衛・軍事法学論集
防衛関係法の非常に高度な情報が掲載されたHP。

・佐藤守氏
軍事評論家=佐藤守のブログ日記
現役時代から、部内紙等で文筆活動が盛んだった佐藤守氏のブログ。

・sen*i0*20
老兵の繰り言
なんと、特攻隊の生き残りにして現役ブロガーsen*i0*20氏のブログ。自衛隊黎明期の話は貴重です。

・田母神俊雄
田母神俊雄オフィシャルブログ「志は高く、熱く燃える」

航空幕僚長を公募論文問題で事実上解任された田母神俊雄氏のブログ。
@toshio_tamogami

・vipor2jp
空自准曹OBどうしてる?
最近はじめられたようです。


長期更新停止中及び更新停止
・qin
気まぐれ回顧録
職場結婚された方なので、自衛官妻ネタもある。

・jato114
元自衛官のつぶやき
普通科連隊重迫撃砲中隊いたjato114氏のブログ。

・とんぼ
飛行機乗り★とんぼのアメブロ
アクロもやっていたとんぼ氏のブログ。

・ナベ
海上自衛隊OBのその後・・・・・

貴重種?の海自ナベ氏のブログ

・媛乃
I LOVE 陸上自衛隊
なかなか面白い記事が多かったのですが、無期限更新停止宣言をされちゃってます。

・ライダー
“MONOLOGUE”by toshidorobo2
戦車話題が多いブログでしたが、閉所宣言が出てしまってます。

・ルパン
元イーグルドライバーのpittsとエアロバティックと飛行の話
事故で亡くなられてしまったため、更新停止しています。飛行機話題多し。

********************
以下、
掲載ルール、情報募集要項等

過去には、多数の現役自衛官によるHPがありました。しかし、現在は部内で規制されており、皆無となっています。

そのため、現場感覚に基づいた情報の発信は、私を含めた自衛官OBに限られています。これらOBによる情報発信は、一般の方にとっては、貴重な情報源になると思います。

そこで、自衛官OBによるブログリンク集を作成致しました。
簡単なコメント付きです。
なお、ブログへのリンクの他、ツイッターユーザー名が分かる場合は、記載しております。
ご活用下さい。

掲載順序は、政治家を除き、各幕別のお名前での50音順とさせて頂きます。
また、長期更新停止中のもの、及び更新停止のものは、別項と致しました。

自衛官OBか否かの判断基準は、ご本人の記事等に明示的に記載があるか否かで判断することと致します。
ツイッターのみの方は記載していません。
また、内容については、全く自衛隊に触れられていない方は除外する方針です。

当ブログでは、記事内容は誤字等を除き、基本修正しない(誤りを正す場合は、別途修正記事を書くか、記事末に補足を書く)方針ですが、本記事に限っては、皆様から情報を頂き、随時アップデートして行く予定です。

情報は、当記事へのコメントとしてお書き下さい。
随時募集中です。
なお、当記事へのコメントのみ、リンクへの反映後、削除させて頂きますので、ご了承下さい。


それにしても、こうして並べて見ると、各幕間の(文化の)差異が際立っているようで、興味深いです。

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2013年2月19日 (火)

反撃が違法行為である主張についての防衛・法律専門家の見解

レーダー照射に対する反撃は違法行為」については、内容が衝撃的であることもあって、転載されたBLOGOSの方でも注目されました。
しかし、何十年も前から変わっていない明文化された法律について、実情を書いたら衝撃的だという事実は、別の意味で衝撃的ですが……

さて、その衝撃を感想一言で書けば「ホントか?」だっただろうと思います。
BLOGOSの方に頂いたコメントには、屁理屈ではないかというものもありました。

私はいい加減な事を書いた訳ではありません。
しかし、ただの元幹部自衛官というだけでは、その見解が信じられない事は、理解できます。
自衛官として、防衛関係法の講義を受けた私の所感も同じようなものでしたし……

なので、今回は前掲リンク記事内容の権威付けを行ないたいと思います。

ただの幹部自衛官の言が信じられなくても、同種の見解が、他の防衛関係者や法律の専門家からも示されていれば、納得せざるを得ないでしょう。
そして、今や膨大な情報が溢れるネットには、そんな情報もちゃんとあるのです。
絹笠泰男の防衛・軍事法学論集

使われているイラストが、ちょ~と胡散臭い
<m(__)m>(先生申し訳ありません)
事と、レイアウトが美しくない
<m(__)m>(先生申し訳ありません)
ため、何気なく覗いた方は、怪しげなサイトとして無視してしまいがちなHPですが、このサイトを運営している絹笠泰男氏は、現時点において、間違いなく日本随一の防衛関係法学者です。
そして恐らく、絹笠氏を越える人も、当分は現れないのではないかと思います。

絹笠氏は、旧陸軍特別幹部候補生第1期生(陸軍伍長)にして、戦後は航空自衛隊幹部として勤務され、最後は2等空佐として定年退官された防衛の専門家です。
かつ、自衛隊定年後に裁判官を勤められた法律の専門家でもあります。
ご尊顔は、某3佐の手によるという肖像画像そっくりです。
Jigazou
前掲HPより

絹笠氏は、現役時代も航空自衛隊幹部学校で防衛関係法の教鞭を取っただけでなく、定年退官も統合幕僚学校等で部外講師として教鞭を取りました。
そのため、私を含め絹笠氏の薫陶を受けた自衛官は多数に及びます。
防衛と法律の双方に、これほど高い見識を持った人物は他にいないでしょう。

当ブログに書かれている防衛法関係知識は、ほぼ絹笠先生の教えによるものと考えて頂いて差し支えありません。差異がある部分は、私の不勉強と状況の変化によってアップデートが必要と考えられた部分です。
先生の講義は、非常にワクワクさせられる内容で、目を皿にして、耳をダンボにして聞いた事を覚えています。(多くの同僚は、睡魔と絶望的な戦いを強いられていましたが……)

絹笠氏のHPには、95条の武器等防護のための武器使用に関する内容は少ないですが、武器の使用権限に関しては、領空侵犯措置法講義の内容が、対領侵においては自衛隊法第7章に権限規程がない事によってかなり差異がありますが、参考になるでしょう。
少なくとも、正当防衛が自衛隊部隊の権限であるのか、私人としての権利であるのか等は記載があります。正当防衛を根拠とした武器使用を論外とする理由は、理解して頂けると思います。

絹笠氏のHPを見れば、私の見解が、一幹部自衛官の屁理屈では無いことは分かって頂けると思います。

ただし、法律に関しては、正確に書けば難解になり、分かりやすく書けば不正確になるというテーゼがあります。
絹笠氏のHPは、分かりやすく書くことを放棄してはいないものの、正確に書くことを貫いておられるので、正直言って当ブログで分かり難いと思った方は、絹笠氏のHPは、なおのこと難解です。

しかし、自衛隊の行動権限について興味のある方は、少なくても前掲の領空侵犯措置法講義はお読み頂いた方がいいと思います。
対領空侵犯措置が、如何に危うい法的裏付けの元に行なわれているのか、良く分かるでしょう。
これは、私が以前の記事「自衛隊法の不備「領域警備」について法改正の動き!」で、別の機会にと書いたままサボっている項目でもあります。

また、95条の武器等防護のための武器使用及び96条の施設警護のための武器使用は、平時における基地警備(96条)と基地外行動における部隊の警備(95条)において、唯一使用可能な権限(対領侵を除く)についての規程なので、地味ながら、自衛隊では割と研究されている条文であることを付記しておきます。
海警行動を含む行動任務が発令されていない状況においては、海自艦艇においても95条が唯一の武器使用権限規程条項です。

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2013年2月17日 (日)

自民政権下の25年度防衛関連予算案-民主政権下の概算要求との比較_その2

前回の続きとして、自民政権下の25年度防衛関連予算案民主政権下の概算要求を比較しま

⑧下地島?活用研究
ニュースでも報じられた下地島の活用が念頭にあると思われる「南西諸島における航空自衛隊の運用態勢の充実・強化に係る調査研究」が盛り込まれています。
調査研究でありながら、5千万もの予算が付いているので、相当突っ込んだ研究というより、実質交渉が行なわれる見込みです。
期待しましょう。

⑨戦闘機の能力向上改修
戦闘機(F-15)近代化改は、民主概算では6機ですが、補正予算で4機、自民予算案で6機、実質10機の大幅拡充となってます。
戦闘機(F-15)自己防御能力の向上も、1機から補正予算による前倒し計上2機で倍増。
南西諸島の防空態勢の向上について、総理直々の指示があったためでしょう。

⑩南西諸島を始めとする島嶼を含む領土の防衛態勢の充実
自民予算案では、「迅速な展開のための輸送力及び機動力の向上」として、次の3項が特出しで書かれています。
・96式装輪装甲車の取得(11両:14億円)
・軽装甲機動車の取得(陸自44両:14億円、空自1両:0.4億円)
・多用途ヘリコプター(UH-60JA)の取得(1機:43億円)
これを見る限りでは、陸自
、島嶼防衛で装軌車両を使用する可能性は低そうです。

⑪自衛隊の機動展開能力向上に係る調査研究
機動展開における民間輸送能力等の活用策に係る調査研究が行なわれます。
ナッチャンや車両輸送用のトレーラーの活用策に、ようやく本腰を入れるようです。

⑫オスプレイ調査研究
これも、事前報道のあったものです。「諸外国におけるティルト・ローター機の開発・運用等に関する調査研究」として800万円が盛り込まれています。出張、調整だけで消えそうな額ですが。

⑬10式戦車&96式装輪装甲車
私が書いたからではないと思いますが、10式戦車の調達理由は、ゲリコマ対処ではなく、「陸上における火力戦闘能力の向上」となっています。さすがにマズイと言うことになったのでしょう。
ただし、総額が増えたにも関わらず、
調達量は10式戦車が16両から14両に、96式装輪装甲車が13両から11両に減っています。
戦車については、自民政権になって、増やされることを懸念しておりましたが、重きを置く部分を見誤ってないようで、少し安心しました。まだ多いと思いますが。

⑭消えた火力戦闘車
と言っても、消えたのは「火力戦闘車」という名前です。自民予算案でも「装輪155mmりゅう弾砲の開発」としては残ってます。
ただし、民主概算にあった「99式自走155mmりゅう弾砲の砲部と重装輪回収車の車体部を活用」という文言は消えてます。
詳細はハッキリしませんが、より軽易な装輪車両になるのではないかと思われます。
恐らく、陸幕の中でも異論があったのでしょう。

⑮消えたRT-5
民主概算にあったT-5モドキの「滞空型無人機システムの研究」は消えました。
代わりに「航空機搭載型小型赤外線センサーシステムインテグレーションの研究」が自民予算案に盛り込まれています。
機体ではなく、搭載システムの研究に絞る模様です。
搭載機がコブラボールのような有人機になるのかもしれません。その方が妥当でしょう。

⑯消えた航空戦術団
民主概算では「航空戦術団(仮称)の新編(空自)」という項目が入っておりました。
Photo
各種教導部隊をまとめるものだったのですが、消えた理由は分かりません。
無くても総隊司令部が頑張れば良いだろ、という事になったのかもしれません。

⑰基地防空用地対空誘導弾
民主概算要求では1式調達予定だったものが、自民予算案では、消えています。ただし、24年度の補正で2式調達されているので、実質的に前倒し調達された状態です。
これは、下地島の防衛に役立つでしょう。

以上、見逃しもあると思いますが、ざっと比較してみました。
海空の増強がより鮮明化され、陸自は普通科主体に戦力増強し、戦車などの重火力は抑制しています。
概ね私の危惧、懸念が解消される方向で修正がされているようです。
良かった。

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2013年2月15日 (金)

自民政権下の25年度防衛関連予算案-民主政権下の概算要求との比較

タイトルの通り、自民党政権下でまとめられた25年度の防衛関連予算案(以下、自民予算案と表記)を、民主党政権下でまとめられた概算要求(以下、民主概算と表記)と比較して見たいと思います。
以下、画像は全て上記の防衛省資料より

まず最初に、防衛関係費の総額から見て行きます。
民主概算では、4兆5851億円でした。
これが自民予算案では4兆6804億円に増えました。実に953億円もの増です。
概算要求より予算案が多いなんて、普通はあり得ないはずですから、これは素晴らしいことです。

伸び率を見るとマイナス続きだった防衛関係費が、大幅にプラスになったことが分かります。
Ws000000

しかし、総額の推移を見ると、確かに増額に転じたものの、いささか目を顰めたくなります。
Ws000001
確かに増えてます、24年度より。
ですが、22年度よりは低いのです。
そう、民主党政権1年目、”あの”鳩山内閣1年目にまとめられた予算より少ないのです……。
つまり、ぬか喜びなどしてられないと言うことです。

しかし、私はこの防衛関係費の総額については、文句を付けようとは思いません。
細かい論評はしませんが、大局を見れば、妥当な所ではないかと思ってます。

では、気を取り直して、詳細に入って行こうと思います。
最初の3つは、自民予算案で特別に項目が設けられ、重視されている項目です。

①自衛官の充足
自民予算案の目玉として、各幕約95名前後の増員が盛り込まれました。
各幕とも、ほぼ同じ人数なのですが、これは政治的配慮のような気がします。その上で、陸94人増<海96人増<空97人増というのが、象徴的に見えます。

②十分な維持修理費等の確保による装備品の可動率の向上
護衛艦、哨戒ヘリ、AWACS、E-2Cの維持経費が増やされています。
尖閣対処で、火急の部分が増やされたと言うところです。これも海空です。

③教育訓練の充実
陸自は、「島嶼部への迅速な部隊展開及び対応能力向上に資する」訓練を実施します。
Ws000002
写真が示すように、空中機動、海上機動を含めた訓練です。主力は当然普通科です。

海自は海演、空自はコープノースグアムが挙げられています。
また、警察機関との協同も特記されています。陸自と警察の方は民主概算にも入っていましたが、海自と海保の訓練は自民予算案で盛り込まれています。

④固定レーダーサイトの更新
民主概算では、高畑山の更新だけでしたが、自民予算案では宮古島が追加されました。
FPS-4に更新したところで、尖閣上空の低空目標は探知できませんが、それでも監視能力は高まります。

⑤潜水艦及び対潜能力関係
艦艇用潜望鏡探知レーダーに関する研究は消えてしまいました。
優先順位が低いと考えられたのだろうと思いますが、果たしてそれでいいのだろうか疑問です。
代わりに、潜水艦用のESM器材として、広帯域受信機の整備と音響情報分析機材の整備が盛り込まれています。これは潜水艦の能力向上に資するものです。
より、攻撃力重視になったということでしょう。

⑥海自ヘリ
掃海・輸送ヘリ(MCHー101)の取得(2機)と哨戒ヘリ(SH-60K)の取得(3機)は落ちてしまいました。
全体が増額されていた中、これが落ちた理由はハッキリしません。これも防御的な性格の兵器なのが印象的。

⑦対ステルス警戒
来ました!
警戒監視技術に関する調査研究として、わずか1千万ですが、短波レーダーの調査研究が盛り込まれています。
資料では、「遠距離から小型航空機等を探知するため」とされていますが、これは明らかに対ステルス技術です。短波レーダーは、共振と呼ばれる現象が、ステルス戦闘機の探知に有効なため、対ステルスレーダーとして期待される技術です。
これと長射程の赤外画像誘導ミサイルが実用化できれば、非ステルスでもステルス機に対抗できる可能性があります。

次回に続く。

*********************
2/
6追記
掃海・輸送ヘリ(MCHー101)の取得(2機)と哨戒ヘリ(SH-60K)の取得(3機)は、落ちたのではなく、補正予算で前倒し取得されてました。
海空を減らすようなことはしませんね。

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2013年2月13日 (水)

レーダー照射に対する反撃は違法行為

北朝鮮の核実験がありましたが、驚きのニュースではないので、引き続きレーダー照射関連の記事です。

保守派に弓引くようにもなってしまい、記事を書くことに抵抗もあるのですが、実情を訴えて行く必要があると思うので、今回は、片山さつき議員のブログを取り上げて、自衛隊の行動権限について書きます。

防衛出動がかかっていないからといって、何もできないわけではない!そしてまともな近代「軍」なら挑発としても非合理な面がありすぎる。」(片山さつきオフィシャルブログ13年2月7日)

 2007年の石破防衛大臣の「レーダー波を照射されたら自衛措置をとっていいのが国際法上の常識」という答弁以外にも、自衛隊法95条で「自衛隊の武器等の防御のための武器の使用」は、許されており、護衛官もsHー60のヘリも、勿論防御対象のはずですから、この条文の諸条件がクリアされていれば、こちらも武器使用は可能です。


よく勉強されていると思います。
今回のレーダー照射に対して、”国際法上”自衛措置として攻撃できる事に言及している方、及び”国内法上”は「正当防衛として反撃できる」と言う方は多い(政治家にさえ存在する)ですが、片山議員のように95条に言及している方は、私がネットサーフする中では見当たりませんでした。「レーダー 95条」でググッてもヒットしません。

しかし、残念ながら「正当防衛による反撃」だけでなく、95条の適用も間違ってます。

まずは、”論外”である正当防衛による反撃から書きます。
正当防衛は、刑法36条で規定されています。

(正当防衛)
第三十六条  急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。
後略

これは、日本国民の全ての個人に対して、その生存権を保障し、自己防衛することを認めた条文です。
しかし、自衛隊の部隊が、国権の発露として武器を使用することを認めている訳ではありません。
そんな事を認めたら、それこそ自衛隊が存在し、他国の艦船や航空機から脅威を受けることに反撃することによって、自動的に戦闘が始まってしまうことを認めることになります。

正当防衛とほぼセットで語られる37条の緊急避難でも同じです。
自衛隊の行動に関しては、刑法では、むしろ35条の正当行為の方が、関連が深い条文です。

(正当行為)
第三十五条  法令又は正当な業務による行為は、罰しない。

しかし、これも法令又は正当な業務となっている通り、自衛隊が行動するにあたっては、自衛隊法などの関連法規の存在が必要とされています。

そもそも、防衛省・自衛隊を始めとした官庁は、行政法で規定された権限の中でだけで行動できることになっており、禁止されていないことなら何でも行なってOKな民間とは違います。
自衛隊の場合、自衛隊法等で認められた権限のみが行使できます。

そうなると、今度は「自衛隊法に正当防衛が規定されているだろ」と思う方がいると思いますが、それらは危害許容要件として刑法36条の要件が借りられているだけです。

ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。

ただし書きとして、人に危害を加えて良いのは、正当防衛や緊急避難の場合のみであると、むしろ権限を限定しているに過ぎません。

以上のように、国内法上は、正当防衛であれば(正当防衛を根拠として)、護衛艦が反撃できたというのは、完全に誤りです。
(国際法上は別です)

では、自衛隊には何の権限もないのかと言えば、そうではありません。片山議員が指摘した95条の武器等防護の規程があります。

(武器等の防護のための武器の使用)
第九十五条  自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料を職務上警護するに当たり、人又は武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備若しくは液体燃料を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条 又は第三十七条 に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。


95条は、なんら行動任務(防衛出動や治安出動等)が発令されていない場合においても武器を用いる事が規定されている唯一(対領侵を除く)の条文です。
つまり、95条は、平時であっても常に適用されている条文なのです。
片山議員は、この点を認識して書かれていると思います。

だがしかし……
一つ問題があります。
片山議員が「護衛官(護衛艦の誤字)もsHー60のヘリも、勿論防御対象のはず」と書いているように、この95条の武器等防護の規程は、実際の運用は、かなり制限をされています。
詳細は、「武器等の防護に関する達」に規程されていますが、これは公開されていません。
参考答申書

警護物件の区分等警護任務に関する部分及び武器使用の命令等武器の使用に関する部分については,自衛隊法95条に規定する武器等の防護を実施する際の武器使用の手順や考え方等が含まれており,これを公にした場合,我が方の手の内を明かすことになり,相手方がこれを踏まえた行動を採ることが可能となる……後略


公開されている情報としては、防衛省のサイトで説明されている武器使用規程のページがあります。
武器使用規程

2 武器などの防護のための武器の使用

 武器などの警護を命ぜられた自衛官は、武器などやこれらを操作している人などを防護するため必要な場合に、通常時から武器を使用することが認められています(自衛隊法第95条)。この武器使用は、次のような性格を持っています。

(1) 武器を使用できるのは、職務上武器などの警護に当たる自衛官に限られること。

(2) 武器などの退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器を使用できないこと。

(3) 武器の使用は、事態に応じ合理的に必要と判断される限度に限られていること。

(4) 防護対象の武器などが破壊された場合や、相手方が襲撃を中止し、又は逃走した場合には、武器の使用ができなくなること。

(5) 正当防衛又は緊急避難の要件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならないこと。


分かりにくい文章ですが、解説すると今回の反撃は、絶望的であると分かります。

まず、護衛艦の艦長や火器管制を行なう隊員が警護に当たる自衛官に指定されていなければなりませんでした。
実際に指定されていたかどうかは、情報がありませんし、通常どうだという事も書く訳にはいかないので伏せます。
しかし、本来、この条文は、不法分子が基地等に侵入して、武器の破壊や、特に”強奪されることを防止”することを念頭に制定された条文なので、警護に当たる自衛官は限定されるものだという事実があります。
そして何より、次のようなニュースの存在が、この警護に当たる自衛官が限定されていることを示しています。
北ミサイル対応、F15がイージス艦を警護へ」(読売新聞12年3月30日)

防衛省は(中略)、東シナ海などに展開するイージス艦にF15戦闘機の警護をつける方針を固めた。

 ロシアや中国の情報収集機が飛来し異常接近する恐れがあるためで、自衛隊法95条の「武器等防護のための武器使用」規定を初めて適用する形で配備する。

普段は、護衛艦が攻撃を受けても、航空自衛隊機がこれを防護するために武器を使用することは許可されていないのです。

また、「武器などの退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器を使用できない」と書かれている通り、今回の照射事案でも、まず第一に退避し、退避が困難で、逃げ切れない、あるいは拿捕されそうであるなどの状態で無ければ、武器を使用できませんでした。

さらに、「事態に応じ合理的に必要と判断される限度に限」られる上、「正当防衛又は緊急避難の要件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならない」以上、火器管制レーダーの照射に対して、砲やミサイルを発射して反撃すれば、完全にやり過ぎであり、違法でした。

つまり、片山議員が指摘した95条を根拠にした反撃も、完全にムリだったのです。

私(空)や中村秀樹氏(海)、それに柳井たくみ氏(陸)等、自衛隊OBが、こぞって創作モノで国内法制上の縛りによって、自衛隊の絶望的な状況を描くのは、何も話をドラマチックにしたいからだけ(もちろんそれもあるけど)ではありません。



では、どうすべきかという論は、また別の機会に書きたいと思います。

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2013年2月10日 (日)

レーダー照射事件とESMの重要性

前回記事「レーダー照射問題における高度な政治判断」に対する補足記事です。

電子戦の最も一般的な分類、ESM、ECM、ECCMの内、その意義や効果が最も理解されないのがESMです。

前回記事へのコメントとして、日本にESMの能力があることを中国も承知しているのだから、日本が中国のレーダー特性を知っていることを知っているのでは、
あるいは、ロックオンされて警報を発するレーダー警戒装置なんて装備として当たり前との意見を頂きました。

しかし、レーダー警戒装置があれば、それだけで警報を発すると思うのは間違いです。

ESMにも2種類あるからです。
一つは、レーダー警戒装置等が警報を発すること、そして、もう一つはレーダー警戒装置が照射を受けたレーダー波と比較対象とするためのレーダーデータを、それ以前に収集してデータベース化しておくことです。
ESMとして、特に大切なのは、後者の方です。

普通は、火器管制レーダーのデータを収集させないため、射撃訓練等は、敵国によってデータ収集されない空間・時間において行ないます。
それを敢えて収集するため、日本の場合は、YS-11EBやEP-3を上空に飛ばして、標的である火器管制レーダーの捜索範囲の遥か遠方から収集(レーダーの捜索範囲は一定でも、レーダー波自体は、それより遠距離に飛んで行きます)するか、あるいは潜水艦を訓練海域に侵入させ、ESMマストを使用して潜行したまま収集させます。

更に、これらのデータは、空自であれば、電子戦訓練隊等が解析しなければ、火器管制レーダーのものなのか、火器管制レーダーであっても、ロックオンした状態なのか等までは分かりません。

ちなみに、火器管制レーダーを目標に向けて照射すること=ロックオンであるとか、火器管制レーダーで対象を補足する前段階における捜索レーダー的運用でもロックオン時と同じレーダー波が出ているとの認識は誤りです。

レーダーの型式によって異なりますが、火器管制レーダーであっても、大抵少なくとも3つの段階の作動モード(捜索-粗追随-精追随(ロックオン)等)があり、PRF(繰り返し周波数)、送信出力(ピーク、平均)、パルス幅等が変わります。(もちろん捜索レーダーでも同じです)
これに加えて、天候によるクラッタ状況や妨害電波の存在の有無などに応じて、周波数ホッピングやスペクトラム拡散の技術が、選択的に使用されたり、されなかったりします。

つまり、レーダー警戒装置が警報を発し、今回のように現場で火器管制レーダーを照射されていることが即座に認識できるためには、これら無数の場合分けに応じた膨大なレーダーデータの集積(これこそがESM)が必要な訳です。

これらは、プロとすれば常識的な事実ですが、軍事評論家であっても理解されていない
があります。

前回記事では、
「今回の公表は、自衛隊が照射を受けたレーダー波を、火器管制のための諸元で発信されていることを、自衛隊がデータとして把握していることを暴露してしまいました。」
と書いただけだったので、はなはだ分かりにくかったようでしたので、今回の補足記事を書きました。

今回の公表によって、ハード的に変えられないものはともかくとして、中国軍は変更可能なレーダー運用要領は変更するでしょう。
潜水艦が危険を冒して収集したデータベースがパーになりかねない訳です。

また、更なる公開により、レーダー電波の解析結果を公表すれば、更なる危険も考えられます。
レーダー照射:日本政府、証拠公開へ」(毎日新聞13年2月9日)

護衛艦が受信したレーダー電波の解析結果を公表すれば、「自衛隊の分析能力を知られてしまう」(防衛省幹部)との危惧は強い。小野寺氏も「出せるデータと出せないデータがある」と語る。


ビデオは問題ありませんが、レーダー波の解析結果は、絶対に公表してはなりません。
なぜなら、自衛隊の解析が完璧なら問題はありませんが、少しでも誤謬があれば、中国側として、日本の解析能力の”限界”が確定的に分かってしまうためです。

レーダーの解析結果なんて、どうせ一般の方には意味不明ですし、前掲報道にもあるとおり、どんな証拠を突きつけたところで、「中国は絶対に自分の非を認めないだろう」(官邸スタッフ)と言う見込みがある以上、レーダー波の解析結果は、非公開とするか、さもなければ、中国からしたら明らかにデタラメであると分かる本当のデタラメを公開したらいいのです。
中国は、本物であってもデタラメだと言い張るに決まっているのですから、最初からデタラメを公表しても結果は同じです。(国家としての誠実性の問題は、第3国の専門家からすれば明らかになってしまいますが)

今回同様の野放図な電波照射が、過去にも行なわれていたのかについては、確かな情報がありません。
継続して野放図であったのなら、確かにデータは取り放題だったでしょうから、そのデータには、それほど重要性があるとは言えませんし、この記事は妥当でないという事になります。

しかし、普通は、おいそれと火器管制レーダーを照射することなどありませんし、もし行なうとしても、レーダー諸元を簡易なモノにごまかすことを行ないます。
今回の事象が、今回1回だけだったとしても、3分も照射を続けるなど、中国軍のレベルが低いと断ずるには十分ですが、これを過去から継続していたのであれば、中国海軍のレベルは、夕刊ゴシップ紙が書くように近代海軍のレベルにはないと言えます。
私には、そこまで中国軍がマヌケだとは思えません。

同じ事を自衛隊が行なったら、間違いなく処罰モノです。注意では済まされず、なんらかの懲戒処分でしょう。
中国艦艦長の人事(軽処分で済むか、文字通り首が飛ぶか)が分かれば、中国海軍のこの問題に対する認識が分かって面白いと思われます。

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2013年2月 9日 (土)

レーダー照射問題における高度な政治判断

中国艦による自衛隊艦艇に対する火器管制レーダー照射問題について、最初に報道を聞いた際の私の感想は、多くの一般の方とはかなり異なった物だったと思います。
「大した話でもないのに、これを公開するなんて、政府首脳は何と愚かなんだ!」と思ったのです。

ネットでもマスメディアでも、今回の事象について、ボタン一つでミサイルが飛んでくる状態であり、銃口を突きつけられた事と同じだとして、中国を非難し、自衛隊が危険な任務を行っている事に対して同情的な意見が多いように思えます。

しかし、もちろん詳細は書けませんが、似たような、あるいはもっと危険を感じる事象は、過去にもいくらでもあった話です。
対領空侵犯措置を行なう空自や日々周辺海域を哨戒している海自は、他国の艦船や航空機と睨み合うことは日常茶飯事ですし、ミサイルの長射程化が進んだ現代では、領空、領海から相当遠距離であっても、相当な緊張感を持って監視しなければならない状態にあります。

元自衛官のくせに、自衛官の危険を軽視するのかと言われそうですが、私からすれば、いつロケット弾攻撃を受けてもおかしくないイラクに、碌な権限も与えずに送り出した国民が、今さら何を言ってるんだという気にもなります。
日々行なわれている対領侵任務や海自による哨戒活動でも同じです。
(これらについては、また別記事で書きたいと思います)

今回の事象も、そんな数多くの事象の一つに過ぎません。
そのため、私は今回の事象も、それほど騒ぐほどのモノでもないにも関わらず、こちらの情報収集能力を暴露するなんて、何と愚かなのだと思ったのです。

中国が、今回の公開に対して、しらを切っていることから、政府は更なる情報開示を検討していると言われています。
政府、レーダー情報の開示検討=防衛相「証拠持っている」―中国公船の動きは沈静化」(ウォールストリートジャーナル13年2月9日)
この記事の中でも防衛省は情報公開に反対している事が書かれていますが、当然ながら、当初の公開にも防衛省は反対したはずです。

 小野寺五典防衛相は9日午前、都内で記者団に「証拠はしっかり持っている。政府内で今(どこまで開示できるか)検討している」と表明。「防衛上の秘密にも当たる内容なので慎重に考えていきたい」とも語った。

 防衛省内には「自衛隊の解析能力を相手に教えることになる」として、開示に否定的な意見が強い。


今回の事象で、中国は違うということが判明しましたが、自衛隊を含む普通の軍事組織の場合、敵対国の航空機や艦艇が接近してきた場合、レーダー波のデータを収集することを防止するため、安全上などの観点で最低限のものを除き、レーダーは停止させます。止められないものについても、機能を限定して、古くさいレーダーと同じようなものに見せかけます。

このため、訓練や演習が止まることも頻繁にあります。何ヶ月も準備した演習であってもです。
ロシア機進入で日米演習一時中断 日本海上空」(47ニュース10年12月8日)

普通の軍隊の場合、そこまでしてレーダー諸元(周波数等)の情報は、秘匿に努めます。

そして、敵国のレーダー諸元を把握していることは、こちらにスパイでも送り込まれて以内限り、敵には分かりませんから、自国のレーダー諸元を秘匿する以上に重要な情報です。

今回の公表は、自衛隊が照射を受けたレーダー波を、火器管制のための諸元で発信されていることを、自衛隊がデータとして把握していることを暴露してしまいました。

自衛官的な発想としたら、あり得ない行動だった訳です。
ですから、冒頭の私の感想「政府首脳は何と愚かなんだ!」となった訳です。

しかし、この話題が、私の想像を遥かに超えて話題になり、中国(外交)が必死に火消しに走り、アメリカのパネッタ米国防長官が「中国が太平洋の平和と繁栄に自国の利益を見いだしたいのであれば、他国を威嚇したり、さらなる領土を求めて領有権問題を起こしたりすべきではない」と述べ、中国を牽制するに及んで、私は政府首脳の評価を改めました。

今回の開示は、軍事的には、極めて重要な機密を暴露することであり、非常にマイナスです。
しかし、開示によって得られた外交的なプラスは、これを補って余りある大成果でした。

これこそ、”高度な政治判断”の結果であり、シビリアンコントロールが、よく言われる軍の暴走を止めるという消極的なものではなく、積極的な意味でプラスに働いた結果です。

同じ”高度な政治判断”でも、漁船体当たり事件で民主党政権が行なった、船長の釈放とは、余りにも差があります。
(民主党政権は、政治判断だと認めてませんが)

それにしても、今回の事象で、普通の軍隊がそこまでして秘匿に努める情報を、中国軍は野放図に垂れ流していることが明かになりました。
ハード面は、異常な軍拡をしていますが、こう言ったソフト面では、まだまだどころか、相当にレベルが低いと言えます。

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2013年2月 8日 (金)

変わる毎日新聞&TBS_変えたのはネット?

いささか深読み過ぎの感は自分でも感じますが、ここ最近、毎日新聞とTBSの姿勢変化を感じます。

まずは、新聞社の姿勢が如実にでる社説から。
社説:アルジェリア事件 政府は危機管理見直せ」(毎日新聞13年1月22日)
最後の憲法9条の下りは、従来の毎日新聞ですが、それ以外は、かなり真っ当な主張をしています。

テロや紛争に備え、情報収集能力を高めるとともに、民間企業とともに対応マニュアルづくりを進め、万一に備えて邦人保護・救出の態勢を整えるのは政府の責任である。

 小野寺五典防衛相は、自衛隊から在外公館に派遣されて軍事情報を収集する防衛駐在官を充実させる考えを示した。現在、防衛駐在官を派遣しているアフリカの国はエジプトとスーダンのわずか2カ国である。

 テロ情報は各国の軍が扱っている場合が多い。アフリカなどで防衛駐在官を増やせば、米国などとの一層の連携、情報共有と合わせ、日本の情報能力向上に結びつくだろう。

 一方、防衛相や石破茂自民党幹事長は邦人保護・救出に関連して自衛隊法の改正に言及した。

 同法では「在外邦人等の輸送」を実施する場合、現地の安全確保が前提になっている。輸送手段は航空機と船舶に限られ、陸上輸送は想定していない。これらの論点のほか、妨害行為への対処として、正当防衛を超えて武器を使用できるよう基準を緩和するかどうかも焦点となる。

 テロや紛争の規模・内容は変化しており、それに合わせて邦人保護・救出の法制度を整えるのは当然である。


続いて、TSB。
TBS番組が韓国経済ボロクソにけなす ネットで「俺たちのTBS!」という賞賛の声も」(J-CASTニュース13年1月25日)
韓流タレントの多用や慰安婦問題など、TBSではなく、本当はKBSなんじゃないかと思う所のあったTBSですが、あからさまに韓国に否定的な放送をしたようです。

   TBSが韓国経済をボロクソに叩いた、とネットで話題になっている。韓国企業の信頼度は先進26カ国中最下位で、家電も世界を席巻しているとされるが、特許侵害が多く様々な問題を抱えている、といった具合に、韓国経済のありようを、これでもかというようにボロクソに叩いているのが特徴だ。


そして、この記事の末尾にも書かれているTBS社長の手紙があ
ります
視聴率低迷「TBS社長」全社員宛ての手紙」(プレジデントオンライン13年1月20日)
内容は、視聴率低迷を打開するため、社長が全社員に宛ててメールを書いたとしたものです。

メールの内容は抽象的だったようですが、毎日新聞上層部と示し合わせ、方針の転換をしたことを号令したのではないかとも思えます。
このメールの記事が20日、社説が22日、韓国批判報道が25日と、妙な符号を感じるのです。

もし、そうだとしたら、変えたのはテレビや新聞自身ではないことは明かです。
やはり、ネットの影響が徐々に出ているのではないかと思います。

なお、TBSの社長石原俊爾氏は、”あの”石原莞爾の孫です。(名前もそっくり)
生え抜きのTBS社員なので、期待することは間違いかもしれませんが、実は根では、という期待も持ってしまいます。

レーダー照射事件でも、軍は暴走するものだとでも言いたげな所は変わってませんが、ちゃんと自衛隊ではなく中国側を批判してます。
社説:射撃レーダー照射 一線越えた挑発行為だ」(毎日新聞13年2月7日)

日本政府が挑発行為の実態を正確に国際社会に発信することも重要である。

 また、今回の事案について詳しい説明を中国政府に要求するとともに、不測の事態回避のための「海上連絡メカニズム」構築に向けた日中防衛当局間の協議再開を中国側に求めることも必要だろう。


しかし、一方でテレビ朝日は好調だそうです。
朝日は、以外と機を見るに敏な所があるので、最近では毎日&TBS程左巻きではない雰囲気を出してましたが、自民党批判などは相変わらずです。
ネット世論が、マスコミ世論を圧倒できるように。微力ながら努力したいと思います。

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2013年2月 6日 (水)

北方領土に関する外務省の交渉能力

私は、外務省の交渉能力については、かねてから疑問を持っていますが、先日のニュースは、その思いを更に強くするモノでした。
ロシア、条約前の2島返還提案 92年、日本側は拒否」(47ニュース13年1月10日)

 1992年にロシアが北方領土問題の打開策として、平和条約締結前でも歯舞群島と色丹島を引き渡し、国後島と択捉島の扱いをめぐる協議を続けるとの提案を日本政府に極秘裏に伝えていたことが分かった。
中略
 四島返還を確約していないため、日本政府はロシア提案を拒否したという。ただ平和条約締結後に歯舞、色丹を引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言に照らせば、提案は「日本側に大きく歩み寄った内容」(東郷氏)とも受け取れる。


2島返還を受け入れていれば、北方領土(4島とも)については、返すべき根拠があるとロシア側が受け入れている事の証拠にできたものを……
ただし、その際は、平和条約の締結を確約しないことが絶対条件です。
それでも、さも約束したように振る舞って、2島返還を受け入れれば良かったのに。
こう言う姿勢は、是非中国
やソ連・ロシアを見習った方が良い。

外務省は、バカ正直過ぎる。
単にバカなのかもしれないが……

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2013年2月 4日 (月)

前回の週刊オブイェクトさんに対する反論記事と当ブログのコメント欄について

本来、私は前回の記事で書いたような他の方が書いた記事に対する反論記事は好きではありません。
たとえ単なるブログ記事であっても、主張ないしは趣旨と言えるモノがあるべきだと考えるからです。(反論記事の場合、どうしても元記事の否定でしかなく、自分の主張を出し難い)
ですので、先日の戦車関連記事についても、JSF氏とのツイッターでのやり取りが端緒とはなっていますが、「戦車増強論者に提示する5つの命題」の用に、一つの記事として完結させたつもりです。

しかし、それでも、前回の記事を書かせて頂いたのは、JSF氏が、日本における防衛・軍事ネタブログでは、一番の人気を誇るアルファ・ブロガーであり、防衛・軍事にコアな興味を抱く人にとって、週刊オブイェクトは、既に新聞などのメディアに近い影響力を持っていると考えるためです。

週刊オブイェクトさん以外にも、優れた記事を書かれているブログは、多数あります。
週刊オブイェクトさんを含め、これらは、まだ新聞などのマスメディア程、多数の人に対する情報発信力は持ち得ていません。
しかし、多くのブロガーは、新聞記者以上の知識を下地として持ち、もはや新聞以上に深い分析を記事としてアップされています。

それだけに、防衛・軍事にコアな興味を持つ人に取っては、既にマスメディアに近い影響力を持っていると考えています。

その意味で、週刊オブイェクトさんは、既にマスコミ同様に、間違った情報を発信していると判断する場合には、批判を行なうべき対象だと思っています。

ですので、これからも、週刊オブイェクトさんだけでなく、一定の影響力があると思われるブログには、マスメディアと同様に、反論記事を書かせて頂くつもりです。

逆に、私のブログが、同じように批判の対象になることも、承知しているつもりです。

不特定多数に対して情報発信している者には、それなりの責任、つまり批判を受ける責任があると考えるからです。

ですので、当ブログのコメント欄の使用に当たっても、書いて頂いている方には、ほんの短い(短くない方も非常に多いですがw)コメントであっても、それなりのマナーとルールを守って頂きたいと思います。

具体的には、ハンドルの使用をお願い致します。
何でも結構ですが、常識の範囲で、また次の二つは御遠慮下さい。
①名無し:レスをする際、どうしてもハンドルを使用して頂けない方と区別が付かないため。
②通りすがり:被る事が多いため。

ブログの設定として、ハンドル未記入のコメントは受け付けないようにも出来るのですが、ココログの場合、ハンドル必須とするとメアドも必須となってしまう仕様のため、コレは避けたいと思っています。
どうしても、ハンドル使用が浸透しない場合は、コメントの表示を、私の承認後表示にすることも可能なのですが、表示にタイムラグが生じてしまいますし、失礼にも当たると考えるため、これも避けたいと思っています。

記事に関係の薄い話題については、話の流れでそうなることもあると思いますので、これは常識の範囲でお願いします。

また、当然ですが、誹謗中傷はお止め下さい。

記事は、軍事・防衛に興味を持って頂ける方を増やすために書いてますし、意見交換の場になれば良いと思いますので、基本的に、コメント欄は、マナーと上記ルールを守って頂ければ自由にお使い下さい。

何だか偉そうな事を書いてしまいましたが、今後とも、宜しくお願い致します。

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2013年2月 3日 (日)

F-35の短射程ミサイル搭載等について

日本に納入されるF-35が、所要の性能を満たしていないとして、問題視されています。

F35、実戦配備不可能に 初期納入4機、防衛省の性能要求満たさず」(産経新聞13年1月27日)

F35Aの最初の4機の性能が、防衛省の要求を満たさないことが米国防総省の年次報告書で明らかになった。
中略
 F35Aが搭載予定の最新ソフトウエア「ブロック3」には、短射程空対空ミサイルなどを装備できる最終型のF型と、同ミサイルが搭載できないI型の2種類がある。

日本へ引き渡す機種に搭載されるソフトウエアは、「ブロック3I」と明記。これでは至近距離での対空戦に不可欠の短射程空対空ミサイルを装備できず……後略


中距離ミサイルは運用できても、短射程ミサイルが運用できないとなると、懐に飛び込まれると弱いという弱点を抱えることになり、総合的な能力として、欠陥があるとも言える状態になってしまいます。

ネットやツイッターでも話題になっていますが、一方で問題ないとの意見もあります。
F-35戦闘機がアラート任務に就く時期とブロック3ソフトウェアの書き換え」(
週刊オブイェクト)

記事趣旨としては、納入される機体が、ブロック3Iであっても、「実戦配備」には影響が出ないと言うものです。
また、ステルス戦闘機は至近距離で戦闘を行う機会が殆ど無い(有視界戦闘はステルスの意味が無い)として、ステルス機には短距離ミサイルは不要とも取れる主張をされてます。

この記事ですが、そもそもJSF氏がツイッターで、「そもそも短距離AAM、アメリカはあまり使う気が無くて、F-22にも通常は殆ど積んでないらしいし。」と発言した事に対して、私が「アメリカが短距離AAMを使うつもりが無くても、日本で必要性がない訳じゃありません。」と返しながら、過去記事「F-22が高いかどうかはROE次第」を提示したことに対して、反論として書いて頂いたモノです。

そういう経緯のある記事ですし、内容には、誤った認識が多いと考えるので、以下に書かせて頂きます。
なお、引用がめんどいので、
週刊オブイェクトさんの記事を読んでいることを前提に、はしょって書かせて頂きます。(未読の方は、先に週刊オブイェクトさんの記事をお読み下さい)

まず、実戦配備=スクランブル発進を行うアラート任務(領空侵犯警戒任務)開始ではないとの指摘について。
「実戦配備」という言葉の定義の問題になってしまいますが、空自の場合、パイロット個人に対してOR(Operetion Readiness)検定が行なわれ、初めて戦力として認められるのと同様に、部隊についてもORI(operational readiness inspection)が行なわれ、これに合格することで初めて実戦可能であると判断し、任務付与が行なわれます。これ以前は、訓練だけが任務の訓練部隊であり、実戦部隊ではありません。
つまり、空自においては、実戦配備=スクランブル発進を行うアラート任務(領空侵犯警戒任務)開始と言って差し支えありません。

次に、実戦配備遅延の可能性について。
JSF氏は、アメリカのエグリンで訓練中にブロック3
から3にプログラムさえ書き換えてしまえば問題ないとしています。
しかし、今のグダグダ状況を見る限り、そもそも3
への変更がエグリンでの訓練中に間に合う保障もありませんし、真偽の程は不明ですが、「F型は最大高度5万フィート(約1万5千メートル)とI型の4万フィートを上回る性能を持つ。」という情報もある中、プログラムの書き換えだけで3化が可能であるとの主張も疑問が残ります。ハードの変更も伴うのであれば、改修自体にも時間が必要です。

そして、それ以上に確実に問題なのは、エグリンで行なわれる作業が、単なるパイロットの訓練だけでは無いことです。
私も、F-15導入時の米国での作業については詳細を知りませんが、自衛隊が新装備を受け入れるに当たって、最初に行なう作業は、自衛隊としてのマニュアルや教育訓練の計画作成です。
もちろん、F-35の購入に当たってメーカー、米軍からマニュアルは渡され、恐らく既に翻訳作業は進んでいるでしょうが、自衛隊として運用するには、これだけでは足りず、前述のような作業が必要になります。これらの作業は、最初に器材に触れる人間が行なわなければなりません。
が短射程ミサイルを使えないことで、この部分に関する作業は確実に遅延します。

通常は3年程度かかる新機種の導入作業が、コレによってF-2のように4年かかるかどうかは不明です。
もちろん、空自は早期導入に努力するでしょう。
しかし、そこに無理があれば、危険性が増します。F-2の場合、特定の装備をしなければ問題が発生しなかったため、運用制限で問題を回避できる可能性もありましたが、それでも4年かけました。
訓練機ですが、T-4の墜落事故についても、配備を急ぎすぎたという意見はありました。

この納入機が3
となることは、空自にとって、予想外の負担をかけることは間違いないのです。単純に、間に合うから問題ありません、とは言えません。

次に、最も重要な「ステルス戦闘機は至近距離で戦闘を行う機会が殆ど無い(有視界戦闘はステルスの意味が無い)」という主張について。
「短距離AAM、アメリカはあまり使う気が無くて、F-22にも通常は殆ど積んでない」そうですが、F-22にしても、F-35にしても、中国が戦力化している最新のJ-11やSu-30MKK、J-10などとの戦闘では、最強の戦術はウォール隊形で前進、相手から捕捉される前に、一方的にAMRAAMを撃って反転退避です。
これだけで交換比は、簡単に100を越えるでしょう。AMRAAMを射耗する中距離戦闘後、接近して短射程ミサイルなど使おうものなら、交換比を悪化させるだけです。
この状況では
、確かに、短射程ミサイルなど不要です。

ところが、相手もステルス機を出してくると、この状況は一変します。
ステルスが相手ですと、レーダーで捜索しても、所詮相手を捕捉できません。むしろF-35が搭載するAN/APG-81は、ESM機能も搭載していると言われ、おそらくJ-20でも同様の機能を搭載してくる事を考えると、レーダーを作動させると、所在方位を暴露することになります。
いきおい、ステルス対ステルスでは、レーダーもパッシブ作動させAN/AAQ-37 EODAS等と共にパッシブでのセンシングに頼って戦闘することになります。
EODASは、相当遠距離でも目標を捕捉できる可能性があり、AMRAAMの必要性がなくなる訳ではありませんが、当然の事として、侵攻側としては雲を利用するなど対策を講じてきます。雲を出たとたんに、目の前に敵機がいたというような状況が想定され、ステルス対ステルスでは、非ステルス対非ステルスの現代と比較しても、間違いなく近距離戦闘の可能性は高くなります。
この状況で、短射程ミサイルを搭載していないことは、致命的でしょう。

そして、この事を予測しているからこそ、アメリカは、格闘戦用として高い能力を持つEODASを開発装備しようとしています。
EODASについては、JSF氏も、前掲記事の直後に非常に詳しく記事を書いているので、その存在は十分に知っているはずです。
F-35戦闘機の電子光学分配開口システム「AN/AAQ-37 EO DAS」

この戦闘様相の変化は、潜水艦の静粛性が高まったことから、潜水艦対潜水艦戦が、アクティブソナーからパッシブソナーでの戦闘に移行したことに似ています。
また、シースキミングミサイルの発展に伴って、艦載対空ミサイルの長射程能力が価値を減少させ、ESSMが登場したことにも似ています。

ステスル機では、短射程ミサイルは重要性を増しこそすれ、必要性が薄いなどいうことはありません。
ただし、前述のように相手がステルス機を出してこない限り必要ないので、開発の優先度が後回しになっていることは合理的です。
また、日本のように、ROE(部隊行動基準)でVID(目視識別)を要求する可能性があれば、短射程ミサイルは尚のこと重要です。冒頭に
挙げた過去記事参照。

続いて、ステルス戦闘機でアラート任務に就く場合、わざわざレーダーリフレクターを装着する理由について。
アラート機が対象機に接近する際は、可能な限り後方に回り込んで接敵します。(いきなり撃たれると困るため)
自ずと、対象機のレーダーの覆域外です。
リフレクターを使用する理由は、存在をアピールするためではなく、ステルス性能を情報収集されないためです。存在をアピールするなら、機上レーダーで捕捉してやればOKですが、対領侵では極力やりません。

最後に、配備地とその理由について。
空自が、F-35を三沢基地に配備予定なのは、各種訓練・試験の際に、データ取りをされないためではないかと思います。
また、この要素だけなら、百里の方が望ましいでしょうが、三沢の方が、ロッキード・マーチンの技術者が、米軍の定期便等で、サポートに来日し易い事も影響しているでしょう。

それでも、ORIを受け、対領侵任務を付与されれば、F-35もリフレクターを装着し、普通に対領侵に投入されるでしょう。FSだったF-1さえ対領侵を行なっていたのですから。
それに、任務付与される頃には移駐することになるかもしれません。

JSF氏は、F-35が、ステルス能力を生かした視界外中距離空対空戦闘、対地爆撃、偵察任務に投入されるべく後方で温存されるとしていますが、中国がJ-20を実戦投入してくれば、非ステルス機では一方的に被害を受けるだけであるため、F-35を出さざるを得ないハズです。

週間オブイェクトさんの記事については以上です。

F-35については、開発の遅れなど不確定要素が大きく、今後も計画されている事項が次々変更されることもあるかもしれません。
当面、注目して行く必要があると思われます。

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2013年2月 1日 (金)

日本共産党と戦う情報保全隊

赤旗は、随分前から情報保全隊を目の敵にしています。
「赤旗 情報保全隊」でググっただけでも、赤旗の記事が山のように出てきます。
自衛隊 今も国民監視 違法な個人情報収集 情報保全隊の内部資料」(赤旗12年9月4日)
国民監視、人権も民主主義も無視 自衛隊情報保全隊の実態」(赤旗12年9月4日)
国民監視にも復興予算 情報保全隊の器材整備費 13年度概算要求」(赤旗12年10月14日)
保全隊に携帯 これで復興? デジカメ・車両無線も 森本防衛相 “守るのは自衛隊員”」(赤旗12年10月19日)

赤旗に記載されている情報保全隊の部隊紹介は次の通りです。

自衛隊情報保全隊 防衛相直轄の情報部隊。表向きは、防衛秘密の保護と漏えい防止を目的としていますが、実際には国民監視が主任務。陸海空3自衛隊に分かれていた情報保全隊は2009年に「自衛隊情報保全隊」に統合・新編。10年には民主党政権のもとで増員され、定員は約1000人。国民監視差し止め訴訟の仙台地裁判決は、差し止め請求は却下しましたが、「違法な情報収集」だと認め原告のうち5人に賠償支払いを国に命令。原告・被告双方が仙台高裁に控訴しました。


情報保全隊は、大多数の自衛官にとっても、何をやっているのか良く分からない部隊です。
しかし、秘(文書)を扱う資格である防衛適格性を持つ隊員にとっては、毎年、かなりのプライバシーまで含めて申告する文書を書かされるので、なじみが薄いという訳でもありません。
赤旗は、国民監視のための組織だと言って攻撃しますが、赤旗が表向きの理由として書いている通り、防諜(情報漏洩の防止)、特に自衛隊員を籠絡して、情報を流させるエージェントとして取り込まれることを警戒・監視している部隊です。

そのため、当然の結果として、自衛官を籠絡しようとする勢力の動向を監視することになります。
国民全体を監視している訳ではなくて、自衛官のオルグを狙う団体、及びその主張に繋がりそうな組織・個人を監視することになります。

赤旗が、情報保全隊を目の敵にするのは、彼等が意図する自衛官のオルグに対抗する部隊が情報保全隊だからなのです。

赤旗の尻馬に乗って、朝日や毎日あたりも情報保全隊を批判しますし、部内(自衛隊内部)からも煙たがられる情報保全隊ですが、日本の防衛のために必要な組織です。

なお、個人的には、復興支援のために情報保全隊に予算が付けられた事には注目しています。
具体的な事例の情報がありませんが、過酷な被災現場で活動し、疲弊した自衛官を対象として、「大変ですね」などと言って接近・オルグを図ってきた事例があったのではないかと推測しています。

何かとベールに包まれた情報保全隊ですが、彼等の活躍は、拙著「黎明の笛」にも書かせて頂きました。

その活動の一端(特殊なケースですが)が分かって頂けるのではないかと思っています。



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