官品被服を誉めないで!
自衛隊を応援するジャーナリズムは、まだまだ貴重で喜ばしいことだと思います。
が、諫言すべき事項まで誉めてしまったのでは、行うべき改善が遅れ、かえってダメージになりかねません。
また、あまり手放しに賞賛していると、褒め殺しの嫌みのように聞えてしまうこともあります。
次の記事などは、その典型です。
「制服から下着まで隊員の命を守る「国家機密」」(zakzak12年11月6日)
被服など繊維産業の情報管理にしても非常に厳格で、自衛官の身に着けるものは、わずかな糸くずでも、この世から抹消するのだという。もし、海外に流出してまねをされるようなことになったり 、難燃性など特殊な機能を分析されるようなことになれば、隊員の生命を奪うことにもなるからだ。
それほどに重大な国家機密であるにも関わらず、あの事業仕分けにおいては「輸入してはどうか?」という議論が交わされた。
納棺服であり、士気や誇りに関わる制服については、さすがにそういうわけにいかないと理解されたようだが、「下着類なら既製品の輸入や外国で作らせてもいいのでは?」という声もあるようだ。
事業仕分けは、素人がトンデモな事を言い出すケースが多かったですが、素人なりの素直な疑問というのもありました。
制服の国外発注もその一つです。
これについては、士気に関わるから絶対ダメだと仰る人も多いですが、私は「制服なら別にいいん
じゃね?」と思っていた口です。
昔のように、制服で戦闘することなんてないのですから機能は関係ありませんし、警備上の識別を考慮する場合でも、美玉製など生地の異なる私物制服を着ている自衛官が多数いる中で、写真を見てコピーされたら気が付く事など不可能です。
ちなみに、階級が上位であればあるほど、私物制服を着ていました。最近の実情は知りませんが、恐らく変わっていないでしょう。
ただし、官品の制服は、生地にしても決して安物ではありません。1着25,704円だそうですが、スーツの値段を考えれば、決してボラれた品ではないと思います。
値段なりの品だった訳で、その意味で言えば、仕分けは「制服を安物にしろ」と言っていたようなものです。
もし、国外生産するのであれば、小額とは言え、中国に金を落とすのは防衛上問題なので、ベトナムあたりで作ってもらうことが妥当でしょう。
民主党の仕分け人は中国製にしたかったようですが。
一方で、戦闘に使用する被服類は、再考すべきものが多いです。
空自が使用する作業着などは、官品は確か綿製で、難燃どころか、制電でさえなかった。
だから、状況によっては官品を使用するなと指導したことさえあります。
特に、制電でないのは痛い。
電子部品の故障のある程度の割合は、静電被服でないことによる静電気ダメージのように思っています。
質が悪いという点では、編上靴なども同様です。
自衛隊を擁護してくれるのは良いのですが、被服に関しては、むしろ批判してくれた方が、後々隊員の役に立つと思います。
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ロンドンオリンピックの米国選手団が着たユニフォームはラルフローレンに発注したのに縫製は中国だった事が判り、国会で「作り変えろ!」と吊るし上げられてましたね。
間に合わないとの事で、ラルフローレン社が「次回からは決してこのような事はm(__)m」と平謝りしていました。
自衛隊の制服・・・結構安いんだなと思いました。
軍服は判らないのですが、CHP(California Highway Patrol)の認定個人購買品は、通常勤務のシャツが$120-$150、上着(主に式典などしか着用しない)$300、通常勤務のスラックス$150-$200、二輪乗務用乗車ズボン$400-$450、二輪ブーツ$500-$800
メーカーにより差があり、この定価から値引きして販売している事が多いです。
カバーオールとか作業服は判りませんが、滅多に着ないので至急品で間に合ってると思います。
二輪の定例トレーニングなどの時には、転んで破れたりブーツに傷が付いたりすると高価なので、紺の戦闘服上下(通常服は薄いカーキ)と編み上げブーツでトレーニングしています。
投稿: 純@LA | 2012年11月29日 (木) 16時04分
自衛隊の装備でもそうですが、実際問題なんだこれ?
ってのもあります。
トラックとか市販のものも走ってますが、自衛隊専用のトラックなんか、市販と中身が違いそうもないのに、形だけ特注とか、ありえない作りです。
そのせいで高いとか、何考えているのかわかりません。
その分、安い民間バージョンを買って、数揃えた方が輸送力向上になって良いと思います。
しかし、難燃でも制電でも無い服とは、実戦に即して無いですね。
投稿: Suica割 | 2012年11月29日 (木) 20時55分
陸自はすべて制電、難燃ですよ。
投稿: ゲパルド | 2012年11月30日 (金) 00時26分
しかしながら、ゲパルド様、空自はなんとも書いていないんです。
書いていないから、イマイチ信用できません。
投稿: Suica割 | 2012年11月30日 (金) 00時47分
閑話休題、関係ない話ですみません。
官給品というとどうしても思い出してしまう話があるんです。
昔、空軍のメカニックの友人が何かの折に「どうせ俺たちゃGIだからさ・・・」と自虐的に言った事が有るので、バービー人形やGIジョーでGIという言葉に馴染んでいた僕が驚いて「GIって悪い意味なのか?」と尋ねると、
「今じゃ誰もそんな事は気にしないけどさ、元々GIってのは『Government Issued』つまり、官給の馬やジープ、カバンや靴と同じ、官給の労働力って事なんだよ」
「第一次世界大戦の頃には、皮製のかばんとかにはG.I.(官給品)って焼印やスタンプが押してあったんだけど、俺たちの背中にもG.I.(官給品)って刺青が入ってるのさ・・・・」
たしか、休暇申請が却下されたとかで相当落ち込んで自虐的になっていた時の事でしたけど、それ以来僕の中にこだわりが出来て人間(兵士)に対してG.I.という単語を使えなくなりました。
投稿: 純@LA | 2012年11月30日 (金) 08時27分
連隊(普通科)で10年内外、勤務させて頂きました者です。
何処の社会でも自分で使いやすいものを準備(例えれば会社から支給される電卓よりは自分愛用のを使用する等です)したりするとは思います。
ただ、海自、空自はどの程度か解りませんが普通科のそれは、尋常ではなかったように思います。私は情報小隊で斥候班長職にありましたが、使用していた私物を上げると、
地図や筆記具を収納するための図嚢
コンパス&コンパスポーチ(米軍のレンザチック2万円内外)
歩測紐(まあ~なんの紐でも良いのですが、米軍の歩測用カウンターを使用していました)
眼鏡(陸教で6万円のタスコ製を強要、もとい!勧められ購入しました)
ナイフ
ドーラン(今は官品があると思います)
革手袋
水筒(1個じゃ足りません。特に夏は)
ポンチョ(官品の仮眠覆いだけでは、ビバーク時のシェルターが作れません)
他にも上げたら切りがありませんが、自分がレンジャーの学生の時は予備の戦闘服だけで5着程度(補給からも余分に支給してもらいましたが、足りません)を購入し、他のもろもろを含めると10万円近くは使ったと思います。
限られた予算の中でやりくりしている苦労は解るのですが、せめて目的地に向かうために必要なコンパスや眼鏡等の基本的な装備は充実させてもらいたいと思います(特に普通科は野外でも活動が基本になりますので、細かい装備になりますが、現場の声を聴いてほしいものです)
投稿: jgsdf13inf | 2012年11月30日 (金) 11時53分
純@LA 様
アメリカの警官は良い服着てますね。
日本の警察の制服は知りませんが、そこまで高くはないでしょう。
自衛隊の場合、自衛官の子息のことを「官品」と呼びます。
ただ、特に自虐的なニュアンスはありません。
Suica割 様
確かに、防衛省仕様とするために、余分な費用を使っているケースはありましたが、最近はかなり少なくなってきているようです。
空自の作業着は、残念ながら明らかに制電ではないです。
ゲパルド 様
そうでしたか。
さすがに人員が戦力の陸は、そのあたりは、空自よりマシみたいですね。
jgsdf13inf 様
補給のシステムが違うためか、その手の小物の支給事情は、陸と空で大分違うようですね。
現役時も、びっくりしたことが時々ありました。
それにしても、普通科の私物使用は、異常ですね。
どう見ても必須の品まで私物とは……
その手の、必ずしも統一する必要の無い物品については、調達方式を変えた方が良いかもしれません。
もちろん額を増やす必要がありそうですが。
投稿: 数多久遠 | 2012年12月 1日 (土) 11時10分
自分が現職の頃は、OD作業服、戦車靴、半長靴、弾帯、サスペンダー、64式用の弾納、水筒、ゴアの合羽は私物で、購入しましたが、
迷彩服2型一般用、装甲用は売店、業者にも売っていなかった時期で、
即自時代に迷彩服2型装甲用、
新型半長靴、ライナー、眼鏡89式用の弾納を購入、雑用で手入れ出来る時間が無い現職陸士時代は私物に助けられた。10師団は被服の員数点検ばかりだったな!
投稿: 元陸自 | 2012年12月29日 (土) 23時38分
元陸自 様
陸自の被服の状況が悪いのは知ってます・・・が
それにしても酷いですね。
まあ、空自も業務で使う十数万のパソコンを私費で買ってたくらいなので、額でしたら同じようなものかもしれませんが。
投稿: 数多久遠 | 2012年12月31日 (月) 15時18分