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2012年10月17日 (水)

政治的配慮による800km制限

アメリカの意向で300kmに制限されていた韓国の弾道ミサイル射程が、300kmから800kmに緩和されることが、米韓で合意されました。
韓国ミサイル、射程800kmに…北の反発必至」(読売新聞12年10月7日)

 緩和により、韓国南部からでも北朝鮮全域が射程に入る。核・弾道ミサイル開発を進めて韓国への武力挑発を続ける北朝鮮をけん制する狙いだ。

対北朝鮮抑止力を強化した韓米ミサイル合意」(中央日報12年10月8日)

北朝鮮の脅威に実質的に対応できるレベルまでミサイル能力を向上させられる転機が用意されたという点で評価できる。


北朝鮮北部を800kmの射程内にカバーできる韓国弾道ミサイル配備範囲
800
FLand-Aleで作成(正距方位図法)
これを見て頂ければ分かるとおり、韓国中央部からでも北朝鮮北部を射程に収めることができます。
しかし、この手の兵器は、敵による目標とされることも確実で、できることなら極力後方に配置したいと考えるのが、軍関係者の思考です。
実際、韓国は1000kmまで緩和することを求めていました。
韓国弾道ミサイル、最大射程引き上げか 米韓が最終調整」(朝日新聞11年3月11日)

韓国側には射程千キロまでの延長を求める声もあったが、米国は応じなかった。日中ロなど周辺国を刺激する可能性を考慮した結果とみられる。

北朝鮮北部を1000kmの射程内にカバーできる韓国弾道ミサイル配備範囲
1000
FLand-Aleで作成(正距方位図法)

1000kmならば、韓国南端からでも北朝鮮全域を射程に収められる訳ですから、軍事的合理性に則って考えれば、当然これを求めることになります。

アメリカがこれを認めなかったのは、朝日が報じるように、日中など周辺国に対する配慮です。これは、地図を見て頂ければ、一目瞭然です。
韓国東端から800km及び1000kmの範囲
8001000
FLand-Aleで作成(正距方位図法)
800kmなら東京を攻撃できませんが、1000kmなら可能です。

韓国北西端から800km及び1000kmの範囲
8001000_2
FLand-Aleで作成(正距方位図法)
800kmなら北京を攻撃できませんが、1000kmなら可能です。

日本の報道で、韓国の弾道ミサイルを脅威と見る人は、決して多くありませんが、韓国が潜在的に日本を敵視していることは防衛関係者は承知しています。
どの程度かは不明ですが、韓国が射程延長をアメリカに求めた際に、日本の外務・防衛関係者からも懸念を伝えていたと思われます。

そしてそれは、米中間でも同様であったでしょう。

結果として、アメリカは、韓国が東京や北京を直接攻撃する能力の保持を認めなかったということです。
前掲の中央日報では、悔しさを滲ませながらも、この政治的判断を、やむなしとして受け止めているようです。

北東アジアの変化した安保の現実を勘案すれば十分ではないという見方もあるが、国際政治の現実を考慮すれば最善ではなくても次善の成果はある。
中略
  ミサイル主権を前面に出して指針をなくすべきだという声もあるが、国際政治の現実と韓米同盟の重要性を考えると、こうした主張には無理がある。 任期末を控えて李明博(イ・ミョンバク)政権がこの程度のラインでミサイル交渉を妥結したのは不幸中の幸いだ。


この800kmという弾道ミサイルの射程は、実に政治的な配慮で決められたものだと言うことです。

なお、アメリカは、300kmから延長することに関しても、抵抗をしてました。
李大統領が米に圧力 韓国のミサイル射程延長で」(産経新聞12年10月12日)

 韓国紙、朝鮮日報は12日、米国との覚書で300キロに制限されていた韓国の弾道ミサイルの射程が米韓合意で800キロまで延長されたことに関し、李明博大統領が今年4回にわたり、覚書を破棄し射程を延長すると一方的に宣言しようとするなど、米国に圧力をかけていたと伝えた。


火病の国ですし、アメリカの懸念は当然です。
日本としても、韓国が日本の西部に対する弾道ミサイル攻撃能力を保持することになったという事実は、認識しておくべきです。

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周辺国動向」カテゴリの記事

コメント

個人的には神戸にある2つの潜水艦ドックや、
浜松のAWACS基地が射程に入ったのが気になります。

かの国が日本を潜在的にしろ敵視しているのは間違いないでしょう。
私個人としては、ただでさえ精神的沸点の低いかの国の方々が何らかの緊張(たとえば先の哨戒艦撃沈)が発生したときに「暴発」しないかが心配です。まあ杞憂でしょうけど。

 専守防衛・必要最小限度の防衛力とよく言いますが、この2つは本来相反するものです。専守防衛は例えて言えば守備回しかない野球です。一点も与えられないとすれば、圧倒的な戦力差で守るしかありません。無理ゲーもいいところで、ゲームを成立させようとすれば極めて高コストかつ非効率にならざるを得ません。ソ連(現ロシア)だけならいざ知らず、中朝韓と軍事大国を更に3つ抱え、おまけにそのうちの2つ(+ロシア)は日本に比肩する先進装備を持つとなれば、今や専守防衛などというのは幼稚な夢想に過ぎません。日本も策源地攻撃能力について多少言及されるようになりましたが、そろそろ弾道ミサイル保有も含め抜本的対策を考える時期が来ていると考えます。

なんとまぁ、こんな時期に「予定通り」射程延伸を決めたわけですか
日本で最大の安保問題と化している北朝鮮のノドン・テポドンと全く同じ
カテゴリーの兵器の射程を
竹島問題を発端とした、北朝鮮と韓国を同類視する日本人の増加具合を
韓米政府が見誤っていなければいいのですが・・・
私が大統領でしたら、とりあえず一年ぐらいはテキトーな理由をつけて
アメリカとの会議を引き延ばします

韓国が日本を潜在的敵国としているとはその通りだと思います。しかし今回の弾道ミサイルの射程延長が、日本を含めた地域の情勢にどの程度変化をもたらすでしょうか?というのは韓国は玄武3C巡航ミサイル(射程1500km)を保有しており、既に東京どころか本州全体、そして北京やウラジオストクも射程内に入っています。また、通常弾頭の弾道ミサイルでは、精度・ペイロードの制約のため重要目標を確実に破壊するのは困難ではないでしょうか。防衛省が韓国の弾道/巡航ミサイル戦力をそれぞれどう評価しているのか、解説いただければと思います。

いぬざめ 様
軍事的には、弾頭が通常弾頭だけなら、そこまで気にするほどではないと思います。
弾道ミサイル1発の破壊力は、爆弾1発程度ですから。

やはり嫌なのは人口密集地を狙われることによる、心理的効果だと思います。

啄木鳥 様
沸点が低いことは、アメリカも懸念しているんでしょうね。
だからAMRAAMを手渡さない等の処置をしているのだと思います。

だ 様
同意します。
どう考えても無理ゲーです。

名無し 様
それをする冷静な大統領なら、そもそも竹島には行かないような気が……

matsuzay 様
防衛省は、韓国をそれほど脅威とは見ていないと思います。
脅威=意志と能力の観点から見て、能力はそれなりにあっても、(アメリカの意向もあり)意志がゼロに近いと評価していると思います。
でなければ、GSOMIAを結ぼうとはしないでしょう。
もちろん、能力の評価はしてますが。

巡航ミサイルも弾道ミサイルも、純軍事的には、弾頭が通常弾頭だけなら、大して気にするほどの兵器ではありません。
むしろコストパフォーマンスは悪いです。
射程延伸は、見栄じゃないでしょうか。
NBC兵器を使うつもりの国に関しては、話が全く変わってきます。

@無名氏+久遠氏
そんな考えするだから日本は何時まで立ても脱専守防衛出来ないなり、自主防衛に近づく事出来ないんだ。

確かに今でも巡航ミサイルを使えるけど総合な面から考えるとやはり速攻出来るの弾道ミサイルも有る方が良いでしょう。

それに、今回は未だ、一種の主権問題が有る。

1970年代、当時短期的視野しか持たないの韓国政府は邪道を取り、自己開発ではなく米国からミサイル技術を導入した。その対償に、米国は韓国のミサイル射程の決定権を合法的持つ事に成った。その後あの協定は改正した(180→300→800km)とは言え、飽くまで当時の協定を基点として動いていて、韓国の一部の主権は(一応合意上とは言え)今だに米国に有ると言える。

だから、韓国政府は軍事的合理性の面から見ても、国家のプライドと主権の面から見ても、一刻も早くあの協定を無力化しなければ成らない。だが、権限を米国に譲った以上、主導権は飽くまで米国に握り、改正欲しいなら連続的に圧力を配りながらチャンスを伺って、徐々弱体化させなければ成らない。そして、米国が折る途端取って、次の見直しの基点として確保しなければ成らない。

こんな時に、日本の気持ち等気にするなら始まらない。

私は韓国をあんまり好感を持てない(好感は「東海」辺りに無くなった)。だが、彼奴等は自分の自主防衛と主権の為に行動力を示し、他国との和を二の次にする事が出来る。

この行動力こそは日本に欠けており、軽蔑するではなく、見習うべきと想います。

香港からの客人 様
どのあたりのお話しから、脱専守防衛できないとおっしゃっているのか分かりませんが、非常に攻撃的な兵器である弾道ミサイル保有が、専守防衛の対極にあることは確かですね。
それが故、少しずつやらないと、一気に脱却は難しいとも考えています。

韓国は、近視眼的だと思いますが、さすがに未だ戦争中だけあって、国全体として国防に積極的な点はうらやましいです。

香港からの客人様

そう言っても、韓国の国防は日本を米軍の策源地としない限り成り立たないものです。
今後の中国軍の増強次第では、自衛隊の戦力をもアテにしなければならないでしょう。
日本にそっぽを向かれた場合、
あるいは北朝鮮・中国人の日韓離反策が成功した場合、
韓国軍は弾道ミサイル戦力をまともに活用する機会すら与えられずに敗北します。
なぜならば、自分達が孤立無援と悟った瞬間、韓国国民は政府・軍に中国への服従を要求するからです。
戦いもせずに敵の足を舐めることは、武人にとって最大の不名誉ではありませんか?

数多久遠様

今回の事態に対しては期待と不安が1つずつあります。

期待)
「韓国だって持ってる」というわけで自衛隊への弾道ミサイル導入に世論が賛同してくれる

不安)
「あの朝鮮人が大好きな兵器だから」という理由で弾道ミサイルという兵器カテゴリーへの
国民の潜在的な嫌悪感が増大し、自衛隊への導入が遅れる

さてどちらに転びますことやら

@無名氏
韓国は本当にそう簡単に降伏するがどうかは兎も角、確かに日本と完全決裂なら韓国にとってやばい。

だが、大国と決裂ならやばいとは小国の常であり、これを怖がれあまり大国に従順して最低限の安全を図るなら小国としての外交がない。

寧ろ、大国の機嫌や堪忍袋を正確に測り、この範囲内和を糧とし最大限の譲歩を引き出し、基点を移動する。この後大国の機嫌を時間と最低限の譲歩で再充填させる。そして繰り返し。

これを上手くできるのは小国外交の基本です。そして千年の間も中国の属国であり、そして国策ミスで日本の一部に成った韓国は、今回はやっと勘を掴めて、今は自分の国力内でバランスの良い国に目指している。日本と米国から譲歩を引き出せながら…

だから、おそらく、本当に自衛隊の力が要るとしても、これを得られるとは正直な予測です。

期待v不安:両方の思いも、九条の力に比べて微々たる物であるので事実上の影響がないと思います。だが、どうしても二つの思いから選ばなければ成らないなら期待の方が強い。日本人にはそんな潜在的な嫌悪感が少ないので。

数字で示なら:
1:0.1:1000の所がな。

名無し 様
どちらでしょうね。
ただ、サイレンスマジョリティは、間違いなく、そのどちらでもない無関心だと思います……

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