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2012年10月 6日 (土)

中国空母は脅威か?

中国が、苦節7年にしてワリャーグを「遼寧」と命名して空母の配備に漕ぎ着けました。
これが脅威なのか否かについて、話題になっています。
中国空母、日本に脅威?それとも張り子の虎?」(zakzak12年9月24日)

今回は、この「遼寧」と、この後建造されるであろう空母が、日本の防衛にとって脅威なのか、そして脅威だとすれば、対策は如何にあるべきなのかについて、空母の防御力の観点から考えてみます。

遼寧は、実験用あるいは訓練用と言われています。つまり、中国としても、本格的な戦力としては認めていない訳です。
ですので、この艦の艦載機運用能力を持って、脅威でないと断じることは油断だと言えます。

ただし、空母の能力を測る上で、搭載機数だけでなく、発艦及び着艦の艦載機運用能力が、重要なことは言うまでもありません。
中国は、遼寧にカタパルトを装備できませんでした。
結果として、恐らく発艦のためには、第二次大戦時の空母のように風上に向かって高速航行しなければならないでしょう。
下手をすると、風の状況、無風だったり、風向が激しく変わるような状況によっては、艦載機の発艦ができない可能性もあります。

カタパルトについては、技術的に大したことなさそうな気もしますが、アメリカのエセックス級空母では、カタパルトを使用することで艦の航行能力を低下させた程だったそうなので、以外に難しいのでしょう。
開発中のフォード級では、電磁カタパルトの開発も相当な困難に直面しているようです。

この点からすると、遼寧以降の艦にカタパルトが装備されるかどうかが、中国の空母が現実的な脅威となるか否かを計る物差しになると思われます。

カタパルトが戦闘能力に直結するというのは分かりにくい話かもしれませんが、空母が艦載機による防空を行うケースを考えてみれば分かりやすくなります。
陸上航空基地でも同じですが、防空では敵の航空機を迎撃するため、敵編隊を探知した後、短時間で多数の航空機を発艦させなければなりません。
この点で、やろうとさえ思えば、1分間に10機近くもの航空機を上げられる陸上基地と空母は雲泥の差があります。
カタパルトは、1機発艦させた後、元の位置に戻して蒸気を再充填しなければならないため、どうしても時間がかかるためです。
(電磁カタパルトを装備するフォードは、この点で革新的な性能を持つ予定)

この意味では、中国が、もしもいきなり電磁カタパルトを開発したら、相当注意を要する事態だと思われます。

空母機動部隊の防空を考える場合、空母だけでなく、周囲を固める艦艇の能力は、空母以上に重要です。
アメリカの空母機動部隊の場合、第7艦隊水上戦部隊だけでも、巡洋艦×2、駆逐艦×7もあり、しかも全てイージス装備となっています。

中国は、空母の開発配備にあたり、防空艦の増強も急いでいます。
「中華イージス」建造ラッシュ 052D型ミサイル駆逐艦も登場」(海国防衛ジャーナル12年9月7日)
しかし、現状では、中国全体でも第7艦隊水上戦部隊と同程度の防空能力しかありません。
(最新の052C型で6艦)

中国の空母が、現実の脅威となるか否かは、空母そのものだけでなく、これら防空艦艇の配備の進捗にもよってくるという訳です。

しかし、中国空母の脅威を防御面から考える場合、その防空能力に対し、対潜能力は歪だと言えます。

対潜哨戒機のSH-5は4機しかなく、前述の空母に随伴するとみられる駆逐艦も、どの艦も対潜能力は限定的だと言われています。

艦載ヘリについても、前述の6隻の052C型及び1隻の051B型は2機の艦載ヘリを収容できるものの、日本や欧米の艦載ヘリに比べると、能力は劣っていると見られています。
最新の051C型に至っては、艦載ヘリは搭載していません。2隻あるソブレメンヌイ級及び同じく2隻の052B型駆逐艦も、能力の低い艦載機が1機のみです。

これは、おそらく中国の空母機動部隊にとっての一番の脅威を、アメリカの空母部隊によるミサイル攻撃だと考えたため、対潜能力よりも対空能力を重視した結果でしょう。

また、中国潜水艦の対潜水艦作戦能力も、十分とは思えません。
本来であれば、空母機動部隊に随伴すべき攻撃型原潜は、騒音が凄まじいと言われる漢級が2隻、ロサンゼルス級なみの静粛性になったと言われる商級原潜はまだ1隻のみです。

速度面で空母随伴が難しい通常動力潜水艦だけは、それなりの性能とかなりの数を揃えています。
ただし、小型の艦艇が多く、空母機動部隊の行動半径を広げるためにどの程度役に立つかは疑問です。(行動半径が広がらなければ、そもそも空母を持つ意味がない)

このため、中国が本格的な空母を開発配備できるとしても、対潜能力を大幅に高めなければ、それほど脅威と見る必要はないと思えます。

そして、防衛省もこの点を認識しているため、潜水艦の増勢を図っています。
本来なら、一時期話題になった原潜の導入が望ましいですが、これは福島原発の影響で、政治的に無理になりました。

日本としては、中国の沿岸まで接近可能な、大型で航続能力が高く、静粛性の高いAIP搭載の潜水艦を増強して行くべきだと思われます。

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周辺国動向」カテゴリの記事

コメント

カタパルトの問題もさることながら、中国海軍のパイロットが空母で短時間に離着陸をする技術があるのかも疑問が残ります・・・・。

今までも陸地に専用の滑走路を作って離着艦の訓練を繰り返してきたはずですよ>中国海軍のパイロット
こうして空母も完成した以上、彼らの技量はこれまで以上のスピードで向上していくと見るべきでしょう

個人的には高新6号(新型陸上哨戒機)の方が気になります
近年の米空母のごとく、彼らは艦隊の対潜水艦防御の主力を艦載SHではなく陸上哨戒機においているのでは?
空母の実任務を接近阻止や近隣諸国との紛争とする場合はその方が合理的です
仮に高新6号が十分な性能と配備数を確保するならば、ワリヤーグを潜水艦でもって撃沈することさえも困難になるでしょう

今後日本やアメリカ、インドの出方次第で脅威となるかならないか決まりそうな気がします。
もちろん存在する以上少なからず脅威であると思います。

軍が空母を持つというのは中国では第一に面子の問題でしょう。
そして空母や原潜は金食い虫ですから、当然のように裏金やワイロが膨大な額になる筈です。
という事は、まず間違いなく空母の開発はすすむのでしょう。

今は脅威ではなくとも将来は脅威になりかねませんね。

もっとも、脅威になりうるだけの空母部隊を揃えるとしたら、金(予算)が足りるのか--は疑問です。
おそらく旧ソ連のように軍事費で潰れるのではないでしょうか。(暴動をおさえるための警察・地方軍関係の予算も含めての話ですが)
もちろん日本や諸外国がこのまま投資を続ければ別ですが、外資は減っていくでしょうからね。

日本にとっても脅威にではあるので、インド等との連携が気になるところです。

>日本としては、中国の沿岸まで接近可能な、大型で航続能力が高く、静粛性の高いAIP搭載の潜水艦を増強して行くべきだと思われます。

 日本の潜水艦は通常潜の割に大型なので、中国沿岸の浅い海には不適当だと思うのですが・・・。

まあ、現在は明らかに未だ脅威ではないですので(確か艦載機すらてきていない)、現在を論じでも意味が無い。

もっと重要なのは、5年、十年後、つまりJ-15を戦力化出来るの時です。

先ず、STOBAR拠るの制限についてそもそも風を追わない空母なんで有るんでしょう。西側で、Catapultなしなら的もに離陸出来無いと良く考えられましたが、ソ連の態度はどうやらSki-Jumpでもやってられないも無い。

テスト中の成績に拠ると、195メートルのポイントを選ぶ場合、船は15ノットでも32.8トン(最大重量)で離陸出来るです。(全速なら?)105メートルの位置でも"Full Fuel and Weapons load"で離陸可能と言われています。ソ連崩壊で辞めさせたのYak-44E AWACSもどうやらCatapult付きのUlyanovskだけではなく、付かないのKuznetsovでも使う気らしいので、Catapultなしからで戦力発揮できないとはちょっと楽観視かも知れない。

完璧ではないものの、J-15が出来た時艦体の制限により戦力化出来無い事は無いでしょう。

因みに、この高性能はCatapult開発を楽させるでしょう。全部の出力ではなく、補佐的低出力で事が足りるに成るから。
=
護衛の船の対空防衛能力については確かに米国打撃群から見ればあとちょっと距離が有るですが、これ今でも冷戦時の米空母戦闘群の防御力と見比べればかなり行けると思わない?

それに、どうやら中国海軍は開発・実験モードから自分が納得できるの船を選び、量産モードに移転しているらしいです。十年後なら、052D計画も終わって、何が別の物を作っているでしょう。
=
艦船に因る対潜能力について:対潜は確かに新参海軍の弱点と言われています。今まで中国は自衛ソナー以上の物を控えている。

あれは恐らく脅威の優先順位より自分の底力不足も勘案したの決定でしょう。だが、052Cで最終的に見送れたものの、TASSを既に実験的な装備をしたらしいので、052Dでもう一回見送れる事は無いでしょう。054A式の16隻体制このペースで後一年で全艦就役ですし、後のフリーゲート(054B?)も恐らくTASS装備でしょう。

この路線で推測すると、J-15を戦力化する辺りで中国海軍の対潜能力が一気に高くなりそう。

因みに、原子力潜水艦での護衛は米国だからの贅沢です。で言うか、米国すら戦闘群から打撃群に成ると共に、潜水艦随伴は贅沢に成った。護衛する艦艇も最低2隻まで激減している場合も有る。
=
潜水艦に拠ると迎撃についてちょっと困難と想います。中国の対潜能力は兎も角、AIPを使っても、出力に限界が有り精々8ノットあたりしか出せません、相手はDieselで空母を動かすとは言え現代のDiesel商船も24ノット位出せるので恐らくあの空母もあれぐらい出せるでしょう。

速力が3倍。この場合、迎撃の限界角度は最大艦首から二十度しか有りません、併せて40度。

ミサイルで攻撃するなら、一隻、二隻の当時発射数(6或いは12枚)は恐らく飽和に至りません。となれば、魚雷で来るでしょう。発射距離は恐らく10から20kmで来る(これより長くなると回避され易いので)。半径20kmで円の周長は125kmだが、守るべき角度は40度しか有りませんので、防衛線の長さは14kmしか有りません。これじゃ中国の脆弱な装備でも守りきれるの可能性が高いでしょう。

一応バーストで来る可能性が有るですが、これじゃ戦闘開始前にバッテリの寿命を減り、後で逃げ難く成る。

原子力潜水艦の威力はノイスと言う代償が有るとは言え長時間の高速力によって自由に角度を選べる事が大きいです。AIPだけでこれを補う事が困難と想います。

かの国のことですから、今はまだ脅威でなくとも、メンツをかけて死にもの狂いで戦力化を図るでしょう。それが何年後かはわかりませんが。ただ、パイロットの養成のことを考えるとかなり時間がかかるのではないでしょうか?

純@LA 様
離着陸については、地上に訓練施設も作ってますから、それなりに訓練できていると思います。

名無し 様
新型の哨戒機ですが、問題は機体よりも装備ですね。
それと配備ペースにもよりますが、これが配備されると、やはり充電不要の原潜が欲しいところです。

雉鳩和希 様
アメリカはもちろん、インドも影響ありますが、大きな影響を及ぼすのは、東南アジア諸国とオーストラリアですね。
彼等が南を扼してくれると、日本としては大分楽になります。

みやとん 様
確かに金食い虫です。
ですので、この記事も防御面から書いてみました。
金食い虫をつぶせれば、こちらの益は大きいですので。

だ 様
湾の中にまで進入する特殊潜行艇という訳ではありませんから、行動が阻害されるほど大きいことはないと考えます。
もっとも、寧波は日本にも近いので、特殊潜行艇を持って港湾攻撃を行う事も効果的かもしれません。

香港からの客人 様
もちろん、私も現在の脅威というより、将来脅威になりうるかどうかが問題だと考えてます。
そして、将来を考えた時こそ、艦載機は機能するでしょうから、問題は、防御力だと思ってます。

以前に書いた、対空母攻撃用として爆撃機を持つことを含めて、中国が空母をもつなら、日本はそれを沈めることを考えることで状況の好転は容易くなります。
正直言って、私は中国が空母を持たない選択をした時の方が脅威を感じます。
コストパフォーマンスの高い兵器を多数投入されたら、数の劣る日本側は、対処できなくなるでしょう。

啄木鳥 様
私は、パイロットについては、発着艦さえできれば、それ以外は陸上基地とそう変わらないですから、それほど訓練に時間を要するとは思いません。
むしろ、発着艦を仕切る艦上要員の訓練と、ノウハウを積み上げることに時間を要するのではないかと思います。

私も中国が空母を持たない選択をした方が脅威だと思います。
もし中国が空母の開発をやめそうになったら、日本が空母を持つと宣言したら良いと思っている位です。(そうすれば確実に中国は空母の開発をするでしょう)

しかし、コストパフォーマンスの高い兵器は裏金やワイロの資金源にはなりにくいでしょう。
ですから、空母を持たないという選択肢はまず無いと考えています。

政治的の防御面からみれば、いかに相手に無駄金を使わせるか。
ソ連が巨額の軍事費の負担に耐えかねたように、中国を追い込めるかでしょうね。

その為には、海洋国家の連携が一番になると考えられますから、自衛隊の中古兵器(船舶・戦車等)をベトナムやフィリピンその他に送り込むことが出来たらいいですね。

中国空母が脅威かどうかは艦載機とミサイル次第だと思います。
それがクズなら、大枚叩いて標的とでかい航空機専用輸送艦を作ったのと同じです。
自衛出来る輸送艦としても、艦隊の邪魔になるだけなら、出て来ないでしょう。
むしろその金で大型防空艦や長距離射程対地兵器搭載艦を作られる方が面倒です。

みやとん 様
持たない選択をした方が脅威ということについては同感です。

ただ、それでも、中国の経済は、そう簡単には転びそうにないですね。ほころびも見えてはいますが。

Suica割 様
もちろん、艦載機と搭載兵器は、空母の攻撃力を図る上で、重要な脅威の指標でしょうね。
ただ、中国としても、こちらの方が空母本体より開発サイクルは短く、これからでも間に合うという判断なのでしょう。


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