ブログランキング&ツイッター

  • 軍事・防衛 ブログランキング
  • ツイッター

« アサド政権崩壊とスカッドミサイル | トップページ | 「黎明の笛」表紙画像募集! »

2012年12月22日 (土)

撤収判断は妥当なのか_ゴラン高原PKO

UNDOFに派遣されている自衛隊のゴラン高原PKO部隊が撤収するとのこと。
ゴラン高原PKO、年内にも撤退へ シリア内戦激化受け」(朝日新聞12年12月8日)

 野田内閣は7日、中東・ゴラン高原の国連兵力引き離し監視軍(UNDOF)に国連平和維持活動(PKO)で派遣する自衛隊の部隊について、年内にも撤退を始める方針を決めた。UNDOFはイスラエルとシリアの停戦を監視するが、シリアの内戦激化で自衛隊員に危険が及びかねないと判断。国連とも調整し、関係閣僚が協議して決めた。


自衛隊員に危険が及びかねないとの判断だそうですが、ゴラン高原で起こっている戦闘は、UNDOFが引き離し監視を行なっているシリア正規軍とイスラエル軍との間の戦闘ではありません。
朝日の記事にもあるとおり、シリア内戦の余波です。

戦闘が発生している理由は、シリア反体制派が安全地帯として同地域を利用した事に端を発します。シリア正規軍がイスラエルとの停戦合意からゴラン高原に入り込めないからです。
その結果、シリア政府軍が停戦合意を無視してUNDOF展開地域に侵入攻撃しています。

UNDOF兵士は、眼前でシリア政府軍と反体制派の戦闘を目撃しているようですが、シリア、イスラエル間の戦闘ではないため、見ているだけです。
UNDOFが標的として攻撃を受けた訳ではありません。

しかし、反体制派とすれば、戦況が不利になれば、シリア正規軍がUNDOFを攻撃できないことを理由として、それこそUNDOFの後方に回り、UNDOFを盾にすることもあるかもしれません。

また、シリア内戦の経過によっては、ゴラン高原にシリア難民が押し寄せる事態になるかもしれません。
そうなれば、UNDOFが武装難民も混じるであろう難民の管理もせざるを得なくなります。

もし、UNDOFが武装難民のコントロールをできないような事態に陥れば、イスラエル北部を正確に砲撃可能な高台であるゴラン高原をイスラエルが武装勢力の根拠地として放置する訳がありません。
自ずとイスラエルが地上侵攻することになります。

それを考えれば、確かにゴラン高原のPKOは危険です。武装難民が押し寄せる事態にでもなれば、物資を狙ってUNDOFの輸送部隊が襲撃を受ける可能性も否定できません。

しかし、事態はまだそこまで行っていませんし、何より自衛隊部隊は6月からシリア側宿営地への輸送業務を6月から停止しています。
つまり、自衛隊PKO部隊に危険が及ぶ可能性は大きいとは思えません。

今回の撤収決定に当たっては、制服組から撤収を求める声が上がっていたとのことですが、輸送や施設部隊である以上、駆けつけ警護を求められるような事はないはずですし、法的にも自衛戦闘なら可能なのですから、撤収が妥当とは思えません。
危険があるから止めるというなら、最初から自衛隊である必要性さえ無かったはずです。

UNDOF全体が撤収するなら構いませんが、「危険だから俺は帰るよ」と言って自分だけ引き下がる自衛隊を見て、他国部隊が何と言うか懸念を持ちます。

こう言う事を行なうと、今まで築いてきた他国PKO部隊の信頼は、一瞬で地に落ちかねません。

にほんブログ村 政治ブログ 軍事・防衛へ
にほんブログ村

« アサド政権崩壊とスカッドミサイル | トップページ | 「黎明の笛」表紙画像募集! »

海外派遣」カテゴリの記事

コメント

確かに格好悪いと言わざるを得ません。

だが、有名な5原則に拠るなら、確かに危険が出たら撤退しかありません。それに

>法的にも自衛戦闘なら可能

これはちょっと微妙ですね。この場合、法的根拠は国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律の第24条ですね。

普通の様に、この曲者があります:
「第一項から第三項までの規定による小型武器又は武器の使用に際しては、刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三十六条 又は第三十七条 の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない。」

確かに、正当防衛も緊急避難もかなり緩めがあり、解釈によって軍並の自衛戦闘も可能ですが、逆にいえばかなり狭く解釈も出来、少なくとも検察からの厳しい調査を受ける事になるでしょう(議員になったの佐藤は本にこの見解を示した)。

自国防衛まだしも、PKOをために法の限界線をチャレンジする必要は無いと思います。万が一こんな事態に成ったら、自衛隊の士気への影響は測りし得ない。

政府や外務省もOKなら、これは日本の制度で取りえる唯一の動きです。

阿倍総理よ、憲法改正しなくでも良いから、せめて各条中の「刑法 (明治四十年法律第四十五号)第三十六条 又は第三十七条 の規定に該当する場合を除いては、人に危害を与えてはならない」を消す事ができませんか?

毎回、拙いコメントになってしまい恐縮ですが書き込みさせていただきます。

格好悪いですし、PKOで築いてきた関係各所への信頼関係にもダメージがありそうですね。

ただ今回の決定は悪いものでは無いと私は考えています。

シリアの内戦自体、激化を辿っていますし、単なる政府軍vs反体制派の形ではなく
英米EUが反体制派側へ武器支援から軍事支援まで表ざたに様々検討していますよね。

実施されるとなれば、またリビア型の介入に似た構図となりそうですが、その時に自衛隊が現地にいることが適切とは思えません。
政府軍側はヤルムークの難民キャンプへも空爆を実施しちゃってますし。
数多久遠様ご指摘のとおり、ゴラン高原へ難民が押し寄せるとなると、当然反体制派はそれを利用するでしょうし、
UNDOFがいようがいまいが空爆や銃撃戦がある可能性は否定できないと思います。

またアサド崩壊後に反体制派でヌスラ戦線筆頭に、覇権争いで揉めるのが目に見えています。
いくらシリア国民連合が樹立されてると言えど、長年に渡ってテロ活動してる過激派が素直に納得するとは考え難いかなと。

場所は少し離れますが、マリでもイスラム過激派が活発で、それと一緒にトゥアレグ族やアルカイーダ、麻薬組織の関与も疑われている状況を見ると
アラブの春が終息するのはまだまだ当分先であると考えられます。

万が一、自衛官が凶弾で倒れたとしたら、世論を悪戯に刺激する結果になると考えられます。
憲法改正または加憲を目指して積み上げてきたものが、また遠のいてしまうほうが失うものが大きいかと。
自衛隊の活動がより有意義に行う為には、今はアラブの春の推移を見守るのがベターではないでしょうか。

 シリア反体制側という第三勢力が登場してる時点で、(日本独自の)PKO参加5原則の当事者間の合意が崩れてると思います。そもそもこの情勢での、先日の安保理によるUNDOF半年間延長決議自体がちょっと微妙な気もします。それに傍から見ると、危険な情勢下での自衛隊員の安否は心配ですし、参加隊員の不安も慮られます。
 だからこそ数多さんの見解は自分には意外ですし、興味深くもあります。例えば現場の隊員の目線だと、情勢への不安や部隊の危険よりも、現場で働くPKFの仲間同士の仲間意識みたいなものが案外強いのかな?と思ってみたり。

香港からの客人 様
雉鳩 様
だ 様
5原則では、紛争当事者間の停戦は必要ですが、第3者との戦闘状態は規定されていないので、これを根拠とした撤退は不要だと思っています。

PKO法24条ですが、誰かがこの法律で危険な状態になるまでは、佐藤議員がいくら頑張ったところで、改善されないだろうと思います。
誰かが一度は現場で踏ん張らないとならないと思ってます。

to:だ 様
もちろん、UNDOFの現場は知りませんが、PKO部隊どおしとは言え仲間意識はあると思います。
それに、危険だから撤退となれば、敵前逃亡と同じな訳で、私なら、残ることになる他国部隊に恥ずかしくて顔向け出来ません。
派遣されている自衛官に、危険だから逃げたと言われる屈辱を味わせたくはないのです。

あ、読み返せて見たら本当だ。

それに、確かに実際の支障を見せれば、法の改正に繋がれるかも知れません。

だが、やはり反対ですね。屈辱を味わせたくはないとは解りますが、今ならまだ「現場を解らない弱虫上司や政府」の所為にすることが出来よう。国家レベルでも溜息をしながら「日本政府だから」と片付ける余地がある。

今のままでは、万が一武器の使用になるとき、この屈辱以上の物を簡単に想像できます。

たとえば、現場司令は法や自分のキャリアを心配するあまり、発砲決定を出遅れで、結果自衛隊の死傷者に出たら、部下対上司の信頼関係はそれで損失するに成りかねない。

或いは、すべてが上手く言ったけど、発砲した隊員に対し、犯人の様に検察(検察は自衛隊の友ではない事はあたご事件で十二分証明されている)の尋問に受けることになった。最後に「起訴猶予」になった。全過程(茶番)は自衛隊、そして日本へのダーメジはどれ程の物でしょう。

多分自衛隊員の訓育中、国家と仲間の防衛は飽くまで正とする筈。こんな訓育とそんな現実。どう解説する?

それに、こんな事件後、日本政府が撤退命令を出ないじゃ日本政府ではありません。この時やはり屈辱でしょう。

「現場で踏ん張らないとならない」。もし、あれは本当なら、やはりあの現場をもっと有利、そしてもっと有意義な場所にしたい。国家や国民の防衛の為なら、たとえ法的根拠は自衛隊法第3条しかないでも、適切な行動をして欲しい。そして、その為なら、国民の理解も最大限にする事が出来よう。だが、シリアの為なら、やはり無為な犠牲をすべきではないと思います。

数多久遠 様

第三者との戦闘状態は、規定されていないのではなく、そもそも想定されていないと考えるのが今回は宜しいのではないでしょうか。
最悪の結果を想定して、混戦状態に巻き込まれた際、中立的立場を完全に維持できるのか疑問であります。

誰かが1人現場で体を張っても、法改正に繋がるよりも先に世論に火がつき、ポピュリズムによる茶番国会になってしまいそうです。

また、現場で体を張った隊員が国家から守られるとは現状思い難いです。
そんな状況の中で体を張らせる、引き金を引かせる・・・・事後、隊員の士気が高くなるとは思えません。

政府の命令で派遣されたんですから引き揚げの命令が来たらそれに従うのが当たり前です。それを屈辱と後ろ向きに受け止めるメンタリティが理解できません。
他国の部隊だって軍隊です、現場の指揮官の意向がどうあれ自分達が自衛隊と同じ立場に立たされたらそれに従う以外に道が無い事は理解しているでしょう。
逆に命令に逆らって現地に残留した隊員が「ブシドーを持った真のサムライ」などと評価されるとしたら、それこそ問題ではありませんか?

飼い主が右と言ったら右、止まれと言ったら止まり、吠えろと言ったら吠えればいいんですよ。

撤退の決定自体は現状ではしょうがないと思います(現在の法では、どうしようもない)。また防衛省としても遅々として進まない自衛隊関連の法整備に対する問題提起を政府・国民に行う機会でもあります。

予算獲得・組織防衛のために国際貢献を「表芸」とせざろ得ない陸上自衛隊としては、「人的損失」を出して国際貢献参加自体が後退しては無意味ですし(海空の隊員も預かっている手前もある)、また撤退を「不名誉」と感じる国民感情を醸成できれば法整備の追い風になるという考えもあるでしょう。

またUNDOFにおける自衛隊の任務形態自体が非武装もしくは軽武装少人数で国連の監視陣地以外で行動することが多いことから(輸送・施設作業)、巻き込まれる可能性が高いことが撤退を決断させた部分もあると感じます。


以外雑感

ゴラン高原PKOに関しては思う所があります。それはもっと以前に撤退して良かったのでは?という事です。これはPKO活動を辞めろと言っているのではなく、もう既に「国際貢献初心者」の段階を通り越した日本は、比較的安定して古典的なPKOであるUNDOFは新興国に渡して次に行っても良かったと思います。事実、自衛隊がゴラン高原に展開して直ぐに居た他国の部隊の多くは(カナダ・スロバキア・ポーランド等)撤退し、インド・クロアチア・フィリピンなどのPKO新興国にその任を譲っております。

もっと難しい任務をする段階に自衛隊は入っていると感じます。

それは国際貢献が単なるボランティアでないという厳然たる事実からして・・・

香港からの客人 様
確かに、死傷者が出たり、訴追される恐れはあると思います。
ですが、そんな事件でも起きない限り、PKO法はそんなに簡単に改正されないと思います。

自衛隊内では、日本の防衛に関する矛盾はあっても、法令遵守で教育してます。簡略化することはあっても、部隊防護優先で、それを良しとしている訳ではありません。
隊員も、矛盾は理解してます。納得はしてませんけど。

それと、シリアで危険を冒すのは、シリアのためではなく、日本の名誉とそれによって恩恵を受ける日本の国益のためです。
日本が、汗や血を流すことで、日本が尊敬を受けられるなら、それで良しです。

ただ、UNDOF全体としての撤退は考慮すべきだと思ってます。

雉鳩 様
確かに想定していなかったのかもしれません。ですが、世界の紛争地域では、第3勢力が介在することなどザラですから、本当に想定していなかったのなら、法の不備もいいところじゃないでしょうか。

隊員の士気についてですが、みなさん自衛官の覚悟を随分と低く評価しているように感じます。

名無し 様
命令を無視して留まれなんて書いた覚えはありませんよ。
政府の判断が誤っているのではないかと書いているだけです。
政府が戻れと命じるなら、恥を忍んで戻るでしょう。

海族 様
自衛隊関連の法整備に関して、国民的議論を問うつもりなら、やはりもう少し粘った方がいいのではないでしょうか。
随分前からシリア側には輸送してないようなので、もう自衛隊は不要だと見なされているのかもしれませんが。

UNDOFから、もっと早い時期に手を引いても良かったのではないかという点については同意します。
シリアがこんな情勢になる数年前は、ゴラン高原は非常に安定しており、果たしてPKOである必要があるのかと思える程でしたから。

>法整備

逆の見方をすれば、法整備も進めてくれないのだから頑張る義理もないと防衛省は考えているのかも知れませんね。

>シリア国内

輸送は補給品の仕入をイスラエル側で行えば大した問題は無いんですが(UNDOFの物資の仕入先は物価の安いシリア側が多い)、分遣班による施設作業はシリア側でなおかつニーズも多いので問題が多いですね。もう除雪も始まりますし・・・

これから日本が抜けた任務はどうするのかはわかりませんが、元々日本はUNDOFの後方支援大隊を担当していたカナダ軍の一部を引き継いだのですから、現在後方支援大隊を担当するインド隊がするのかも知れませんね・・(そういやUNDOF司令部幕僚3名はどうするんだろう?)

まあ何でそんなに細かいこと詳しいんだ?とか言う野暮は言わないで下さい・・・

まさか、第三勢力の反乱軍が緩衝地帯に根拠地を作り内戦を起こすとは、イスラエルすら想定はしても、リアルに起こるとは現実離れ過ぎて予想していなかったでしょうね。
ただ、問題は反乱が起きた場合の対処条項を現実味が薄くても入れてなかったことや反乱が起こってからで良いから、作って無いことでしょうね。
シナリオがどう考えても悪い方向のものしか浮かばないので、帰還は妥当です。
しかし、そうなる前に民主党政権は考えなかったのかと思います。

海族 様
シリア側で仕入れてたんですか。
てっきり海側のイスラエルで仕入れてシリア側に持って行ってるのかと思ってました。

意外に寒い場所ですから、作業は大変でしょうね。
再開する可能性があるなら、幕僚だけ残る可能性もありますね。

ご苦労様でした。

Suica割 様
シリアは、悪い意味で安定していたので、確かに想定外だったでしょうね。
一応、民主党政権下でも、シリア側への輸送は止めていたようです。襲撃略奪される可能性があったのかもしれません。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 撤収判断は妥当なのか_ゴラン高原PKO:

« アサド政権崩壊とスカッドミサイル | トップページ | 「黎明の笛」表紙画像募集! »

最近のトラックバック

ブックマーク、RSS